レッドドラゴン
第二関門の扉を開けて私達は最後のステージ第三関門の扉へと向かう。
第三関門の扉は頂上付近でモンスターも強く、座敷わらしの力を借りて行かなければ突破出来ない。
「ファイヤーバードだ。奴は高熱の炎を出す」
「貴様等相手に手こずっている場合じゃない」
リリンは大釜を召還して倒す。
鈍器を持ったゴブリンの軍勢もリリンと座敷わらしがけちらす。
「頂上付近に到着したが、空気が薄くなっている」
「そういう設定にしたっけ?」
「頼りない作者じゃのう」
このメモリーブラッドを書いた私でさえ内容を忘れている。
それよりもゴブリン達の軍勢が押し寄せてくる。
ここで主人公のメグは雑魚を無視して、強行突破をしたのを覚えている。
それにこのゴブリンもファイヤーバードのデザインは靖子さんによるものだ。
さすが靖子さんって感心している場合じゃない。
早くゴブリン達を無視して強行突破だ。
先頭にリリンと座敷わらしで、私はその後に続いた。
だがしかし、強行突破をしようとしたところ、ゴブリンのボスのボブゴブリンが現れた。
「確かメグはこ奴にも苦戦を強いられたと描かれていた」
そうだった。このボブゴブリンを倒さなくては第三関門の扉に到着するのは無理だ。
「リリン」
剣になってくれとアイコンタクトを取る。
「分かっておる」
ここはもうリリンに武器になってもらい、ボブゴブリンを倒さなくてはゴブリン達の軍勢は退かない。
つまりこの親分のボブゴブリンを倒せば、ゴブリン達の形成が崩れる。
ボブゴブリンの弱点は心臓だ。
ベヒーモスやスキュラと比べれば対して強くはない。
「行くぞボブゴブリン」
リリンの剣を持ち、すかさずボブゴブリン懐に素早く入り、心臓を貫いた。
私たちの勝利だ。
ゴブリン達は親分のボブゴブリンを倒され、形成が乱れて、みんな退散していった。
「そろそろ第三関門だ」
私達は走っていく。
そこには第三関門のラスボス、赤いレッドドラゴンが大きな翼をはためかせて飛び、高熱の炎を吐き出してきた。
この高熱の炎は一万度の温度で、たとえリリンのケッカイでも、防ぐことは出来ないだろう。
もうレッドドラゴンの攻撃をよけるしかない。
だがその時、座敷わらしがその高温の炎を後光で防ごうとしている。
「わらし、よけろ!」
私の忠告を無視してわらしは「ママはあたしが助けるんだ」と言ってレッドドラゴンの炎をまともに喰らってしまった。
「わらし!くそー!」
わらしは灰になったと思ったが、わらしは高温のレッドドラゴンの炎を後光で防いでいた。
そこで剣と化しているリリンは「わらしの後光ならあの赤いドラゴンの炎をまともに喰らっても大丈夫な訳か」
もしかしたら勝てるかもしれない。
「雅人よ、わらしの後光の後ろに避難するのだ」
リリンに言われたとおり、座敷わらしの背後に回った。
そしてレッドドラゴンの炎は止み、私は跳躍してレッドドラゴンの首を切り落とそうとして首を狙ったが、相手は空が飛べるため、私の攻撃は回避されてしまった。
「くそー私たちが飛べないことを良いことに、空を飛ぶなんて卑怯だ」
そこでわらしが弓に変化した。
「パパこれを使って」
そうだ。弓ならばレッドドラゴンめがけて打てば攻撃は与えられる。
弓を持ったとたんレッドドラゴンはさらに空を舞い、弓では届くだろうが、狙いが定まらない。
そしてレッドドラゴンは飛びながら、炎をはいてきた。
そこでリリンがケッカイを張り防ごうとしたが、レッドドラゴンの高温な炎をまともに受けて、倒れてしまった。
「リリン!」
するとわらしが元の姿に戻り、リリンの手当をしている。
するとリリンは蘇るように立ち上がり、まだまだ行けそうだ。
レッドドラゴンの攻撃をよけながら、私たちは作戦を考え出す。
「雅人よ。レッドドラゴンは炎を吐くときに止まる。それでその炎をよけながらわらしのホーリーアローでやっつけるのじゃ」
「分かった。リリンは下がっていて」
レッドドラゴンは空を舞いながらこちらにいつ攻撃を仕掛けるか伺っているそうだ。
そしてレッドドラゴンが炎を吐き出した時、リリンに言われたとおり、わらしから矢を受け取り、レッドドラゴンの炎を避けて、レッドドラゴンにホーリーアローを放った。
見事に命中したが、レッドドラゴンに矢ははじかれて、きいていない。
もう一度矢を放ったが、まるできいていない。
このままじゃラチがあかない。
「リリン、矢はきいていない」
「ならば雅人よ、最後の手段だ」
「最後の手段?」
「我が刀となって、我を放つのじゃ」
「そんな事をしたらリリンが」
「我は大丈夫じゃ。とにかくレッドドラゴンを倒すには我々の力を合わせるしかない」
そうだ。ここでみんなの力を合わせるしかない。
そうしなきゃ何のために靖子さんを助けるために来たのか分からなくなってしまう。
靖子さんを助けるには私達の力を一つにするときだ。
リリンは刀となって、私はそれを拾い上げたやいやな、レッドドラゴンがこちらに急接近で急降下してきた。
回避には成功したが、爆風に飲み込まれ、辺りが見えなくなってしまった。
そこに凄い熱を感じて、レッドドラゴンが炎を吐いてきた。
これはよけきれない、万事休すか?
もうダメもとで、刀と化したリリンを矢にして放った。
すると炎を裂いてレッドドラゴンに命中した。
「ウオオオオオオン」
雄叫びを上げるレッドドラゴン。
爆炎退いてレッドドラゴンの姿が露わになってくる。
刀はレッドドラゴンの翼に命中していた。
これでもう飛べないだろう。
でもまだやっつけたには至らない。
もだえているレッドドラゴンの翼に刺さった、リリンの刀を取りに行く。
わらしの後光だろうか?弓矢になってまでその効果は発揮されている。
私はすさまじいスピードでもだえ苦しんでいるレッドドラゴンに刺さったリリンの刀を取った。
そしてもだえているうちにレッドドラゴンに少しでもダメージを与えようと、リリンの刀で右片目に刺した。
さらに「ウオオオオオオン」と雄叫びを上げて、レッドドラゴンはしっぽで私に攻撃を与えようとしたが、それを回避して、私は形成を立て直してリリンの刀を矢の代わりにして、次に眉間に当てようと弓矢を構えた。
悶え苦しむ、レッドドラゴン。
命中が定まらない。
その最中、レッドドラゴンは炎をはいてきた。
すかさず私はかわしたが、レッドドラゴンは腕を振り上げて、私に攻撃を仕掛けに来た。
私はまともにくらい、地面にたたきつけられ、意識が飛びそうな程の衝撃を受けた。
レッドドラゴンは炎を吐いて間髪入れずに私に炎をはく。
「くっ」
と吐き捨てながらも、転がるように炎を回避した。
何て化け物を私は創造してしまったのか?もう少し弱い設定にしておけば良かったと後悔の念がよぎる。
でも私は負けるわけにはいかない。
飛べなくなったレッドドラゴンに接近戦は無謀だ。
何か策はないか?
大ダメージを喰らった私はレッドドラゴンの攻撃を交わすのがやっとだ。
再びレッドドラゴンは私に向かって炎を吐いた。
追いつめられた私は跳躍して炎を回避した。
しかし、レッドドラゴンは跳躍した私を見て炎をはこうとしている。
しまった。私がジャンプするのをよまれていた。
空中に飛び交った私は無防備だった。
レッドドラゴンが炎をはいて私は死を覚悟して、右手にリリンの険に左手にわらしの弓を交差させ、目を閉じた。
その刹那、レッドドラゴンの炎がリリンの険とわらしの弓が守ってくれていた。
「今じゃ、雅人、レッドドラゴンの眉間に我の険を弓矢にして、わらしの弓で攻撃を仕掛けるのじゃ」
レッドドラゴンは勢い良く私に向かって突進してきている。
私は狙いを定めて突進してくるレッドドラゴンの眉間を狙い、リリンの険を弓矢代わりにして、放った。
そして見事に命中した。
命中したのは良いのだが、ドラゴンの息の根を止める事は出来なかった。
レッドドラゴンは痛みにもだえているのか、みだらに暴れ、炎を拡散させてもだえている様子だ。
私は懇親の力を使って、暴れ乱れているレッドドラゴンに接近して、眉間に刺さったリリンの険の握り手を持ち、そのままレッドドラゴンを縦に切り裂いた。
レッドドラゴンは真っ二つになり、今度こそ、その息の根を止めた。
「やったか・・・」
倒れ込む私。
****** ******
「雅人よ。目覚めるのじゃ」
リリンの声が聞こえる。
私はゆっくりと立ち上がり、「私達はレッドドラゴンを倒した」
「そうじゃ、第三関門突破じゃ」
「そうか、靖子さんはこれで助かるんだ」
そこでわらしが「早くママを助けに行こう」
レッドドラゴンの戦いで疲労困憊だった私を回復させてくれたのが座敷わらしとリリンだった。
第三関門の扉を開いて、私達は山の天辺に位置する祠に入る。
真っ暗な祠の中、入っていくと、まばゆい光が私達を包む。
私は「聖なる光だ」と言う。
「何もんや、我の眠りを妨げる輩は?」
忘れていたが、女神は関西弁でわがままな性格に設定したんだっけ。
「あ、あの女神の接吻をいただきに参りました」
「ああん?誰だてめえはって、この物語を書いた作者じゃないか」
そこでわらしが「パパに接吻して、ママを助けたいの」
「パパって、てめえ、子供いたのかよ」
「そうだ。わらしとリリンは私の子供のような者だ」
「子供のような者って言うと、本来はてめえの子供じゃねえって事か?」
「まあ、そういう事です」
女神の圧倒的な暴言にかしこまる私であった。
「以前お前が来させたメグは、ドラゴンよりも強いあたしに喧嘩ふっかけて来たけどなあ」
「それがしゃくに障ったなら謝るよ。でも一刻を争うときなんだ。だから私に接吻してママを靖子さんを助けて上げたいんだ」
「あんたのおめでたい頭で三体のボスを倒してきたって訳か。見上げたものだね。この聖域にはメグ以外誰一人来た人間はおらんのに」
そこでリリンが「頼む女神よ、雅人に接吻をしてくれ。それで靖子を助けたいのじゃ」
「なら条件があるわ」
「条件って?」
しばしの沈黙。
無理な条件を言われたらどうしようと私は息を飲んだ。
そして女神は口を開き「あたしの出番もふやさんかい我」
「増やす増やします。だからあなたの接吻を私に」
すると女神は艶めかしい顔になり、「男と接吻するのは我は初めてじゃ」
女神は目を閉じて、唇を私に差し出した。
私はすかさずディープに接吻して、気がついたら、死んでいる靖子さんの元に戻っていた。
そこでリリンが「王子様のキスじゃ」
わらしが「早くママに接吻を」
私は靖子さんに接吻をした。
靖子さんは死んでいるからキスが冷たいが、ディープなキスをしているうちに体温が戻ってきた。
「・・・うっ」
靖子さんは気を取り戻してくれた。
「私は死んだはずなのに、生きている」
すると「ママああああああああ」とすごい勢いでわらしは靖子さんに抱きついた。
「わらしちゃん?」
「王子様のキスで靖子は蘇った」リリン。
「もしかして本とペンの力を借りて蘇らせてくれたの?」
「そうだよ。靖子さん」
「そんなとんでもない事をしたら大変な事になるんじゃないの?」
リリンは靖子さんに説明した。
「そんな大変な事をしてまで私を助けたの?」
「そうするしかなかった。靖子さんは私のパートナーであり、リリンやわらしの母親でもあるからね」
「ありがとう。リリンちゃん、わらしちゃん、雅人さん」
そこでリリンが「創造主の本とペンがこのような使い方があるとはな。
今回の件で我らは魂の向上をした。さらに創造主の本とペンが高まった。これならサタンに立ち向かえるかもしれない」
「でもリリン、油断は禁物だよ。いくらその創造主の本とペンでサタンを倒せても、また第二第三のサタンが現れるかもしれない」
「分かっておる。でもこの創造主の本とペンはまだ隠された秘密が隠されているかもしれぬ」
「隠された秘密って?」
「それは我にも分からぬ。とにかくこの本とペンは我が預かっておく」
「そうした方が良さそうだね」
「ま・さ・と・さ~ん」
と抱きついてきたのが靖子さんだった。
頬をすりすりしてきて、改めて私に小さなキスをした。
「もう靖子さん。もう良いから」
「私、今、金婚式が見えてきた」
「金婚式かあ、それまで私は生きていられるかな?」
「出来るよ。私と雅人さんだったら」
私は本当に幸せだ。




