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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
33/56

家族とソウルメイト

「あー食べた食べた」と靖子さんは言う。


 お好み焼きにたこ焼きにもんじゃ焼きをたらふく食べて、私達は外に出た。


 しかしこの大阪って町は凄い賑やかだな。

 時計を見ると午後十時を示している。

 本当に大阪って町は眠らない町だ。

 あちこちにイルミネーションの電灯が輝いている。


 それに犯罪のにおいもする。

 パトカーのサイレンの音が鳴り響く。


 そこで私が「そろそろ寝床を探そうか」


「雅人よ、また健康ランドとか言う所に泊まったらどうじゃ?」


「健康ランドね、まあ、お手頃の値段で泊まれるわね」


 靖子さんが言う。


「健康ランド行こう」


 座敷わらし。


 早速靖子さんに大阪の健康ランドを検索して貰った。


「送迎バスの時間は過ぎているわね」


「ここからどれくらいの距離があるの?」


「歩いて二十分くらいかな?」


「じゃあ、歩いていこう」


 座敷わらしは眠そうだったので、靖子さんがおんぶして貰った。


「大丈夫?靖子さん」


「大丈夫よ」


 健康ランドに向かう途中、何者かにぶつかり、その何者かは私の大切なポメラが入った鞄を奪っていった。


「おい。ちょっと待て」


 私は追いかける。


「待ちなさーい」「待つのじゃ」


 リリンと靖子さんも続く。


 その男の後ろ姿を除いてみると短髪で青いジーパンに上はナイキのカッターシャツを着た人物だ。


「おい。待てよ」


 そこでリリンが「仕方がない」と言って、消えた。

 いや消えたのではなく、バックを奪った男の前に瞬間移動をしたんだ。


 リリンと私達で挟み撃ちになった男。


「そのバックをよこせ、痛い目にあいたくなければな」


 私が言う。


 すると男はか弱そうなリリンに攻撃を加えようとして逃げようとしたのだが、リリンは死神で男にとって不利な事を知らない。


 リリンに稲妻を浴びて男は倒れた。


 バックを取り戻してポメラのデーターが消えていないか確認する。

 どうやら消えていない。


「こいつもサタンの回し者か?」


「いや、その気配は感じられぬが、サタンは気配を消すことも出来るからのう」


「それよりもここは静かすぎないか?」


 辺りを見ると車も走っておらず、真っ暗闇の交差点だ。


 そこで靖子さんが追いついてきた。


「ちょっと待ちなさーい」


 靖子さんは座敷わらしを背負っていて疲労困憊って感じで追いついてきた。


「ハァハァ」


 と息を切らして私達に追いついて来た。


「とられた物は回収できたの?」


 そこでリリンが、「確かに雅人の言うとおり、何かきな臭い感じがする」


「フッハッハッハッ」


 大声で笑い声がする。


「誰だ?」


 私が言うと巨体で全身に黒い外套をまとった厳つい大男が現れた。


「貴様はジュリアン、どうしてここに、もしかしてサタンに魂を売ったのか?」


「これから死ぬお前達に話すことなどない」


 するとジュリアンは目にも映らないスピードで、リリンの間合いに入り、大釜でリリンに攻撃を仕掛けてきた。

 間一髪でそれを回避して、リリンは剣と化した。

 私はその剣を受け取り、身構えた。


「フンッ、人間の力を借りぬと力が発揮できない死神の中でも低級のリリンよ。ここが貴様等の墓場となるのだ」


 ジュリアンは私に大釜を振りかざして、剣では受け止められぬ事が瞬時に分かり、回避した。


 重量の大きい大釜を振りかざせば大きな隙ができる。そこをつけば・・・。


 するとジュリアンはニヤリと笑みをこぼして横目で私と目が合い、その視線から殺気を感じて一歩下がり、攻撃を仕掛ける事が出来なかった。


「どうした、そんなに俺が怖いか?」


 私は情けなくとも震えている。


 何だこのとてつもない邪悪なオーラは?


「まあ良い、冥土の土産に教えてやるよ。

 俺はサタン様の忠実な下部、ジュリアンだ。

 このゴミのような人間にひったくりさせて、お前達をおびき寄せたのが俺だ。

 実を言うと俺も死神だ。

 だが、そんなこわっぱのリリンと一緒にするなよ。

 俺は強い、サタン様からいただいたこのパワーを共にすればなお強くなれる」


「それでお前はサタンに魂を売ったのか?」


「そうだ。力こそが正義だ」


 私は目の前にいるジュリアンが怖い。

 もはやここまでか?


 すると後ろから、「伏せて雅人さん」


 靖子さんの声が聞こえて私は前かがみになって伏せた。


「ぐわああああああああ」


 ジュリアンの断末魔が聞こえる。


 顔を上げると、ジュリアンに光の矢が刺さっていた。


 どういう事だと振り返ると、その矢は靖子さんが放った矢だった。


 そこでリリンが剣から、元の姿に戻っていた。


「靖子は座敷わらしの力を借りて、光の弓を発動させたのじゃろう」


 そうだ。私には仲間がいる、すべてを自分一人で解決させようとしていたのは私だった。

 なんて私はおろかなのだろう。


 ジュリアンは光の矢に刺さり、黒いオーラが煙のようにジュリアンの体から放出されていく。


「さあ、雅人よ、ジュリアンを改心させるためにこの剣でとどめを刺すのじゃ」


 リリンは剣になり私はそれを受け取り、悪しき心に惑わされている、ジュリアンに切りつけた。


「ぐわあああああああああ」


 再び断末魔を上げて、ジュリアンから黒い邪悪なオーラが抜け出していく。


 靖子さんの矢と私の剣は人の邪悪な心を浄化するものだ。決して人を殺すような物ではない。


 そこでリリンが「まだ終わってはおらぬぞ」


 ジュリアンから放出される黒いオーラが集結して、おぞましい、いかにも悪と言った感じの形相をした顔が浮かび上がってきた。


 そしてその黒いオーラはジュリアンを踏みつぶしてジュリアンは殺されてしまった。


「いくわよ」


 と靖子さんは弓と化した座敷わらしの矢を放った。

 黒いオーラの集合体の顔の額に刺さり、今だと言わんばかりに、私は剣を持ち変えてジャンプしてさらに額に命中させた。


 黒いオーラの集合体は「これで勝ったと思うなよ」とおぞましい声で言って、霧散して消えていった。


「やったか?」


 リリンは剣から元の姿に戻り、殺されたジュリアンの方へ足を向けた。


「愚かな、サタンに魂を弄ばれた結果がこうか」


 私達三人はリリンの元に行き、死に絶えたジュリアンの元へ行くと、ジュリアンは見るに耐えない姿で死に絶えていた。


「かわいそうに」


 と靖子さんは言う。


 すると靖子さんは私の顔を見て、「何?」と聞くと靖子さんに叩かれてしまった。


「何をするの?靖子さん」


「雅人さん、また一人ですべてを抱え込もうとした。私やわらしちゃんがいるのに、どうしていつもそうなの?」


 返す言葉が見つからず、確かに靖子さんの言うとおりだと思って「ごめんなさい」と謝った。


「リリンちゃんもそうよ」


「すまぬ靖子よ」


 あの時のジュリアンの目を見たとき、恐ろしい殺気に包まれて殺される覚悟をしてしまったのは事実だ。


 私の心の器の小ささに情けなく思ってしまう事と、一人で何でも片づけようとする、私の身勝手な判断が命取りになることをしっかりと肝に銘じた。


 その後、私達は健康ランドに行き、銭湯に入って、創作活動は出来る余裕もなく眠りについた。


 ここの健康ランドは女部屋と男部屋が分かれていて、私は一人で眠る事になった。


 今は一人にはなりたくなかった。

 叱ってくれた靖子さんが側に行てほしいと思ったとき、リリンが私の横に寄り添っていた。


「リリン、ダメじゃないか、ここは男の人じゃなきゃ入れないところだよ」


「我を娘と思え、娘と言う事なら入っても大丈夫じゃろう」


 確かにそうだった。リリンは私と靖子さんの娘として受け入れたのだ。


 それに座敷わらしもそうだった。


「今日は疲れているから、創作活動は出来ないぞ」


「別に良いのじゃ。我は雅人が好きじゃ。好きな相手といると魂の振動力が倍増する」


「そう」


 本当は喜ぶべき所なのに、僕は素っ気なく言ってしまった。


「ふーんそうか。靖子の叱りには我も肝に銘じさせられる」


「フゥ」と息をつき「靖子さんどうしてた?」


「ちょっと落ち込んでおったぞ」


「そうか」


「愛する者が落ち込むと、お主も落ち込むじゃろう」


「そうだなあ」


 靖子さんのお叱りには本当に反省させられる。

 私をそのように叱ってくれると言うのは私の事を愛している証拠なのかもしれない。

 そう思うと私の心が何か愛に包まれている感じで清々しい気持ちになる。


 リリンはもう眠ってしまったかな?

 どうやら眠ってしまっているようだ。

 こうして見るとリリンはかなりの美少女だ。

 それに前にも言ったとおり、リリンは私と靖子さんの娘であり、こんなかわいい娘がもてるなんて、私は幸せ者だな。

 リリンが以前言っていたように私達はソウルメイトだ。


 出会った時は一年私の面倒を見てくれると言っていた。

 リリンがよければ、この旅が終わったら、どこか安心して暮らせる場所でリリンがお嫁に行くまで幸せにして上げたいと思っている。


 でもこの先どうなるか分からないけれど、リリンの男が出来たら、何か嫌な感じがする。


 だからリリンまだ一年もたっていないけれども、私と靖子さんの娘として、一生側にいてくれないか?


 でもリリンは死神で神様だから、私と靖子さんが先に死んでしまうのだろう。


 それでも良い。私は今とても大変な目にあっているけれど、幸せだ。


 そう思うと小説を書きたくなってくる。

 ポメラを出して小説を書こうとすると、リリンが私の手を引いて、「今は休め」と言われてそうする事にした。


 その後私は疲れた体を休める事にした。





 ******   ******




「ふう、いい天気じゃのう」


 リリンがそういって、私のテンションを上げる。


 私とリリンは健康ランドから出て、靖子さんと座敷わらしを待っていた。


 正直靖子さんに改めて顔を見合わすのは何か緊張する。

 昨日叱られて、リリンの話を聞くと、靖子さんは落ち込んでいたと言っていた。

 靖子さんにどんな顔で迎えれば良いのだろうと、困惑する私であった。


 だが「雅人さーんリリンちゃーん、お待たせ」と明るい笑顔で健康ランドの入り口付近で待っている私達に手を振って、来た。座敷わらしも一緒だ。


 そんな笑顔で明るい靖子さんを見ると、どんな顔をすれば良いのか分からなくなるけれど、元気ならそれで良いと思えた。


「何辛気くさい顔をしているのよ。二人とも笑顔笑顔、そうしないと幸せが逃げていってしまうぞ」


「その座敷わらしの藍色のワンピース似合っているね」


「でしょ、わらしちゃん女の子だもん。女の子はみんなかわいくしないといけないでしょ」


 そういえば読者のみなさんに座敷わらしがどんな格好をしていたか、言っていなかったっけ。実を言うと、江戸時代の青のズボンと上着には赤の布の服を着ていたのだ。


 それが今ではかわいい女の子風の藍色のワンピースを着ている。

 靖子さんが言うには健康ランドに売っていた物らしい。


「ふむ、座敷わらしよ良く似合っているぞ」


 リリンが言うと「ありがと、リリンお姉ちゃん」と言う。


 座敷わらしが加わり私達は四人の家族になった感じだ。


 座敷わらしは私の事をパパと呼び、靖子さんをママと呼んでいる。


 何か幸せを感じてしまう。


 座敷わらしは私達の大切な家族となった。


 リリンの言うとおりサタンの力は増している。


 昨日の死神のジュリアンと言う奴よりももっと強力な憎しみの力を持った者が私達の前に現れるかもしれない。


 この先何が起こるのか分からない。


 ただ一つ言えるのが、創作意欲を向上させ魂を活性化させるにはリリンと座敷わらしの力が必要だ。


 私達の使命を果たすために私達は行かなくてはいけない。


 私の夢、いや目的はサタンを倒して四人で平穏に暮らせる場所を探すことだ。





 ******   ******




 一方その頃、真っ暗闇の中、玉座に鏡が置いてあり、サタンの部下がその鏡の前にひざまずく。


「サタン様に申し上げます。先ほど死神のジュリアンを放ちましたが、座敷わらしの力を経てやられた模様です」


 そして鏡が光りだしサタンがおぞましい声で言う。


「ふんっ、ジュリアンに勝機は期待してなかったが、連中もなかなかやるものだな」


「ジュリアンは死神の中でも上位の位置にありました。リリンのような下等な死神には手が出せないはずでしたが、やっかいな事に連中は座敷わらしの力を持ちジュリアンはやられた模様です。

 それに死神のリリンは連中のパワーを浴びて力を増していっている様子です」


「それはやっかいだな」


「ハッ、ですのでこれからは連中を殺すつもりで、死神サージェントを送ります」


「失敗は許さぬぞ」


「ハッ、肝に銘じておきます」


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