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ACT.13 狼怪の転生者(Ⅳ)


 ライはまず、走りだしたその勢いを活かして盾を使った体当たりを転生者カズマにぶちかます。

 カズマはその攻撃を、右手に持った錆びついた片手剣を用いて防ぐが、衝撃は殺しきれず数歩後ずさる。

 そこに生じた隙を逃さず、細かく盾でジャブを繰り返しながら更なる大きな隙を誘発する様に動く。

 怒りに身を任せていながらも、ライの思考はいたってクリアであった。

 彼はしっかりとわかっていたのだ。

 ただ憎悪のままに戦っていては、勝てる戦いなんてないことに。

 だからこそ、怒りの手綱を握り、我を保つ。

 そして、教えてもらった基本に忠実に、攻め立てる。


「ぐっ――このっ!?」


 転生者カズマもまた、ライの隙の無い攻撃に反撃の糸口を見つけられずにいた。

 攻撃を受け流すのに精いっぱい、下手に強引な攻撃をこちらが仕掛けても、手痛い反撃をくらう未来しか見えなかった。

 ――つまり、この少年騎士を倒すには、異能を使うしかない。

 そう覚悟を決めた転生者カズマは、大きく後方に跳び、距離を開ける。


「このチカラは、なるべく使いたくなかったんだがな」


 錆びついた剣の切っ先を左腕の肌に立てたカズマは、あろうことかそれを一気に引いた。


「――っ!?」


 相手の突然の自傷行為に、ライは驚愕する。

 しかし、真に驚愕するのは、これからだった。

 飛び散ったカズマの血肉は、地面に落ちると急激に泡立ち始める。

 やがてそれは質量を増し、新た骨と肉が付き、気が付くと――そこには、先ほどまで自分が追っていたのと同じ3匹の醜悪な人造生物がいた。

 傷口を縛って止血して、カズマが叫ぶ。


「行け!!」


 カズマの指令を受けて、そいつらが、ライに向って走る。


「このっ!」


 ライは迎撃のために盾を振るうが、それを皮1枚で躱され、囲まれる。

 そこに最初に追いかけてきた1匹も加わって、4匹の人造生物が、ライの周囲をぐるりと囲み、隙を狙う。

 ライは盾を構え、周囲に視線を配りながら様子をうかがう。

 ――そして、その時は来た。

 真後ろで地面を蹴る音がしたと同時に、ライは振り返り盾を出す。

 ガンと、大きな音と衝撃が盾に伝わる――1匹目の奇襲は防いだ。

 だが、これで終わりではない。

 獣の狩りというのは、集団でただ襲いかかるのではなく、連携で確実に仕留めるように動くのが鉄則である。

 最初の奇襲を防いだ為、必然的に出来た新たな隙を、奴等は見逃さない。

 一斉に、それも時間差をつけて襲い掛かる。

 1匹が、左足に噛みつこうとしているのを右手の剣を振るって牽制する。

 2匹目が、左腕に飛びついたのを、剣を振るう動作の延長線上で柄頭で頭を殴りつけて防ぐ。

 ――だが、対応できる数にも限度がある。

 3匹目は、左肩に思い切り噛みついた。

 装甲がひしゃげ、肩を強く圧迫する。


「――こんの!!」


 肩に噛みついた人造生物の腹に剣を突き刺し、縦に思いっきり引いて、切り裂く。

 しかし、絶命してもなお、そいつは肩に噛みついて放れない。

 左肩を強く圧迫され、腕に力が入らなくなったライは、盾をうまく構えられなくなる。


「ま、ずい!」


 咄嗟に跳びのこうと右足に力を入れた瞬間。


「させるか!」


 カズマがそこに剣を投擲し、ソレがライの足もとに突き刺さる。

 それ自体は、さしてダメージは無い。

 当たっていたとしても錆びついたその剣に、足を貫かれることなんてない。

 ――だが、その一手は、ライの跳びのくタイミングを確実にずらした。

 その一瞬が、ライに迎撃された3匹に、もう追撃するチャンスを与える。

 盾を満足に構えられず、姿勢も崩してしまっている。

 そんな状況の彼に、醜悪な猛獣たちは飛び掛かった。










転生者カズマの能力は、「自分の血肉から眷属を作り操る能力」です。

作るために傷つけた身体は、自然に治すしかないですが、一度つくった眷属は殺されるまで存在し続ける上に食事等の維持費もかからないという、「え、最初の敵がコレなの?」っていうくらいの強能力者です。

放っておいて、順調に眷属量産されてたら、かなり不味い事態になる感じです。


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