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ACT.162 貴金の転生者(Ⅳ)

▽▲▽


 深夜と呼ぶのも(はばか)られる、夜明けを控えた時刻。

 眠らずの街の影を踏むように、ひとりの少女が弱々しい足取りで歩く。

 彼女の歩む後には、無数の──(おびただ)しい量の血痕が続いている。

 多大な事件性を帯びるソレを、普段の彼女は残すという不手際は犯さない。

 あくまで、()()()彼女であるならば。


「く、くそっ、畜生がっ」


 空に向かって憎悪の呪詛を吐きちらしながら、彼女は左腕を抑えながら決死の表情で闇の中を歩く。

 暗闇でわかりづらいが、その腕は血に塗れ──二の腕から下が存在しなかった。


「話が違う、()()()()()()なんて雑魚じゃなかったのかよ」


 油断と慢心。

 この世界に二度目の生を受けてから、彼女が敗北を喫したのは竜王(ばけもの)のみ。

 異能(チート)を持たない有象無象の原住民(ごみくず)なんかに敗北するなど、あってはならない。


「許さない、絶対に──」


▽▲▽


「やられた、ね」


 蛟尾の伸縮率を操作して引き戻した鞭の先には、人の左腕が巻きついていた。

 子供のモノと思われる細腕を手に取り、ベルタは無表情で淡々と言葉を続ける。


「"根"の人たちに、左腕のない子供を探させるよ。この街には子供自体少ないだろうし、何もなければ見つけやすいだろう」


 転生者を取り逃がした己に強い苛立ちを感じて、自然とベルタの語気が強くなっているのをアルフォンソは感じた。


「さっさとこの街からズラかるって可能性は?」


「無い」


 アルフォンソの問いに、ベルタははっきりと否定の言葉を吐く。


「奴らは非常にプライドが高い──異能という才を得て敗北を知らないからね。そんな彼らが一度負けたら、どう考える?」


「なるほどね」


 必ず再戦(ふくしゅう)に来る。

 だが、ただの転生者であれば、あの場面で腕を犠牲に逃げるだなんて選択は選ばない。

 敗走という最悪の苦渋を舐めても、()()()をいく上位命令もしくは使命があったのだろうか。

 そう考えて、アルフォンソは「面倒な」と溜息を吐いた。


「じゃあ、再戦に備えて相手の能力を確認しますか」


 アルフォンソはそう言うと、先程自分が斬り伏せた黒豹の死体へ向かう。

 片手剣を手に、死体に空いた無数の狙撃跡をグリグリと掻き回して()()を掘り出してみせた。


「これは──金貨?」


 転生者が射出していた物質の正体は、()()()()黄金の貨幣であった。

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