使命を果たす為に戦うしかない
リリスとリリンの攻防は続く。
「リリン頑張ってくれ」
私は靖子さんの元へと向かった。
「靖子さん!目を覚まして」
そういって靖子さんの頬を軽く叩いた。
「雅人・・・さん」
「良かった気が付いてくれたんだね」
私が靖子さんを抱きしめると背後から妙な殺気を感じた。
振り向くとナイフを片手に私の背中に刺そうとしているアケミ。
私は靖子さんを抱いて回避した。
「アケミ、どうしてそこまで憎しみを増幅させる」
「この死にぞこないが、お前にふさわしい場所は地獄以外に何もない」
私はゆっくりと靖子さんを床において、粉砕した鉄格子の棒を持ち出して、アケミに戦いを挑む。
「勝った方が正義と言う訳だなアケミ!」
「そういうことだ」
私は鉄格子の破片になった棒で、アケミに振りかざしたが、アケミはナイフで回避した。
「やるじゃないかアケミ」
「お前を地獄に送らねば私の息子がお前に殺されなくてもすむからな」
「私はそんな事をしない」
そういって今度は横っ腹に棒を振りかざしたが。ナイフでそれを回避した。
リリスから力を得たのか、アケミの胴体視力に感服する。
そこで「雅人さん。頑張って、私達は幸せになる権利を持っている。それは誰もが神様から与えられた私達が生まれた使命でもあるのだから」
そうだ。幸せになれる権利は誰にだってある。
その事をアケミに知って貰いたい。
アケミは本当に私の事を殺そうとしている。
私もアケミを殺す勢いで立ち向かわないとやられてしまう。
こうなったら私もアケミを殺す勢いで立ち向かってやる。
私は誓ったのだ。母親も父親もアケミの野望に殺されて、せめて靖子さんとリリンとの幸せを壊すものなら私はそれが神に背くことでも許しはしないと。
そして、アケミのナイフを鉄格子の棒で振り払った。
「アケミ、私はもうあなたを容赦する気にはなれない。
あああああああああああ」
と叫びながら鉄の棒をアケミに振りかざし殺そうとしたら、リリンの大釜によって、回避されてしまった。
「何をするんだリリン」
私がアケミと戦っている間、リリスとの決着は付いていた。
「雅人よ、こ奴を殺せばお主の魂は汚れてしまう。
その汚れた魂で創作意欲に取り組んでも我の魂は共鳴されなくなってしまう」
「じゃあ、どうすれば良いのだ、こいつ等はまた私達を殺しにかかってくるよ」
「案ずるでない。もう小奴らには我らを殺す力は残っていない」
「でも・・・」
「お主も小奴らにひどいことをしたんじゃろう」
「・・・」
返す言葉も見つからないほど僕は狼狽えていた。
すると倒れたアケミとリリスからドスグロいオーラがわき出てきた。
そのオーラが集結し、悪魔のような形相で不適に笑い出す。
「ファファファファ、小奴らの憎しみではお前達を地獄に送ることは出来なかったか」
「お前はサタン、いったいお主はどうして?」
「どうしたもこうしたもない。お前達の使命は我にとって邪魔だからな」
「邪魔だからって、サタンとか言ったな、私を殺してどうする?」
「フッ、リリンよまだ小奴らに話してはなさそうだな」
「・・・」
黙り込むリリン。
「フンッまあ良い、今日の所は下がってやる。リリンよ我の邪魔をすればわかっておるな」
そうサタンは言って、霧散して消えていった。
呆然としているアケミとリリンが倒したと思われるリリスは気を取り戻したみたいだ。
「君は雅人君?」
アケミが正気を取り戻して、僕の前に来た。
「アケミ、もしかして正気に戻ったのか?」
「正気?」
するとアケミは絶叫した。
「何が起こったんだリリン」
「自分達がした事を悔やんでいるのだろう」
「悔やむ?」
「そのアケミはお主にした事を、懺悔仕切れないほどの事をしたことを悔やんでおるのじゃ」
それを聞いた私は、「アケミ僕はもう気にしてない」
「でも・・・でも・・・私は取り返しの付かない事を雅人君にしてしまった」
ナイフを手に持ち自分の頸動脈を切りさこうとしたところ、私は止めに入ろうと思ったが、リリンの方がそれは早かった。
「バカな真似はよせアケミよ」
「でも私は雅人君に・・・」
「お主は操られていただけだ。お主が気に病むことはない」
「でも私は悪魔に魂を売り、憎しみに生きてきた。雅人君、こんな私を殺してくれるかな」
私は胸をなで下ろして「アケミさん。アケミさんにも幸せになる権利はある。それにアケミさんが死んだら、子供はどうするの?」
「そうだった。私はあなたに殺されると思い、あなたのことを追いつめるためにひどいことをした」
「もう気にしてないよ。とにかくアケミさん。これからは憎しみに生きるのではなく、しっかりと幸せに向かって歩んでください」
「良いのか?君は私の事を許せるのか?」
「許しますよ。だから何度も言うようですけれども、これからは本当の幸せに向かって歩み続けてください」
そういって私は立ち上がり、気絶した靖子さんを負ぶってその場を後にした。
外に出るとまばゆい光に包まれ、目を細めて、靖子さんもその光に瞳をくすぶられ目覚めた。
「雅人さん?」
「そうだよ。雅人だよ」
目覚めた靖子さんをおろして、とりあえず下着姿のままだから、服を着るように言った。
そこでリリンが「雅人よこれで一件落着だな」
「うん」
「それよりも雅人、お主の使命は我が知っている。聞きたくはないのか?」
「大丈夫だよ。それは知らない方が良いかもしれない」
「そうか、それよりも良かったな、靖子を助けられて、それにアケミにもリリスにももう襲われなくてすんで・・・・・」
その言葉の続きを言おうとしているのか?黙ってしまったリリン。
「あのサタンって言う奴には気をつけなきゃ行けないんでしょこれからは」
「そうじゃサタンに目を付けられた人間は・・・」
「もう良いよ。こうしてこの三人でまた旅が出来るのなら」
「雅人、怖くないのか?お主はとんでもない者に狙われているのじゃぞ」
「怖くないと言ったら嘘になるけれども、本当は凄く怖い。でも私達ならどんな敵にも負けやしない」
「雅人よ。お主は強くなったな」
「そうかな?」
そこで靖子さんは急に私に抱きつき、その唇と唇を交わした。
「・・んん」
そして唇を交わして、離れると靖子さんは幸せそうな笑顔でこう言った。
「雅人さん愛していますよ」
そんな事を言われて僕は頭に血が上り、顔が今、真っ赤な状態なんだろうな。
「靖子さん私も愛しているよ」
「ふふっ、じゃあ創作活動をしながらまた旅が始まるんですね」
「それもそうだ。私の小説の表紙を飾るのは靖子さんしかいないからね」
「もう、お上手なんだから、そんなあなたにはこうだ!」
再び唇を重ねてきて、もう私は胸が張り裂けそうだった。
そこでリリンが「お主達ラブラブじゃのう」
「ラブラブじゃなきゃこんな旅やってられないよ。私は雅人さんの小説のデザインをする事に誇りを持ってやっている」
「私もそうだよ。私の小説のデザインを請け負ってくれて誇りに思っている」
「さて、朝ご飯は何にする?」
辺りを見渡すと、海岸で海の幸が堪能できそうだ。
「海岸まで来たんだ。海の幸を食べよう」
「そんな贅沢ダメだよ。もしかして私がいない間、贅沢していたんじゃないでしょうね」
「いやしていないよ」
「回転寿司なんか食べたぞ、あれはおいしかったぞ」
リリンは案外口が軽い。
「そうなの、そんな贅沢をしていたのね」
じと目で僕を見る靖子さん。
「だって私は料理とか出来ないからさ」
「じゃあ、私も贅沢させて貰おうかしら、リリンとアケミにろくな物を食べさせて貰っていなかったからね」
「じゃあ、今日は靖子さんを生還した祝いだ。海の幸を堪能しようじゃないか」
ここは豊洲市場、全国から海の幸が堪能できる町。
早速お店に入って、私はウニ丼を頼んでリリンと靖子さんはいくら丼を頼んだ。
ウニ丼を食べて、それはもう絶品でおいしすぎる。
「うーん、おいしい。こんなおいしい料理を食べたのは何年ぶりかしら?」
靖子さんは大げさにもそういう。
「雅人、靖子よ、これほどおいしいのもはないぞ」
本当においしい、おいしい物を食べると何か元気が出てきて創作意欲が増してくる。
「あーお腹いっぱい」
と靖子さん。
「私もお腹がいっぱいだ」
「我もじゃ」
「さてお腹がいっぱいになったところで行きますか?」
「行くってどこに行くの?」
「おいしい物を食べた後で申し訳ないんだけど、私達は狙われている。早速だから、今回は南へ向かおうとしている」
「南ね」
「そう、南、南に行きながら創作活動をしていくつもりだ。私達の使命は何となくだけど、リリンの魂を向上させる為に創作活動をしている。それと同時に私達の魂向上の為に創作活動をしていくんだ。協力してくれるね靖子さん」
「もちろんよ」
胸を叩く靖子さん。続けて靖子さんは「私がいない間においしい物をたくさん食べていたわけね」
「それは私は料理が出来ないから」
「今度からは食事は私が作らせて貰いますから、安い材料で」
そういわれて私とリリンは目があって、リリンが「やっぱり靖子は頼りがいがあるのじゃのう。確かにおいしい物を食べたが靖子の手料理の方が断然おいしかったぞ」
「やだあ~もう。リリンちゃんってお世辞が上手なんだから」
「さあ、行こう、この先何があるか分からないけれど、とにかく最寄りの駅まで歩こう」
最寄りの駅まで五分で到着して、豊洲駅に到着した。
私達は静岡を目指して、鈍行で走る電車に乗り、電車の中で創作活動をしてリリンと私達の魂の向上に努めた。
「雅人さん、私達の小説かなり売れたらしいじゃない」
「靖子さんがいない間、編集部の前原さんに聞いたんだけど、私達の小説が十万部を越すベストセラーになったようなんだ」
「凄いじゃない」
「これも靖子さんイラストの効果だよ」
そこでリリンが「それは違うぞ。雅人の小説の効果でもあるぞ。それにお主達は良いコンビじゃ」
リリンにそう言われ私と靖子さんは見つめあって笑いあった。
私達は電車に揺られながら創作活動をしている。
正直創作活動は楽しいし、何か心から熱くなれる何かを感じながら描いている。
「そうだ。雅人さん。メモリーブラッドの二巻って半年後に発売されるのよね」
「そうだけど、それが何か?」
「私がさらわれた時のイラストを表紙にする予定なんでしょ」
「うん」
「何かあの時、色々テンパっていたから、あのイラストで良いのかなあって思っているんだけれども」
「良いよ」
「雅人さんお願いがあるんだけど」
「何?」
「二巻の物語を見せてくれる?」
「別に良いけれど」
僕はポメラからマイクロSDカードを取り出して、靖子さんのスマホに挿入してデーターを渡した。
「サンキュ!」
そう言ってメモリーブラッドの第二巻を目を通している。
その間に私はメモリーブラッド第三巻を執筆中だ。
とにかくおもしろい物を書きたい。
それが私達のリリンを含めて魂の向上に繋がる。そしてそれが私達の使命でもあるのだから。
正直言ってサタンという化け物は怖い。
でもそれに立ち向かうには私達の魂の向上が必要だ。
この先きな臭い何かを感じている。
そのために私達は魂向上の為に尽くさなくてはいけない。
創作活動をしているリリンの顔を見ると、私と靖子さんしか見えないオーラを感じる。
そうだ。そうやってリリンを中心に私達の魂が向上されるのだ。
創作活動をしている最中だった。
「雅人よ、次が熱海らしいのう」
「そうだけど何かあるの?」
「ある。それに邪悪な気配じゃ。我らの旅はサタンに筒抜けなのかも知れぬ」
「それってかなりやばい事なんじゃないか?」
そこで靖子さんが、「私怖くなってきた」
「靖子はエナジードレインが使えるじゃろう」
「それって靖子さんもやばくない?」
「やばくはない。奴は小手調べで我らにかませ犬を放ってきた」
「じゃあ、逃げなきゃ」
「逃げられぬよ。それに今回の連中はアケミやリリスとは違う相手だ。それに膨大な妖気を感じる」
「じゃあ、どうしたら良いの?」
「戦うのじゃ」
「戦うってリリンが?」
『間もなく熱海熱海終点の熱海でございます』
とアナウンスが流れてきた。
「奴らは駅のホームでお主等を襲おうと待ちかまえているぞ」
「さて、雅人よ良く聞くんだぞ。我は剣となる。その剣は悪しき心を改善するための物じゃ。お主はその剣で操られた人間の悪しき魂を浄化させるのじゃ」
急にそんな事を言われても。
するとリリンは剣と化した。
剣から声が聞こえる。
雅人はこの剣で戦い、靖子はエナジードレインで奴らの心を浄化するのじゃ。
熱海に到着すると、何やら悪しき気配を感じる。
私達は使命を果たすために戦うしかない。




