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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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結婚式

 どうしてアケミは私が幸せだとかたはら痛いのだろう?

 その訳が分からない。

 そんなに私の事が憎いか?

 確かに私はアケミに許されぬ事をしてしまった。

 でも自分で言うのも何だが、もう許されていても良いはず。


「アケミに手を出すな」


 リリンが叫ぶ。

 どうしてと言うように私はリリンの目を見た。


「これ以上アケミに憎しみをエネルギーとするリリスに力を与えるだけじゃ」


 私たちを襲ってくるアケミを殺してしまいたいほどの憎しみが私の中で生まれてきた。


「雅人も憎しみに刈られてはいけない。リリスの力が増すだけじゃ」


 リリスと拮抗して戦っているリリンは言う。


 そこで靖子さんは「じゃあ私達はどうすれば良いの?」と叫ぶ。


「ただ我を信じてくれさえしてくれれば良い」


 拮抗して戦っているリリン。

 そんなリリンに対して私は一つの事を思いついた。

 憎しみに打ち勝つには聖なる力だと。

 その聖なる力と言うと私たちがネットで公開したネット小説を読んでくれた人たちの力を利用は出来ないか試してみる。


「靖子さんスマホを貸してくれないか?」


「良いけれども何に使うの?」


「ごめん説明は後だ」


 靖子さんのスマホを借りて、私たちが公開しているネット小説のブログにたどり着いた。


 アクセス回数を見ると軽く十万は越えている。

 さらに様々な感想などが寄せられている。

 そのスマホを天に掲げた。


「リリン見て見ろよ。お前がいつも魂を感じて見ている小説はその人の心を寄せ付けて見ている人がこんなにもたくさんいるんだぞ」


 その時リリンに変化がある事に気がついた。

 リリスがエネルギーとする憎しみを圧倒する強さをリリンは圧倒している。


「やってしまえリリン」


 圧倒したリリンはリリスの大釜を引き裂いた。

 リリンはリリスにとどめを刺そうと大釜をリリスに向ける。


「おのれ~」とアケミが叫ぶ。


「万事休すだアケミ、これ以上私たちに関わる事をしないなら、ここで手を止める」


「ふん」


 アケミとリリスと赤ん坊は消えていった。


「逃がしてしまったか」


 私が言うとリリンが「凄いぞ雅人、この力はいったい」


「それは憎しみに打ち勝つ方法を見つけた訳だよ。ただ私はリリンに憎しみに打ち勝つ聖なる力を分けただけだよ」


「そういう事か」


 とリリンは召還した大釜を消して私に抱きついてきた。


「おうおうリリン」


 そこで靖子さんが「さすがは私が見込んだ事のある人だとは思っていたけれどもね」私に頬にキスをしてくれた。


「これでもう恐れる物はない」


「いや、雅人よ。アケミはまたやってくるぞ」


「でも私達にはリリスの憎しみを越える私達が描いた小説の力がある」


「だがそれは力で踏ん切っただけで何の解決にもなっていない」


 リリンの話を聞いて落ち込んだ。


「まあ、そんな魂は雅人には似合わぬ」


 そこで私は靖子さんに真摯に向き合う。


「靖子さん。もう私達に関わらない方が良いよ」


「どうして?」


「どうしてってあんな危険な目にあったんだよ。これ以上私達に関わると、命の危険まで脅かされるよ」


「あら、私と雅人さんは婚約したんでしたよね」


「ああ、確かにした。でも婚約を破棄させてくれないか?」


 自分でも言っていて辛くなってくる。

 せっかく私に幸せがやってきたと言うのに。


「雅人さん」


 私の両手を掴んで靖子さんはそれを胸に寄せる。


「私はそんな半端な覚悟で婚約に望んだんじゃない」


 ギラリと光ような鋭い視線で私に言う。さらに「私を甘く見ないで」


 そういって靖子さんは私を抱きしめてくれた。

 靖子さんの鼓動を胸に感じて、私の心はときめいた。


 彼女は遊びじゃない。本気で私のことを愛している。


「私は雅人さん以外の人を愛せない。雅人さんが私の事を拒むなら私は雅人さんのストーカーになっちゃうんだから」


 ストーカーと聞いて私は靖子さんにアケミにしてきたことを話した。


 私がアケミに無我夢中でアケミを追いつめた事や、自殺にまで追い込み、殺そうとした事。


「それはさすがに最低ね」


 靖子さんの台詞に心が壊れそうになった。


「そうだよ。私は最低な人間なんだよ。だからこうして靖子さんと・・・」『いる事事態最悪なんだって』と続けようとしたところ私の言葉を遮るように唇に人差し指を添えた。


「自分の罪を反省している雅人さん。最高です」


 再び私に抱きついた。


「確かに雅人さんのやった事は許されない事かもしれないけれども、私が許します」


 靖子さんの言葉を聞いて涙がこみ上げてきた。

 男の私が涙を見せるのはあまりよろしくないので、靖子さんの顔からそっぽを向いた。


「我の事も忘れるでないぞ」


 リリン。


 思えばこうして靖子さんと婚約できたのもリリンのおかげ何だよな。


 そんなリリンを抱き上げて「よーしこれからも書きつづってやるぞ」


「その調子だよ雅人さん」


「それよりも雅人、お腹が空いたぞ」


 気がつけば海の向こうから日が沈みそうな程夕暮れで私達はたそがれた。


 それは色鮮やかで私たちの婚約を祝福しているようにも思える。


「雅人さん。あそこに教会がありますよ」


 靖子さんが指さす方向に教会があった。


「あそこで結婚式をあげませんか?」


「ええ、いきなり?」


 リリンは「それは面白いのう。やるが良い」





 ******   ******





 教会に入り、早速結婚式の段取りに入った。


「私一度で良いからウエディングドレスを着てみたかったんだよね」


 靖子さんが言う。


「私も一度で良いから結婚式をあげる人と結婚したかった」


「我も祝福をするぞ」


 今日はもう遅いので明日結婚式をあげる私たちは教会の寝室に招かれて過ごす事になった。


 結婚式前夜私は眠れなかったので、寝室から出て海を眺めた。


 本当に本当に私は幸せ者だ。


 あのしっかり者でわりと綺麗な靖子さんと婚約して結婚式をあげてしまうなんて。


 本当に夢のようだ。


「どうした雅人眠れぬのか?」


 リリンがテラスにやってくる。


「うん。本当に夢のような事だからね」


「これは夢でも何でもないぞ。現実そのものじゃ」


「うん分かっている。本当にこんなに幸せなのはリリンのおかげだよ」


「ふむ、そう言ってくれるか」


「だってあの時私が深い森の中で・・・」私が続けようとしたところリリンがそれを遮るように口を挟んだ。


「あまり暗い過去を思い出すものではない」


 と。続けて、「さあ、明日はめでたい日じゃ。明日に備えて眠るとしよう」とリリンが言うから私も眠りについた。


「さて本当に明日が楽しみだ」




 ******   ******




 翌日、私はスーツ姿にお手入れさん達に整わされた。


 そんな自分の姿を鏡で見てみると、私も大分老けたなと言った感じだ。


「雅人さん」後ろから靖子さんの声が聞こえて振り向いてみると何と靖子さんは純白のウエディングドレスに身を包み、思わず見取れて言葉をなくしてしまった。


「どうかな雅人さん」


「うん。似合うよ」


 化粧もナチュラルメイクでされており、靖子さんっていつもワイルドな感じだが、こうしてお化粧なんかしているのを見ると、本当に胸がときめいてしまう。


「えへへ」


 なんて照れている靖子さん。


 そして式は行われた。


 何の曲だが知らないが明るい祝福にふさわしい音楽が流れて、私と靖子さんは教会の扉を開いて、一歩一歩闊歩して行く。


 一つの拍手がわき起こる。


 リリンだ。


 そして神父の前まで行き、神聖なる儀式になる。


「汝、雅人よこの靖子を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も病める時健やかな時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、誓いますか?」

 

「誓います」


 私はきっぱりとそういった。


「汝、靖子はこの男を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添う事を、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」


「誓います」


 と靖子さんは言う。


「お二人の上の神の祝福を願い、結婚の絆がよって結ばれたこの二人を神が慈しみ深く守り、助けてくださるように祈りましょう。

 宇宙万物の作り主である父よ、あなたはご自分かたどって人を造り、夫婦の愛を祝福してくださいました。今日は結婚の誓いをかわした二人の上に満ちあふれる祝福を注いでください。

 二人が愛に生き、健全な家族を造りますように。

 喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように。

 また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように。

 アーメン

 それでは誓いの口づけを」


 靖子さんは目を閉じてちょこんと唇を差し出した。

 そしてゆっくりと靖子さんの口元へ私の唇を差し出す。

 そして唇が重なった時に神父は言う。


「ここに新たな夫婦が誕生した。みなよ祝福を」


 リリンそしてシスター達に祝福を受けて、色とりどりの料理が運ばれてきた。


「雅人おいしそうな料理だな。食べても良いのか?」


「ああ、食べなよリリン」


 リリンは食べることで夢中だ。

 リリンは私と靖子さんの子供となったのだ。

 私たちはいわばソウルメイトであり魂が導かれてここまでやってきた。


「私思うんだけど、家族になったからには苦労を共にできる関係でいたいな」


 靖子さんは理想を言う。


「私もそう思う。これから連中が何をしてくるか分からないが、その時は私が靖子さんとリリンを守る」


 そういって握り拳を作る。

 すると靖子さんは私の拳を優しく包み込むようにそっと撫でてくれた。


「頼もしいわ雅人さん」


「これからもお互いに良い作品を作りながら旅に出よう」




 ******   ******



 質素な結婚式だが私はそれだけで幸せだ。それも終わり私達は北へ旅するんだった。

 まさに旅そのものが新婚旅行のような物だ。


「靖子さん。忘れ物はない?」


「大丈夫だよ」


「じゃあリリン靖子さん行こうこれからが大変な所だ」


「分かっておる」


 私達は教会の神父達に見送られ旅に出た。

 教会を出ると鮮やかな海が見渡せて心地良かった。


 いつか私たちが描いた小説がこの海を渡り、世界に広まってくれれば良いとさえ思っている。

 いやネットを通して世界には配信しているのか。

 それに私達の小説が受賞したと聞いた。

 その証拠に靖子さんのスマホを見せてもらって嘘みたいだが本当のようだ。


「雅人さんメールで選考委員の人たちが会いたがっていると言っているけれど、どうする?」


「その選考委員達はどこにいるの?」


「その気になればあちらからこちらに向かってくるって言っている」


「じゃあ、申し訳ないがこちらに来てもらう事にしよう」


 早速靖子さんはお昼に仙台の町のとある喫茶店に待ち合わせをした。


 その間、私達はそこの喫茶店に二足も三足も早く待ちながら、創作活動に打ち込んだ。

 リリンは私たちが打ち込んでいる創作活動の魂を味わっている。

 結婚してからも今までと同じだ。

 でも靖子さんと結婚したのは良いけれど、私はまだ靖子さんと一線を越えてはいない。

 その一線を越えたいと言えば靖子さんは全身を身を持って差し出してくれるだろう。

 でも私は今はそのような事をする時ではない。


 色々と創作活動をしていると空いているお店にお客が入ってきた。

 スーツ姿の男性が一人入ってきた。


 その男性が選考委員の関係者だと分かった私たちは早速誘導した。


「靖子さんと雅人さんですね。それと・・・」リリンの方を見て私は「私達の子供です」


「ほほうかわいいお子さんですね」


「遠い所からわざわざ来てくださいましてありがとうございます」


「とんでもない。お二人の作品を見させていただきました。それと私はこうゆう者です」


 名詞を私たちに差し出した。


 文術者編集者 前原 一


「早速本題に入らして貰いますが、あなた達の作品を見て満場一致で選考委員達は太鼓判を押しました」


「本当ですか?」


 疑いのまなざしで前原さんを見た。


 すると靖子さんは私に肘を脇について悶絶する。


「雅人、失礼じゃないせっかく東京から行らしてくれたのに」


「ごめんなさい」


「疑われるのも無理もありません。この手の詐欺は結構文芸会では蔓延していますから。それと」


「それと?」


「これは受賞金です」


 厚い封筒を私たちに差し出す。


 私は受け取り、中を見てみるとすべて万札であった。


 どうやら信用しても良いような感じになった。 


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