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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
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キーレンド山の試練

「リリン、座敷わらし、過酷な試練なんだぞ」


 そこでリリンが「分かっておる。お主の小説を読ませて貰ったが、あれは凄い展開で女神の接吻を物にしたのを知っている」


「ママが助かるならあたし何でもする」


 二人は靖子さんを助けるために命を惜しまないと言うのか?


 そこで物語の主人公のメグが「覚悟があるなら三人で力を合わせて女神の接吻を物にしに行った方が効率的ね」


「さあ、メグ、物語の中に案内してくれないか?」


「良いわよ。あなた達の覚悟ちゃんと見届けたからね。

 それじゃあ、私に捕まって」


 私はメグの手を握り、もう一方の手はリリンが握り、座敷わらしはメグに抱きついた。


「行くよ。目を閉じて」


 そして「ついたわよ」


 恐る恐る目を開けると、闇の世界であり、辺りは真っ暗だが、目が慣れてきて、キーレンドの山の麓だ。

 あのキーレンドは小説の中ではもう一つの世界となっており、つまり異世界の山であり、エベレストよりも標高は高く、今まで天辺にある女神の接吻にたどり着いた者は、前回も行った通り一人となっている。


「さあ、私が出来るのはここまで、作者の雅人さんなら知っているけれど、あのキーレンドの山の天辺に女神の接吻がある」


「分かっているよ。靖子さんを助けるためなら私は命なんて欲しくない」


「私と同じ事を言うのね、作者の雅人さん」


「私が君にそう伝えたのだ。私は負けるわけにはいかない」


「そう言っていられるのは今のうちかもしれないよ」


 確かにそうだ。メグは悲痛な困難を越えて来たのだから。

 メグよりも劣る私達が登れる山ではない。

 でも行くしかない。

 これが靖子さんを蘇らせる代償なら。


 私はこの物語の作者だから知っているが、天辺まで三つの関門がある。それを乗り越えて行くのだ。


「行こう、リリン、わらし」


 二人は黙って頷く。


 まず真っ暗闇の麓から攻略していく。


「リリン、麓にはサーベルタイガーと言う魔物がいるから、そいつに気づかれないように来てくれ」


「分かった」「うん」


 するとガルルルル、サーベルタイガーのうめき声が聞こえる。


 物語上ではサーベルタイガーは人の匂いを関知して、獲物を食らう設定になっている。

 サーベルタイガーはメグならいちころだが、私たちにとっては倒すのに面倒な相手だ。


 これから第一関門のベヒーモス戦までは力を温存しておきたい。


 だが、サーベルタイガーに見つかってしまった。


 サーベルタイガーは襲ってきたが、リリンが大釜を召還して串刺しにして、倒した。


「こんな相手我の敵ではない」


 串刺しにしたサーベルタイガーを振り捨てた。


 頼もしいなリリン。


 麓の奥まで行き、第一関門の扉が見えてきた。


「よしリリン、わらし、第一関門の扉が見えてきたぞ」


「本当か?」


 第一関門の扉に近づき、私達三人で向かうと、第一関門のボスのベヒーモスが現れた。


「ガルルルルルル」


 私達の十倍はある巨体であるがこの物語の作者の私はその弱点を知っている。


 ベヒーモスは巨体で素早く、私を踏みつぶそうとしたが、間一髪でそれを回避した。


「リリン」


 剣になってくれと私はアイコンタクトをした。


「分かっておる」


 リリンは剣になり、私はそれをとり、「うおおおおお」と叫びながらベヒーモスの弱点である、眉間を狙い定めて、走り、跳躍してベヒーモスの弱点である眉間を刺した。


「がーーーーーー」


 と断末魔を上げてベヒーモスは霧散して消えていった。


 そして第一関門の扉が開く。


 リリンは剣から元の姿に戻り、「さすがはメモリーブラッドの作者じゃのう。次の相手も雅人はその弱点を知っているんじゃないか?」


「知っているさ。でも今度の相手は弱点は知っていても、やっかいな奴なんだ」


「スキュラと言ったかのう。首が八個ある化け物じゃろう」


「リリン私の物語をそこまで理解していたなんて」


「読ませてもらったよ。読むことにより我の魂の向上に繋がるからな」


「それは頼もしい」


「パパあたしの出番は?」


 わらしが言って、私はわらしを抱き上げて、「わらしには心強い私達の仲間であり、この先役に立って貰うさ」


 そして第一関門の扉が開いた。


「さてここからが大変だぞ。なんせ山から滑り落ちたら命はないからな。慎重に行くんだぞ」


 山は凍っていて地面はアイスバーンになっている。

 慎重に慎重に。


 そこにサーベルタイガーが現れた。


「くっやっかいだな。この状況でサーベルタイガーに足を滑らせたらアウトだ」


「ちょうど良いではないか」


「何を言っているのリリン」


「我は少しばかり腹が空いて追ったのじゃ」


 そうだ。私達は一日中森の中を探索していることになっていて靖子さんを助けたいばかりに空腹を忘れていた。


 リリンが大釜を召還して、襲いかかってくるサーベルタイガーを串刺しにした。


「さてこいつをどう料理して置こうか?」


 サーベルタイガーを天高く放り投げ、リリンがジャンプして、サーベルタイガーの皮を剥ぎサーベルタイガーは肉と化した。


「さてこいつをどう料理するかな?」


「私は今、火を起こす物を持っていないよ」


「じゃあ我に任せろ」


 リリンの手から火が起こり、サーベルタイガーを火焼きにした。


「さあ、サーベルタイガーの焼き肉の出来上がりじゃ」


 そういえばこのサーベルタイガーは靖子さんがデザインしたサーベルタイガーなんだよな。

 ここは物語の世界、そんな物が食べれるのかって、リリンとわらしはもう口にしておいしそうに食べている。

 私もお腹が空いているから食べよう。


「いただきます」


 口にすると凄く美味だった。


「今日はここで、休む事にしよう」


 そうだな。私もわらしもリリンも疲れているだろうし、少し休むくらいなら別にかまわぬか。


 しかし異世界は真っ暗で今が昼なのか夜なのか分からない状況だ。


 第一関門は通過したが、第二関門のスキュラは手強いぞ。それに第三関門のドラゴンはメグが瀕死になりながらも、倒した相手だ。

 でもそんな弱気では靖子さんを助けるための代償にはならない、さすがはただ一人メグだけがこの異世界の魔物を相手にして女神の接吻を受け継いだ事だけある。

 こんな事なら女神の接吻をもっと簡単にシナリオを作っておけば良かったと思ったが、それでは面白くはないだろう。






 ******   ******





「起きろ雅人よ」


 目を覚ますとリリンと座敷わらしはもうすでに起きていた。


「さあ、行くぞ」


「分かっている」


 どれぐらい眠ったのか分からないが、多少眠気は残っていた。


 私は両頬をパチンと手で叩いて気を引き締めてリリンと座敷わらしで山の頂上目指して行く。


 まだキーレンドの山は第一関門を越えた少し先に行ったところだ。

 まだまだ山頂までほど遠い。


 アイスバーンの道のりではゆっくりと慎重に歩くしかない。

 ちょっと登ったところで、数人のゾンビが現れた。


「ゾンビなら任せい」


 リリンが光の玉を掲げて、ゾンビ達は跡形もなく消えていった。


「すごいじゃないかリリン」


「我は死神じゃ、本来死神は死に行く者を導く定めがあった。とにかく感心している場合じゃないぞ、ここの第二関門のスキュラは相当に手強いと書いてあった」


 アイスバーンの道のりをゆっくりと慎重に登っていき、第二関門の扉が見えてきた。


 第二関門の扉の前にスキュラが行く手を立ちふさがっていた。


「あれがスキュラか」


「ああ八つの首を持つ怪物だ。弱点は同時に八つの首を切り落とすこと」


「メグはカマイタチと言う必殺技でスキュラの首を根こそぎ倒したと言うのだな」


「そうだよ。だからリリン」


 刀になってくれとアイコンタクトを取る。


「分かっておる」


 スキュラとの戦闘、こちら側が先制攻撃を仕掛ける。

 しかしスキュラは私達に気づかれて、同時に稲妻に炎に吹雪をはいてきた。

 見事に直撃を食らったが、リリンの刀からケッカイを張ることが出来て、ノーダメージだが、これをまともに食らったら私たちはみんなお陀仏だ。


 攻撃が止み、私はリリンの刀でスキュラの八本の首をめがけて切り裂いたが六本の首しか切り裂く事しか出来なかった。


 スキュラは同時に八本の首を切り裂かないと意味がない。

 その証拠に、スキュラは二本の首から切り裂いた六本の首が再生されていく。


「キュルルルルル」


 と同時に八本の首が雄叫びを上げて、再び、スキュラから炎と稲妻と吹雪が発射される。


 今度は危機一髪回避する事に成功したが、スキュラは同時に私達のところにそれらの攻撃を仕掛けた。


 リリンの刀でケッカイを張り、回避することが出来たが、リリンのケッカイも限界になってきた。


 次で決めないと。


 スキュラの攻撃が止み、私は「うおおおおおおお」と剣を構え、スキュラの頭部を八個すべて切り裂こうと跳躍してみたが、スキュラの頭部をすべて切り裂くことは出来なかった。

 スキュラの頭部が再生されていく。

 今度スキュラの攻撃をまともに食らったらみんなお陀仏だ。

 だがスキュラの攻撃は容赦なく続く。

 スキュラは「きゅるるるるる」と泣き、八体すべての攻撃を仕掛ける。

 炎、吹雪、稲妻を同時に仕掛けてきて、リリンにケッカイを張って何とかこらえていたが、リリンはもう限界に近づいている。


「我はもう限界じゃ」


 剣からのケッカイが解けて、リリンは元の姿に戻り、「くっ、もはや、ここまでか」


「靖子さんゴメン」


 スキュラの攻撃は続く。


「諦めちゃダメ。ママはあたし達が助けるの!」


 そうだ。座敷わらしの事を忘れていた。


 座敷わらしの言うとおり私達は諦めてはいけない。


 スキュラが私とリリンを炎と稲妻と吹雪で私達に攻撃を喰らわせそうな時、私は立ち上がり、リリンを抱いて攻撃を回避しながら、どうすれば第二関門のスキュラを倒せるか考えていた。


 どうすれば、どうすれば、第二関門のボス、スキュラを倒せるのか?


 リリンはもう瀕死の状態。


 私は岩場の陰に隠れて、僅かな時間ならここでスキュラの攻撃を避けられる。


 だがその僅かな時間すら与えてくれないスキュラであり、二つの首から稲妻を吐き出して、その岩場を粉々にして、まさに私達はまな板の鯉と言った感じになる。


 本当にここまでなのか?


 スキュラは稲妻と炎と吹雪を口から放ち、諦め、目を瞑った。


 私は何も起きない。


 何が起こっているのか?恐る恐る目を開けると、金色に光った座敷わらしが私とリリンの盾になってくれていた。


「あたしは諦めない。だからパパもリリンお姉ちゃんも諦めないで」


 座敷わらしの後光を浴び、私とリリンにもう一度立ち向かえる力を与えられた感じがした。


 スキュラの攻撃が止み力を使い果たした座敷わらしは倒れて、リリンが「雅人、最後のチャンスだ。我はまた剣になる、それでスキュラの首八本を切り落とすのじゃ」そういってリリンは剣になった。


 私は剣をとり、スキュラは炎と稲妻と吹雪を同時に発し、私はリリンの剣でケッカイを張り、攻撃が止んだ時がチャンスだと思って、攻撃の隙を狙っている。


 そしてスキュラの攻撃が止んだ。


 何だろう、力がわいてくる。


 座敷わらしの後光の力か。


 今ならやれる。


 私は跳躍して、スキュラの首八本めがけて切り裂いた。


 今度こそ八本の首を取った。


「ぐきゃああああああああ」


 とスキュラは断末魔を上げ、スキュラは霧散して消えていった。


 リリンが剣から元の姿に戻り、「まさか第二関門でこんなにも苦戦するとは、第三関門が思いやられるな」


「知っての通り、第三関門のドラゴンは半端じゃなく強いと描いている」


「このスキュラは靖子が描いたものか?」


「うん。ネットで調べてスキュラを自分でオリジナルのスキュラにするって行き込んでいたっけ」


「ところでわらしの様子はどうじゃ」


「リリンお姉ちゃん。パパ」


 座敷わらしは元気そうだ。


 座敷わらしから後光が溢れでていて、私達はその後光のおかげで体力が回復した。


 そこでリリンが「我らが力を合わせれば、ドラゴンなどいとも簡単に倒せそうな感じがしないか雅人」


「いや私が書いたドラゴンはとてつもなく強い。スキュラなんてものじゃないよ」


「前途多難じゃな。何かドラゴンを倒す作戦などないか?」


「ドラゴンは鋼鉄のように堅い体をしている。じわりじわりと攻撃を仕掛けて倒すしかない」


「そうか、なら先を急ごう」


「そうだね。靖子さんを助けるために行くしかない」


 そこでわらしが「ママはあたしが助ける」


 そして第二関門を抜け、私達は第三関門に向けて、行く。


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