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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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狙われている雅人

「そんな辛気くさい事を思うな!立派な町並みじゃないか!」

「リリンにはそう思えるけれども、速くこの街から遠ざかりたい」

 リリンはやれやれと言った感じて私を見て、まるで年下のリリンにたしなめられているようであまりいい気分には馴れなかった。

「とにかく喫茶店はあるじゃろう。そこで一筆書いてみてはどうじゃ?」

 ここ東京の新都市新宿で人混みに巻き込まれたまま、リリンと離れないようにリリンと手を繋いだ。

「それにしても凄い人だかりじゃ」

「でしょ」

「でも一人一人見ていると魂は違えど、どの魂も雅人のような輝きは感じられぬ」

 リリンの言っていることは何となく分かった気がする。

 私は昔から、人とは馴染めずに学校ではつまはじきにされていた。

 さらに私は罪を犯して・・・やめよう。

 あいつは私が死ぬことがその贖罪だと思っている。

 いつも心にその感じがして、私をどう殺そうか隙を見計らって見ている。

 気のせいではない、以前私と交遊した。

 私はその交遊した女性に対して蛮行を働いた。

 リリンは私の事を許してくれたが、あいつは、彼女は私を許さないだろう。

 彼女は楽しんでいる。

 それは私の因果だ。

 以前リリンは言っていたが、私はとんでもない人に狙われている。

 これは私の勝手な想像だが、もしかしたら彼女もリリンと同じような奴を傘下に従わせているのかもしれない。

 新宿の町並みは今までリリンと歩いていた田舎町とは違い、とにかくリリンとはぐれないように前へ前へと進んで行った。

 とある有名なチェーン店のファミレスに入ってそこで食事がてら小説を書くことにした。

「いやー、丁度お昼時だからお店も混んでいるね。リリンはこう言うの大丈夫かな?」

「・・・」

「リリン?」

「どうやらこの街から少しでも速く、逃げた方が良いな。」

「どうしたの?リリン?」

「この街から逃げた方がよいと言ったのじゃ。この前のように瞬間移動は身に堪えるからな」

 リリンにそう言われてみると誰かに見られている感じがした。

 どうやら気のせいではないような気がしてきた。

 リリンは唖然とした表情をして、固まってしまった。

「どうしたの?リリン?」

「リリス!」

「リリス?」

 リリンには何が見えているのか見当が付かなかった。

 そしてリリンは硬直したまま、ずっと目の前を見つめた。

 リリンの視線を追って行くと、私を狙う張本人がいた。

 さらにリリンが言った名前だと、思われるリリスがいた。

 黒い外套を被り、不適にこちらの方を見ている。

 その二人と対峙してすべての時が止まったかのような感じがした。

 私を狙う張本人、以前私が自殺寸前まで追い詰めてしまった木更津アケミ。

「どうすれば許してくれるんだ?」

 木更津アケミは黙って狼狽している私に不適に笑いながら、黙っていた。

「そんなに私の事を追い詰めて楽しいのかよ」

 叫ぶ私、アケミは不適に笑って私の方に指を指した。

 するとリリスが死神の釜を召喚して、私に襲いかかる。

 私は覚悟した。これで私の罪が許されるなら、もうどうなっても良いと。

 リリスの波動がこちらに勢い良く、向かってくる。

 勢いが凄いのに何故かすべてがスローモーションに見えてくる。

 するとリリンはその波動を受け止めて、「何をぼさっとしておるのじゃ、お主死にたいのか?」

「死にたくないけれど仕方がない事なんだ」

「このたわけ」

 リリンは私の腕を掴んで、瞬間移動した。

 気がつけば、ここは何処なのか?とある海水浴場であった。

 力を使い果たしたリリンだが、それほど疲労困憊はしていなかった。

「リリン」

 リリンは私の目を威圧的に見つめて、思わず私は反らしてしまった。

「雅人よ。こっちを見ろ」

 リリンの方を見ると凄い剣幕な表情で私の頬を叩いた。

 痛くはないが心に来る一発だった。

 その時、漏らした言葉がこうだった。

「ご免なさい」

 と。

「お主の先程の表情を見た感じでは死を覚悟した表情だった。どんな事情があるかは知らぬが、もう二度と死ぬような事を考えるなよ」

「私は生きては行けない人間だよ」

「また、そのような事を」

「リリンは私が犯した罪の事を知らないからそう言えるんだ」

「そんなものたわいもない事じゃろう」

「私は・・・」

 私はリリンに彼女にしたことを自白した。

「大した事ではないじゃろうが」

「本当にそう思えるの?」

「別に雅人は人の物を取ったり殺した訳じゃないだろう。そのような些末なことでいちいち気にすることではないと我は思うのじゃがな」

 リリンにそう言われて気持ちが少しだけ楽になった。

 でも私が犯した罪は・・・何て考えるとリリンは魂で人の心が読めるので、リリンは威圧的な視線を私に向ける。

「悪かったよリリン」

「悪いと思うなら態度でその敬意を示せ」

 リリンの言う通りだ。

 私の今蟠っている感情はきっとすぐには消えないだろう。

 だったらリリン、私はリリンに今抱えている蟠りを取り除いてみる。

「それはそうとどうして、今だに雅人の事を狙っておるのかのう」

 リリンの質問に私も同じ意見であった。

「あのリリンが言っていたリリスって?」

「あやつは我の双子の姉妹じゃ」

「・・・」

「何じゃ以外と驚いてはおらぬようじゃのう」

「何かそんな感じがしたからね」

「それよりもリリスの方に味方するアケミの事じゃが、どうしてそれほどまでに雅人を狙うのか?」

「私の事が邪魔みたいだ。私が彼女にやったことは許されない事だし、彼女は私が生きている事事態に邪魔者扱いをしているのだ。本当は・・・」私は生きては行けないと言おうとするとリリンは威圧的な視線を向けてきた。

「とにかくじゃ雅人は死んで良い人間ではない。奴等の陰謀がわからぬ今、とにかく雅人よポジティブシンキングじゃ」

「ポジティブシンキングかあ、良いことを言うね。じゃあ何処かこの辺の喫茶店を探して小説をかくよ」

「その調子じゃ雅人よ」

 辺りを見渡すと海水浴場であり、ちらほらと海水浴を楽しむ人達で賑わっている。

 ここは何処なのか行きずりの海水浴を楽しんでいるカップルに聞いて見る。

「あのーここは何処の海水浴場なのでしょうか?」

 カップルは不思議そうに私とリリンを見つめて言った「銚子ですけれども」

「そうですか。ありがとうございます」

 行きずりのカップルは去って行き、丁度私達は北に向かっているのでそれで良いと思えた。

 私達が瞬間移動を見たものはどうやらいないみたいだ。

「何だか楽しそうなところじゃな」

 そこで私は思いつき「海水浴してみる?」

「するする」

 リリンは大絶賛、早速海の家で子供用の女の子の水着は無いかと尋ねたら、どうやらあったみたいで白いフリルのついた水着を買ってあげた。

 早速試着室で着替えさせ、小さなリリンの水着姿は眩しく感じてしまう。

「余り遠くに行っちゃダメだよ」

「分かっておる」

 私は一つ心配事を思い付いた。

 リリンは瞬間移動をしているのでその能力はかなり負担がかかると言っていた。

「リリン大丈夫?」

「何がじゃ?」

「さっき瞬間移動して力を使い果たしてないかなって」

「大丈夫じゃ。最近雅人の魂を貰っておるからな」

 それを聞いて私は安心した。

 だったらリリン。後でたっぷりと魂をたぎらせてあげるよ。

 リリンが海に入り、波打ち際で遊んでいる姿を見て幸せを感じてしまう。

 私もそんなリリンを見ていると魂が向上してきそうな気さえしてくる。

 私に生きる気力を与えてくれたリリン。

 これからもずっと一緒には居てくれないだろうか?

 私もリリンと一緒に海に入り、もちろん私は水着も着ないで入ったものだから、全身に冷たさを感じて、入った事にちょっと後悔しそうになったがこうしてリリンと戯れる時間は限られているのじゃないかと思った。

 そう思うと、リリンが見透かして「雅人よ大丈夫じゃ、我はいつでも側におるぞ」

 リリンの話を聞くと思想は魂に出てくるみたいだと分かった気がした。

 私もリリンも調子に乗って、海で戯れた。

 本当にリリンは私の娘だと感じがした。

 思いきり遊んだ私達は、民宿の宿にずぶ濡れのまま入った。

 リリンは水着の上に以前私が買い与えたワンピースを来ているので問題なく入れた物の私が入ろうとすると「お客さま困ります」と言われて裏口にあるお風呂を使わせて貰って、そこで着替えた。

 ちょっとはしゃぎ過ぎたかも。

 私が入るお風呂に共に入ってきて「雅人よたまにはこの様なことも良かろう」

「ホントだね」

 今日は大変な事があったのに、浜辺にたどり着き、思い切り遊んでしまった。

 リリンの言う通り死んで良い人間なんていないと。

 私に生きる希望を与えてくれたリリン。

「ところでリリン。あのリリスと言うリリンの双子の妹と言っていたけれども。また襲って来たりはしないかな?」

「来るじゃろうな。だが雅人よそんなつまらない事は今は考えんで良い」

「私はリリンに謝りたい」

「だから、そんなつまらぬ事をいつまでもねちねちと考えている暇があるなら、面白い小説を書く事に使ったらどうじゃ」

「それもそうだね」

 今日の一件は、方がついた。

 リリンはいつも通り前向きな考え方をしている。

 私もそんなリリンを見習わなくてはいけないだろう。

 お風呂を出て、これから小説を書きたいと思ったが疲れていてどうしようもなかった。

 リリンはそんな私を咎めることはなく「今は休むが良い」と言ってくれた。

 お言葉に甘えてそうすることにした。

 しっかり休んで明日また小説を書くのだと胸が張り裂けそうなほどだ。

「面白い小説をたくさん書いてやる」

 布団に入って人知れず呟いた。





 雅人が良く眠っておる。

 リリンは雅人の眠っている様子を見てうっとりとした表情でしている。

 まるで我が子を愛でるような眼差しで。

「雅人よ死んで良い人間なんていないなんて。そんなの真っ赤な嘘じゃ。この世のなかには救いようもない人間もおるのじゃよ。でも雅人よ。少なくともお主は死んで良い人間じゃない。それだけは我が保証してやる。そして何としても、連中からお主を守ってやる」

 そう言って窓ガラスから見える真っ赤な満月を見つめる。

「こんなときに不気味じゃのう雅人よ。

雅人よ。我はお主を愛している。

 まさか神に使いを頼まれたとは言え、我をこの様な気持ちにさせてくれるとはな」

 そう言ってリリンは雅人の唇を重ねた。

 ぐっすりと眠っている雅人はそれに気がつく事もなかった。








 太陽の光に私の瞳はくすぶられ、私は目を覚ます。

 本当によく寝た。私が眠っていた布団の中にリリンがいた。

 本当に可愛らしい寝顔だ。

 私がロリコンだったらフラグが立っていたかもしれないな。

 いやフラグがたつまえに殺されていたかもしれない。

 まあ、そんなリリンの可愛らしい寝顔を見ると襲いたくなる衝動にはならないな。

 どうやら私は改めて思うがロリコンじゃない。

 それよりもリリンを起こさないと。

 リリンを私は揺さぶった。

「リリン朝だよ」

「そうか、もうそんな時間かあ」

 大きくあくびをしてそのしぐさが何とも可愛らしく、抱き上げてリリンは嬉しそうにしていた。

 そう言えば私の夢はこんな女の子のような娘を持つことが夢であった。

 相手の女性は居ないが私の夢はかなってしまっている。

「雅人よ今日も小説を書くのじゃな」

「もちろん」

 小説を書く事は私にプラスであり、リリンもそれは同じだ。

 私とリリンは共に二人三脚で分かち合える同志である。

 私の最高のパートナーだ。

 でも今は小説の構想が頭の中でしっかりと出来上がっているが、私の中のストックがなくなったらどうしようと恐ろしく思えてしまう。

 でもリリンの輝かしい笑顔を見つめて、そんな不安はうち消えた。

 民宿で朝ご飯を食べて支払いをして嘆息してしまう。

 お金もそろそろ無くなってきた。お金が無くなったらどうしようと考えたが、そう言えば私達は靖子さんの力を借りて賞に応募して賞金を狙っているんだっけ。

 でも世の中そんなに甘くはないだろう。

 本当にお金が無くなったら何処か連中の目の届かない場所まで行きそこで働く事は出来ないだろうか?

 でも貯金はまだあるから、それは完全に無くなってからにしよう。

「さあ、雅人よ行くぞ」

 色々と悩んでいる私に活気の良いリリンの声を聞いて「そうだね」と言った。

 そんなリリンを見て思ったがそんな事を杞憂したって仕方がないと思い、何とかなりそうなので気がしてくる。

 


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