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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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ソウルメイト

 バスが駅前に到着して、私はリリンと私の分の料金を支払ってバスから降りた。

 夏真っ盛りの日差しに照らされ、本当に体全体がとろけそうなほどの熱さに私はまいっているがリリンは気をしっかりと保ちその赤い赤い赤い視線を私に向ける。

「まったくこんな熱さにへこたれるとは情けないぞ雅人よ」

「この尋常じゃない熱さにへこたれない方がおかしいよ」

「まあ我は死神だからかのう?」

「それ以外に他に思い付かないよ」

 視界が熱波で歪んでいる。

 でもこうして太陽に照らされていると小説を書く意欲が沸いてくる。

「リリン、あそこの喫茶店で小説を書きたいのだけれども・・・」

「何?また雅人の魂を堪能できるのか?」

 赤い赤い赤い瞳をきらきらと輝かせながら私に言った。

「まあ、そう言うことになるね」

「よし、雅人よ。早速行くぞ」

 リリンは私よりも先に喫茶店の方へと向かう。

 私もやれやれと言った感じで、その後を追う。

 リリンが喫茶店に入り、私も続いて喫茶店の中へと入っていった。

 中に入ると客はおろか店員までいない始末。

「ごめんください」

「はーい」

 奥の方から女性の声が聞こえてきた。しかも若い感じの声だ。

 そしてその女性が私達の前に現れた。

「いらっしゃいませ」

 と言って。

 女性は絵師か?所々に絵の具の跡を着けたエプロンを着用している。

 髪はボサボサで、でも絵師か?どうか分からないけれども、それらしく何かそんな魅力を感じさせる何かがあるような気がした。

「こんななりで申し訳ありません。私の本業は絵師なんですけれども、兼業でここの喫茶店のマスターもしております。

 絵師と言ってもこう見えても結構売れているんですよ。だったら絵師を貫いてここの喫茶店は止めて絵師に専念すればいいんじゃないかと良く言われます。

 でもこのお店は私のおばあちゃんが私の幼い頃に経営していたのです。

 でもおばあちゃんは六年前に亡くなり。そんな・・・」

 長々と喋り続ける絵師の女性に、「とにかく私達はこの喫茶店でお茶をしながら作業に移りたいのですが?」

「ああ、そうでしたか。私はあることないこと勝手に口にしてしまう癖がございまして」

 私は咳払いをひとつして「それじゃあ、コーヒーと何かパフェ的な物を頼みたいのですか?」

「あっ、はいお待ち下さい。一ヶ月ぶりのお客でこっちもどうしていいか分からなくて」

「とにかくよろしくお願いします」

「はい」

「あのー席は?」

「どこでもいいのでお掛けください」

 私とリリンは適当に座った。

 私達が座った座席は汚くはないのだが年期があってボロボロだ。

 それにテーブルにはインベーダーゲームがあって起動はしていない。

 そう見るとここの喫茶店は相当古いのが解る。

 店はボロいが壁に飾られているこの絵師が描いた絵か?とても心を引き付ける何かを感じる。

 リリンはそんな絵をまの当たりにして、心ここにあらずと言った感じで絵の世界へと引き込まれているように感じる。

「気に入ってくれたかな?」

 いつの間に絵師兼喫茶店のオーナーの女性が私とリリンの間に入ってきた。

 いや入ってきたと言うよりも私が注文したコーヒーとリリンのパフェをおぼんに載せてやって来た。

 私達がこの絵師の絵に見とれている間に注文した物を持ってきたみたいだ。

「お待たせ」

 と言って私が頼んだアイスコーヒーとリリンにパフェを差し出した。

 そんなに待たされてはいない。時計を見るといつの間にか十五分の時がたっていた。

「お主良い絵を描くのじゃな」

「そうかな?私の絵を見てみんなそう言うの。てへっ」

 舌を出して照れて謙遜してはいない感じだ。

 ここなら仕事が捗るだろうとパソコンを取り出して最大限のインスピレーションが生まれそうでその手を動かした。

「失礼ですけれどもあなたはパソコンで何をしているのですか?」

 これは言って良いことなのか悪いことなのか分からず考えているとリリンは「雅人は小説家じゃ。よってここで小説を書いておるのじゃ」

「ちょっとリリン」

 勝手にばらすリリンに私は困惑してしまった。

「へぇ凄いですね」

「じゃろう」

 リリンは自分のことのように言う。

 考えて見れば別に私が小説家だからと言ってばれても差し支えはないか。

「もしよろしければその小説を見せてくれませんか?」

「別に構わないけれど」

「うわっ」

 その瞳をきらきらと輝かせながら私に言う。

 思えばネット以外で私自身の小説を読みたいなんて言われたのは初めての事だった。

 喫茶店のオーナーに私が掲載している小説を教えてあげた。

 彼女はスマホを取り出して私が小説を掲載している小説にアクセスしてみている。

 その間に私は小説を書こうとパソコンでキーボードを叩いていたが今私の前で私の小説を見ているリアクションが気になり私はちょっと気が散ってしまったと言うか?私の小説を読んでどう感じているのが凄く気になり、もはや小説を書くどころじゃないと思えて来た。

 彼女はスマホに釘付け状態でもはや声をかけて見ようかと思ったがそれどころじゃない感じだ。

 ため息を漏らして注文したアイスコーヒーを飲んで見ると、あまりの不味さに「ぶっ」と吹き出してしまった。

「雅人よ。このアイスクリーム、氷のようにかちこちで普通に食べれそうもないぞ」

 文句を言おうとしたが、彼女は私が投稿した小説に夢中である。

 そこまで私の小説に釘付け状態の彼女を責めることは出来なかった。

 とにかくアイスコーヒーとアイスクリームも食べられないとそんな彼女に文句も言えないなら、とりあえず私は改めてパソコンの前に向き、最大限のインスピレーションを発揮してキーボードをたたく。

 リリンはいつものように私がインスピレーション全開の魂を堪能して寄り添っていた。

 カチャカチャカチャカチャとキーボードを叩く正面に涙で充血した喫茶店兼絵師の彼女が目の前にいた。

 びっくりして私は「うわー」と声を上げてしまった。

「名前は雅人さんと言いましたね。あなたの小説に感動してしまいました」

 私は耳を疑ってしまったが、どうやらそうでもなさそうだ。

 でも私はさらに疑ってアクセスした所を間違えているのか気になり、彼女のスマホを借りたが本当に私が投稿した所にアクセスしている。

 さらに私は「この人連中の・・・」彼女がいないところにリリン誘い込み耳打ちしてみると。

「そんなことはあり得ない。疑心暗鬼に取りつかれると命を落とす可能性も否めなくなってくるぞ」

 とリリンに叱られた。

 どうやら私は素直に喜んでいいのかもしれない。

「来たよ来たよ私のインスピが」

 スマホを取り出して何をしているのか聞いてみると、彼女は心ここにあらずと言う感じでスマホをいじくり回している。

 とりあえず彼女の気持ちを素直に受け取って小説を書くことに没頭する。

 そこまで私の小説を評価してくれるのは正直嬉しいので、それがまた魂の向上と言うやつか?とにかく私も彼女のようにここの喫茶店で小説を書くことに集中している。

 私は燃えるような魂をたぎらせて書いている。

 また私の小説がここの喫茶店のオーナー兼絵師に伝わり私のインスピレーションは止まらずに小説を書くキーボードが止まらない。

 ちょっと一息入れようと不味いがガムシロップを二つほど入れてアイスコーヒーを飲んだ。

 ガムシロップを入れてもこの気持ちの悪い苦さが私の口に広がり気持ちが悪かった。

 リリンに頼んだパフェもやがてカチコチだったアイスなのだが時間は経過して溶けてきてスプーンですくって食べ初めた。

「雅人よこのアイスクリームのパフェは美味しくないぞ」

 私もどんな味がするのか?リリンにスプーンを借りて食べた。

 何この甘ったるいアイス。殺人的な不味さだ。

 文句を言いたいところだが情けないことにそこまで言う度胸はなかった。

 とりあえず小説も切りが良く終わってお勘定を渡して店を出ようとしたところ、その喫茶店兼絵師が「出来た」と叫んで私をじろじろと気持ちの悪い笑みを浮かべて私に持っているスマホを見せつけた。

「どうかな?」

 見せられてどうかな?と言われても何の反応を示したらいいのか最初分からなかった。

 でも次第にその絵の素晴らしさに感化されて見てみると私が描いた今連載している物語をモチーフに描いているのが解った。

「これって」

 僕がそう言うと彼女は、「雅人さんが描いた小説をモチーフにさせていただきました」

「すごいね。短時間でこんな素敵な絵が描けるなんて」

「あのう」

 ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら彼女は私を見つめて、「雅人さんの小説のイラストとしてこの絵を一緒に投稿してもよろしいでしょうか?」

「願っても無いことだが見ず知らずの人にそこまでしてもらうことは・・・」

「雅人よ、良いではないか、この娘の絵を一緒に投稿すれば相乗効果で読者も増えるぞい」

 確かにリリンの言う通りかもしれないが私達は危険な連中に狙われているのだ。

 それでこの人を巻き込むわけには・・・。

「雅人よ、心配はいらん。この娘とも我が責任を持って守ってやるぞ」

「何この子可愛い」

 リリンに抱きつく彼女。

「よさぬかお主よ。そういえば名前を聞いていなかったな」

「そういえばそうだったね。私は川村靖子言います。気軽に靖子ちゃんと呼んでくれれば言いかな?」

 なんちゅう馴れ馴れしい人だろうと思ったが私の小説のデザインをしてもらうのに最適な人だ。

 それよりもこの人そのメガネを取ると可愛いかもしれない。

 そんなことはどうでも良いことなので、とりあえずよろしくと握手を求める。

「私は・・・」

 名前を言おうとすると「其奴は雅人だ。よろしくしてやってくれ」

「はい。よろしく」

 と私の手を握った。

 手は荒れていて絵師の手ってこんなにも荒いのかな?それともなにかしら生活に困って入るのかな?

「雅人さんでしたね。私と連絡のやり取りをするのはいかがですか?」

「君、靖子さんでしたっけ。女性ですよね」

「そうですけれども、それが何か?」

 この人には男性に対する危機感がないのだろうか?

「とにかく雅人よそんなに心配はいらん。雅人が靖子に何かしたら我が雅人を地獄に送ってやるからな」

 冗談に聞こえないのが恐い。いやきっと冗談ではないだろう。

「雅人さん凄いですね。こんなにも素晴らしい小説が書けるなんて。私も雅人さんに感化させて絵師として凄く意欲を掻き立てられます」

「そうですか。それは小説を書いている事に冥利につきます」

 そこでリリンが「靖子と言ったな。お主もなかなか良い魂をしている。雅人の魂に共鳴しておる」

「それって、上目使いで私を見上げる靖子さん」

「ちょっとリリン誤解されるようなことは言わないで」

「この子リリンちゃんと言うんですか?」

「はい」

 靖子さんはその瞳をきらきらと輝かせながら言った。

「ねえリリンちゃん。もし良かったら私にヌードモデルになってくれないかな?」

 一口飲み干したアイスコーヒーをつい吹き出してしまった。

「何を言っているんですか?」

 リリンの前に立ちふさがる私。

「雅人さんには聞いていません。どうリリンちゃん」

 私を押し退けてリリンに詰め寄る靖子さん。

「ヌードってなんじゃ」

 ヌードをしらないリリンに対して靖子さんは「引き受けてくれるかな?」

 私は咳払いをひとつして「リリン帰ろう」

 リリンの手を引いて外に出たら、

「ちょっと私が悪いですよね。申し訳ありません」

「雅人よ何をそんなに怒っておるのじゃ」

 話がややこしくなるので黙っていた。

「ご免なさい。リリンちゃんのヌードは諦めます。その代わりに雅人さんの小説の挿し絵をさせてもらえないでしょうか?久しぶりにこの高ぶる絵を描く意欲が湧いてきてたまらないのです」

 私は一つ息をして「分かりました」

 靖子さんが私の小説に挿し絵を描きたいと思う気持ちは本物だ。

 それは目の奥に秘められている燃えたぎる情熱を私は感じたからだ。

 リリンの言う通り、この人には隠れた燃えたぎる魂がやどっている。

 それはリリンの言う通りで私と靖子さんは魂が共鳴しているからだ。

 私も今小説を思いきり書きたいと思っている。

 そんな私と靖子さんを見て、リリンは「我らの魂は同じ志を共にしている。その我らおのおのの魂が共鳴すれば三人ここに集まり三倍もの力が発揮される」

 なるほど、私は志を共にした人間に出合ったのはこれが初めてだ。

 リリンは言う。このように出会う仲間をソウルメイトと。

 ソウルメイトとはこうして魂が運命を通じて出会う仲間、もしくは家族だと。

 私達は家族ではないけれど、そのソウルメイトという言葉は私には充分伝わり気に入った。



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