表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
47/56

不安や悩み事はつきもの。

 リリンの魂は何か不安な感じになっている。


「うん。見えるよ、リリン、何か困っていることはない?」


「何か妙な胸騒ぎがする」


「妙な胸騒ぎって?」


「分からん。我もお主たちと楽しくやり過ごしたいが、何か解せぬ」


「だったら楽しくしようよ。その方がリリンだって魂の向上に繋がり、まさに一石二鳥で創造主の本とペンも向上して一石三鳥じゃん」


「まあ、言われてみればそうじゃ」


「だったら楽しもうよ」


「ふむ、それじゃあフードコートに靖子とわらしを呼び出せ」


「分かったよ」


 私とリリンは女湯の前で靖子さんとわらしが来るのを待っていた。


 すると数分後「あらお待たせ」靖子さんはわらしと共に女湯から出てきた。


 私達はリリンとの話し合いでフードコートの客席に向かった。


 早速フードコートの客席に座り込みリリンが言う。


「最近、お主達の向上する魂を見て、何か不安な感じがしてのう」


「リリン、不安とか口にしちゃダメだよ。こっちまで滅入ってくるから」


「それはそうかも知れぬが、お主達も少しは警戒した方が良さそうじゃ」


「なるほどね」と靖子さんは言って「少しは警戒をした方が良さそうだね」


「私もそう思った。確かに少しは警戒した方が良さそうだね」


「お主達分かってくれたか」


「今度ミカエルの奴が攻めてきたときに警戒は怠らない。

 でも奴らは突然現れる」


「それもそうじゃ、テンションアゲアゲな状態で戦いを挑まれた時、お主達は戦えるか?」


「確かにそれは不謹慎かもしれないけれど、私達は負けない。負けるわけにはいかない。

 だから楽しく創作活動をして魂向上に努めるしかない」


「なるほど、それもそうじゃな。我はちょっと真面目に考えすぎていた」


 そこで靖子さんが「まともな感覚からはとびきりのイラストは浮かばないわ」


「私も靖子さんに賛成」


「全くお主等は・・・」


 やっと笑ってくれたリリン。


「リリンの魂が見えたけれど、少しばかり不安な色をしているけれど、大分落ち着いてきたね」


「どうやら雅人の言うとおり楽しくテンションをあげて進んでいった方が良さそうじゃな」


「そうだよリリン。靖子さんの言うとおり、魂が曇っているととびきりのアートは生まれない」


 そこでリリンは手を叩いて「よし、我もテンションをあげて、奴らに負けないくらいの力を蓄えようじゃないか」


「その調子だよリリン」


 そこでわらしが「あたしも楽しい方が良い」


 まともな感覚からは素晴らしいアートは生まれない。


 ここで調子に乗ってフードコートでご馳走を頼もうとしたが、靖子さんに「調子に乗りすぎよ、今日はスーパーで買い物をしたばかりでしょ」と叱られて、私達はラーメンを食べることに。


 男性用の寝室で私は凄いテンションで小説を書き始めている。

 リリンが側にいて、リリンは私の魂を堪能して力を蓄えている。


「どうやら我は少々深読みをしてしまったようじゃ。このように楽しくやる事が魂向上に向かっている。

 気持ちが良いぞ雅人よ」


 そうだ。楽しくやる事に意味がある。

 何をして喜ぶのか?私は小説を書くことで喜びを得ることが出来る。

 書くのが面倒だとか思うときもあるが、それでも一つのアイディアを広げていくうちにとびきりのアートが生まれる。

 私は書きたい。小説を私から奪ったら何もなくなってしまう。

 そんなのは嫌だ。

 私の小説を読んで貰って一人でも多くの人に夢と希望を与えられる小説家になりたい。


「フー」と一息入れてリリンの方を見る。

 リリンは気持ちよさそうに目を閉じて眠っている。

 私もそろそろ眠ろうと思ってリリンの寝顔を見つめながら、私も目を閉じて眠った。




 ******   ******




 誰かが私の頬を叩く。


「雅人よ起きるのじゃ」


「リリン」


 寝ぼけ眼をこすって、「どうしたのこんな朝早くから?」


「朝風呂に行くぞ雅人よ」


 私は大きく背伸びをしながら欠伸をした。


「朝風呂ね」


 リリンは私と共に男湯に入り、体を交互に洗って湯船につかった。


「朝風呂は気持ちいいね」


「今日はどうするのじゃ?」


「第二の原爆が落ちた長崎に向かおうと思っている。リリンは広島の原爆が投下された事を知っているのだろう。それに一人でも多くの人を救おうと必死になったみたいじゃないか」


「長崎の時も我は一人でも多くの人を助けられないか、行ってみたよ。あの時も人々は原爆の熱い炎に包まれ八万人の犠牲者が現れた」


 もの悲しそうに、リリンの魂が悲しみを帯びた。


「それで誰かを助ける事は出来たの?」


 リリンは目を閉じて首を左右に振る。


「行かない方が良いかな?」


「行こう、長崎へ」



 ******   ******



 健康ランドを出て私達は第二に原爆が投下された長崎へと向かう。


 長崎に向かう電車の中、リリンの魂は悲しみを帯びていた。

 私はリリンの手を掴んで、リリンは「雅人」私はリリンにニカッと微笑んだ。


「ふん。我もお主に気を使われる事になるとはずいぶん落ちぶれてしまったようじゃのう」


「あはは、それでこそリリンだよ」


 リリンが元気を取り戻したことだし私と靖子さんは創作活動に勤しんだ。

 そうだよ。リリンは笑っていた方が良いに決まっている。

 そうしないと私達の魂の向上が滞ってしまう。


 そして電車は長崎の駅へ到着した。

 町の通りには路面バスが走っている。

 原爆が投下された場所に平和記念公園と言う公園があるらしい。

 そこに向かって、私達は学ばなければならない。そうすれば私達の創作意欲がわき起こるからだ。

 それにそれだけではない。


 平和記念公園に到着して巨大な青い像を見つけた。

 目を閉じて一方の手を天に指し、もう一方の手を水平にしている。

 これらも平和を強調する意味が込められているのだろう。

 私も子供の頃歴史で勉強したことがある。

 戦争は悲しみしか生まない。

 それに戦争の発端は正しさにあると私は思う。

 どちらが正しいか、勝った方が正義なんて間違っている。

 この事も私の小説に組み込みたい。

 今、どこかの国でもどちらが正しいか戦争が勃発している。

 どちらが正しいかではなくどちらが楽しいかにかければ戦争はなくなるんじゃないかな。

 でもそう甘くはないだろう。

 だから私は小説を書き続ける。

 一人でも多くの人が私の小説を楽しんで希望を持てるように出来たら。


 そして平和公園を後にして私達は喫茶店を探す。


 靖子さんがスマホで喫茶店を探している。


「この辺にあるはずなんだけれどもなあ」


 あった。


 外観は綺麗で外からもパラパラと人が見受けられる。


「今日はここの喫茶店で創作活動を始めよう」


 そういってみんなは賛成してくれて、コーヒーのほのかに香る喫茶店へと入っていった。


 丁度四つ相席が空いていて私達はそこに座った。


「さて注文しましょうか」


 そう靖子さんが言うと、若くて綺麗なメイド服のようなものを着た女性店員さんが、「いらっしゃいませ。お水とおしぼりです。ご注文が決まりましたら、呼び出しボタンを押してください」そういって、私は綺麗な女性だなと思ってその女性に釘付けになってしまった。


 すると靖子さんは「雅人さん何を見ているの?」顔は笑っているが、靖子さんの魂が真っ赤に染まって怒りを露わにしている。


「何も見ていないよ」


 靖子さんは目を細めて「何かいやらしい事を考えていたでしょ」


「そんな滅相もない」


「ふーんどうだか?」


 やばい機嫌を損ねてしまったかもしれない。

 蟠った気持ちで創作活動をすると支障が出てしまいかねない。


 そこでわらしが「パパの浮気もの」と言って私は「うるさいよ。私が靖子さん以外の人を愛する事はないよ」


「本当かな?」


 ギロリと疑惑の視線を私に向けて、私は蟠ってしまった。


 すると靖子さんは「まあ、良いわ、男の人ってスケベだからね」


 そこでリリンが「お主すけべえの烙印を靖子に押されてしまったぞ」


「あーもう良いよ。私はすけべえですよ」


「あーあーすねちゃった。すねた雅人さんもかわいいよ」


 私は頭に血が上り、「ちゅ、注文したら始めるよ」


「はいはい。分かりましたよ。始めましょうスケベ大王さん」


 リリンが「あっはっはっ、スケベ大王か。面白いことを言うのう靖子は」


「リリン、怒るよ」


「すまぬすまぬ」


「じゃあ今度こそ注文をしたら始めるよ」


「分かっておる。こうして雅人の創作意欲の魂はとても気分が良い、我の魂向上に繋がるからな」


 靖子さんは呼び出しボタンを押したら、だっとのごとくその綺麗な女性は現れた。

 私は見ないようにしてメニュー表で顔を隠した。

 またスケベ大王の烙印を押されたらたまったものじゃないからな。


「じゃあ、アイスコーヒー二つにスペシャルサンデーパフェを二つ」


「かしこまりました」


「さて、始めましょう」


 と靖子さんは言う。


 靖子さんはスマホを取り出して私はポメラを出して早速創作活動に入った。

 この時間が私にとって楽しい一時だ。

 リリンが私に寄り添い魂の向上をしていて、わらしが私達に後光を浴びて楽しさが百倍になった気持ちだ。

 これならメモリーブラッド第四巻も期待できそうだ。


 そこで靖子さんが「出来たよ、メモリーブラッド第三巻のイラストが」


「本当に?」


 早速イラストを見せて貰う。

 一目見て私は「凄い、これなら三巻もきっと売れるよ」


「早速、前原さんにメールで第三巻の小説とイラストを送ろう」


「そうだね」


 早速ポメラのデーターであるメモリーブラッドの第三巻を靖子さんのスマホに転送して、イラストと共にメールで前原さんに送った。


 十分後に前原さんから連絡が来て、私はスマホに出た。


「もしもし前原さんですか?」


「はい、前原です」


「今度はちゃんとメモリーブラッド第三巻がイラストと共に届きましたよね」


「はい、届きました、少し拝見させて貰ったんですけれども、これはネットで公開した続きになっていますね」


「それが何か問題でも」


「これは読者に申し訳が立たなくなってしまいますので、今回は電子書籍として発売と言うことにしたいのですがよろしいでしょうか?」


「お願いします」


 と何の迷いも無く前原さんに伝えた。


「じゃあ、今後ともよろしくお願いします」


「こちらこそ、では」


 通話が切れた。


 そこで靖子さんは「で?どうだったの?」


「今回は私達の偽物が描いた小説が文庫化された一件があってか、今回は電子書籍として発売される事になったよ」


「あの時は大変だったものね、偽物の私達が現れてねえ」


「本当だね」


「今回はそんな事が無いようにしないとね」


「私達は本当に狙われている身なんだからね」


「そうだよな。私達は狙われている身なんだよな」


 そういって、心が少しだけ重くなった。

 ダメだ。そんな魂ではまたリリンに心配かけてしまう。

 とにかく私は大丈夫と連呼して、自分の魂を落ち込ませないようにした。


 そこでリリンが「それでこそ真の創造主じゃ。自分の魂の機嫌をとれぬような奴はろくな奴じゃないからな」


「リリン」


「雅人よ成長したな」


「さて、もう一踏ん張りじゃ、雅人よ創作意欲の魂を我に感じさせておくれ」


「分かっているよリリン」


 創作活動を進めて行って気がつけば、空は暗く染まっていた。


「もう十月だからな、六時を過ぎるともう外は真っ暗だ」


「そろそろ頃合いね」


 と靖子さんは言う。


「じゃあ、長崎の健康ランドに行こうか」


 私が言うとみんな賛成してくれた。


 それとリリンの言うとおり、本当に静かすぎる。

 私まで少しだけ不安になってしまった。

 ダメだ。そんな心意気じゃあ、みんなに申し分がたたない。


「雅人よ、我もそうじゃが、人間は完璧な生き物ではない。不安におぼれるときもある。

 特に我々みたいなミカエルと言う上級の大天使に狙われているとあってはな。

 じゃから不安な気持ちも時には必要じゃ」


 楽しいだけじゃない。不安な気持ちにも苛まれる事があるのか?

 お釈迦様は言っていた。

 悩みを打ち消そうと難行苦行しても悩みはなくならない。よってお釈迦様は悟った。


 そうだ。悩みは付き物だ。

 生きていれば必ず何かしらの問題に繋がる。

 それは人間にとっての定めみたいな物だ。


 昨日リリンが調子に乗るなと言っていたが、本当にそうかもしれない。

 でも調子に乗らなきゃ、良い小説も良いイラストも描けなくなってしまう。

 そういう時どうすれば良いのか?


 色々と考えているとリリンが「じゃから我や靖子にわらしがついておるのじゃ」と私の心を読んだらしくそういった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ