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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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絶望の一歩手前

「雅人よ。辛かったのじゃろう」

 何だよ。どうしちゃったのかな?涙が止まらない。

「雅人よ」

 リリンは穏やかな瞳で私を見る。

 そんな目で見られると余計に涙が込み上げてくる。

「とにかく雅人よ冷めないうちに食べてしまおう」

「そうだね」

 大切な人と食事は料理を美味しくしてくれる最高の香辛料。

 私は涙を流しながら食べた。

 廃棄寸前でもこの上なく美味しく感じた。

 食事もすんで私とリリンは銭湯まで足を運ぶ。

 まだリリンは幼い感じだから、私と同じ男の湯に入ることにした。

「雅人よ背中を流してやるぞ」

「じゃあよろしく頼むよ」

 リリンに背中を向けてリリンは私の背中を流す。

 その後に私はリリンの白髪の髪を丁寧に撫でるように洗ってあげた。

 町を歩いているとリリンはかなり目立つ。

 まるで異国から来た美幼女って感じだからな。

 その後に湯船に浸かり、お風呂から出て、リリンの白髪の長い髪をドライヤーで櫛ですくいながらかけた。

「ふむ。雅人よ、ありがとう」

 髪も乾きリリンは下着を身につけて、以前私が買ってあげた白いワンピースを着用した。

 そのワンピースを見ると大分汚れているのが分かる。

 宿に戻り、リリンの汚れた下着とワンピースを脱がして、石鹸で濯いで洗ってあげた。

「雅人よそこまでしてくれるのか?まさに至れり尽くせりじゃのう」

「とにかく風邪引くといけないから布団の中に入っていて」

 そう言って布団を投げつける。

 そうだった布団は一つしかなかったんだっけ。

 するとリリンが私に布団を被せて、その中に自分も入り、「布団は一つしかなかったのだろう。雅人は優しいから、自分だけ入らずに我に譲るつもりだったのだろう」

「いやそれは・・・」

 何て言い返せば良いのか解らずしどろもどろとなっていると「隙あり」と言って私に布団を被せて、布団の中でもごもごと暴れるリリン。

「分かったから。よせリリン」

 お風呂に入ってまた暴れて汗をかいたら元も子もなくなる。

「良いから、大人しくして」

「大人しくしてほしいなら、恥ずかしがらずに我と布団を共にしろ」

「分かったから、分かったから」

「よろしい」

 ああ、素っ裸のリリンと眠ることになってしまった。仕方がないな、それに私はリリンの裸を見たってなんとも思わないし、いや素っ裸のリリンと眠るのはちょっとそれは・・・。

 結局素っ裸のリリンと眠ることになってしまった。

 外に接地されている乾燥機にリリンの唯一の服と下着を乾かす為にさらしている。

 気持ち良さそうに眠っているリリン。私の腕をしっかりと握って眠っている。リリンのお腹に当たって何かこそばゆい何かを感じる。

 この子が私の娘か、こんな可愛い子が娘だったら、人生勝ったも当然だな。

 それよりも今日も本当に疲れていて、睡魔が襲って来て私は眠りについた。

 明日もきっと何か良い事がありそうでわくわくしている。

 早く明日にならないだろうか?

「そんなに急かさなくても明日は当たり前のようにやって来る」

「リリン?」

 リリンは起きているのかと思って、見てみるとすやすやと寝息をたてて眠っている。どうやら寝言を言っていたみたいで、そんなリリンに何か幸せを感じてしまった。

「おやすみリリン」






 必然的に朝日は昇る。

 太陽の光に瞳をくすぶられ私は目覚める。

 リリンの服も乾いている。

「リリン。朝だよ起きて」

「はうわ」

 どうやら寝ぼけているみたいた。

 さあそれを着て朝ご飯を食べに行くぞ。

 リリンはおもむろに下着を着て一張羅の白いワンピースを着てる。

「雅人よ着替えたぞ」

 まだちょっと寝ぼけぎみだ。

 そんなリリンを抱っこして、「さあこの民宿は朝御飯のサービスがあるからね、そこまで抱っこしてあげるよ」

「それはかたじけない」

 朝御飯のサービスはロールパン二つにコーヒーだった。

 食堂に行くとそれはあった。

「さあリリン、コーヒーを飲んで眠気を吹き飛ばそう」

「何じゃお主よ、今日はやけに元気が良いのう」

 そう言いながらリリンも眠気が取れて来た感じだった。

「さあ朝御飯にしよう」

 食堂には無愛想なオバチャンがいて私とリリンをちらりちらりと見て私が「あの朝御飯のサービスは?」と私は何故か恐縮してしまった。

 するとその無愛想なオバチャンは「んん」顎で用意してあるパンとコーヒーを示した。

 何か気分が悪かった。

「今朝から乾燥機を使っていたのはあなた達ね」

 リリンが怯え、小声で「なんたるいびつな魂じゃ」と言っていた。

「二百円」

 と言って手を出す。

「何二百円って?」

「乾燥機使ったでしょ」

「はあ、だからってお金を取るんですか?」

「当然でしょ。ここで千円で泊まって置いて、乾燥機をただで使うなんて図々しいにも程があるわ」

 そこでリリンが「雅人よ払っておいた方が良さそうじゃ」と珍しくリリンは怯えていて私は渋々ながら二百円を払った。

 さらにリリンは「このまま朝御飯を食べずに行きたい。あのような良からぬ魂は苦手じゃ」

 リリンがそう言うなら「分かった」と小声で言って「じゃあオバチャン私達はこれで」

「とっとと行きな!」

 リリンは逃げるように泊まった部屋を忘れ物はないか確認して出ていく。私も追いかけて行きリリンにも苦手な人はいるのだと初めて分かった。

「リリン、大丈夫?」

「我は大丈夫じゃ。あれはまさに大魔女じゃ。あのような人間と関わるとエネルギーを吸いとられるぞ」

 リリンが言う大魔女かどうかはさておいて私もあのようなオバチャンは苦手だ。私の子供の頃にオバタリアンと言う言わばオバサンの化け物がいたっけ。まさにそれだ。



 旅支度も完了して私達は北へ。

 駅に向かう途中に朝御飯を食べられなかったのでそこで私は駅前のコンビニに寄ってあんぱん二つに紙パックの牛乳を買って朝御飯を済ませた。

 あまりお金は使いたくないのだか仕方がない。

 あのリリンが言う大魔女にエネルギーを取られることを考えれば安いものだ。

 朝食がすんだときに私のスマホに一通のメールが届いた。

 靖子さんからだろう。

 中身を確認すると添付ファイルにメッセージが添えられていた。

 まずメッセージを確認すると『出来ましたこれが私の最大の画力です』と添えられていて添付された物を見てみると、度肝を抜かれるほどの素晴らしい作品に出来上がっている。

「凄い」

 と思わず言ってしまいリリンが「どうしたのじゃ」と私のスマホを覗き見する。

 するとリリンも絵を見て先程のオバタリアンと出会って不機嫌そうな感じから一転してパアッと表情をほころばせて見ている。

「この絵、魂が込められている」

 リリンの言う通り私もそれを感じた。

 靖子さんが描いた絵は私の小説を際立たせるどころか、この絵に注目が行き過ぎて私の小説に関心が行かないんじゃと思った。

 それよりも作業に移りたい、作業は電車の中でしたいので早速駅まで行き、切符を買って改札を抜けると、木更津アケミとリリスがそこにいた。

「お前ら」

 私が言うと二人は不適に笑っている。

「お主ら何しにここにいる?」

 リリンが言う。

「お前の持つスマホをよこせ」

 リリスが言う。

 それは何を意味するか、こいつら私がこれからすることを邪魔しようとしている。

 そこでリリンが「雅人はもうその女に危害を加えるような奴ではない」

 そしてアケミが「いや、そいつが生きている事事態私より他に悪影響を及ぼす」

「そんな事はない。それにお主たちにこのスマホとやらを渡して何になる」

「あなた達のやっている事は回りに害をなす。だからその小説のデータを渡せ」

 そこで私が「そう言う訳には行かない」

「あなたは私に何をしたか覚えている?」

「あんたにした事は謝るよ」

「謝って済む問題だと思う?」

 ニヤリと笑い、不適に笑みを浮かべる。

「それと良い忘れていたけれと、私のお腹には新しい命が授けられているの。この子が野蛮なあなたに殺される事を考えると私はいてもたってもいられないの」

「そんな事私はしない」

「いつも聞こえてくるの。あなたが私にした事や言った事が頭のなかに焼き付いてくるの。お願いだから死んでくれないかな?」

 アケミは人とは思えない程の禍々しい形相で言う。

「私には使命があるかは死ぬ事は出来ないよ」

 するとアケミは盛大に笑いだして「何使命ってあなたのような人間に何が出来るの?今あなたがしている事かしら、小説なんて大それた夢をお持ちで。って言うかあなたの小説は世間に出してはダメ。貴方がすることは全て悪よ。だからそのスマホをこっちに渡しなさい。そうすれば命だけは助けてあげる」

 そこでリリンが「さっきから黙って聞いておればずいぶんと身勝手なことを言うなアケミとやらよ」

 そこでリリスが「リリンそのスマホを渡せ、さすれば命だけは助けてやる」

 リリンが私の手を掴む。以前のように瞬間移動をするつもりだと思った。

 逃げられるならそれで良いだろうと思ったその時、リリスが私の間合いに入ってきて「三度も同じ手は食らわぬぞ」大釜を召喚してリリンに大釜の峰で攻撃を加えてリリンは倒れる。

「リリン」と言ってリリンのもとへ行く。

 そこで私は「分かったよ。スマホは渡す、だからこの場は引いてはくれないか?」

「ダメだ雅人よ。お主が魂を込めて作った物だろう」

「良いんだよリリン」

 そう言って素直にスマホを差し出す。

「フンッ最初からそうしていれば良かった物をリリンとやらには傷つかずにはすんだのにな!」

 そう言って私に銃口を向ける。

「スマホとパソコンを渡せば見逃してくれるんじゃないのか?」

 するとリリスが銃口を向けるアケミと私の間に入ってきた。

「それは契約違反」

「ちっ」と舌打ちをしてアケミは銃口を下ろす。そしてアケミは、「そこで一生這いつくばって生きるんだね」

 そしてアケミとリリスはその場から立ち去った。

「リリン大丈夫?」 

「何をしておるのじゃ雅人よ。どうしてその小説が書き込まれたスマホとパソコンを渡した?」

「じゃないとリリンが殺されてしまう」

「我の事は良い。あんなに魂を込めて作った作品を」

 悔しそうに地面を叩くリリン。

「じゃあリリン逆の立場だったらどうしてた?」

「そんな事・・・」

 そう言って言葉を無くすリリン。

 スマホを取られてパソコンも取られてしまった。

 この情報の時代にスマホとパソコンを取られてしまうのは致命的だ。

 これではもう小説を投稿することが出来ずに、さらにこれから投稿しようとした靖子さんに挿し絵まで書いてもらったのに・・・。

 そんな靖子さんに会わす顔もなく、絶望するしかなかった。

 アケミの奴は私が懸命に生きようとすることを邪魔をして、自殺をさせたいみたいだ。

 私の罪はそれほどまでにして償わなきゃ行けないのか?

「雅人よ立ち上がるのじゃ」

「リリンはもう僕に関わらない方が良いよ」

「雅人よ、忘れたのか?我とお主は親子の契りを結んだことを」

「でも僕にはもうスマホもパソコンも無くして小説を投稿することもできなくなった」

「小説が投稿出来なくても小説を書くことはできるじゃろう」

「できるって手書きで?」

「その通りじゃ。小説なら紙とペンさえ有れば書けるじゃろう」

「でも誰に、どうやってその小説を読んでもらえれば良いの」

「ならば、手書きで書いた小説を直接出版社にもって行くのもよかろう」

「・・・でも」

 するとリリンは這いつくばって倒れている私にその手を差し出してきた。

「さあ、お主の魂をもう一度堪能させてくれ」

 リリンの言葉に一筋の希望が見えてきた。

「リリン。力を貸してくれるの?」

「当然じゃ」

 私はリリンに差しだされた手をつかみ立ち上がった。

「じゃあもう一度頑張って見るよ」

 私は涙を拭いて立ち上がった。

 早速ホームから出て奉仕ストアで紙とシャープペンシルを買って駅に戻った。

 本来小説はパソコンでなく紙とペンで書き上げる物だ。

 そう思わせてくれるのは私と家族の契りを結んだリリンがいるから私は立ち上がれるのだ。

 私は私一人の力では小説を書くことが出来ない。

 リリンがいなかったら私はまた樹海を目指していたかもしれない。

「ところでリリン。リリスが言っていた契約違反になると言っていたがあれはどういう意味なの?」

「たぶんリリスは雅人からアケミ自身を守って貰うために契約を結んだ」

「私はもうアケミさんには手を出さないよ」

「だが本人は思い込みが激しいのか?リリスはその契約を破棄しない。雅人にやられたことが強く心に根付いているのだろう」

 リリンの話を聞いて自己嫌悪に陥る。

「そんな顔するな、お主は充分に苦しんだ。あのアケミとやらとリリスが許さなくても我が雅人の罪を許す。だからお主は素直に自分だけの夢だけを追っていれば良い」

「ありがとう」

 リリンの気持ちを聞いて私は心の奥底からありがとうが言えた。


 


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