北へ...
靖子さん達とソウルメイトとなって私の魂は熱く燃えたぎる感覚に見舞われた。
「では雅人さん。また雅人さん小説に投稿するんでしょ。それとその他にも色々な小説を描いていらっしゃるのでしょ」
「まあ、そうですけれども」
「またメールしますので、それで私が描いた挿し絵を見て頂いて雅人さんがどうするかって形になりますがいかがでしょう」
「それは私にとって願ってもないことですよ」
「雅人さんとリリンさんはこれから帰るんですか」
そのように思わせた方が良いと思って『そうです』と言おうとしたら、リリンが「我らは旅に出る」と言い張って話がややこしくして、何か面倒な事になったと思った。
「旅ってどこにです?」
「まあ、いろいろね」
「あなた達家族はいつもそうやって旅に出ているのですか?」
「そうじゃ」
と面倒な事になるとも知るずにリリンは肯定する。
「なるほど。じゃあまたこの街に来たときにでも私の店に寄っていって下さい」
「なんじゃお主も共に・・・」
私はリリンの口元を抑えて、「じゃあまた」
「はい」
そういってリリンの口元を押さえながら、靖子さんが手を降るところで見送られ、靖子さんの視界から離れたことを確認してリリンに注意する。
「リリン、あーいっちやあダメだよ」
「どうしてじゃ?ソウルメイトとなったのだから、当然だと思ったのにな」
「確かにソウルメイトとなった靖子さんが同じように共に来てくれたら、それはありがたい。でも私達は狙われている身だ。それで靖子さんに何か合ったらどうするつもりなの?」
「そうなのか?靖子が一緒なら雅人にとって良い刺激になると思ったのじゃがな」
「とにかくリリン、慎重に行こう」
「我は至って慎重じゃがのう」
「どこが?」
と私はリリンに突っ込む。
「雅人と靖子が魂を共鳴すれば、もっと我は力を蓄えられ、お主を狙う連中を一掃出きると思ったのじゃがのう」
「リリン争いは良くない」
私は切実にリリンに言う。
「言われて見ればそうじゃが、奴等は容赦なくお主を狙って来るぞ」
「その時はその時で対処しよう」
「我はお主に最大限に力を貸したい」
「それでもリリンを犠牲にしてまで私は生きたくない」
「雅人」
瞳をパーっと輝かせながら私に言う。
私はそんなリリンを見てニヤリと笑みを浮かべた。
「分かったお主の好きなようにやるといい。我も付き合うぞ」
「ありがとう」
そう言って私とリリンは駅に向かい、大人の切符と子供の切符を買ってホームに入った。
これからどこに行こうか、私は考える。
終電まで行き、それまで小説を書こうと思う。
リリンも飽きもせずに私と魂を共有したいのか?そんな私に寄り添っている。
本当にこいつは可愛いな。
そこで靖子さんから添付メールが届いた。
内容は「今さっき雅人さんの小説を読んで誠に勝手にながらこの挿し絵を添付させていただきました」
添付した絵を見ると心なしか?私のイメージを遥かに凌駕する絵になっている。
そんな靖子さんに恐縮して「ありがとう」とメールを送っておいた。
電車は終電にたどり着き、私に寄り添って目を閉じているリリンを起こして電車から出た。
その終電駅は下田だった。
駅に出ると海の匂いがした。
「雅人よ。何か心地よい風が吹いておるぞ」
「海の匂いだよ」
思えば私は幼い頃、家族と共にここ下田に旅行に来たことがある。
「どうした雅人よ。何か懐かしんでいるような顔をしておるが」
「昔、私は家族とここに旅行に来たことがある」
「その事で懐かしんでいるのか?」
「まあ、そんな感じかな?」
「その事で一つ物語が書けるんじゃないか?」
「そう言われてみるとそうだね。でも今日はもう遅い。どこか泊まるところを探そう」
貯金も大分減ってきたがまだまだ大丈夫だな。
ネット小説にアップして賞金を狙っているがうまくいくかは私の腕次第。
それとこの件に関しては靖子さんの力になってくれないだろうか?
それは厚かましいお願いだと分かっている。
絵師の靖子さんに私からお願いしたら、ちょっと勇気が入るな。
とりあえずメールでそのお願い事をしてみたら、物の数分でメールは返ってきて『喜んで』と言う内容だった。
そのメールの返事に私からは「本当にありがとう」と言っておいた。
スマホで改めて彼女の絵を見てみるとこの絵に引き込まれない人はいないと言うくらいの感じたった。
私も彼女の絵を見て、私も頑張らないと行けないと思って、今日の小説の課題は宿に就いたから良いとは思えず、もっと、いやもうちょっと頑張って見ようと思ったので早速小説を描く。
描くときはテンションが最上級になるくらいが丁度良い。
私ももっと書いて色々な人に私の小説を通じて伝えたい。
リリンは相変わらず、私が小説を書くときにはいつもひっそりと私からは漏れると言う魂のこもれみを感じていた。
本当に飽きることなく私の小説を書く意欲を掻き立ててもらっている。
私の魂のこむれみを感じてリリンは幸せそうにしている。
そう思うと心なしか?私は小説を書く為に生まれて来たのかもしれないとさえ、大言壮語だか、そう感じてしまう。
まだ私は小説を書いているが本も出していないんだよな。
まあ、とにかく今はリリンを側に感じて懸命に小説を書くことにする。
靖子さんも言っていたよね。
私の小説を見てそれに感化され、物の見事な表紙を飾ってくれるって。
リリンいわくソウルメイトととなった私達に敵などいないとさえ思えてくる。
私の小説を読んで一人でも多くの人に伝えたいと言うのが始まりだったっけ。
状況的には危険にさらされても何故かわくわくしてしまうのはなぜだろう?
とにかく私は小説を書いて書いて書き続ける。
今私が書いている小説は面白いのかどうなのか?分からないがとにかく私は魂を込めて書き続ける。
「ハッ!」
と気がついて夢であったことに良かったと思っている。
リリンは私の魂を感じているうちに眠ってしまったみたいだ。
風邪をひくといけないのでベットの上に乗せて布団を被せてあげた。
本当に恐ろしい夢であった。
私の最愛の娘とも呼べるリリンが、そして昨日出合った靖子さんが死んでしまう夢を見た。
永遠の闇のような雲に包まれて。
そこで私はどうすることも出来ずに、追いかけても追いかけても二人は闇の中へと吸い込まれて行った。
夢だよね。
正夢なんてあり得ないよね。
いつのまにか額に汗を流していた。
シャワーを浴びたいがもう今日は小説を書くことでエネルギーを使って疲れているので一つしかないリリンが眠っているベットに横になりリリンのその小さな手を握った。
「リリンは私が守る」
そう人知れずに呟いて私も眠りについた。
そして必然的に訪れる朝を迎えた。
私が目覚めるとリリンはシャワーを浴びていた。
私もシャワーを浴びたいが順番だ。
何て思っていると「雅人も一緒にどうじゃ」
「リリンは女の子でしょ。人前でそのように軽々しく、裸を見せるような事はしないの」
「でも。雅人は我のソウルメイトじゃ。男とか女とか関係はないと思うのじゃがな?」
それもそうかもしれない。私はまともに二日間はお風呂に入っていないので私もリリンと一緒に入った。
「よくぞ来た雅人よ」
そういってリリンは湯船から出て、「さあ雅人よ。背中を流してやる」
「うん」
私は邪な気持ちではなく本当にソウルメイトとしてリリンとお風呂が入れる。
もしかして靖子さんともって、私は何て事を考えているのだろうと自重するために自分の頬を叩いた。
しかも靖子さんの裸を一瞬でも考えてしまったと再び自重した。
これでは私は変態だ。
「雅人よ気持ちいいか」
私の背中を流しているリリンが言う。
「う、うん気持ちいいよ」
「さっきから何をそわそわしている。もしかして我の身体を見て欲情したんじゃ無いだろうな」
「そんなことは思っていません」
「もしそう思って風呂に入って来たら容赦はせずに半殺しにしていたところじゃった」
「そうなの?」
「でも雅人はそんなやらしい奴とは思えぬ」
後リリンが五才くらい大人だったら欲情していたかもしれない。
「リリン。今度から別々にお風呂に入ろう」
「どうしてじゃ?雅人の背中を我は流したいぞ」
「さあ、リリンも体を洗ったのだから出た出た」
「まだ、雅人の背中がきれいにはなっておらぬぞ」
「良いから出た出た」
「ふむ。何か腑に落ちぬがのう」
とにかく今は一人で湯船に入りたかった。
湯船に浸かりながら考える。
私達を狙って来る連中に対して、今は連中の気配は感じられぬが油断はしては行けないだろう。
何て夢を見てしまったのだろう。
正夢でないことしか願う他なかった。
お風呂から出ると、朝食の準備がされていた。
メニューはパンと目玉焼きとサラダとオレンジジュースだった。
リリンは健気にも私がお風呂から出て来るのを待ってくれていたみたいだ。
「雅人よ、はよう座って食べようぞ」
「うん」
「「いただきます」」
そういって食事に手をつける。
不思議と大した食事でもないのに美味しく感じられた。
リリンと朝御飯を食べて、そう感じたのかもしれない。
今日も小説をバンバン書き上げてやるぞっと俄然やる気が出てくる。
食事中にスマホに一通の添付メールが届いた。
内容を見てみると、靖子さんからのメールで『私も雅人さんに触発されて旅に出る事にしました。雅人さんは北へ向かっていると聞きましたので、私は西へ行くことにしました。お互いに良い作品が出来れば良いですね』
と文章を見てリリンに「靖子さんも旅に出るらしい」と言うと「まことか雅人よ旅は道連れ、世は情けよのう」
「って言うか私達と違って西へ向かっているみたいなんだな」
「何よもう、つまらぬ、靖子は雅人の嫁にもってこいの人物だと考えていたのにな」
「何を言っているの?そんな事あるはずがない」
と良いながらもかすかにその期待にのってしまい靖子さんを想像してしまう。
「お主達はお似合いだと思うのだがのう」
でも彼女の気持ちは分からないが、そんな私達に感化されて旅に出る位だから、満更でもないかもしれない。
でも私達は北で彼女は西に向かうと言っていた。
そう思うと何故か気分が萎えてくる。
私に気があるのかと私は勝手に想像してしまったからだと思う。
「じゃあリリン。メシ食べたら早速出発するよ」
「のう。そうじゃな」
食事もすんで私達は北へ向かうのだった。
私達に感化された靖子さんが今更ながらに心配になった。
北へ行く電車に乗り込んでリリンと会話をする。
「靖子さん大丈夫かな?」
「大丈夫じゃ離れていても我らはソウルメイトじゃ」
リリンが大丈夫と言うなら私の心配はなくなった。
そうだよね。私達はソウルメイト。例え千マイル離れていても同じ空のしたで繋がっている。
連中はまた私達に何か仕掛けてくるだろう。
でも私の魂を共有して培ってきたリリンがついている。
私はパソコンを取り出して発車する電車の中で小説を描いた。
この感じがたまらない。
本当に私は小説を書く為に生まれてきたと、以前と同じことを改めて思う。
これはまた次から次へとアイディアが浮かんでくる。
良い小説を書くなら、このハイテンションで書き進めると良い。
側に寄り添っているリリンはいつものように私が描く小説を書くその魂を感じているのだろう。
本当にこんなことをして飽きないのかと思うがそうじゃない。
彼女は本気で私の魂をそっとストーブに当たるように側に寄り添っている。
北へ向かう途中に東京に差し掛かる。
東京は私の育った場所だ。
電車が進む事、はっきり言ってあまりにいい気分には慣れなかった。
「雅人よ大丈夫か?」
とリリンに心配されてしまった。
私の魂に出てしまったかな?いや、テンションが低くなって態度で解るだろう。
いつしか言われたことがある。
私に何かあると顔に出ると・・・やめようこれ以上考えると自分がおかしくなりそうなので・・・。
リリンが私の事を心配そうに見ている。
何かそんなリリンを見ると不思議と心がほっこりしてしまい、思わず笑みがこぼれ落ちてきた。
「雅人が笑うと我も嬉しいぞ」
と笑顔を見せてくれた。
「それよりも雅人よ大きな建物がいっぱい立っているな」
「そろそろ東京に近づいてきた」
「東京と言うのか」
「ああ、私が育った街」
リリンは私の目を見て、「雅人にとって余り気分が良くないと思えるがどうじゃ?」
「その通りだよ」
私はリリンに観念するように言った。