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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
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双子の死神

「ちょっと靖子さん」


 キスをされて動揺する私だった。


「雅人さんは私の事を愛しているのね」


「・・・」


 そんなこっぱずかしい事を言われて、私は辺りを見渡して誰も見ていない事に安堵の吐息を漏らした。

 しかしここにはリリンとわらしが側にいる。


「お主達あつあつじゃのう」


「ママとパパ、キスしている。あたしにもキスして」


 わらしがだだをこねる。


「わらしちゃんも愛しているよ」


 と靖子さんはわらしにキスをする。

 そんなわらしと靖子さんを見て、改めて私にキスしたことに胸がキュンとした。

 私は幸せ者だ。こんな美人な女性と結婚が出来て。さらに私のパートナーとしてイラストを描いている。


 そこでリリンが「お主等ばかりズルいぞ。我にもキスしておくれ」


「靖子さん。リリンにもキスしてあげて」


 私が靖子さんに頼むとリリンは「我は雅人とキスがしたい」


「ええええええっ」


 リリンは女性だ。しかも私の娘として一緒にいる。

 そんな娘にキスをしたら幼女虐待になってしまうのかもしれない。


「いいんじゃない?リリンちゃんとキスするの」


「えええええええっ、靖子さんもそう言うの?」


 私は靖子さんが否定してくれることを期待していたのに。


「雅人」


 リリンはそう言って小鳥のように目を閉じて唇を差し出した。

 息を飲む私、仕方がない、唇を重ねるのに別に減るものではないので私はリリンとキスをした。

 靖子さんと同じようにキュンとしてしまった。


 リリンはにっこりと笑って私の座席の隣に座り、私に寄り添った。

 

「靖子さん、本当にリリンはかわいい奴だよな。それにわらしも」


「それはそうよ。私達の子供なんだから」


「さて、この話はここでおしまい。前原さんからもらった原稿に目を通しておこう」


「そうね」


 メモリーブラッド第三巻の原稿を見てみると、多少の字の間違いはあったが、修正されている程度だった。

 どうやら今回は大丈夫だな。


「さて、メモリーブラッド第四巻の続きを書いてしまおう」


 熊本までまだ、時間はある。

 その間にリリンの魂を共鳴しわらしの後光で物語がスムーズに進む。

 靖子さんの方を見てみると、真剣に取り組んでいる。

 まだだ。まだまだ面白い小説が書けそうでテンションが上がる。

 これもリリンの魂共鳴とわらしの後光のおかげだろう。

 四巻にはリリンを登場させようか考えた、それにわらしに靖子さんに私。

 私達は旅をしながら小説を描いている。

 まるで松尾芭蕉みたいな者だな、私達は。


 時間を早めるのは忙しさなのかもしれない。

 私達は夢中になっているうちに、終点の熊本駅にたどり着いた。


「もう、到着しちゃったみたいだね。これからが良いときなのに」


「本当だね。後で雅人さんの小説を見せてくれる?次のイラストの参考にするから」


「うん良いけれど」


 時計を見ると午後二時を示している。


「やっと到着したようだね、リリン達」


 どこからか幼い女の子の声が聞こえてきた。

 声の発信源に目を向けると、黒い外套を身にまとった二人組が現れた。


「お主等は凛とミレイ、何故こんな場所にいるのじゃ?さてはまたいたずらをしに我らの所までついてきたんじゃあるまいな」


「僕達はミカエル様に使えし双子の死神さ」


 そこで私が「ミカエルと言ったな、お前達は何をたくらんでいる」


「たくらむ?僕達は君達とこの町の人達の憎しみを奪いに来たのさ」


「そうはさせない。メグ」


 そう言って本からメグを召還した。


「また、キーレンドの麓に小奴らと共に移動しろって言うんでしょ」


「頼む」


「私達は凛とミレイと共にキーレンドの山の麓まで連れていってくれた」


「ここが君達の墓場となるところだね」


 凛かミレイか分からないが私達を挑発している。


 すると二人の間に一つの杖が現れた。


「それは魑魅魍魎達を地獄から呼び出すスミスの杖・・・・止めろ、そんな事をしたらお主達もただじゃすまなくなるぞ」


「僕達は大丈夫、敵の心配よりも自分の心配をしたらどうなのリリン。この杖は魑魅魍魎達を操る杖でもある。

 さあ、スミスの杖よ魑魅魍魎達を地獄から召還したまえ」


 するとスミスの杖がドスグロいオーラを放ち、地獄のおぞましい魑魅魍魎達が私達を襲う。


「リリン」


 刀になってくれとアイコンタクトを取る。


「分かっておる」


「わらしちゃん」


 靖子さんもわらしにアイコンタクトをとって弓になってくれと言う。


「うん」


 地面から地獄に言うような一つ目の怪物達が私達を襲う。


「そいつをぶっ殺してよ」「粉々にしちゃって」


 二人は物騒な事を口にする。


 とにかく地獄から召還された魑魅魍魎達と戦う羽目になってしまった。


 でもそんなに強くはなく、以外ともろい。

 でも数が多すぎる。

 あの二人が持つスミスの杖を破壊しないといけない。


「こいつ等うようよと出てきてキリがないわ」


「このままでは魑魅魍魎達の餌食となってしまう。

 あのスミスの杖を破壊しなければ」


 そう思っているやいやな、スミスの杖が破壊されてしまった。


「スミスの杖が破壊されてしまっている。何が起こったのだ?」


 そこでリリンが「あの愚かな二人がスミスの杖を乱暴に扱ったからじゃろう。それにあの双子が危ない」


 戦いながら二人の様子を見てみると、二人もなかなか強く、魑魅魍魎達と戦っている。

 でもあのままでは私達は愚かあの二人までもが魑魅魍魎達の餌食になるのは時間の問題だ。

 自業自得だと思ってほおっておこうかと思ったが、私も何を血迷っているのか?二人を助け出すために、地面から次々とわき出てくる魑魅魍魎達をケチらしながら二人の方へと進んでいく。


「大丈夫か二人とも」


 すると魑魅魍魎の牙が凛かミレイかどちらか分からないが、鋭い爪で裂かれようとした時、間一髪、助けることは出来た。


「大丈夫じゃないよ。僕もミレイも殺されてしまうよ」


 そこでリリンが「自業自得じゃ後で仕置きを覚悟せい」


 杖の効果が無くなっても、なお地面から大量の魑魅魍魎達がわいて出てくる。


「どういう事だ?杖が破壊されたというのに、魑魅魍魎達は一向に減らない」


「どうやらミカエルの奴、この双子の死神を我らと共に抹殺するつもりじゃな」


「なんて惨いことを」


 自業自得とはいえ凛とミレイは抱き合いながら泣いている。


「リリン、このままじゃ埒があかない、何か方法はないか?」


「この魑魅魍魎の大群を防ぐのはしばらく続きそうじゃ」


「私も体力が・・・」


 靖子さんの方を見てみると、弓を放ちながら苦し紛れに戦っている。


 このままでは私達はお陀仏だ。


「本から抜け出すと言う手はないか?」


「それはまずい、本から抜け出せば、魑魅魍魎達も表の世界に放り込まれてしまう」


 くそ、これじゃあ八方ふさがりだ。


 私達は戦っている。


 魑魅魍魎達は次から次へとわいて出てくる。


 そこで上空から、光をまとったメグが現れた。


「苦戦しているようね」


「メグ、助けてくれ、何か方法はないか?」


「この魑魅魍魎達は私の聖なる炎で焼き尽くすことが出来る。でもそれはミカエルの聖なる力の糧になってしまう」


「もう何でも良い、こいつらを何とかしてくれ」


 するとメグは人差し指から白い炎をともしてそれをキーレンドの麓まで落とした。


 その白い炎が地面に落ちた瞬間に私達もろうとも炎に焼き尽くされる。


 その白い炎に焼き尽くされた時、私達は何ともなく、魑魅魍魎達を焼き付くした。


「この炎は聖なる炎、邪悪な者のみを焼き付くす」


 魑魅魍魎達は「うおおおん」と断末魔を上げて焼き尽くされていく。


 終わった。やっと魑魅魍魎達をメグのおかげで一掃できた。


 凛とミレイも無事だ。それに靖子さんとわらしも。


 リリンは刀から元の姿に戻り、私に「なぜメグに聖なる力を許可した。これではミカエルの力が増すばかりじゃ」


 そこで靖子さんが「仕方のない事だよ。あのままだったら私達は魑魅魍魎達のお陀仏になっていたに違いはないのだから」


「あの聖なる力はとてつもない力を秘めていた。これもミカエルの計算のうちに入っていたのか。してやられた」


 そこでリリンは凛とミレイに目を向けて、凛とミレイは「ごめんなさい」と泣きながら謝った。


「このバカたれ共が」とリリンは二人の頬を叩く。


 半分は叱りのビンタで、半分は八つ当たりのビンタだ。


「リリン、それくらいにしておきなよ。反省している者に叱っても意味なんてないよ」


 私の描いた物語の主人公のメグが私達の所に降りたって。


「大丈夫?あなた達?」


「大丈夫な訳あるか!どうして聖なる炎を発動した。これではミカエルの思惑通りになってしまったじゃないか!」


「仕方がないよ。あのままだとあなた達、みんなお陀仏になっていたよ」


「くっ・・・」


 何も言い返せない状況に追い込まれるリリン。


「とりあえず、元の世界に戻してくれないか?」


 メグに頼む私。


「分かったわ」


 元の世界に戻った時は、熊本の駅だった。

 そんな時わらしが怖がっていた。


 そこで靖子さんが「何を怖がっているのわらしちゃん」


「地震」


 そう言えば熊本に数年前大きな地震があったっけ。

 わらしは東日本大震災の被害者の座敷わらしだ。


「仕方がない、場所を変えるか」


 私の提案にわらしが「大丈夫。我慢できる」


「本当に大丈夫なの?わらしちゃん」


「あたしは大丈夫」


 にっこりと笑って、わらしも大人になったなあと実感する。


 リリンは機嫌が悪そうに黙っている。


「それよりもあの二人はどうするの?」


 靖子さんがやれやれと言った感じで、言う。


 そこで私が「お前達はどうする?」


「僕達に居場所なんてないよ」「僕達も連れていってくれないか?」


「連れていくっていったって」


 リリンの目を見る。


「我はどちらでも良い」


「じゃあ、私達と共についてくるか?」


「本当に良いの?」「行くところは?」


「一応もう日は暮れかかっているし、健康ランドに行こうと思っている」


「健康ランド?」「何か楽しそうな所だね」


 そこでリリンが「お主等遊びで行くんじゃないぞ」


 靖子さんが「あの子達を連れていく前にスーパーで服の買い物をした方が良いわ。あの格好だと変に怪しまれるわ」


 そうだった。二人の格好は黒い死神の外套をまとっている。


 熊本駅近くにスーパーは存在していて、そこに子供用服売場に行く。

 この二人の外套の下には下着も身につけずに、裸のままだ。

 リリンと出会った時の事を思い出す。


「じゃあ、靖子さん、二人に適当に服を選んで上げて」


 と私が言うと「分かっているって、女の子だからかわいい服を選んで上げないとね」


 僕とリリンは、スーパーのロビーで待っていた。


 何か機嫌の悪いリリンと一緒にいると何かいたたまれない。

 リリンの魂は不安を表す青色に変化している。

 それは不安に思うよな。

 どうしようもなくなったというのに、キーレンドの麓でわき起こった魑魅魍魎達の攻防を考えるとメグの判断は正しい。

 あのままだったら、私達は殺されていた。


 何て思っていると何か不吉な予感がしてきた。


 そこでリリンが「気づいたようじゃのう、ミカエルの力がハンパなく強まっていることに」


 その予感に集中してみると、私達では立ち向かうことすら出来ないほどの力を感じる。


 リリンはその力に凄く不安に思っているようだ。


 とても大丈夫とは言い切れなかった。


 このパワー本当にハンパない。


 こうなったのもあの双子のせいか。


 丁度そんな時、凛とミレイは靖子さんとわらしに連れられ、戻ってきた。


 凛とミレイはそろって空色のワンピースに身を包んでいた。

 とてもかわいらしい姿に二人がしてきたことを憎めなかった。


 そこでリリンが「凛とミレイよ。お主等の力も必要じゃ。ミカエル打倒に力を貸してくれぬか?」


 思いも寄らないリリンの決断だった。


「もちろん」「僕達の命の恩人だもんね」


「その為にはお主等の明るい魂を向上させるのじゃ」


「魂を向上させる?」「それってどうやってやるの?」


「それは後で説明する。今は一刻を争う時じゃ、黙って我の言うとおりにするのだ」


 どうやら凛とミレイの魂はとても幼い魂だと感じがした。


 凛とミレイはリリンと同じように真っ白な髪の艶をしている。


 私はまた子供が増えるのかと、何か嬉しく思ってしまった。


 とりあえず、この死神の双子をリリンが認めてくれて良かった。


 私達の明るい魂はまだミカエルの聖なる力に及ばない。

 ミカエルは私達が聖なる力に頼れば、力は増すし、邪悪な力もミカエルの餌となってしまう。


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