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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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再び北へ

 向かう場所は北だ。これから暑くなるのだから良いかもね。

「じゃあ靖子さん、危険な旅になると思うけれど覚悟は大丈夫ね」

「くどいですよ雅人さん。私はワクワクしてたまらないのですから」

 親指を突き上げて言う靖子さん。

 この人はバカなのか、分からないがもし何か起こったら、助け出せる余裕は有るだろうか?

 でも女の子と旅か、靖子さんは綺麗だし、こんな人と旅が出来るなんて私の人生も捨てたものじゃない。

 もしかして靖子さんは私の事を・・・。

 そんな訳ないな。

「じゃあ行き先も決まった事だし、そろそろ東京行きの電車が来るから、みんな準備は良い?」

「OKよ」

 靖子さんはウィンクして言うのだから、心臓が飛び出そうな感じがした。

 そこでリリンが「二人の魂を我は堪能出来るのじゃな」と嬉しそうだ。

 早速名古屋から東京行きの電車がきて私達三人は乗り込んだ。

 私は手書きで小説を書き、リリンを挟んでそのとなりで靖子さんはスマホで絵を描いていた。

 何を描いているのか気になったが、そんなことで気が散ってしまったら本末転倒なので私は私が出来ることを靖子さんは靖子さんが出来る事をすればいいと思って一生懸命に小説を描いていた。

 私と靖子さんの間にいるリリィは気持ち良さそうな顔をしてどうやら私と靖子さんの魂をじかに感じているみたいだ。

 名古屋から東京まで約三時間、東京に到着した時はもう空は茜色に染まり時計は19時を示していた。

「んんっと」

 靖子さんは座席から立ち上がり大きな伸びをすると「雅人さんと一緒にこうして描いていると凄く楽しくかけて、良いのが出来上がりました」

「靖子よ。お主の魂も感じていたが雅人よりも劣らずとも勝らぬ感じじゃ。二人の魂を感じて我に力を皆切らせてくれるのじゃな」

「靖子さんと私の魂とどっちが良かったの」

 私は思わず言ってしまった。それってつまり靖子さんに嫉妬しているように聞こえてしまっている。

「何を子供みたいなことを言っているの?」

 靖子さんが私の気持ちを看破する。

「とにかく二人とも食事にせぬか?」

 リリンの言う通りそろそろ夕飯時だ。

「そうですね。そろそろ夕飯にしますか」

 と靖子さんは言って、私は「とりあえず私は宿を探しに行きますよ」

「宿ってあなた達そんな贅沢をしているの?」

「贅沢も何も安い宿を私達は探しているのですけれども」

 すると靖子さんはスマホを取り出して歩いていくのを私とリリンは『この人はこれからなにをするのだ』と言うような目で靖子さんの後を追っていた。

 上野公園に到着して靖子さんは「この辺で良いかしら」大きなリュックからテントを取り出した。

 私は驚いて「もしかしてテントで野宿するつもりですか?」

「行けない?」

「いや、いけなくはないですけれど」

「食料はスマホで調べて安い奉仕ストアがあるの、テントを張ったらそこまで行きましょう」

「はい」

 靖子さんに余りスマホを使わすのは危険じゃないかと言ったが、靖子さんのスマホは特殊で逆探知出来ないようになっているみたいだ。

 靖子さんの後を追っていくと、奉仕ストアーにたどり着いたら、夕飯の買い出ししている主婦達でごった返していた。

「今日は適当にパスタでも作ってあげようか」

「はい」

「パスタとはなんじゃ」

 リリンはパスタも知らないみたいだ。

「パスタとはねえとても美味しいおそばみたいな物よ」

「それって美味しいのか?」

「私が美味しく作って上げる」

「やった」

 五百グラムのパスタが八十八円で売っていて、その他にもペペロンチーノを作るつもりで、その元を買っている。

 お会計は百八十円ちょっと言ったところだ。

 そして私達はテントを張った場所まで歩いていく。

 到着して「雅人さん、この鍋にお水を入れてきて」

と中型の鍋を渡されて公園のお水を注いでテントの張った場所まで戻って行く。

「持ってきましたよ」

「グッジョブ雅人さん」

 靖子さんはコンロに火を立てている。

 その上に水をくんだ鍋をそっとおく、「さて靖子特性ペペロンチーノをご馳走するわ」そう言って水のなかに一筋の塩をいれていく。

 しばらくして水は沸騰してそのなかに先程買った五百グラムのパスタをまるごと入れていく。

「これで十分たったらでき上がりよ」

 十分が経過して、金網に沸騰したパスタを茹でたお湯を棄てて、よーくお湯を切りまたから鍋に入れてペペロンチーノの元をいれて醤油を入れて完成見たいだ。

「さあ、二人ともこんな物しか食べさせてあげられないかもだけど味は確かよ」

 三枚重ねた金属のお皿にフォークを乗せてご馳走してくれた。

 食べてみると案外美味しい。

「靖子よ。これは美味しいぞ」

「でしょ。おかわりあるから遠慮なく言ってね」

「靖子さんっていつもこうして旅を続けているの?」

「まあね。昔から私は男勝りだったの」

 何てワイルドな人なんだろう。

 そんな靖子さんを見ていると靖子さんに恋に落ちてしまいそうで、気持ちが高ぶってきた。

「どうしたのですか?そんなに私の事を見つめちゃって」

「いや別に」

 やばい。このような人って勘が鋭いから心を読まれたのかもしれない。

「とにかく次はお風呂ですね」

 靖子さんはスマホを取り出して、銭湯を探して見つけたらしい。

「もう二日もお風呂に入ってないですからね。雅人さんも銭湯に行きますよね」

「はい。リリン銭湯に行くから用意して」

「銭湯とはなんじゃ?」

「お風呂だよ」

 と言ってあげた。

 早速靖子さんの提案で銭湯に行くことになった。

 テントはそのままにして貴重品だけを持参して銭湯に向かった。

 銭湯は初めてではなく何度か小学生の時に行った事がある。

 靖子さんはスマホを操作しながら行き場所の銭湯まで歩いていく。

「到着」

 銭湯に到着した。

 ここで男と女に別れる。

「リリンは靖子さんと一緒に入ってね」

「ふむ」

僕は男でリリンと靖子さんは女湯へと入って行く。

男湯に入って行くと刺青をしたおっさんがちらほらといて私はちょっと怖かった。

 女湯から声が聞こえて来る。

「リリンちゃん綺麗な体をしているのね」

 靖子さんの声が聞こえて来る。

「靖子こそ大きなおっぱいじゃな」

「昔から胸だけは大きいんだよね」

「そんなことはないではないかプロポーションだって良い」

「もうリリンちゃんったら」

 リリンが改まった声で「靖子よ雅人の事をどう思う?」

「まあ、熱い人だとは思うな。本当にまっすぐで飾らず素直な人だね」

 靖子さんの言葉に心臓が激しく高鳴る気持ちに駆られる。続けて、「小説を読んで分かったけれども、優しくて純粋な人だと思うよ」

「そうか」

 とリリンは言う。

 聞こえてないのが気づいていないのか、聞いては行けない事だと思って女湯に向けて「聞こえたいるよ」と言った。

「何じゃ雅人よ聞こえておったのか?」

「ならば裸の付き合いで語り合おうじゃないか」

「回りの人に迷惑がかかるからお風呂から出た後にでも聞くよ」

「それもそうじゃな」

 一通り体を洗い牛乳でも飲んで二人が出て来るのを待っていたかったがお金を節約するために牛乳は飲まなかった。

 それよりも二人とも遅いな。

「待たせたな雅人よ」

 振り替えるとリリンの長い髪は一本の大きな三つ編みになっていた。

「リリンそれ似合うな」

 すると靖子さんは「雅人さんは女心が分かりますね。」

「ふむ、靖子にやってもらったのだ」

 そして靖子さんは眼鏡を取ると可愛く、お風呂上がりの色っぽい女性であり、心臓がびくんと音をならした。

「何をジロジロ見ているんですか?」

「見てない見てない」

「まあ、いいわそんな雅人さんに牛乳を御馳走してあげましょう。リリンちゃんもね」

「そんな悪いですよ」

「遠慮なんてしないの」

 そう言って靖子さんは牛乳を3本買って私とリリンに一本ずつ差し出した。

 靖子さんが一気に牛乳を飲む姿は豪快でたくましく私の心を奪うような感じだ。

 私もリリンもご馳走になりゆっくりと飲む。

 お風呂上がりの牛乳は最高だ。

「どうですか二人とも」

 靖子さんが言う。

「うん牛乳ご馳走さま」

「美味しいぞ靖子」

 お礼言う私とリリン。

「そうじゃなくてこれからの旅ですよ」

「旅かあ、不安はあるけれど、正直靖子さんがついていて、助かりますよ」

 すると靖子さんはじっと私の事を見つめてきた。

「靖子さん?」

 そのように見つめられると私も胸が張り裂けそうな感じになる。

「ふふ」

 と意味深な笑みを浮かべて「そろそろ行きますか」牛乳も飲んだことで靖子さんはそう切り出す。

 私達はテントに戻りあいにく寝袋は一つしかないので靖子さんとリリンが使うことになった。

 私は靖子さんに気を使わせてもらわれ、靖子さんの二三枚のトレーナーを布団代わりにして眠ることになった。

 本当に頼りになるよな靖子さんは。

 リリンの予言によると靖子さんは狙われているそうだ。

 私にはもう本格的な夢が発動している。

 靖子さんにとってもそれは同じだ。

 ふと寝袋にリリンと共に入って眠っている靖子さんの寝顔を見ると、麗しさを感じる。

 こんな人が私の妻だったらなあ。

 しばらくそんな靖子さんの寝顔を見つめて私は眠りにつくことになった。


 私は靖子さんに体を揺さぶられ、起こされた。


「どうしたの靖子さん」


「ラジオ体操の時間です」


「ラジオ体操?」


「そうラジオ体操」


 布団代わりにしていた靖子さんのトレーナーをどけてテントの外に出ると、リリンはもうすでに起きていて、ラジオ体操の歌が靖子さんの物と思われるラジオから流れている。


 ラジオ体操は私も子供の頃の夏休みにやった経験があり、流れてくる体操の声にあわせて体操をする。


 ラジオ体操が終わり、時計は六時四十分を示していた。

 

「靖子さん。いつもラジオ体操をしているのですか?」


「うん、まあ、小学校からおばあちゃんと一緒にね」


 寂しそうに視線を逸らして言う靖子さんはきっと何か心に闇を感じた。

 でもその事にいずれ触れる事になると感じた。


 私は正直靖子さんに運命を感じる。


 どんな運命なのかは分からないけれども、せめて悲しい運命にはさせたくないと私は人知れずに思う。


「リリンちゃんはラジオ体操は初めてかあ」


 靖子さんが言う。

 リリンはラジオ体操を靖子さんをまねてやっていたからな。端から見たら変な踊りを踊っているようにしか見えなかったがそれは仕方がないことだ。


 靖子さんと旅することになり二日目、東京を離れる。


 思えば靖子さんと出会ったのは熱海だったっけ。


 連中に襲われそうになり、突然瞬間移動をしてたどり着いてお祭りを堪能して、そこで寝泊まり、そこからバスで熱海に向かい靖子さんの店にたどり着いた。

 それは運命的な出会いだが、何度も思うが残酷な運命にだけにはしたくない。


「さて朝食も作っちゃいましょう」


 フライパンのような二枚の構造になっていて一枚一枚にパンを乗せて間に卵とベーコンを挟んでバーナーで焼く。


「靖子さんは何でも出来るんですね」


「そんな事はないですよ」


 朝ご飯が仕上がり、パンを両面フライパンで卵とベーコンを挟んだサンドイッチの出来上がりだ。


「二人とも野菜もとらなきゃですよ」


 私とリリンにトマトを一つずつ差し出した。


 卵とベーコンで挟んだサンドイッチはそれはもう格別なおいしさだった。


「おいしいぞ靖子よ」


 リリンがおいしそうに食べている。


「そういってもらえると冥利に尽きるよ」


「雅人よ、靖子みたいな女性なら、ツガイとしてどうじゃ」


 急にリリンが変な事を言うから私はむせてしまう。


 靖子さんの反応を見てみると、「フフッ」と意味心にも笑っていた。


 朝食が済んでテントも畳んで、靖子さんは「これでよし。さあ北へ行きましょう」


 私達は上野公園を後にして上野駅へと向かう。


「とりあえず北へ向かうなら、高崎線で高崎まで向かいましょう」


 靖子さんはそう提案する。


 切符を買って改札口をくぐり抜けて、高崎線のホームに向かった。


 電車は十分で到着して、私達は乗り込んで、リリンを間に私と靖子さんは座って、それぞれ作業に取りかかる。


 私が小説を手書きで書き、靖子さんはスマホのアプリで絵を描いている。


 高崎に到着するまで、あっと言う間で到着して、私と靖子さんはそれぞれ創作に没頭して、その熱き魂をリリンが堪能していたのだ。


 気がつけばもうお昼が近づいてきた。


「少し早いけれども、昼食にしませんか?」


「そうですね」


 と靖子さんはポンと手を叩いて、どこかに安い奉仕ストアーがないか検索してみますね。


「いつも助かりますよ」


 私が言うと靖子さんはウインクした。


 そんな靖子さんを見て心臓が破裂するほど高鳴っていた。



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