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あなたが泣くなら仕方ない

脱走等の鎮圧の描写があります。ロボトミー知ってる方ならどういう意味か分かりますね?もし知らないよという方は、スター〇ォーズのR2-D2みたいなアンドロイドが美少女に見えるような視覚フィルタを展開してお読みください。

『おはようトーマス。』

「おはよう、管理人。」

昨日同僚が死んだ。

アキラには嘘をついた。会社的には隠す必要ないんだろうけど、それでいいはずはない。

この会社は変なんだ。今の管理人になってからはかなり安全に仕事ができるようになったが、それでも人が死んでるんだ。この施設だけでもかなりの数いってるだろ。

まぁ気にしてもしかたない。


今日もいつも通りの作業、いつも通りの休憩。

...かと思っていた。


『トーマス、そこから少し離れた廊下で脱走があります。』

!?

「何が脱走した?」

『オールアラウンドヘルパーです。今近くのエージェントと交戦中です。』

「分かった、すぐ向かう。」


ここでは脱走はそう珍しくない。鳥のようなものがよく脱走している。

まぁそのたび誰か死んでるし、それに慣れているのも嫌なものだが。


そろそろ現場の近くか。耳をすませば銃声が聞こえてくる。

これ入る方向間違えたら流れ弾あたりそうだな。


『トーマス、ヘルパーが下の階に移動しました。』

「了解」


次の扉の先がさっきまで交戦していた廊下か。正直入りたくない。

よく見知った顔が転がっていた時のことを思い出す。

「余計なことを考えている場合ではないな。早くいかないとまた繰り返される。」


扉を開けてみれば誰かが死んでいた。腕や足が近くに落ちている。その顔は幸いというか、同期やアキラのものではない。

下の階に降りると廊下への扉からアキラがアリアを抱えてダイブしてきた。

「二人とも怪我はないか?」

『はい!ただアリアさんが混乱して気を失ってます!』

「分かった。起きたらまた混乱してみんなに銃を向けるかもしれない。少し見ていてくれ。」

『分かりました。先輩も気を付けてください!』


廊下に入ると頭の数的に2人死んでいるようだ。

生きているのは3人、同期のヒトシとカイ、先輩のレイスさんか。

確実に人数を減らしてきているな。こんなに賢かったっけ。

「ヒトシ、苦戦しているのか。」

『トーマスか、なんか今回のはやたら動き回るんだ。おかげで弾も当たらねぇ。』

「次の攻撃を確実に避けてそのあとに一斉に攻撃しよう。みんな!俺が先頭に立ってひきつけるから絶対避けろよ!」

『――、―――!』

レイスさんが何か言っているが集中してるのか緊張しているのか耳が遠くなってよく聞こえない。

よそ見したら死ぬしこのままいくぞ。

ヘルパーが回転し始める。多少ホーミング機能があるのならまだ避けてはいけない。もう少し。もう少し―――ここだ!

飛び込み回避をして振りむく。

みんな回避はうまくいったようだ。ここまで生き残ってるだけあるな。

ヘルパーの動きが止まったところを撃つが当たってるのかこれ。そういえば俺射撃苦手だったな。まぁ当たってることを期待して撃つしかないか。


ガシャッガシャ、ガシャ...

なんかいつも思うがアーム部分が崩れ落ちる音が間抜けに聞こえる。

『お疲れ様です、鎮圧完了です。回収班が向かっていますので皆さんは少し休憩してください。それとアキラ君、アリアさんを医務室へ連れて行ってあげてください。』

今回もなんとかなったな。

「レイスさん、さっき何か言いかけてましたか?すみませんよく聞こえなくて。」

『いや、あなたノーコンだから誤射しないでねって言ってただけだから気にしないで。』

『トーマスはもっと腕上げたほうがいいかもな。』

「そうですか、さすがに見方を撃つようなことは...たぶんないと思います。」

「それとカイには言われたくないなぁ、研修中俺と同等のノーコン具合だったよな?」

『俺は鍛えてるから少しくらいうまくなってるはず。......うまくなってるはず。』


休憩室に着いてからも無駄話をしていたら、少しした頃にアキラが来た。アリアは無事らしいが立て続けに仲間が死んだことや、このまま全滅するんだと本気で思い込んでパニックに陥ったことで落ち込んでいるらしい。まぁよくあることだし慣れるしかないな。てか、さっき死んでた3人って...

「アキラは大丈夫なのか?さっきお前の同期も。」

『ありがとうございます。でも大丈夫です。ここに入るときにこうなることも一応きいていましたから...。』

アキラも危ない状態だな。

「アキラも少し医務室で休むといい。あそこは落ち着くからな。それにアリアも一人だと変な気を起こすかもしれない。」

『そうですね、これ以上同期を失うのは嫌ですし俺も医務室で休むことにします...。』


アキラが言い終わるころに何か強い衝撃が来た。この感じは以前1度だけ体験したことがある。前の前の管理人の頃だ。

『ッ!!な、なんですかこれ!』

記憶が正しければこのあと―――。

『!?あれはルーレットですか?そういえば研修で聞いたことがあります。あれに当選すると中央本部に行くことになるんですよね。もしかしたらクリスさんもこんな感じで引き抜かれたんでしょうか。』

「どうだろうな。」

この様子だとアキラはまだ大丈夫みたいだ。だが問題は...。


―――ルーレットが回る。みんながそれを見ていた。ここに名前が載った人で当選したがる人が果たしているだろうか。


ルーレットが止まり俺は絶望した。視界が歪みもはや真っ黒にさえなる。汗が出るが体が冷えていくのがわかる。

『―ん、――さん、トーマスさん!』

「アキラ...」

『トーマスさん、当選おめでとうございます!中央本部は今日みたいな戦闘の心配とかもないんですよね!』

「ああ...そうだ。」

『トーマス、お前まで...俺は忘れないからな。』

「カイありがとう。ヒトシもいつまで泣いてるんだ。俺はここまでだ。あとは頼んだぞ。」

『ふざけるな....。』


ルーレットに当選したも者が最終的にとる行動は一つ。とある部屋に向かうことだ。当時このルーレットが回った時は俺もアキラのようなことを言っていた気がする。こっそり当時の管理人の後を付けなかったら今回当選することはなかったのかな。いや、こればっかりは時間の問題か。いずれ先輩の件でこうなってたろうしな。

あぁ、行きたくない。でも足が動く。動いてしまう。あの部屋が近くなるのが分かる。いっそ俺の分からないところから俺を撃ち殺してくれないだろうか。このまま部屋に着かずに延々と廊下が続いていればいいのに。


『トーマス、私は残念です。とても。』

「管理人、いつもありがとうな。話したいことはいくらでもあるが、時間がない。さよならだ。」

『はい...さようなら。』


例の部屋に入る。無線も切っておくか。

この部屋には大きな赤ん坊がいる。足がなく黄褐色の雪だるまに手が生えたような感じで、顔はあるが一番異質なのは腹部にある大きな口だ。こいつはこの口で人を食べる。

こいつが泣くとさっきの衝撃とともにルーレットが回る。当選した者は俺みたいにこの部屋に来て―――餌にされる。


胎児は腹部の口を大きく開ける。中から舌のようなものが伸びてトーマスを掴み腹の中へ引っ張り込み咀嚼する。

トーマスの最後の表情は、最後の言葉は、胎児しか知らない。


『はい、こちらの処理はもう済んでいます。[削除済]の家族等への連絡はお願いします。』


『[削除済]、記録からは削除されましたが私はあなたのことを忘れませんよ。...またボードゲームやりたかったですね。』



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ヒトシ(26)

性別:男

性格:温厚,お人好し

趣味:テレビゲームをすること

会社への理解:コンテニューできない死にゲー

管理人への理解:助言要員。今の管理人になってからは確実に死人は減ってる。

死んでしまいましたね。

彼に少しでも思い入れがある方は、記録に残るはずのない彼を覚えておいてあげてください。


それとロボトミー知らない人を考慮してなかった為アブノーマリティの紹介をしていませんでした。

まぁ名前をそのまま使っていいのかわからなかったというのもあるのですが。もしかしてそれ以前にロボトミーとか言ってる時点で二次創作タグ必要でしたかね。


アブノーマリティはそれぞれ個別の収容室にいて、エージェントに世話等をされています。


前回の登場アブノーマリティ

・美女と野獣

 頭から爪先まで茶色の毛でおおわれた四足動物のアブノーマリティ。これはどっちかというと、生物自体ではなくこの生物を生み出す呪いの方がアブノーマリティ。

 (ゲーム的に言うと)抑圧作業を2回連続で行うと呪いが発動します。そのため扱うときは抑圧作業→それ以外の作業→抑圧作業 みたいになります。

 呪いが発動すると作業したエージェントが死にます。即死です。美女と野獣が死んでその後エージェントが見る見るうちに美女と野獣の姿になります。


・蓋の空いたウェルチアース(クリスが担当していたアブノーマリティ。自動販売機。)

 音楽を鳴らす派手なグレーの自動販売機と、オレンジ色のエビのような見張り人からなるアブノーマリティ。

 作業が終わると自動販売機からジュースがでます。エージェントはそれを飲みますが、作業結果が悪いとそのまま眠りについてエビの見張り人にどこかへ連れていかれます。帰ってくる者はいません。


今回登場のアブノーマリティ

・オールアラウンドヘルパー

 清掃用ロボットのアブノーマリティ。2本の足が生えたルンバみたいな?

 収容室から脱走したら体からアームが出てきて回転しながら攻撃をしてきます。アームの先には刃物が付いているので当たったら刻まれます。


・無名の胎児

 『謎の黄褐色の粘液』で浸潤した巨大な幼児のアブノーマリティ。

 足を持たず、腹部を横切って伸びる口を持つ、大きく太った体をしています。

 作業の結果が良くないと泣きます。泣いている間はエージェント精神的ダメージを与えてきます。そして他のアブノーマリティの機嫌も悪くなり脱走祭りが始まります。

 泣き止ませるにはルーレットを回して犠牲者を決めるしかありません。なおルーレットには会社に疑問を持つ人やアブノーマリティに過剰に興味を持つ人などの名前が載ります。

 また、当選して胎児に食べられた人の情報は会社の記録から削除されます。

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