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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
24/56

助けに行くよ靖子さん

 南に行く途中、靖子さんはリリスとアケミにとらわれてしまった。


 私の不注意だ。


 そしてリリンの力を借りて、靖子さんの居場所を追っている。


 リリンは僕が小説を書く意欲でその力を発揮できる。


 だから私はリリンに力を借りて、靖子さんの居場所を追いながら小説を描いている。


 本当はこんな非常時にのんきに小説を書く気になれないが、一刻も早くとらわれた靖子さんを救出するために小説を書く意欲を膨らませている。


 今は青函トンネルを抜けて僕たちはリリンが示す南へと向かっている。


 連中も南下しながら靖子さんをさらって行っている事が分かっている。


「リリン、靖子さんは?」


「連中も南に向かいながら靖子を連れ出している」


 揺れる電車。ポメラで小説を書く僕。


 待っていて靖子さん。絶対に君を連中の好きにはさせないから。


 アケミはリリスの力を借りて、私を不幸のどん底に陥れようとしている。

 それが連中の嗜みなのだ。


 私はアケミに酷い事をした。


 償っても償いきれない程の事をした。


 もう許されても良いのではないのかと思うが、連中のアケミとリリスは執念深い。





 ******   ******





 あれは丁度三日前のこと。


「靖子さん。オーロラが見れるなんて滅多にないことですよ」


「そうみたいだね。雅人さんこのオーロラを見ていると何かイラストを描く意欲がわいてきます」


「僕も小説を書く意欲が沸いてきます」


 そこでリリンが「二人ともその調子だ。その調子で我にエネルギーとなる源をおくれ」


「分かっているよリリン」


「任せてリリンちゃん」


 オーロラも消え、僕たちはその砂浜でキャンプをすることになった。


 稚内は何もないところだったので、仕方なく先ほど食べたラーメン屋で夕ご飯にすることになった。


「あら、お客さん達、また来たの?」


「はい。オーロラが見えて最高でしたよ」


「へえ珍しいわね、地元に住んでいる人でも滅多と見られない現象よ」


 ラーメン屋の女亭主は言う。


「じゃあ、早速ラーメンをいただくとしましょうか」


 と靖子さん。


 先ほど頼んだのとはちがく、僕達三人はタンメンを注文した。


「あいよ。栄養満点のタンメンを頼むなんてお客様はずいぶん通だね」


 何が通なのかはさておき僕たちはタンメンが運ばれるのを待った。


 タンメンが運ばれてきて、野菜たっぷりのタンメンだった。


「おいしそうだね」


「我は野菜は苦手なのじゃがな」


「リリンちゃん。野菜はおいしいものよ。一口で良いから食べてみなさい」


「ふむ、そうしてみる」


 私も含めてタンメンの野菜を食べるとすごくおいしかった。


「これおいしいぞ靖子よ」


「でしょ。農家の方達とここの亭主さんが最高の味付けをしてくださった。まさに愛の味よ」


「ちょっと靖子さん、愛だなんて、恥ずかしいよ」


「恥ずかしくなんかないよ。私は事実を言ったまでよ」


 愛の味はともかく本当においしい野菜で麺も引き締まっていて本当においしいタンメンだった。


 食事を食べ終えると僕たちはオーロラを見た海岸に張ったテントに戻った。


「またオーロラが見える」


 先ほど見たオーロラとは違い、赤いオーロラだった。


 そこでリリンが「何か様子がおかしい」


「何がだリリン」


「リリスの気配を感じる」


「リリスってアケミの側近を勤めている奴か?」


 すると空からリリスとアケミが現れた。


「リリス、アケミ、どうして」


 僕が言うとアケミは「お前が幸せになる権利などないと言ったはずなんだが」


 僕はもうその場で土下座をして謝った。


「もう、僕達の事をほおっておいてくれよ」


「言ったはずだ。お前にはもう居場所なんてないと」


 そこで靖子さんは「そんなのどうしてあなたが決めるの?確かに雅人さんはあなたに許されないことをした、でももう許して上げても良いんじゃないの?」


「靖子さん」


 靖子さんの言葉に感極まって涙を流しそうになる。


「お前が雅人の幸せにする者だな」


「そうよ。私は雅人さんの妻でもあり良きパートナーでもある」


「お前は雅人が私にしてきたことを許せと言うのか?」


「執念深いのも程があるわ、だから雅人さんの事を許して上げて、でないと私があなたを殺す」


 靖子さんはそういって、果物ナイフを頭上にいるリリスとアケミに向ける。


「その目気に入らない。雅人の居場所は地獄だ。よって貴様は雅人と離れてもらう」


 アケミはリリスに何か得たいの知れない棒を受け取り、棒の先から長い鞭状のようなもので靖子さんをそれで縛り付けて、靖子さんと共に消えていった。


「靖子さん!」


「リリン靖子さんは?」


「どうやらさらわれてしまったようじゃ」


「そんなあ~」


 僕は涙が止まらなかった。


 靖子さんがさらわれてしまった。


「僕が靖子さんを巻き込んでしまった」


「雅人よ、靖子は覚悟の上で雅人の妻となり旅に同行した。じゃからそんな風に考えるのは靖子に申し訳が立たぬぞ」


「そうだよね。靖子さんは一生懸命に僕に尽くしてくれた。だから靖子さんを取り戻しに行こう。リリン協力してくれるね」


「もちろんじゃ」





 ******   ******




 それで靖子さんを探す旅が始まったのだ。


 そして青函トンネルを抜けて青森を通過中。


 待っていてね靖子さん。


 私は小説を書く。その意欲をリリンがパワーとして靖子さんを捜す手がかりを追っている。


 リリンの方を見ると僕が小説を書く傍らで、目を閉じて何かに集中している。


 きっと靖子さんを探す手がかりを追っているのだろう。


 そんな時、スマホに一通の着信が入った。


『私は大丈夫だから、安心して』


 と。


 靖子さんには悪いが安心なんて出来るはずがない。

 僕の伴侶である妻がさらわれたんだ。

 これは靖子さんの自己犠牲で僕たちに心配かけないように、奴らの目を盗んで、書いたメールに違いない。

 それにメールには添付ファイルが添えられていた。

 それはイラストであり、今僕が書いているメモリーブラッドのヒロインのメグのイラストだった。


 とても心引かれる絵であり、今度、出版社と打ち合う時に見せたら大絶賛しそうなイラストであった。


 靖子さんはイラストレーターでは一流であり、誰のひけもとらないと僕は知っている。


 これで靖子さんのスマホのバッテリーは切れてしまっているだろう。


 連中は僕が有利になることは絶対にしない。

 たとえばバッテリーを貸してくれるなど。


 終点新青森に到着して、いったん電車を降りる。


「リリン、連中は今どこに」


「とにかく南じゃ。南を示している」


「じゃあ、新幹線でとりあえず東京まで行こう」


 とにかく僕が新幹線の中でも小説を書き続けて、リリンに力を付けてもらいたい。

 一刻も早く靖子さんを助けに行きたい。


 新幹線に乗った僕とリリンは弁当を二つ買って、それを食べた。


 とにかく腹が減っては戦は出来ぬ、と昔から言うではないか。


 弁当だが青森名物いちご煮丼、ウニやアワビ何かを贅沢な郷土料理でとてもおいしかった。


 パワーもついたことだし、創作活動を始めよう。


 靖子さん靖子さん靖子さん、待っていて。必ずあなたを捜して今度こそ二人、いやリリンも含めて三人のユートピアを探しに行こう。


 執筆中、とにかく書きまくった。

 意欲を高めて書いて書いて書きまくった。


 そんな時である。


「よう兄ちゃん」


 素行の悪そうな奴に声をかけられた。


「何ですか、あなたは?」


 情けなくも僕はビビってしまった。


「そのパソコンのような物は何だ?」


「ポメラと言って文字を書く機能を備えた道具です」


「それちょっと貸してくれないか?」


「嫌です」


 と即座に言った。


「何だよ貸してくれたって良いじゃねえかよ」


 するとリリンが「お前アケミの回し者だな」


「何だ話は早いじゃんかよ。闇相場でお前の首を取った者には一千万円の賞金がかかっているんだよ」


「僕をどうする気だ?」


「なあに、ちょっと次の駅に降りて貰おうと思ってな」


「僕は降りる気はない」


 するとリリンが、「次の駅だな」


 次の駅は仙台だ。


 こいつはアケミの回し者だと聞いた。

 もしそうだったら靖子さんの手がかりが見つかるかもしれない。


 アナウンスが流れる。次の駅は仙台だと。


 列車はゆっくりと止まり、仙台の駅へと止まった。


「兄ちゃん覚悟は出来ているんだろうな」


 アケミの回し者は恰幅が良く、僕なら簡単にのされてしまうだろう。


 でも僕だって、ただでやられる訳にはいかない。


 仙台駅のロータリーだからと言っても今は人がいない。


 好都合じゃないか。


 するとリリンが「お主が勝てる相手ではない」


「リリンに助けて貰うばかりじゃダメだよ。たまには僕にもカッコつけさせてよ」


「かっこつけてどうする」


「どうするって」


 すると恰幅の良い素行の悪そうな兄ちゃんは「何をごちゃごちゃと言っているんだよ」


 僕はフックを食らい・・・。


 ・・・・・・・・・・・・・はっと気がついたら恰幅の良い素行の悪そうな兄ちゃんは自分の顔面を何遍も何遍も叩き続けていた。


 私はかっこ悪い事にフックを食らって気絶してしまったみたいだ。


「おい。雅人よ。お主はかっこだけは一人前だな」


「リリンばかりに助けられてばかりじゃ、かっこつかないじゃん」


「そんなダメージを食らってまだそのような事を言うか?このおたんこなすが。最初から我に助けを求めれば良かった者を」


 そうだ。リリンは死神だ。どんな相手でもリリンの魔法にかかればいとも簡単に倒せるだろう。


 素行の悪そうな兄ちゃんは「助けてくれよ。手が止まらない」リリンはどんな魔法を使ったか知らないが、素行の悪い兄ちゃんは自分の顔面を殴り続けている。


「さてお主よ。アケミの回し者だと言っていたな」


「それがどうした。だから助けてくれよ」


「助けて欲しければ、洗いざらいアケミに関する事を喋って貰おう」


「それは出来ねえ、そんな事をしたら俺が殺されてしまう」


「そうか。じゃあ、そのまま自分を殴り続けて死にさらすか?」


「分かった。話すからこいつを止めてくれ」


「止めて欲しければ洗いざらいはいて貰う」


「実を言うと俺は何も知らない。ただ闇のルートで雅人を殺せば一千万円の賞金がもらえるって事しか知らない」


「その闇のルートとは何の事じゃ?」


「お願いだ・・・助けてくれ」


「助けて欲しければその闇のルートとやらを話して貰おう」


「闇のルートとはこの世界に精通する所がある。そこで俺たちの長のアケミはそこに雅人の名前を出した。殺せば一千万円の賞金を掲げてきた」


「どうやら雅人、お主は狙われている。それもでっかい組織の中に」


 僕は怖くなってきた。靖子さんを助ける前に自分の命の方を心配しなければならないことに。


 アケミ、どこまで執念深い女なのだ。

 僕がアケミにあんな事をしなければ。

 まるで僕は世界中の人を敵に回してしまったようだ。


 僕は恐怖してこの世界にたたずまなければいけないのか?


「そんな顔をするでない雅人よ」


 リリンが言う。僕は自分でも分からぬ内に卑屈な顔をしてしまったようだ。


「僕は世界の人を敵に回してしまった」


「そうじゃない。お主を応援してくれる人もおる。我がその一人じゃ。それにお主の小説を読んで感動を与えてお主の味方となってくれるじゃろう」


「でも、私は怖い」


「何を言っておるのじゃ雅人よ。弱気になるでない。それでは靖子を助ける事が出来ぬぞ」


 リリンに催眠術をかけられた素行の悪い兄ちゃんは「もう勘弁してくれ」と泣きながら訴えてくる。


「リリン、もうかわいそうだから止めてやれよ」


「気絶するまで、やらせておこう。大丈夫じゃ。我は人を殺したりはしない」


「でもリリンは死神じゃないか」


「死神でも我は神じゃ。神の我に人を不幸のどん底へ陥れる事はしない。

 人は誰でも神なのじゃ。神から分け御霊を受け継いでおる」


「それは僕の心にもあるの?」


「もちろんじゃ。それとあの哀れな奴にもな」


 自分を殴り続けてとうとう気絶してしまった素行の悪い兄ちゃん。


「それにお主は何か使命があるのかもしれない。靖子がさらわれたのも何かしらの運命かも知れぬ」


「じゃあ、靖子さんは無事に僕の元へと帰ってくるの?」


「それは解らぬ。これは多分お主に与えられた使命だからだと我は思っている。

 だからお主は我を頼ればよい、頼るために我にお主の意欲である小説を書き続けるのじゃ。

 それが我の源となり、お主に力を貸すことが出来る。

 それにお主は一人じゃない。さっきも言ったが、お主には膨大な人を救う力を持っている」


 その膨大な力って?


「それは我にも分からぬ。だから一刻も早く靖子を助けに行くぞ」


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