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ACT.167 三剣ウィリアム・グラディウス(Ⅰ)

 シャウラの街で最も歴史ある建築物といえば、シンボルともいえる闘技場だ。

 老若男女問わず、誰もがそう答えるだろう。

 ならば、次いで古い建物は何か?

 それも街に住まう者ならば、老若男女問わず即答するだろう。

 シャウラの発展に古くから尽力し、国王からの信頼も厚く国政に対しての影響力すら有する大貴族。

 ──グラディウス家の古屋敷である。

 主に石材を用いて建造されたかの屋敷は、屋敷と形容するより小さな城と言った趣きがある。

 それは単に、それが王国がまだ今ほど平和ではなかった時代からの建造物であるからであろう。

 実際にその堅牢さがこの時代に活かされるようなことは久しく無い。


 ──今日、その日までは。


 昼下がりに突如、屋敷が騒がしくなったのをグラディウスの大老は日当たりの良いサンルームで聞いた。

 当主ウィリアム・グラディウスは三剣と呼ばれるシャウラの最高権力者の一人である。

 若かりし頃は武勇にも秀でたであろう広い肩と白髪に白髭なれど武骨な顔立ちをした老人である。

 老年に差し掛かるも厳しく威厳のある、老いによる弱さよりも年季が入った分のタダならぬ力を感じるような、そんな傑物であった。

 遠くから使用人や番をしてる者共の慌しく緊急性を感じる声を聞き、彼は手にしていたカップを静かにソーサーの上へ戻す。


「存外に早かったな」


 サンルームへ繋がる扉が勢いよく開け放たれたのは、彼が独り言を呟いた直後であった。

 突然の侵入者を止めようとする使用人や私兵たちをモノともせずに、まるで彼らを引き摺るかのように入って来たのは二人の青年。

 田舎臭い顔立ちをした方は大老は知らなかったが、もう一方に関しては良く知っていた。


「おや、今日はアポイントメントは取ってもらっていましたかな王子?」


「すまないな、怒りで我を忘れていたようだ」


 片眉を上げて敢えて挑発するように言葉を口にした大老に対して、王子と呼ばれた青年──ベルタは怒りという言葉を発しながらもあくまで穏やかに返答する。


「さて──ダブルスタンダードとは、やってくれましたね大老?」

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