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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
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偽物と本物

 前原さんが来るのは二時間後だ。

 しかし前原さんは今だに来ない。


「もう創作活動をして二時間になって、前原さんが二時間後に来るって言ってから三時間が立つ」


 そこでリリンが「心配じゃのう。その前原って言う編集部の人間に連絡してみてはどうじゃ?」


 そこで靖子さんが「そうね。心配だから前原さんに連絡してみるよ」


 靖子さんは前原さんに連絡を入れた。

 だが「繋がらないね」


 私達は前原さんが来ない事に凄く不安に思っていた。

 前原さんどうしたのだろう。まさかサタンの仕業でここまで来れないのか?


 その日はもう遅いので心配ながらも、創作活動は続けて、夜遅くまで起きて、就寝した。


 朝起きて、もしかしたら前原さんは来ているんじゃないかと思って、狸猫の健康ランド中を探したが、見つからなかった。


 もう一度私の携帯に連絡を入れたが、電話には出られない様子だった。

 試しに会社に連絡を入れたが、「前原はいらっしゃいません」と言って、相手は「いない」と言って私は「そうですか」と言って電話を切った。


 そこでリリンが「何かきな臭い」


「まさかサタンが?」


「そうしか考えられん」


「どこか道に迷っているんじゃないかな?」


 もう一度前原さんに連絡を入れてみる。


 すると出た「もしもし前原さんでしたか?」


「はい。そうですが、昨日出会ったばかりじゃないですか?何か用事でも」


「はあ?私達は昨日前原さんに会っていませんよ」


「いえ、会いましたよ、突然連絡が入り、岡山の健康ランドのドラ猫と言う所で会ったじゃないですか?」


「私達は狸猫と言いましたが」


「あれ、おかしいな、確かに靖子さんに雅人さんにリリンちゃんにわらしちゃん、みんなそろっていましたよ」


 私達の偽物か?続けて前原さんは、「それにメモリーブラッド二巻を改めてくれって言ったじゃないですか?」


「私達はそんな事を言っていない」


「それにメモリーブラッド第二巻は今日発売ですよ。まさかあんな展開になるなんて思いもしませんでしたよ」


「あんな展開って?」


「ご存じないのですか?今すぐに書店にて確かめて来たらよろしいんじゃないですか?」


「その人達は私達じゃない」


「何をおっしゃっているんですか?あなた達はあなた達ですよ。私も忙しいのですから、電話はこれぐらいにして、また後日」


 そういって前原さんは電話を切ってしまった。


 側にいるリリンが「どうしたのじゃ雅人よ」


「私達の偽物がいるみたいなんだ」


「我らの偽物じゃと?」


「早速靖子さんに報告だ」


 そうして靖子さんの所に行き、事情を説明した。


「私達の偽物?」


「サタンの奴何を考えているのか分からないが、とにかく今から書店に向かおう。僕達が考えたシナリオを変えて今日メモリーブラッドの第二巻が発売されるらしい」


 早速健康ランド狸猫から出て、岡山駅前の書店に向かった。


 メモリーブラッドの第二巻が発売されて、私はそれを購入して、読んでみると、最悪なシナリオになっていた。

 確かにインパクトはあるが、私達が描くシナリオには希望がもてるシナリオにしたはずなのに、この偽物の小説を書いたのは誰か分からないが、バットエンドに終わっている。


 読み終わったときに私は邪悪に染まる程の、衝撃を受けた。


 そこで「靖子さんが、何この小説、それにまがまがしいイラストは?」


「こんな事をしてサタンは何を考えているのだ」


 そこでリリンが「それはきっと創造主の本とペンを使えないようにするためじゃろう。

 創造主の本とペンは聖なる力が宿れば、書いた者の願いを叶えてくれる。

 しかし邪悪に染まったその本とペンで願い事を書いたらその代償は人々のエナジーを吸い取ることになる。

 何人かの犠牲が出れば、サタンの思うつぼじゃ」


「こしゃくなああああ!!」


 と私は叫ぶ。


 私達はこんな邪悪な物語を書いていない。

 いや書いてはいけない。

 こんな絶望だらけの小説では、サタンのエナジーが増すだけ。


「とにかくこの小説を書いた偽物の人物を捜そう。そしてやっつけてやろう。

 そういえば奴ら前原さんの情報によるとドラ猫と言う健康ランドにいると言っていたな」


 私がスマホでドラ猫と言う健康ランドに向かおうとしたところ。


「待て、雅人よ」


 リリンに止められた。


「どうして?」


「どういう敵かも知らずに行ったら奴らの思うつぼじゃ。

 それにお主等が書いたメモリーブラッドの第二巻をネットとやらに改めて掲載するのはどうじゃ?」


 そこで靖子さんが「そうか、その手が合ったか」と手を叩く。


「でも奴らに印税が渡ることを考えると妙に落ち着かない」


「金など問題ではない。どうすれば我々に聖なる力が宿るかにかかっている」


「リリン」


「争いは争い事しか生まぬ。そんな我々の偽物もいずれは争い事に巻き込まれて魂の浄化の為に地獄に行くじゃろう。

 お主は少し頭を冷やした方が良さそうじゃのう」


 そう言われて頭が少し冷やされた感じがした。


 そうだ。私達はお金も大事だけど、お金の事だけじゃなく、聖なる心で奴らに立ち向かうしかない。


 私達は喫茶店に入り、メモリーブラッドの第二巻をネットに掲載させた。


 その創作活動はリリンの魂向上の物となった。


 数日後、メモリーブラッドの本の第二巻と私達が掲載させたメモリーブラッドの第二巻の論争が世間で話題となった。


『メモリーブラッドはバットエンドに終わるんじゃない』


『いやメモリーブラッドはバットエンドで迎えた。あれはなかなかおもしろい内容だったよ』


『メモリーブラッド第二巻はネットの方が良い物語になっているよ』


『いやバットエンドに終わった方が面白かったよ』


 等々、世間でもマスコミにも論争が激しく激化していた。


 とにかく私達はどちらが本物か偽物かに分かれている。


 第二巻を出版した文術社の方が圧倒的に有利だ。


 しかし私達も負けてはいない。


 ネットで掲載された物は偽物と呼ぶ声が高いが、内容的に言うと、ネットで私達が掲載したメモリーブラッド第二巻の方が、希望が持てて、読み手の心を鷲掴みにして、心がほっこりするとの情報が入った。


 しかし一方、文術社が発売したメモリーブラッドはバットエンドだが、今までにないような内容で、とてもインパクトがあって、こちらが本物だと言う意見に分かれている。


 ニュースでも話題になっていた。


 レポーターによると『今話題のメモリーブラッドの第二巻が発売され、驚異的な人気にあるところ、もう一方ではネットで掲載されたメモリーブラッド第二巻がこちらも驚異的な人気を誇っています。

 いったいこれはどう言うことなのか?

 どちらが偽物でどちらが本物かと論議が交わされています』


「私達が書いたメモリーブラッドこそ本物だ」


 テレビ写るレポーターに向かって私は熱くなり、そう訴える。


「雅人さん、そんな事をしても何の解決にもならないわ」


「だっておかしいよ。私達の偽物に私達の物語をパクられて、読んだ人を絶望に陥れるような内容になっているんだよ」


 そこでリリンは私のスマホで見て「文庫化になったメモリーブラッドを読んで、面白かったけれども、何か見ていると自殺したくなる内容だったと言う意見がある。

 もう一方の雅人達が書いたメモリーブラッドの第二巻を読んだ物はとても読み手を引きつけて、生きる勇気が沸いてくるとと言う内容だったそうじゃ。

 それに文庫化されたメモリーブラッド第二巻を見た物の中で実際に自殺未遂をした者がおるそうじゃ」


「こんなの絶対に間違っている。私達の使命はサタンを倒すこと、そして一人でも良いから希望を持てるような物語を書いてきたはず」


「我らはサタンに一杯食わされたと言う事になる」


「くそっ、何か方法は無いのか?」


 文庫化されたメモリーブラッドは第二巻はメディアにも抜擢されて売り上げが四十万部を越えていた。


 一方私達がネットに乗せたオリジナルのメモリーブラッド第二巻はアクセス回数が百万回を越えている。


 さらに感想も添えられていた。


『両方読んでみたけれど、私はこのネットに掲載されたメモリーブラッドの方が面白いと思うな』


『メモリーブラッド第二巻を両方読まさせていただいたところ、やっぱりバットエンドに終わった文庫化の方が面白かった』


『今更、第二巻をネットで改めて書いて、作者は何を考えているの?』


 等々。


 まるで偽物が書いたメモリーブラッドと私達のオリジナルの内容のメモリーブラッドが拮抗している。


「こんな小説間違っている、私達が書いた小説こそオリジナルだよ」


「でもどうすればみんなを信じてもらえるかしら?」


 リリンが「このままではサタンの思うつぼになってしまう。偽物が書いた小説を読んで自殺未遂をした人間が何人かいるそうじゃからな」


 この時私は太宰治の人間失格を思い出してしまう。

 あの本を読んだとき、生きる希望も持てなくなり、自殺したくなる内容だった。

 でも私達は太宰治ではない


 私はどんな時でも、人が希望が持てるような内容で書いている。

 そんな気持ちにさせてくれたのはリリンだ。


 こんな偽物が描いたメモリーブラッドを私は許しはしない。


「そうだ。靖子さん私のツイッターで本物は私達にあると示そう」


 私はツイッターをスマホで示し、ツイッターを広げた。

 ツイッターを見たとき私はおののいた。

 私のツイッターは偽物がやったか知らないが、アクセス出来なくなっていて、主導権が偽物らしき者となっている。


 中身をざっくりと読んでみると、『メモリーブラッド第二巻をお買い上げくださいましてどうもありがとう。ネットに掲載されたのは私達の偽物がやっている事です。お間違いのないようにしてください』


 との事。


 ツイッターまで乗っ取られてしまったらしい。


 メディアには、メモリーブラッド第二巻文庫化とネットで掲載したメモリーブラッド第二巻の事で論争になっている。


 リリンが「雅人よ落ち着け、ここはもう待つしかない」


「いいや落ち着いてられないよ。靖子さん、僕たちの書いたメモリーブラッドの感想に一人でも多くの人に僕たちが本物のメモリーブラッドを書いたことを知らせよう」




 ******   ******




 一方その頃、


 真っ暗な空間の中、玉座に鏡が一つおいてあり、サタンの部下が、その前にひざまづき、報告をする。


「サタン様いかがなさいましょう」


「良いぞ。力が力がどんどん沸いてくるようだ」


「これで奴らも聖なる本とペンは使えなくなるでしょう」


「良くやった。奴らの偽物を鏡で召還して、邪悪な内容の本を出させるとはな。

 だが念には念を入れて、これで奴らを始末しろ」


「ハッ!」




 ******   ******




「どうやら、邪悪に染まったメモリーブラッドの偽物の方が、圧倒的に有利みたいじゃ」


 リリンが言う。


「ダメだよ諦めちゃ、そうなったら奴らの思うつぼだろ」


 そこで靖子さんが「一つだけ提案があるわ」


「その提案って」


「私のツイッターが残っているわ」


「それでどうしろと?」


「これに私達がネットでアップしたメモリーブラッドが本物だと言うことを世の中にしらしめるのよ」


 靖子さんのツイッターを見てみると、私のようにハッキングされていない。


「これで私達が書いた事を世の中にしらしめるんだね」


「その通り」


「さあ、やってみましょう」


『私はメモリーブラッドの作画を担当している靖子よ。今回のメモリーブラッドは文庫化された物は偽物でオリジナルはネットで掲示されたものよ。

 いや間違いだわ。実を言うと今回のメモリーブラッドは二種類あるのよ。二種類とも私達が描いたのよ」


 何て嘘をつく靖子さんに「靖子さん。そんなでたらめな事は言わない方が良いよ。炎上してしまうよ」


「そうよ炎上した方が良いわ。炎上させて、ネットも文庫化も私達が書いた事にして、私達のエネルギーにするのよ。だから今回は黙って見ていて」


『今回の私達が描いた二種類のメモリーブラッドはどうでしたか。バットエンドの方と、ネットに掲載された心ときめくメモリーブラッドはいかがでしたか?』


 靖子さんのツイッターで色々な論議が交わされている。


『えっ、あのメモリーブラッド第二巻は文庫化もネットの方も同一人物が描いたの』


『そうよ。私と私のパートナーの雅人さんと一緒に』


『バットエンドの方はいかがかしら、みなさんの心を確かめるために、文庫化して、面白い内容だったと思います。

 一方のネットで掲載した心ときめく内容だと思います』



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