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ACT.160 貴金の転生者(Ⅱ)

 最初に違和感に気がついたのは黒豹の死体を抱えているアルフォンソ自身であった。

 肉盾として構えているソレに、不自然な力が加わったことを触れている身体越しに敏感に察知する。

 転生者との戦いは初見殺しの連続であり、如何にソレを躱わすかが如実に生死を分ける。

 今は実戦に出ることの少ないアルフォンソではあるが、それでも序列三位。

 自身の命を守る為の(すべ)は経験としてしっかりと蓄積されている。


「ちっ!」


 だからこそ、肉盾を捨てるという判断が非常に早かった。

 瞬時に死体から手を離して身を低くしながら、滑るように近場の物陰へと逃げ込む。

 黒豹の亡骸が、まるで見えない糸に引かれるように中空へと飛ばされたのはまさしく同じタイミングであった。


「なんだぁ?」


 そして、人間大のその死体が空中に静止しているのを見てアルフォンソは怪訝な声をあげる。


死体操作(ネクロマンシー)、いや違うな」


 過去にあった異能(チート)と同じ系統かと一瞬だけ勘繰るが、即座にそれを自身で否定する。

 異能の正体を察するには条件が少なすぎる、その為アルフォンソは考える先を転生者自身へとシフトさせる。

 中空に死体を留めている転生者側の意図を考察する。

 そうする意図はおそらく単純に──。


「──時間稼ぎ!」


 こちらに射撃武器がないことは転生者も把握している筈。

 一方的に遠距離攻撃ができる奴が、盾を構える理由はない。

 だから、あの死体の役割は盾ではなく壁だ。

 そう断じた瞬間にアルフォンソは疾駆する。

 片手剣を手に黒豹の死体を袈裟に斬り伏せようと瞬く間に剣を振り下ろす。

 だが、たかが片手剣では一刀両断するには力が足りない。

 振り下ろした剣は黒豹の胸あたりで止められる。


「ベルタァ!!」


「わかってる!」


 ──先程まで声を張り上げ、目立つ立ち回りをしていたアルフォンソ。

 転生者からの攻撃を集中させて位置を割り出す、という目的とは別にもう一つの意図があった。

 敵がベルタから意識を外さざるをえなくしたのだ。

 音もなく接近していた彼が、肉の中ほどで止まった片手剣の背を蹴り飛ばす。

 強い力が更に加わったことで肉盾は真っ二つに裂け──。


「逃がさない」


 ベルタの振るう蛟尾がまさしく海魔(ミズチ)のように空中を這い、肉盾の向こうに潜む転生者へと伸びる。

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