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時き継幻想フララジカ 第一部 『界逅編』  作者: ひなうさ
第十三節 「想い遠く 心の信 彼方へ放て」
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~カラクラの戦士達~

 山間ともあり、勇達が坂を上る様に進む。

 木々の合間から見えるカラクラの里を目指し、その一歩一歩を確実に踏み進めていく。


 すると……遂に木々が開けた場所へと到達する。

 そこに聳えるのはカラクラの里……岩肌をくり抜いて造られた人工的な構造が特徴的な彼等の住処である。


 勇達がカラクラの里へと辿り着くや否や……多くの雑兵が立ち塞がった。


 退屈そうに欠伸を上げる剣聖を他所に、他の4人が雑兵達と相まみえる。

 先陣を切ったのはアージであった。


「けえい!! 雑魚共がぁ!! 我等が前に立ち塞がる事の愚かさを知れェ!!」


 大きな斧を振り翳し、その大きな巨体とは思えぬ速さで敵陣へと突っ込んでいく。


 圧倒的な破壊力を前に成す術も無く宙を舞う前線の兵達。

 鬼人が如し形相で迫り来る彼に、後続の雑兵達が怯み脅える様を見せていた。


 それもそうであろう……彼こそは白の兄弟のアージ。

 人間からも魔者からも恐れられし魔剣の狩人。


「さ、さすがアージさん……強すぎる……」

「うおっほっほ……あいつ面白れぇなぁ……後で戦ってみてぇ……へへっ!」

「止めてくださいよ剣聖さん……彼は仲間なんですよ……?」


 するとアージが体を一回転させ、周囲の雑兵を吹き飛ばすと同時に声を張り上げた。


「噂の剣聖との戦い……俺も興味があるぞッ!!」

「カッカッ!! ガキが言うじゃねぇか!!」


 剣聖が笑い、アージが剣聖を睨みつける。

 そんなアージの背後から雑兵二人が不意に飛び込んできた。


「ア、アージさんッ!?」


 その時……突然突風が吹き荒れ、瞬く間に二人の雑兵が幾重にも切り刻まれ地面に落ちていく。

 その突風の吹き抜けた先にはレンネィの姿があった。


「ほう……出来る!」

「当然よ……風に舞いらる『死の踊り』レンネィ……酔狂でこの様な姿をしているの訳では無いのよ?」


 まるで風を纏ったかの様に素早い動きで里の坂を、壁を駆け登っては舞い降り雑兵達を切り刻んでいく。

 その姿や竜巻が如し……飾られた服がその竜巻を彩り、そして荒ぶる姿をより激しく際立たせていた。


「行きましょう、レンネィさんの後を」


 4人はレンネィが切り開く道を進み続けた。

 時には勇が、時にはアージが……お互いが助け合い、ちゃなが時々彼等を援護しながら彼等の行く道を開き続けた。

 そして背後からの攻撃は最後尾を歩く剣聖の鬼がかった気迫の背中が遮り、同時に雑兵達の攻撃意欲を削ぐ。


「いい加減にしろっ!! お前らが向かってきて何になるんだ!!」

「問答無用!! クゥアッ!!」

「クッソオ!!」


 勇の説得にも応じる事なく雑兵達が次々に襲い掛かり、それを勇達が撃退していく……。

 勇達の声は彼等の耳には届かないのだろうか……そう思えすらする。


 ジョゾウ達への恩もあるが故……勇は襲い来る雑兵達に手心を加えながら突き進む。

 レンネィや剣聖はそんな優しさを見せる事は無かったが、アージもまた勇と同様に加減して致命傷を避けていた。


 勇達が協力し合いながら岩山をくり抜いて出来た道を進んでいくと……うねって造られていた道は次第に緩やかなカーブを持った道へと変化していく。

 登山道の様に勾配のある緩やかなカーブの道を進んでいくと……徐々に道が広がり、開けた広場へと形を変えた。

 広場までに進むにつれ雑兵の数も減っており、彼等の守るべきその広場の先こそが非戦闘区域……彼等の居住区であるという事を予感させた。

 それを物語る様に広場の先には彼等の家と思われる場所が見える。

 岩穴の前に暖簾(のれん)の様な布が掛かり、それが幾つも横並びに連なっていた。

 そこを守るのが雑兵達の最大の目的。

 生活圏を守り、大事な者達を守る……彼等が必死になるのも当然の事なのだ。


 広場へ辿り着いた勇達の視線に映ったのは、その広場の先にある大きな建造物。


「あれは……!!」


 白い岩肌と同じ色を持ちながら、滑らかな円形を持った屋根部。

 それを支えるのは低い壁と、たくさん並ぶ大きな柱。

 段の低い階段が長く連ねた先にあるその建造物は、明らかに周囲の岩屋と比べても違和感を感じさせる程に人工的に建造された建物であった。


「あそこに獅堂が……居るのか……!!」


 勇達がその先を見据え足を踏み出した途端、彼等を制止する声が木霊する。


「待たれよ!! それ以上先に行く事はまかりならん!!」


 その声の発せられた先……広場中央にある岩のオブジェの裏から現れたのは5人のカラクラ族……ジョゾウ達、親衛隊であった。




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