唇と唇を重ねる行為は!?
私にはリリンがいる。わらしもいる。靖子さんもいる。
だから私は夢を追いかけられる。
小説家として、私は書き続ける。
それがミカエル打倒の魂向上に繋がるのだから。
健康ランドの送迎バスは長崎駅にある。
長崎駅に向かう途中にリリンが「何じゃこの聖なる力は?」
「聖なる力って、私達の敵が現れようとしているの?」
リリンに言われて私も聖なる力を感じられるようになっていた。
「このまま行くと町の皆が危ない。本の中に引きずり込むのじゃ」
私はリリンに創造主の本とペンを受け取り、メモリーブラッドの主人公のメグを召還した。
「あなた達の敵、聖なる力を持った者が現れたそうね」
「正体が定かではないが、そいつと私達を本の中に連れていってくれ」
「分かったわ」
私達はメグの手を引かれて、私が書いたキーレンド山の麓にたどり着いた。
辺りを見渡して、青い外套をまとった者が私達の前に現れた。
「お前は誰じゃ」
「ふっふっふっ、私の名前はラファエル、ミカエル様に使えし者」
外套を脱ぎ捨てて短髪で青い肌をして、白い布をまとった男がラファエル。
尋常じゃない聖なる力を感じる。
「リリン」
剣になってくれとアイコンタクトをする。
「分かっておる」
「わらしちゃん」
靖子さんはわらしに弓になってくれとアイコンタクトを取る。
「うん」
私達のオーラは赤く染まっている。
「何だこの力は?」
ラファエルがうろたえている。
「お前達は聖なる力と邪悪な力が混同しているのが源なのだろう。
私達は争いを好まない方法で力を蓄えてきた。
観念しろラファエル」
「私の聖なる力を甘く見るなよ」
手を挙げて、天に雲をたち天から槍が落ちてきた。
ラファエルは槍をとり、青いオーラをまといながら構えた。
「勝負だラファエルとやら」
私はラファエルに立ち向かい、跳躍して剣をラファエルに振りかざした。
だがラファエルは槍で受け止めて、私は一歩後ろに後退して、そこで靖子さんの矢が放たれる。
ラファエルは矢を振り払い、やはり神だけに一筋縄ではいかない。
「今度はこちらから行かせて貰うぞ」
ラファエルは跳躍して、翼をはためかせ、こちらに向かって槍で突っ込んできた。
そこでカウンターだ。
靖子さんは弓を構えて突っ込んでくるラファエルに矢を放つ。
矢は利き腕に刺さり、それでもなお矢を構えて捨て身の方法で突っ込んでくる。
「お前の負けだ、ラファエル」
私は捨て身の方法で突っ込んでくるラファエルにリリンの剣を両手で持ち私も捨て身の方法でラファエルに立ち向かった。
「私達は聖なる力にも邪悪な力にも負けはしない」
私のリリンの剣とラファエルの槍が交えた刹那、ラファエルの槍は真っ二つに折れて形成はこちら側に向いた。
「ラファエル観念しろ」
「何なのだこの力は、聖なる力よりもお前たちが持つ強大な力の方が上だというのか?」
「その通りみたいだよラファエル」
靖子さんが言う。
「私は神だ。お前達に負けるほどのヤワではない」
ラファエルは両手を広げて、天から数十本の槍を降らせた。
「ここは危険だ、森の中に避難しよう」
靖子さんにそういって、森の中に避難する。
森に避難しようとすると槍が天から降ってきて「逃がしはしない。ここがお前達の墓場となるのだ」
私と靖子さんめがけて槍を降らせているが、私と靖子さんは槍を剣で受け払い、靖子さんも弓で槍を防いでいる。
天から降る槍が止まった。
「行くぞ人間ども」
天から槍が降り注いでいたので、地面には槍が数百本の槍が刺さっている。
ラファエルはその槍を拾い二刀流の槍でこちらに攻めてくる。
「私の聖なる力を甘く見るなよ」
「リリン、奴は二刀流でこちらに攻めてくる」
「案ずるでない二刀流が一本の剣に勝るとは限らん。お主はかまわず奴に攻撃を仕掛けるのじゃ」
「分かった」
靖子さんが三本同時に弓矢を放った。
ラファエルの両手に持った槍は払ったが、天から舞い降りてきた槍を再び持って私達に襲いかかってくる。
私は跳躍してラファエルに攻撃を仕掛けて、槍は折れた者の、ラファエルは後退して、降り注いできた槍をまた両手に持ち私達に襲いかかる。
「これじゃあ霧がない」
構わず、靖子さんは同時に三本の矢を放ちラファエルの槍を打ち消したが、また地面に刺さった槍を拾い私達に今度は投げてきた。
「靖子さん危ない」
靖子さんめがけて投げてきた槍を振り払い、ラファエルは私達に向かって何本もの槍を拾い投げてくる。
「靖子さん」
「はい」
「私の後ろから離れないで」
ラファエルは移動しながら、天から落ちてきた槍を拾いながら槍を投げてくる。
「負けるわけには行かないんだ」
と叫びながら私は移動しながら槍を投げてくるラファエルに向かってリリンの剣で槍を払いながら、攻めていく。
「うおおおおおおお」
「私の剣術を防ぎながら来るとは」
「負ける訳には行かないんだ」
「下等な人間と下等な死神に私の剣術が効かないなんて・・・」
「観念しろラファエル」
ラファエルが投げてくる槍を防ぎながらラファエルとの距離を縮めていく。
そしてラファエルの懐までたどり着き、急所を外してラファエルを突き刺した。
「に、に、人間ごときにこの聖なる力を持つ私が負けるなんて・・・」
ラファエルはばたりと倒れ込み、我々の勝利だ。
そこでメグが現れて、「急所は外したの?」
「ああ、リリンの剣は人を殺すのではなく、邪悪な心を浄化する為の物」
そこでリリンが「聖なる力は浄化できない」と良いながら剣からリリンへと戻っていった。
「聖なる力は浄化出来ないか」
「もしお主が小奴の急所を射止めていたら、我はお主を殺していたかもしれない」
「そうだったのか?」
ラファエルが意識を取り戻す。
「殺せ、今私を殺さないとまたお前達を殺しにやってくるぞ」
「ラファエルよ。その聖なる力は人々を救うための物じゃ。それに何故人々を殺す物としたのだ?」
「人間など、救うに値しない愚かな生き物だ」
「我はそうは思わぬ、人間誰しも神の化身じゃ」
「人間が神だと。笑わせてくれる。お前も元は人間と聞いた、それに幼かったお前は両親を殺され、死神に転成した。お前なら我らの事を分かってくれると思ったがそれは違うようだな」
「分からぬ、人間は愚かなのが当たり前じゃ。それでもどんな愚かな人間も神の化身じゃ」
「フンッ、お前とは気が合わない。ここで私を殺せ、殺さないとまたお前達を襲いにかかるぞ」
「ラファエルよ、いつでも我らはお前がその気なら、襲いかかってくるが良い。それでも我らはお主達に負けはせぬ」
「フンッ後悔しても知らぬぞ」
ラファエルはキーレンドの山の麓から消え去っていった。
そこでメグが、「さあ、あなた達も物語の世界から出ましょう」
「そうだね」
私達はメグの手を取って、元の世界に戻った。
戻った所は私達が長崎駅の前だった。
そういえばここで健康ランドの送迎バスを待っていたのだった。
リリンが「あの限りなく神に近いラファエルを圧倒するとは我らの力が大分増してきたみたいだな」
「これも私達の創作活動で魂を向上させた結果だね」
「そうじゃな。じゃが油断は大敵だ。お主達も肝に銘じる事じゃな」
「分かっているよリリン」
そして健康ランドの送迎バスが来た。
私達は乗り込み、すぐに到着した。
リリンが「ラファエルの戦いでみんな疲れているそうだから、今日は創作活動は止めにしよう」
「リリン、私は創作活動をしたい」
「私もよ」
「こんな楽しい事をおろそかにしたくない」
「我もそういうと思っていた。じゃあ、今日も二人の創作活動の魂を堪能させて貰うぞ」
健康ランドに入り、いつものようにリリンは私と同じ男の湯に入ってきて、私達は服を脱ぎ早速俗湯に入っていた。
私はいつものようにリリンの繊細な白い髪を洗ってあげてついでに背中を流した。それを順番にやって、湯船に入った。
「気持ちが良いのう」
リリンはババ臭いことを言う。
本当に気持ちが良い。
それよりも今日戦ったラファエルは、生きていればまた襲いかかってくると言っていた。
リリンは命を絶ったら私を殺していたと言っていた。
でもあの時とどめを刺しておけば、もうラファエルに襲われることはない。
そこでリリンが「何をそんな迷った魂をしておる。さしずめお主はラファエルを殺しておけば良かったと考えておったな」
「うん。そう思っていたよ」
「たわけ!我の力は人を殺すのではなく人を生かすための物じゃ。その事を忘れるでないぞ」
リリンに叱られて思わず「はい」と敬語で返事をしてしまった。
お風呂から出て私達は男性用の寝室で小説を描いていた。その側で私が小説を書く意欲を魂向上にリリンはつとめている。
ラファエルは言っていた。下等な人間に下等な死神だと、それでも魂の向上をしていればどんな相手でも怖くはないと思えた。
私達は魂向上の為に私とリリンは共鳴しあっている。
グングンと魂が向上する。
さてそろそろ眠るとするか。
****** ******
朝になり私は朝風呂にリリンと共に入った。
「朝風呂は気持ちが良いのう」
「本当だねリリン」
「今日はどこに向かう?」
「それは靖子さんと話し合って決めるよ」
お風呂から出て、服を着て、フロアーに行くとすでに靖子さんとわらしはいた。
「もう二人とも遅いよ」
「ごめんごめん、朝風呂が気持ちよくて」
「まったく仕方がないわね」
「それより、次はどこに向かう?」
「熊本に向かおうと思うんだけど」
「熊本かあ、私行ったことないんだけど」
「私もないよ、とりあえず旅をしながら創作活動をして、魂の向上をしに行こう」
健康ランドの送迎バスに乗って長崎駅に到着した。
ホームに向かい熊本行きの電車に乗っていく。
熊本の事を靖子さんがスマホで調べてみると、海のサチやらで高い物ばかりだと言っている。
でも駅前に健康ランドの送迎バスが出ていることで、私達は熊本の健康ランドに行くことにした。
印税は山ほどあるが財布の紐は靖子さんに握られている。
とりあえず、電車の中で創作活動をして魂向上につとめている。
本当に創作活動は楽しい。
魂向上がこんなに楽しいのは幸せな証拠。
そんな時、私のスマホに電話がかかってきた。
着信画面を見てみると編集者の前原さんだった。
「もしもし雅人です」
「メモリーブラッド第三巻明後日発売が決まりました」
「そんなに早くからですか?」
「ええ、ファンの人たちは待ちに待っています」
また私達の偽物が別の物語を前原さんに渡したんじゃないかと疑い、私は「前原さん。一応私が送った原稿を私に見せてくれませんか?」
「別に構いませんがそんな事をしてどうするんですか?」
「ちょっと事情がありまして」
「分かりました、電話を切った後に発売される原稿をお送りします」
「よろしくお願いします」
そう言ってスマホの通話を切った。
そこで靖子さんが「もう偽物は現れないんじゃないの?」
「いや念のために」
以前、私達の偽物が現れて、戦う羽目になり、靖子さんの命を失いかけた事がある。
もうあのような惨劇はゴメンだ。
そしてメールが入ってきて、メールには添付されたファイルがある、それが私達が描いたと思われるメモリーブラッド三巻だろう。
でもまだ見ていないから分からない。
その前に前原さんからのメールの内容を見てみる。
『メモリーブラッド三巻の原稿のメールです。
少しこちらで誤った箇所がありましたので修正させていただきました』
と。
前原さんの言うとおり、多少の修正は仕方がない。
早速原稿を見てみると、添付ファイルを開くと表紙に靖子さんのイラストが見受けられる。
内容を見てみると靖子さんの挿し絵と共にこれは間違いなく私達が描いた小説だと思った。
「どうやら問題はないみたいだ」
「神経質になりすぎなんじゃない?もう私達の偽物は現れないよ」
「分からないじゃないか、あの時靖子さんが殺されかけたときの私の気持ちも考えてよ」
「雅人さん・・・」
そこでリリンが「雅人よ不安な魂をしているな。まあ少しぐらい不安な気持ちも良いアートを作るスパイスになるじゃろう」
すると、靖子さんが私の隣の席に座って、私の右手を靖子さん自身の胸に当てる。
「雅人さんって優しいんだね」
靖子さんは穏やかに微笑んで私を見た。
「優しいって言うか、あの時は大変だったんだから」
すると靖子さんは私の唇と靖子さんの唇を重ねた。




