それぞれの暗い過去
凜とミレイの二人に何が会ったか、リリンは二人に耳を向ける。
それは戦前に遡る。
二人は神様に誓ったらしく、人々の為になる事を約束して戦争で困っている人達に尽くせと二人は死神になった。
二人は貧しい人達に食料を与えて、過ごしていたらしい。
人々は大いに喜んでくれた。
これはある村での起こった話だ。
二人は貧しい人達に尽くして、二人は神様とまで崇められた。
二人はそれが楽しくて人々に尽くしていた。
負傷した兵隊や民に怪我を治したりして、過ごしていた。
そして戦争の時代は終わり、飽食の時代になり、食べる物も住む家も村の人々は裕福になり、二人の存在が邪魔な存在として扱うようになり、二人は仕方なく山に過ごす事になった。
「人間は都合の良いときだけ僕達を利用する」「だから僕達はやむなく山に過ごすことになったんだ」
「ふむ気持ちは分かるがのう」
「リリンお姉ちゃんなんかに僕達の気持ちなんて分からないよ」「そうだそうだ。さっきの人身事故と同じように人間なんて救いようもない」
さっきの人身事故かあ、確かに人間は救いようもない人間ばかりかもしれない。
「でも雅人さんと靖子さんは好き」「僕達はまた人間を信じてみようと思っている」
「お主達の事は分かった。じゃがお主達は神様に選ばれし存在であった。じゃからそれでも神様の言うことを聞くべきであった。
我も人々の迫害に会った事が山ほどある。
それでも我は神様の言うとおり、使命を果たした。
つまりお主達は神からの試練を放棄したことになる」
「放棄したくもなるよ」「僕達だって本来は人間だった」
「それでミカエルの誘惑に惑わされた」
「あの時はミカエルの言うとおり、人々に混乱を与えようとした」「でも雅人さんと靖子さんに出会って僕達は変われた」
「ふうー」とリリンは息をつき「お主達の事は分かった。雅人と靖子に出会って、心を入れ替えたそうじゃな。
ならば我は何も言わぬ、これからは人々の為に尽くせ。
それと先ほどの人身事故で出会った人間の事を悪く言うでない」
「・・・」「・・・」
黙り込む凜とミレイ。
そこでリリンがテーブルを叩いて「分かったか?」
「分かりました」「はい」
するとリリンはニコリと笑って、「よろしい」とお水を一口飲んだ。
僕と靖子さんは自動マッサージ機のイスに座りながら語り合った。
「雅人さん、人間って因果な物ね」
「確かに因果な物だよ。あの二人の話を聞いて改めて分かったよ」
「あのね、悪さをしたらカルマで良いことをするとダルマになるんだって」
「何それ初めて聞いた」
「人間はカルマの道を歩んだら、神様の天罰が下るって、うちのおばあちゃんは言っていたけれど、今思うとそうは思えなくなってくる」
「靖子さん」
「私もね雅人さんのようにいじめに遭っていた」
「靖子さんの口から初めて聞いた話だ」
「あまりこんな話はしない方が良いと思って黙っていたけれど、私をいじめた連中は私がせっかく描いた絵をビリビリに破いて捨てられたり、雑巾の水を飲まされたりと、大変な事が起こったわ」
靖子さんの過去の暗い話を聞いて、僕の胸は締め付けられそうだった。
続けて靖子さんは、
「私をいじめた連中は日頃のストレス解消にしていたみたいらしくて、いつも散々な目に遭っていたわ。
なのに連中と来たら、私の夢であった美術学校に行く成績を落とすこともしたわ。
だから私は人間不信になって通信制の美術学校に行くことにしたの。
その方が安く済むし絵を描くことに集中できたし、私にとってうってつけの学校だったわ」
靖子さんにも波乱に満ちた経験をしていたのか。
「おばあちゃんの言うとおり奴らはならなかった。連中はたいそうに一流学校に進学していったわ」
そこで靖子さんの魂を見てみると憎しみでいっぱいの色に染まっていた。
だから私は、
「靖子さん、今幸せ?」
「もちろん幸せよ。でも連中の事をたまに思い出すことがあるけれど。
でも雅人さんに私の事を知ってもらってかなり気持ちが楽になったわ。
今はわらしちゃんもリリンちゃんも凜ちゃんもミレイちゃんも雅人さんがいるから、こうして旅をしながら創作活動をしていって、ちょっと危険な事もあるけれど、とても楽しい旅をしていることに誇りに思っているわ」
その時、靖子さんの魂は明るく輝いていた。
それを見た私は、「そうだよ、靖子さんは一人じゃない。みんなついているよ」
いつの間にいたのかリリンが「そうじゃ、靖子は一人じゃない。じゃから過去の悪いことは水に流して、お主を陥れた人間は靖子が直接やらぬとも、神がそれをしてくれる」
そこでわらしが「あたし靖子ママ大好きだよ」と靖子さんに抱きついた。
すると靖子さんは明るく綻ぶように笑顔を見せてくれた。
そこで凜とミレイが「僕達も」「大好きだよ靖子さん」
「よーし、この調子でカラオケでもするか?」
「もう寝る時間じゃない」
「固いことを言わないのさあみんなこれからカラオケ大会の始まりよ」
凜とミレイが「カラオケって何?」「それって楽しいこと」
「そうよ楽しい事よ」
靖子さんの魂を見ると、何かプツリと切れるような音が聞こえたような気がした。
心配になってリリンに聞いてみると「靖子は過去の出来事を自分自身許す事が出来たのじゃ。これからまた明るい魂を堪能させて貰えるぞ」と嬉しそうに言う。
みんなが嬉しいと私も嬉しい。
一時間ぐらいしか歌えなかったが、今日も気持ちよさそうに眠りにつけそうだと安堵の吐息が漏れた。
眠りにつく時、リリンは男性用の寝室に私とともに入り私に抱きつきながら眠っていた。
「我はなあ、雅人とこうしている時間が一番大好きじゃ」
「そうかリリン、私もリリンとこうしているのが一番落ち着く」
「ならば雅人がよければ、お主の娘としていつでもかって出るぞ」
「それは良いな」
そういって今日も健康ランドで男性部屋の寝室でリリンと眠りについた。
リリンと出会った因果って考えてみると奇跡のような物だ。
この起こった奇跡を私は無駄にはしない。
いつまでもいつまでも大切にしていきたい。
眠り間際、リリンの魂が明るく光っていた。
そんなリリンの魂を感じながら眠りについた。
明日も波乱な一日になりそうだが、私達は負けない。
リリン、どこに行くの?
我の使命は果たした。
使命って何?果たしたって何?
我の魂はアメノミナカヌシの一部じゃ。その魂を返しに行くのじゃ。
何がアメノミナカヌシなの?そんな事一度たりとも聞いたことがないよ。
大丈夫じゃ雅人と靖子の二人なら何でも出来る。
「大丈夫じゃないよ!」
と私は体を起こしながら叫んだ。
周りに眠っている人は何事だと言うように私は注目の的となってしまいとりあえず「ごめんなさい」と言って謝っておいた。
私に抱きついて眠っているリリンも起こしてしまった。
「何事じゃ雅人よ」
私はリリンが側にいる事に安堵の吐息を漏らして、リリンをギュッと抱きしめた。
「雅人よどうしたのじゃ?苦しいぞ」
「ごめん。リリン私達はソウルメイトでいつでもいつまでも一緒だよね」
「その通りじゃ。何じゃ、我に対して悪い夢でも見たのか?」
「リリンが消えちゃう夢を見た」
気がつけば悲しみの涙さえ流していた。
「大の大人がそれしきの事で泣くな」
再びリリンを抱きしめた。
「だから苦しいと言っておるではないか」
「ごめん」
再び離れた。
「雅人よ安心せい、我はいつでもお主の側にいるぞ、それなら少し早いが入浴でもするか?」
時計を見ると午前六時を示している。
「そうだね。そうしよう」
私とリリンはそのまま男湯の銭湯に行った。
背中の洗いっこをして私はリリンの繊細な髪も洗ってあげている。
湯船に浸かり、リリンとこうしている時間が一番安らぎの一時だった。
「リリン、今幸せ?」
「何を急にそんな事を言う」
「幸せじゃないの?」
「我はいつだって幸せじゃ。雅人とこうして旅が出来て幸せじゃ」
「本当に?」
「お主には我がいないと何も出来ないからのう」
「そんな事はないと思うよ」
私は意地になって言ってしまった。
「何を意地になっていっておる。お主は我がいなければ何も出来ない。連中と戦う事すら出来ぬ」
「言われてみれば、そうだね」
「じゃろ」
本当に何を意地になっているんだろう。
私と靖子さんはリリンや凜にミレイとわらしがいなければ戦う事すら出来ない。
でも私と靖子さんしか出来ない事がある。
それは創作活動だ。
「じゃが、知っての通り、我らは創作活動の力を借りねば連中に立ち向かう事すら出来ないのも事実、じゃからお主達の力も必要じゃ。じゃからいつものように頼むぞ」
そう言って立ち上がり、お風呂から出て行く。
「待ってよリリン」
「何じゃお主は、子供か?」
いつまでもこうしていられるよねリリン。
私は信じているから。
****** ******
絶好のお出かけ日よりだった。
そこで靖子さんが「次は日本本土の最南端の鹿児島ね。沖縄には行かないの?」
「沖縄かあ、行って見ようか」
「まずは鹿児島に行ってからにしましょう」
そこでリリンが「沖縄は良いところじゃぞ。海は綺麗だし、新鮮な暑さが心地良い場所じゃ」
「僕達も沖縄に行ってみたい」「そこで海水浴したい」
「凜とミレイよ、遊びに行くのじゃないのじゃぞ」
「リリンお姉ちゃんだって、遊ぶ気満々じゃん」「そうだそうだ」
「なにお~」
リリンと凜とミレイが戯れている。
本当に幸せな光景だ。
しかし、連中の気配がしない。
この事をリリンに相談した方が良いかもしれない。
とりあえず、宮崎から鹿児島行きの電車に乗りに行こう。
宮崎駅に向かう途中、私はリリンに「リリン、連中の気配が全くしないのがちょっと心配なのだけれども」
「そうじゃのう、用心に越した事はない、また連中が人身事故を起こしてまで我らに襲いにかかる事も考えられるだろう。
我らの力は昨日の事で弱まっている。
そこを狙って来るはずなのにそんな気配が全くないなんておかしすぎる」
「心配性だな、リリンお姉ちゃんも雅人兄さんも」「そんな奴らが来たって僕達の力でぶっ飛ばしてしまえば良いじゃない」
「お主達には連中の恐ろしさが分かっておらぬのじゃ。昨日味わっただろう」
「昨日の分のパワーなら昨日の創作活動で取り戻したじゃないか」「そうだよ。僕達の力は僕達六人の力で得たよ」
「ふむ、確かにそうじゃがお主等は連中を侮り過ぎじゃ。でも確かにそうだな」
「何がそうなんだリリン」私が聞いてみる。
「昨日人身事故でお主が助けたパワーが舞い戻っている」
「それってどういう・・・」
「それは雅人さんの愛のパワーだよ」「あんな人間でも助けた事が恩恵に繋がったんだよ」
すると靖子さんが「良かったね雅人さん。雅人さんは優しいからね」
「優しいのかどうかは知らないけれど、良かったよ。私達がやった事が無駄では無かったんだ」
「何を言っているの、その判断を下したのは紛れもない雅人さんだよ」
優しい何て言われて私は照れてしまう。
だから私は咳払いをして「とにかく鹿児島に向かおう」
「わらしはパパが優しい事を良く知っているよ」
「もう良いよわらし、とにかく行くよ」
「うん、パパ」
優しいかあ、そう言われるとなぜか辛い気持ちになって来る。
「雅人よ、優しいと言われるとなぜか辛そうじゃな」
「もうやめてよ、リリンまで」
「悪かった」
そう言う事で私達は宮崎の駅へと向かっていった。
鹿児島へ。
沖縄に行くかどうか分からないがとにかく日本本土最南端にたどり着いた。
私達は魂向上の為にここまでやってきた。
さて鹿児島行きの電車に乗って、魂向上の為に創作活動を始めるぞ。
リリンと凜とミレイの魂向上にわらしの御幸に私と靖子さんは凄く捗る。
何だろう。どんな波乱でもドンと来いと言った感じになってくる。
聞いた事がある。読者は筆者に調子に乗って、小説を書いてもらいたいと。
だから私は調子に乗って貰わせている。
調子の乗らない物なんて駄作だ。
メモリーブラッド第四巻魂を明るく向上させながら書いていく。
今回は明るい力で主人公のメグが人々を助けて行く物語だ。
凄い、これほどの力で私と靖子さんの調子が沸いてくる。
手が止まらない。次から次へとアイディアが浮かんできて、私の手は止まることを知らない。
そんな創作活動をしている私達にメモリーブラッド主人公のメグが現れた。
「あなた達大変よ」




