【白の章:1】転生勇者の成立ち
この俺、白崎 一は俗に言う"ヤンキー"である。
しかし、これに関しては生まれもっての不可抗力だと俺は思っている。
目つきが悪く、ガタイはいいが、性格は真面目で優しい日本人の父と、金髪青眼の絵にかいたような美女。しかし、短気で喧嘩っ早いロシア人の母との間に生まれた俺は、母親譲りの金髪と父親譲りの目つきの悪さが遺伝しているせいで、見た目からしてガラが悪い。
その上、性格はしっかり母親からその喧嘩っ早さを受け継いでいるので、小学校のころから喧嘩が絶えなかった。
父親譲りのガタイの良さと、母親譲りの喧嘩センスで、中学に上がるころには上級生相手にもほとんど負ける事はなかった。
そんな典型的なヤンキーをしている俺だったが、本人からしたら正直、不名誉極まりないのである。
ただの言い訳にしかならないが、喧嘩に関しても自分から売ることはないし、売られた喧嘩についカッとなって返り討ちにしているうちにこうなってしまっただけなのだから。
今日だってまた、特になにをしたわけでもないが、上級生から気に入らないと校舎裏へ呼び出しをくらい、わざわざ出向いているわけなのだが。
「誰もいねーじゃねえか…ただのいたずらか?」
律儀に待つのも時間の無駄なので、早々に帰るとしよう。
そう思い、来た道を振り返ると、見覚えのない女の人と目があった。
なんでこんなところに?スカーフの色からして上級生らしい。
不思議に思っていると、その女の人は慌てたようにこちらを指差し走ってくる。
どうやら俺ではなく俺の後を指さしているらしく、それに気づいて俺も振り返ると、そこには、バットを振りかぶった状態で俺を呼び出した上級生が気持ち悪く笑っていた。
この不意打ちは避けられないなと覚悟し、一撃食らったあとの反撃を考えていると、想定外の方向に体が引っ張られ、俺は後に倒れ込んだ。
目の前には振り下ろされるバットの前に立ちはだかり、殴打される先程の女の人の姿があり、頭が真っ白になった。
俺が茫然と倒れ込んだままになっていると、バットを持った上級生は狂ったように叫びながら、その女の人を蹴り飛ばして再び俺に対してバットをふるった。
俺のせいで関係ない人が巻き込まれた。なぜ。助けられた。助けないと。そもそも生きているのか。血。こいつはなぜこんなにも狂っている。殴られた。反撃。腕が動かない。折れてる。防御。どうやって。殴られる。頭。血。やばい意識が――
頭の整理が追いつかないまま、俺は意識を失った。