雅人の使命
リリンの優れた肉眼を便りに私達は民家へと向かう。
リリンの後をついていくと私の肉眼にも民家が見えてきた。
民家は山奥にポツリとたっていて、しかもお店だった。
何を商っているかと言うとある定食を扱っているみたいだ。
看板に定食は一番、電話は二番と書いてある。
しかもお客さんはそこそこいる。
私とリリンが入ると「お好きな席にお座り下さい」と言われて私とリリンはカウンター席に並んで座った。
「雅人よここでも熱き魂を感じるぞ」
とリリンが私に呟いた。
そう言われてみると確かに何か心にぐっとくる熱い物を感じた。
「リリンせっかく来たんだから何か食べよう。さっきのカロリーメイトだけじゃ物足りないでしょ」
「・・・」
リリンは黙って明後日の方向を向いていて、私の声が届いていないような感じだったので「リリン」再度呼ぶと「ああ雅人」とようやく気がついてくれた。
私は無性にお肉が食べたかったので焼き肉定食を頼み、リリンにはお子さまランチを頼んだ。
注文に駆けつけたおばちゃんは明るくリリンの言う通り熱い魂を感じて話していて心地が良かった。
お店にはこんな山奥なのに結構お客がいる。
そう思って見ると凄い美味しい料理に違いないと私は思った。
何かこうしてお店の雰囲気を感じていると魂が燃え上がって小説を書きたいと思う。
私がパソコンを出して書こうとすると、回りのお客に迷惑なんじゃないかと思ってパソコンをしまおうと思うと、隣にいるリリンが私の魂を直に感じていたいのかリリンは私の肩に寄りそった。
ファミレスじゃないのにこんな定食屋で小説を書くのはいささかいけないような気がしたが私の肩に寄り添っているリリンを見ると魂が燃え上がり小説を書こうと思ってパソコンを取り出して早速書き始めた。
昨日の喫茶店で書いたときと同じようにアイディアが次から次へと沸々と沸き起こりキーボードを叩く手が止まらなかった。
「君はどうして小説を書いているの?」
「誰?」
と私が言うと謎の声の主が、「良いから質問に答えて」
唐突にそう聞かれて少し戸惑ったが「私の生き甲斐だから、私は一人でも良いから私の小説をネットを経由して読んでもらいたいから。それに今の私にはそうすることしか出来ないから」
私は何者かは知らないが質問に答えた。
「ならばお主に試練を与えよう」
「試練って?」
「今はその事を知るときではない」
何なんだいったい?
「・・・さん」
今度は何だ?
「お客さん」
ハッと気がつくと私は眠ってしまったようだ。
「お客さんここは寝るところじゃありませんよ」
店の女亭主に注意を受けてしまった。
隣にいたリリンは注文したお子さまランチを美味しそうに食べていた。
パソコンで小説を書くことは許されたみたいだが眠ることは許されない見たいだ。
私が開いたパソコンの横には注文した焼き肉定食があった。
私はパソコンをしまって、「いただきます」と言ってぼちぼち食べる事にした。
「雅人よ夢の途中で心が迷うときがある。その時こそが夢への向上心が芽生える時じゃ」
リリンの発言を反芻してみる。
そして私がしていることに何一つ間違いがないことに気がつき、夢への拍車がかかる。
私が頼んだ焼き肉定食に手をつける。
魂が向上した時の食事は凄く美味しく感じる。
「雅人美味しいな」
「ああ」
そう返事をして回りのお客を見て、丁度お昼時か、お客がいる。
こんな山奥なのにどうして店が繁盛しているのか疑問に思ったりもする。
そこでお店の女亭主が私の隣に座ってきた。
「おいしいかい?」
「はい美味しいですよ」
「お嬢ちゃんもおいしいかい?」
「おいしいよ」
「そうかいそうかい。親子でここまで来たのかい?」
「まあ」
と私が言う。
「ここのお店はネットにも掲載されていないのによく来たね」
「そうなんですか?」
女亭主にこんな山奥まで来て、焼き肉定食を頼んだか、美味しいのは美味しいがそれほど美味しいとは感じられなかった。
「お父さん」
「へっ?」
お父さんと呼ばれてびっくりしたが、側に幼く見えるリリンがいるから、そう見えたんだな。
「何でしょう?」
「こんな所に定食屋があって、それにそれほど美味しくないのに繁盛しているのか、疑問に思ったりしただろう」
私は何て行ったら良いのか分からず言葉を選んでいるとリリンが「そうじゃな、美味しいのは美味しいがここまで足を運んでまで来るほどの美味しさではないな」
「リリン!」
失礼か事を言うなと言わんばかりに小声で注意する。
すると女亭主大笑いをして「いいよいいよお嬢ちゃん」リリンの頭を撫でながら言う女亭主。続けて「とにかくゆっくりしていきな」
でもリリンの言う通りこんな山奥にまで足を運ぶほどの美味しさではではない。
いったいどんな秘密があるのか?
店の書き入れ時の昼の時間を過ぎて、店には私とリリンだけになってしまった。
小説を書く意欲が私のなかで沸き起こった。
パソコンを広げる前に女亭主に「すいません。ちょっと私事で作業をしたいので、しばらくここで作業をしていいですか?」
「良いわよ。この時間にはお客さんが来ないですからね」
「雅人、また魂を燃やし尽くして書くのじゃな?」
するとリリンは私に寄りかかる。
リリンは私が小説を書くことで私の魂を感じとりまたパワーを蓄えるようだ。
そんな中私の魂も共明しているのか?私も沸々とアイディアが次から次へと沸き起こり、キーボードを叩く手が止まらない。
今書いている小説の内容は、通信制学校に女の子三人が通う物語で、ある日勉強がてらに入った店で勉強をしていたところに、そこの女亭主に3ヶ月間店を任される。
その店を頼まれた三人はそれぞれ生き別れとなったかけ換えのないもの達と出会う。
物語を書いていてこの小説本当に面白いのか?疑問に思うがどうなんだろうか?
そう思うと行き詰まってしまう。
そんな時女亭主が私とリリンに一本ずつラムネをご馳走してくれた。
「いいんですか?」
女亭主は「良いのよ」
「ありがとう」
と言ってリリンはクピクピ小さく喉を鳴らしながら飲んでいる。
「雅人よ。この飲み物美味しいぞ」
「じゃあいただきます」
私も飲んで見ると口の中でパチパチと弾ける炭酸に喉が潤い気持ちが良くおいしい。
「二人ともおいしいかい」
「はい」「ふむ」
「本当は今は店を閉める時間だけど、夕方まで作業をしていいよ」
「ありがとうございます」
お言葉に甘える事にする。
リリンと出会ってから、いい人に良く遭遇する。
リリンと出会う前は悪魔のような人ばかりであった。
そんなに私が悪いのか?
私はただ普通に夢を追いかけて居たかっただけなのに。
だが私は今本当に幸せだ。
私が必死に描いている小説を魂を共有する程応援してくれるリリンがいる。
早速私が連載している小説のラストを描く事が出来て感無量だ。
辺りを見渡してみると店から夕焼けがこぼれ落ちて夕方になっていた。
そして夕方はこのお店は居酒屋になるらしく、もう少しいたら良いのにと言われたが本当にそれは申し訳無いのでお昼に注文したお子さまランチと焼き肉定食の代金を支払って外に出た。
昨日の喫茶店のマスターといい、今日出会った定食屋の女亭主。
どちらもいい人だった。
そして今日で私の小説を完成させた。
後はこの最終回を迎えた私が書いた物語をネットに掲載するだけだ。
そして送信完了と。
「リリン、君のおかげで一つの物語の集大成を迎えることが出来た」
「何を改まった感じで我に言う?」
「だってもう僕が書いた小説のラストを書くことが出来たんだ」
「だからお別れだとでも思っているのか?」
「お別れしたくないけれど、もう僕の使命は果たされたんだ」
「何を勝手なことを言っておるのじゃ、お主の使命はこれから始まるのだ」
「使命って?」
「そうじゃ大事な使命じゃ」
その時に何か不穏な気配を感じる。
黒い車が私とリリンがいる所に止まった。
中から出てきたのは私の母親だった。
「母さんどうして?」
「雅人、雅人何だね」
母さんに会うのは久しぶりだ。
でも私の母親はろくでもない息子の為に私に保険金をかけて殺そうとした。さらに母親は自分も私に殺される為に母親自身も多額の保険金をかけた。
でも私にはもう最後の小説のラストを書いたので思い残すことはなく、観念して母親の所に行こうとすると、母親は不気味な微笑みで懐から包丁を取り出した。
私はもう殺される覚悟をするために母親の所に行こうとすると死神のリリンが、母親の持つ包丁を死神の大釜で吹っ飛ばした。
「何を血迷っている雅人よ。お主はここで終わる運命じゃない」
「でも私にはもう」
「我がついておる」
リリンの言葉に心が潤い生きる活力が沸き起こってきた。
母さんが乗っていた車からサングラスをかけた二人組が現れた、私を殺すつもりか?拳銃を取り出して発泡するや否や、リリンの手から衝撃波を発して二人はぶっ飛んで行った。
「さあ雅人よ今のうちに」
リリンは地面に大釜で円を描いて、その円の中に入って行くと、ここはどこなのか?少なくとも私が知るところではない。リリンはドラ●ンボールの瞬間移動のようにワープしたみたいだ。
リリンは疲れはてたのか?大釜を杖のように使い立つのもやっと言った感じだった。
「リリン」
リリンに近づくと、
「どうやら瞬間移動はかなりの力を要する」
「どうして?」
「この愚か者!なぜ命を粗末にするような事をする」
リリンの発言に僕が犯してきた罪が走馬灯のように頭に浮かんできた。
「自分の犯してきた罪に苛んでいるのじゃな?」
「・・・」
「人間は誰でも許されぬ罪を犯して、初めてその自分の事に気がつく生き物である」
「でも私の罪は許されない物」
「ならその事情は知らぬが我が許してやる」
そうリリンに言われて心が軽くなった感じがして、気持ちがいい。
「少しは魂に火が灯った感じじゃな」
私はリリンの元へと行き、リリンに手を触れるとリリンは、パァーと綻ぶような表情になった。
「やはり雅人の魂が我の心に燃え上がるように心が潤う」
そんなリリンを見つめると僕は本当に生きていて良いとさえ思えて来て、心のそこから込み上げてくるワクワクした感情が沸き起こる。
「大丈夫?リリン」
「見れば分かるじゃろう」
「私は生きていて良い人間なんだね」
「雅人よ。生きてはいけない生物は存在などせぬ。雅人はどうやらとんでもない連中に目をつけられてしまったな?」
「・・・」
言葉を無くして私は怖くて黙り混む。
リリンはそのうつむいた私の顔をにっこりと笑って見つめてきて、「大丈夫じゃ。雅人は我が守ってやる」
「それよりもここは?」
辺りを見渡してみると田舎町で民家が並んでいる。
それに浴衣を来た男女や小さな子が戯れていた。
どうやら私達は祭りまっただかの中にワープしたみたいだ。
「雅人よ何か分からないが楽しそうな場所にたどり着いたみたいじゃ。これはもしかしてお祭りなのかな?」
リリンの言う通りこれは祭りだ。
田舎町の商店街には出店が出ている。
「雅人よ。美味しそうな物が並んでいるぞ」
リリンは目をキラキラと輝かせて言う。
何か私も楽しくなってきた。
さっきは命を落としかけた恐怖が払拭されて、マジでテンションが上がって来た。
その時もリリンを娘と感じられて、リリンはしっかりと私の手を握る。
香ばしい焼きそばの屋台を前にリリンが食べたそうに見つめていた。
「リリンは焼きそばが食べたいの?」
「あれは焼きそばと言うのか?何か美味しそうな匂いが漂ってくる」
「じゃあ時間帯にはそろそろ夕食の時間だから早速食べよう」
「なんじゃ買ってくれるのか」
「ああ」
早速焼きそばを2つ買って、屋台は焼きそばだけでなく、それらがリリンを誘惑させた。
本当にリリンが私の子供だったら、どれだけ楽しいのだろうと創造してしまう。
でも今はリリンの事を娘だと思っていれば良い。
わたあめ、リンゴ飴とリリンが食べたい物を買い与えてやった。
そんな嬉しそうなリリンわ見ていると幸せを感じてしまう。
神社の石段に並び座って、私達はそこでボチボチさっき屋台で買った物を食べることにした。
「雅人よ。これもほれもはれもおひいぞ」
口の中に物を入れながら食べるリリン。
「ほらっリリン。食べるかしゃべるかにしなよ」
「うむ」
私はこんなに楽しんでいいのか?と疑問を抱いてしまったか、先程リリンに言われたことか頭によぎった。
『奴らか許さなくても、我は許す』
って。