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転生勇者のなれの果て  作者: 鍵屋
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【序章:4】剣術指南

視点がころころ変わってややこしいのでサブタイの付け方でパターン化します。

「今日は魔法の勉強に変わって、私が武器を使った戦闘について指南していく!」


 最近は魔法に関してあのガリ勉がひたすら授業を行っていたようだが、魔法だけでは魔物相手に戦い続けることはできない。

 そして、あのガリ勉では武器の扱いに関しては素人だ。そこで白羽の矢がたったのはこの村で武器屋を営んでいる俺という訳だ。


「2人とも記憶が無いとはいえ、専用の武器は身に着けていたものを使うのが手にもなじむだろう」


 2人は元々装備していた自身の武器を手に持ち眺めている。ハジメは刀で、レイは魔道書か。


「俺はだらだら説明して時間を使うのはあまりすきじゃないので、実践方式で身に叩き込むぞ。レイには悪いが、魔道書は正直、開くだけで魔力の補助を行う程度の物で戦闘としては特に教える事はない。よって俺からは刀の扱いについてをメインに指導していくぞ」

「ええ、問題有りません。私も魔法以外で戦う術は持っておきたいので、刀の使用を教えて頂きたいところです」


 レイはそういって、自分の魔道書をしまい、用意した訓練用の木刀を手にとる。

 同じようにハジメもその木刀を嬉しそうに手に取り、待ちきれないとばかりに素振りをしていた。


「いいねぇ、やっぱ机にばっか向かってらんねえよな!実戦形式上等じゃねえか!」

「では、手始めに実力を見たい。ハジメ、俺に打ち込んできてみろ」

「怪我しても知らねえぞおっさん!」


 言うや否や全力で突っ込んでくるハジメの刀を受け、俺とハジメの間で刀が交錯する。

 拮抗する鍔迫り合いの最中、ハジメが蹴りを放つのを見て俺は後へと飛び退る。


「力はなかなかだが、立ち振る舞いが少し雑すぎだな」


 距離が空いたところで、俺は刀を腰へとしまう動作を行いつつ話すと、間髪入れずにハジメはまた飛びかかってきた。


「終わった気になってんじゃねえぞ!」


 この状態からでは先程と同じように受けることは出来ない。だが、切ることはできる。


 ハジメの間合いに入るまでの一瞬の間に、刀を振り上げたハジメとすれ違い、腰に据えた刀を抜き放つ。


「…ッ!何だ今の動き!卑怯だろ!」


 何が起きたかも理解できていないまま、打たれた手を抑えながら、痛みに耐えかねて落とした木刀もそのままにハジメが叫んでいた。


「今のがスキルだ。魔法とも違い、スタミナを消費して決まった動きで技を放つ。刀の基本技《居合》はお前らでも使えるはずだ」

「ずりぃぞ!くそっ!もう一回だ!」

「まあまて、次はレイだ。ハジメは悔しかったら《居合》くらい使えるように練習しておけ」


 ハジメがくやしそうにしながら落とした刀を拾い、もう一度飛びかかろうとするのを止め、もう1人の生徒の方へと向きなおる。


「さあ、レイ。お前は刀は使い慣れていないだろうがどうする?」


 本人はやる気のようだが、"魔法使い"のジョブで刀を使うこともないだろうと気遣ってはみるものの、その立ち姿はとても魔法使いのそれではなかった。


「いえ、私の記憶ではもっとも慣れ親しんだ武器の一つです。それに、スキルも少し試してみたいので」


 レイの隙のない中段の構えを見る限り、おおよそ素人でないことは確かだ。村長が言っていた別人の記憶とやらが関わっているのかもしれない。


俺は先ほどと同じように《居合》を放つべく刀を一度腰に収める型をとる。


「なるほど、では受けてみろ!」


 ハジメに対してやったように、刀を持っている手元に狙いを定めて《居合》のスキルを放つ。

 一瞬で放たれた刀に、確かな手ごたえを感じてすれ違ったあと俺は振り返る。


 そこには、打たれた右手を離しつつも左手のみで上段に構えこちらを見るレイの姿があった。


「《兜割り》」


 レイがスキルで放った振り下ろされた刀は俺の目の前で地面に刺さっていた。


「……見事だな。お前、魔道書より刀持った方がいんじゃないか?」

「いえ、来ると分かっていたので対処が出来ただけです。それに、私のステータスではスタミナが少ないようで、スキルも連発はできなさそうです。やはり私は魔法の修行に励むことにします」


 その言葉を最後にレイは木刀を置いて訓練場から去って行った。


 レイの言葉を信じるなら、元の体では相当に剣技に打ち込んでいたのだろう。別人の体であそこまで隙のない構えを体現できるということは、その技は魂に刻み込まれるレベルで研鑚していたということだ。

 魔法に関する学習速度といい、元の黒瀬 零とやらは相当に才気ある人間だったに違いない。


 ハジメはジョブが"剣士"なのと体がスキルを覚えていればある程度は上達も早いだろうが、果たしてあのレベルまで追いつくことができるかどうか。


 いや、それでこそ教えがいがあるってもんだ。


 俺は少し離れたところで1人木刀を振り回しているハジメを見て、とことん鍛え上げることを決意した。

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