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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
23/56

オーロラ

「すまぬ雅人不安をあおってしまって」


 その一言で私の幻聴は収まった。

 続けてリリンは、「雅人よたとえ連中が現れたとしても我がついている」


「もちろん私もよ」


 そうだよ。私は一人じゃない。波乱よドンと来いだ。

 そう思いながら深呼吸して気持ちを落ち着かせた。


 そろそろ花火大会が始まる前に夕食の買い出しに行かなきゃ。


 一人になっては行けないので、三人で行動することに。

 早速靖子さんはスマホを活用して安い店に行く。


「この時間だとタイムセールをしている所がそこに向かいましょう」


 相変わらず、節約重視の靖子さん。


 まあでもお金は大事だから節約に越したことはないな。

 改めて思うが私は靖子さんを嫁にして良かったと思う。


 貴重品は持ってテントはそのままにして三人でタイムセールをしているスーパーに向かう。


「鶏肉が安いから今日は焼き鳥丼にしましょう」


「焼き鳥丼?」


「本当は親子丼にしたいけれども卵が余ってしまうからご飯の上に焼き鳥を乗せて食べたいんだけど良いかな?」


 想像しただけでそれはそれでおいしそうだ。


 鶏肉を買ってテントに戻った。


 飯ごうでご飯を炊いて、鶏肉を焼き鳥サイズにカットして金網で火をおこして鶏肉を焼く、塩で味を整えて後はお米を炊く飯ごうを待つだけだ。


「そろそろね」


 靖子さんは厚手の手袋を装着して飯ごうの蓋を取り「できあがったわ」


 後はスチール製の丼にお米を入れてその上に焼き鳥を乗せて完成。


 後野菜もとらなきゃ行けないので先ほど買った三つのトマトをそれぞれ四等分して夕食の出来上がりだ。


 気がつけばもう空は真っ暗に染まり花火が打ち上げられた。


 花火のドーンと言う大きな音と共に打ち上げられている。


 リリンが「これが花火と言うやつか、綺麗じゃのう」


「花火なんて久しぶりだよ」


 私が言うと靖子さんは「風流ね」


 こんな美しい花火を見られて私は幸せを感じさせてしまう。


 焼き鳥丼を食べながら花火を鑑賞する。


 そんな時である。


 花火の様子がおかしい、近くにまで押し寄せている。


「何?何かおかしくない」


 周りの鑑賞者も思ったのか後ずさる。


「感じる憎しみが」


「リリンそれってもしかして」


「下がっておれ」


 こちらに向かってくる花火は爆弾のように私たちの所まで火花を散らした。


 だがリリンがケッカイを張って爆弾と化した花火は容赦なく私たちに向けられる。


「アケミの仕業だ」


「そうとしか考えられぬ、雅人、靖子決して我の前から離れるでないぞ」


「雅人さん、あれ」


 靖子さんが指さす方向にリリスと赤ん坊を抱いたアケミが宙に漂っている。


「アケミ、お前のやっぱり仕業だったのか」


 逃げ遅れたのか、小さな女の子が泣いている。

 助けなきゃ。


「雅人ケッカイから外に出るのは危険じゃ」


 分かっている。


 私は女の子を抱いてリリンのケッカイに戻ろうとしたところ、女の子に花火が直撃して、女の子は瀕死の状態に陥ってしまった。


「くそアケミいいいいいい」


 美しく見える花火もこうなっては爆弾のように火花を散らしている。


「さあ吉永雅人絶望するが良い」


「私たちならいざ知らず、何の関係もない人を巻き込むなんて」


 そんな時すべての時がとまった。


 私はアケミの犠牲となった女の子を抱いてリリンのケッカイの中に入っていった。


 そして時が動き出して、容赦ない爆弾と化した花火は私たちを襲うがリリンのケッカイで今はしのいでいる。


「どうなっているんだ。雅人はケッカイの外に出たと言うのに」


「私はお前に屈しない」


 そして花火の攻撃が止まった。


「今日はこれぐらいにしておいてやる」


 アケミとリリスは消えてしまった。


「リリン、この子を助けることは出来ないか?」


 私がそういうとリリンは「その必要はないみたいだ」


 女の子を見ると、花火で重傷を負ったのに傷が癒えていた。


 気を失っているが女の子は大丈夫みたいだ。


「良子。良子」


 この子は良子と言うのか?逃げ遅れた女の子の母親がそう叫んでいる。


 私はお母さんの所に行き、「良子ちゃんってこの子の事ですか?」


「良子」


 抱いていた良子ちゃんをお母さんに差し出した。


「良子」


「大丈夫です。気を失っているだけです」


「ありがとう」


 私に泣きついてお礼を言われた。


 助かって良かった。でも重傷を負ったのにどうして怪我が治ったのか?


「雅人」「雅人さん」


 リリンと靖子さんが駆けつける。


「とにかく負傷者はいなくて良かった」


「奴ら花火師を利用して我らはおろか、その関係もない人間を巻き込んだ。これは重罪だ。よって天罰が下るだろう」


「本当にそうなのか?」今なら言える「リリン私は何者なのだ?」


 リリンの肩を両手で揺さぶり、聞いてみる。


「ちょっと雅人さん。落ち着いて」


 靖子さんが私をなだめるがそんな事も気に入らず、リリンを攻めるように「リリン。私は何者なのだ?」


 するとリリンは倒れる。


 ケッカイを張って力を使い果たしてしまったのだろう。


「雅人さんここを離れましょう。もう大ニュースになっているわ。面倒事に巻き込まれるのはあまり良くないと思うから」


 遠くから救急車の音がする。後パトカーの。

 あの子問わず被害に遭った人は何人かいるだろう。


 靖子さんは急いでテントを畳み、私はリリンを背負ってその場を後にした。


「今日はビジネスホテルに泊まろう」


 私が疲れた表情で言うと、節約癖の靖子さんは了承してくれた。


 ビジネスホテルで受付をすまして部屋に入り、ベットの上に疲れ果てたリリンを寝かせた。


「靖子さん私は害悪なのだろうか?」


「そんな事はない」


 私はいきり立って「どうしてそんな事が言えるの?アケミに狙われているのは私だけなんだよ。

 今日の花火大会だって負傷者や死亡者がいてもおかしくないと思うよ。

 靖子さんもリリンも私がいる事で巻き添えを食らっている。

 靖子さんもリリンも、もう私に関わるのはよした方が良いよ」


「本気でそんな事を言っているの」


「ああそうだよ。私と関わるとろくな事がない」


 すると靖子さんは私にピンタをした。


「そんなことはない。雅人さんに出会えて私は嬉しかったよ。

 それに花火で被害に遭った人はいなかったみたいよ。

 だから雅人さんはそんな悲しい存在じゃない」


 と靖子さんは涙する。


 花火で被害に遭った人はいなかった事を聞いて、私は立ち直った。

 でも靖子さんが泣いている姿を見て、胸が締め付けられる思いをした。

 私はそんな靖子さんを抱きしめた。

 靖子さんは嗚咽を漏らしながら大泣きした。


 リリンの言うとおり私が何者かは分からないが、悪い者ではないと言う言葉がよぎった。


 ビジネスホテルのベットで私と靖子さんは抱き合いながら眠った。


 そして必然的に朝を迎える。


 私と靖子さんは起きれたが、リリンが昨日力を使い果たしたせいか?起きようともしなかった。


「リリン。朝だよ起きて」


「ふむ」


 リリンに疲労が感じられる。


「リリン立てる?」


「ふむ大丈夫じゃ」


 ビジネスホテルの朝食は軽いバイキング形式になっていて私とリリンと靖子さんで適当に腹ごなしをした。


 私も靖子さんもリリンも朝食をとって元気になれた。


 ビジネスホテルを出てこれからどこに行くか話し合ったところ日本最北端の稚内に行くことになった。


 早速稚内行きの電車に乗り、創作活動をするが、私は昨日のことが頭から離れず、小説を書こうとしてもかける気がしなかった。


 これではまたリリンや靖子さんに心配され気を使われてしまう。


「雅人さん」


 靖子さんに振り向いてみると、靖子さんは変顔をして私はそれがつぼにハマり爆笑してしまった。


「何それ靖子さん」


「元気出してくれましたか?」


 そこでリリンが「どうしたと言うのじゃ」


 すると靖子さんはリリンの方を向いて変顔をした。


「靖子、何じゃそれは?」


 リリンもツボにハマってしまったみたいだ。


 靖子さんのおかげで少し気が晴れてきた。


「よし、書くぞ」


「あんまり無理しないで下さいね」


 どうやら靖子さんに気を使わせてしまった。

 でも私達は夫婦だ。お互いに助け合わないとね。


 いつもの調子は出なかったが、何とか少し書けた。

 そして稚内に到着した。

 到着したのはお昼頃で私たちは昼食をとることにした。

 駅を出るともう自然しかない場所だった。


「駅前にラーメン屋があるから、たまには外食も良いでしょ」


 私が靖子さんの許可を取る。


「そうね。この辺は何もないところだからね」


 そういう事でラーメン屋に入った。


「らっしゃい」


 と活気の良いお出迎えをしてくれる店員さん。


 お客は私達以外にいなかった。


「お客さん達見慣れない顔だね、どこから来たの?」


 そういわれて私が困惑していると靖子さんが「東京から来ました」と適当な事を言う。


「東京ね、はるばる飛行機で来たのかい?」


「まあそんな所です。それとオーロラを見に来ました」


 そんな事は僕もリリンも聞いていないぞ。


「お客さん達オーロラなんて滅多に見れるものじゃないぜ」


「でもそれが目的で来ました」


 また適当な事を言う。


「さあお客さん達座った座った」


 席に促され私は醤油ラーメンでリリンと靖子さんは味噌ラーメンを頼んだ。


 私は亭主に聞こえないように「本当にオーロラを見に行くの?」


「もちろん私はそのつもりで」


「でも店員さんの話によるとオーロラなんて滅多に見れないものだって言っていた」


「日本にはこれ以上の北はないわ。私達の旅はとにかく北へ向かいながら創作活動をしてきたけれど、これからどうする」


 そこでリリンが「これからは南に向かって旅をしながら創作活動を始めるのはどうじゃ?」


 そこで一つ心配事が「またアケミ達に襲われないかな」


「まあどこにいても奴らは我らを監視している。どこかに止まるのは危険じゃ。じゃから旅をしながら創作活動を始めてみてはどうじゃ」


「いっそ海外にも出るのはありかな?」


「海外に居ても奴らは我らを狙ってくる」


 私は怖くなってきた。またアケミに狙われる事を。


「大丈夫じゃ雅人、創作活動をして我がその魂を感じ取り、力を蓄える事が出来る。そうすれば雅人達を守る事が出来る」


「いつもリリン助けてもらってばかりで申し訳ないな」


「何を今更、我も雅人達の魂を感じ取れて力にする。いつもの事じゃろう」


 語り合っているときラーメンは運ばれて来た。


「へい、お待ち」


 それぞれ注文した品が運ばれてきた。


 そして靖子さんは「さていただきましょう」


 私たちは『いただきます』と言ってラーメンをすすった。


「おいしい」と私が言うとリリンも靖子さんも同じ事を言っていた。


 そこで亭主が「良いねえ、ご家族そろって旅行なんて。俺っちのラーメンおいしいかい?」


「おいしいです」


 靖子さんが言う。


 ラーメンも食べ終わって、さっき言った通り、オーロラを見に稚内、いや日本の最北端の場所へと歩み寄った。


「本当にオーロラを見に行くの?」


 私が言うと靖子さんは「もちろん」


「でもあのラーメンの亭主が滅多に見れないって言っていたじゃん」


「行くだけ行って見ましょう」


 私達はオホーツク浜辺へ歩いて向かった。


「オーロラって寒い日じゃないと見れないんじゃない?」


「そう思ったんだけど、ネットで調べたら一年中二十四時間見られる時は見られるみたいよ」


「雅人、靖子、オーロラって何だ?」


 そこで靖子さんは「オーロラって空に瞬くエメラルド色の光のカーテンみたいなものよ」


「そんなに綺麗なのか?」


「昔プラネタリウムでしか見たことがないけれど、すっごく素敵だった。見た人の話を聞くと本物はすっごく綺麗みたいよ」


「一年中二十四時間見られるチャンスはあると言うことか?」


「とりあえず今日はこの浜辺でテントを張りましょう」


 早速靖子さんは荷物を下ろしてテントを組み立てる。

 テントが立ち上がり私達はテントの中で創作活動をしながらオーロラが見れるかどうかしばしば外を見た。


 空は雲一つない天気、でもオーロラが輝く気配はなさそうだ。


 そして夕刻になり日が沈みそうな時に空にエメラルドの光のカーテンが見えた。


「靖子さん、リリンオーロラが輝いているよ」


「えっ本当に?」


「誠か雅人」


 二人もテントの外に出てオーロラを見る。


 私もそうだが開いた口が塞がらず、二人は驚いている。


「これは凄い。我も見るのは初めてじゃが、心の底から魂が溢れ出そうだ」


 この綺麗なオーロラを見て私は本当に生きていて良かったと思えた。


 これから南に向かう門出のような気がした。


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