神様からの約束事
熱海の駅に到着すると、悪しき魂を感じる。
剣と化したリリンから声が聞こえる。
「雅人よ、くれぐれも油断するでないぞ」
「油断っていきなり戦えってどうすれば」
「大丈夫じゃ。雅人なら出来る」
列車から降りると、見るからに悪人面をした男達が私達に襲ってきた。
剣と化したリリンから声が聞こえる。
「さあ、雅人よ戦うのじゃ」
奴ら鈍器のような武器を持っている。
戦わなきゃこの先やっていけそうもないようだな。
「うおおおおおおおおおお」
私は剣を両手で持ち、悪人面をした奴らを切りさいた。
切りさくと同時に悪人面をした連中は元の血色の良い人間に戻っていった。
このリリンが化した剣は悪しき心を切り刺く剣だと安心した。
「雅人よ安心するのはまだ早いぞ」
身長二メートルはある鈍器を持った大男が私達の前に立ちふさがっていた。
「どうやらここのボスのようだな」
大男は鈍器を振り回して本気で私達の事を殺そうとしている。
すると靖子さんが大男の懐に入り、エナジードレインを発した。
「うおおおおおおおおおお」
と絶叫する大男。
そして倒れて、元の人間の血色な顔に戻った。
「リリン」
するとリリンは刀から、元の幼女に戻った。
「これからの敵はこうして倒していかなければならない。アケミやリリスとは違う相手だからな。
それに創作活動で我の魂を活性化させてくれ。
そうすれば我はもっと強くなれる」
「靖子さん」
大男を倒した靖子さんの元へと行く。
「どうやら私のエナジードレインは悪しき心を吸収する必殺技でもあるみたいだね。
おかげで元気が漲ってくるよ」
「その調子じゃ、お主達、だが、この先もっと恐ろしい敵に出会うじゃろう」
「それにはもっと創作意欲をしていけば良いんだね。
じゃあ、もっとリリンに力を」
「雅人よ焦るでない、その創作意欲は明日にとっておけ」
「でもまた新たなる敵が待っているかも知れない」
「大丈夫じゃ、サタンもそこまでは手が回らぬ」
「でもこれはまだ小手調べでしかないんでしょ」
「小手調べかどうかは分からないが、とにかく連中は本気でお主達を殺そうとした。それがどういう意味だか分かるか?」
「でもリリンが剣になってくれて私達は助かった」
「もしかしたらサタンの奴我が剣になれるほどの力を増しているとは思いもしなかったかもしれぬ。
もし今日魂向上のために力を蓄えて剣になれるほどの力がなかったら、もしかしたら、みんなお陀仏だったかもしれぬぞ。
サタンの力も増している
同時に我らの力も増していかなければならぬ」
「じゃあ、早速創作活動だ」
「その前に我は腹が空いておる。腹が空いては戦が出来ぬと言う言葉を知らぬか?
それと先ほども言ったが焦りは禁物じゃ」
熱海に到着した時はもう満点の星空が輝いていた。
「よし、じゃあここでも海の幸をいただこう」
私が言うと、靖子さんが「ダメよ。そんな贅沢をしたら癖になって、印税がなくなるまでになっちゃうんだから」
「別に良いじゃん」
「ダメったらダメ」
財布の紐を私は靖子さんに握られている。
「とりあえず、この辺にテントを張れる場所を探しに行きましょう」
靖子さんはスマホを片手に、どこかテントの張れる場所を探している。
「ここが良いわね」
「どこに行こうと言うんだい」
「浜辺よ」
そうきましたか、貧乏暇なしってか。
早速私達は浜辺に向かいテントを張った。
「二人ともお腹が空いているでしょ。私がひとっ走りで材料を買ってくるから、待っていて」
そこでリリンが、「一人じゃ危険じゃ、我と雅人も同行させてもらう」
「それもそうね。私達狙われているんだからね」
深刻な状況を明るい笑顔で言う靖子さん。
心なしか靖子さん、この危険な旅を楽しんでいるように思えてならない。
だから私は「靖子さん、もっと緊張感を持って行動しないとまずいよ」
「緊張はしているよ。でもこんな時だからこそ、笑顔にして神様が私達に味方してくれるように思わなきゃ」
そこでリリンが「靖子よ。良い心がけじゃ」
この二人に関しては何か腑に落ちない部分もあるが、確かに一理ある。
私達は港に行きそこで安く買える海産物を手にした。
エビやらホタテにハマグリや、今日は海でバーベキューと言ったところだ。
波の音を聞きながら満点の星空を眺めて食べる料理は最高においしく感じられる。
さらにみんなと食べる料理はよりおいしい。
「こんなに安く海産物が手にはいるなんて、良い町ね熱海は」
「そうだね」
料理も食べ終わって、私達は魂向上のために、創作活動をする。
創作活動は私は三度の飯よりも好きなことになっている。
私の小説が全国で読まれている事を知ると、うれしさでたまらない。
それに私の夢はいつの間にか叶ってしまっている。
小説家を希望したのはアケミのおかげなんだよな。
アケミにあんな事をしてしまって、私は苦しんだ。
まさかヤクザの嫁になり、キャバクラで働いている所を目撃して、私は絶望に苦しんだ。
それで鉛筆で悔やんでも悔やみきれない思いで、良き言葉を書き殴った。
すると数日間そうしていて私に夢が生まれた。
そう。それは小説家になること。
私は正直本を読むのはあまり好きじゃないが、書く事は大好きだ。
それを大勢の人に見て、感動してもらう事以上はない。
よーしとことん書くぞ。
****** ******
目覚めると朝であった。
私は知らぬうちに小説を書き続けて、いつの間にか眠ってしまったようだ。
膝にはリリンが眠っていて、肩に靖子さんが眠りながら寄り添っている。
二人が風邪引かないように毛布を掛け直して私はテントから出た。
太陽のあまりの眩しさに私は目を細めて、海を見た。
太陽の光で海面はキラキラと宝石のようにきらめいている。
何かテンションがあがる。
「よーしやるぞ」
その場で人知れずにガッツポーズを取る。
太陽の光が私の元気の源だ。
再びテントの中に入り、創作活動を始める。
時計を見ると午前六時を回ったところだ。
私は魂向上の為に創作活動を再開した。
そろそろ、メモリーブラッドの第三巻が書きあがる。
そんな時、私の体から白いオーラがわき起こってきた。
「何なんだこれは」
「雅人よ、そこまで早く覚醒するとは思わなかったぞ」
リリンがいつの間に起きていて、私に告げる。
「覚醒?」
私がそう言ったと同時に、テントが何者かに潰されてしまった。
「何?どうしたの?」
靖子さんは言う。
「サタンに操られし者じゃ。
さあ、雅人よ戦うのじゃ」
そう言ってリリンは刀に変化した。
私は刀を取って潰れかけたテントから外に出た。
ちなみに靖子さんも敵を関知して出てきた。
「もう何よ。私のテントをどうしてくれるのよ」
靖子さんはテントを壊された事に腹を立てているらしい。
敵は二十人、しかもみんな鈍器のような武器を持っている。あの鈍器を食らったら致命傷物だ。
だから私と靖子さんとリリンで戦うしかない。
私は剣を構えて、靖子さんはエナジードレインで手を構えている。
奴らは襲ってくる。
私は剣でサタンに呪われし者と戦う。
敵は二十人くらい。
何だか楽しくなってきたぞ。
早速鈍器のような物を私に振りかざし、私はよけて、リリンの剣と化した物で切りつける。
奴らは次々と襲いかかってくる。
「えい。やー。えい」
と三人のサタンに呪われし者を切りつけ、サタンの呪いのオーラか?黒い物が体からこぼれ落ちてくる。
靖子さんも負けてはいない。
自身のエナジードレインで真っ黒に染まった邪悪なサタンの呪いを吸収している。
リリンの刀は邪悪な者の魂を浄化する事が出来るのだ。
したがってリリンの刀では切りつけられても人は殺せない。
戦っている最中に後ろを取られて、鈍器のような武器で私を殺そうとして、しまったと思ったが、靖子さんがエナジードレインで片づけてくれた。
「靖子さん。背中は預けたよ」
「こちらこそ」
私と靖子さんは背中合わせで戦った。
私は一人では戦っていない。
人は一人では戦えない事を教えられた。
そして一人残らず、サタンに呪われし者を片づけられた。
倒れたサタンに呪われし者の心臓に手を当ててみると、本当にこいつらは死んでいない。
死神のリリンの刀は呪われし邪悪な魂を浄化させることが出来るのだ。
サタンに呪われし者を一人残らずに倒したら、リリンは刀から元の姿に戻っていった。
呪われしサタンの魂に操られた人間を見て、リリンは哀れんだ顔をして言う。「呪われしサタンに魂を売るのは弱気な魂の証拠、子奴らは、転成する前に幸せになることを神に誓ってきたはずなのに、どうして自分から悪魔に魂を売るような事をする」
リリンがそう言うなら私も同じような者だ。
私もリリンと出会っていなければサタンに魂を売っていたかもしれない。
「リリン、この者達はどうなるの?」
「小奴らは魂をサタンに売ったのだ。自らの死と引き替えに、じゃから、後はこの者達次第じゃろう。
我らに出きるのはこの者達の魂の浄化くらいじゃ」
「つまりこの者達は自殺志願者?」
「そうじゃ、夢も希望も持てぬ哀れな魂の持ち主じゃ」
そこで靖子さんは「かわいそうな人たちですね。人間生きていれば楽しいこともあるはずなのに」
「この福祉の整った国こそが、食べ物は与えられるが、夢は与えてくれぬ。人にはドラマがなければ人生面白くないものじゃ。
それに比べてお主達には夢とドラマがある」
私は考えさせられる。
私が書いているメモリーブラッドは基本的に夢を無くした少年少女に吸血鬼であるメグが夢の在処を共に探しに行く物語となっている。
時には争いや、ぶつかり合いなどが生じるが最後にはそれぞれ少年少女は夢を見つけられハッピーエンドとなる物語となっている。
リリンが言う夢を持てぬ大人達がいる事も、メモリーブラッド第三部に組み入れていこう。
ただ生きているだけの人間が、夢を持てるような物語を書きたい。
私は一人でも良い。
私の小説を読んで、人生観が変わったというのならと言うことを目標にして書いている。
もしかして私の使命と言うのは、一人でも多くの人に夢と希望を与える事なんじゃないかな?
そして私達を襲ってきた男の一人が立ち上がる。
「俺は・・・」
「気が付いたの?」
すると男は泣け叫びながら私にこう言った「どうして俺を殺してくれなかったんだ」と。
男の目を見てみると死んだ魚のような目をして、生きる活力を完全に失っているみたいだ。
私は男に返す言葉が見つからず、私達はそのような者の連中から離れていった。
連中の一人の言葉を聞いて、私達には会話は無かった。
壊れたテントをそのままにして去り、これからは宿に泊まりながら南に向かい、サタンの野望を阻止しようと考えた。
私は正直落ち込んでいる。
そして一つ分かったことがあった。
アケミやリリスの事だ。
アケミは私を憎むことで生きながらえて来た。
ただそれだけの為に私の両親を殺して、私の妻である靖子さんを殺そうとした。
その心にアケミはサタンにとらわれて、憎しみに生きてきた。
今も昔もそう言う大人達がいるから、少年少女に夢を持たせなくなったのだろう。
正しい方へと正しい方へと向かわせ、有名な大学を卒業しても、高学歴ニートと言う者がいる。
今現在ニートの数はねずみ算式に増えあがり、ニートも高齢化している。
私もその一人だった。
そこで私はリリンと靖子さんに聞いてみる。
「私達のやっていることは正しいのだろうか?」
そこで靖子さんが「正しいじゃなくて楽しく行ければ良いんじゃないかな」
リリンが「そうじゃ、そうすれば争わなくて済む」
「そうか楽しい方へと向けば良いのか。そうすれば戦争はなくなり、みんなハッピーになれるんじゃないかな?」
「でも世の中には心を黒く染めた者が、善良な市民をだまそうとする連中が入るからね」
「私は一人でも良い、一人でも良いから、人に夢を与えるような小説を書いてみたい。
それは心を黒く染めた連中でも同じ事だ。
リリンは言ったよね。
人が転成するときに神様に幸せになってきますと言ってこの世に出てくるんだよね」
「それはそうじゃが、すべての者が救われるとは限らない。
もう良いじゃろう」
「何が良いの?」
「お主の使命は・・・」
僕はリリンの言葉を遮り「一人でも多くの人間に夢と希望を与えることなんでしょ」
「何じゃ知っておったのか?」
「さあ、行こう。私は一人でも良い、私の小説を読んで幸せになれるような物語を作ってみたい」
「私も賛成するよ雅人さん」
するとリリンが「お主達、また魂の向上したな」
「もう何でも良いよ」
そう言って私達は再び南へと旅立つのだった。




