ACT.159 貴金の転生者(Ⅰ)
この場に潜む第三者の存在について、ベルタとアルフォンソは最初から気がついていた。
そもそも猛獣たちの檻が開く時に響いた金属音は解錠の音でなく、鍵が破壊された音であった。
距離がある程度離れている各檻の鍵が連続して破壊され、その破壊を行ったのが黒幕たる転生者とするならば、その手段は──。
「──狙撃」
急いで檻の影、遮蔽物に身を隠すベルタ。
着弾の音、その質を聞いた限りは金属やそれに近しい硬質性の物質を打ち出していると彼は類推する。
幸か不幸か、場所は比較的閉所で後方の確認も済んでいる為狙撃手のいる方向は一目瞭然。
問題は視界の悪い暗所で迫る弾丸をどう潜り抜けて接近するか。
いくら暗所での戦闘訓練を積んだからといって、暗闇に完全適応するだなんてことは人間の肉体機能的に不可能だ。
故に、狙撃の回避難度は想像以上に高い。
更にこうして手を拱いてまごついて時間を浪費すると転生者に逃げられる可能性も増大する。
様々な可能性を考慮し、小さくベルタは舌打ちをした。
そしてそんな彼と違い、一方のアルフォンソは──。
「行くぜおらぁ!!」
──黒豹の死体を盾代わりにして、駆け出した。
アルフォンソは直感的に、転生者の狙撃には肉を貫通する威力は無いと判断。
それを考慮して、わざわざ倒した死体を拾い上げていたのだ。
わざと大声を出して走り出したのも、敢えて自身の場所を狙撃手へ伝える為。
彼の意図した通りに、アルフォンソへ次々と弾丸が放たれて肉の盾へと突き刺さっていく。
激しい攻撃を死体越しの衝撃に感じながら、アルフォンソは頭の中で狙撃地点の割り出しにかかる。
走りながら、嵐のような攻撃を受けながら、アルフォンソは狙撃手の位置と距離を粗方把握する。
「捉えた」
把握した地点へ向けて、すぐに切り伏せられるように肉盾の裏で抜剣しながら駆ける。
だが、そうはいかなかった。
転生者の異能とは、常にヒトの想像と想定を超える。
瞬間、肉盾として利用してきた黒豹の死体が──動き出した。




