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時き継幻想フララジカ 第一部 『界逅編』  作者: ひなうさ
第二節 「知る心 少女の翼 指し示す道筋は」
35/426

~抗えない、その特異性とは~

 同時刻―――

 東京、変容区域南部。


 非公式情報よりも早く、既に自衛隊の作戦は決行されていた。

 対異生物に対する殲滅攻撃行動である。


 彼等が確認した異生物とは当然魔者の事だ。


 でも相手は所詮人型。

 例え強靭な肉体を持っていようとも関係は無い。

 自衛隊はその程度の生物など一瞬で消し飛ばせる程の武器を多数保有しているのだから。


 当初の想定では作戦行動時間はおおよそ一時間。

 たったそれだけで殲滅出来ると彼等は予想していた。




 しかしその予想も間も無く、大きな変化を見せる事となる。




タタタタンッ!!

タタン、タタンッ!!




 銃撃音が絶え間なくビルの合間に木霊する。

 魔者の集団に向けて無数の銃弾が撃ち放たれたのだ。


 相手は勇達を襲った者達と同じ種族。

 彼等に向けて弾丸の赤い軌跡が幾度と無く空を裂いていく。


 対して、魔者達は―――怯む事無く、前進を続けていた。


 銃撃が通用していないのだ。

 直撃したはずの銃弾が何故か、当たった途端に砕け飛んでいたのである。

 あるいは弾かれ、あるいは潰れ。

 けれど魔者達は一切動じてすらない。


 全くの余裕だ。


「た、隊長、銃弾が効きません!!」


「怯むな! 徹甲弾の使用はどうだ!?」


「既に別部隊にて使用報告が上がっていますが無効!」


「戦車砲の使用許可下りています!」


 自衛隊陣営では予想も付かぬ事態に動揺が広がっていた。

 当然だ、普通の銃弾ならともかく鋼鉄すら貫く徹甲弾ですら通用しない。

 それを成せる生物が無数に迫ってきているのだから。


 それでも彼等の手段が全て失われた訳ではない。

 自衛隊の誇る戦車がまだ残っているのだから。

 地上戦力最高峰の武器を積んだ機動兵器が。


 数台の戦車が回頭し、砲塔を魔者達へと向けていく。

 「ギリギリ」と金属の擦れる音を掻き鳴らしながら。


 もはや街中であろうと関係は無い。

 敵性生命体を排除する為にも、多少の損害はやむを得ないのだから。


「戦車砲発射用意!! 3、2、1―――発射!」


「戦車砲発射!」


ドォォォーーーンッッッ!!!


 たちまち戦車から砲弾が放たれ、凄まじい爆音と爆風を巻き起こす。

 周囲の部隊員が耳を塞いで防御する中で。


 放たれた砲弾が超高速で空を貫き、魔者の集団へと一直線に迫り行く。

 そして偶然にも弾丸が一人の魔者の体へと直撃した時―――


 自衛隊員達はその目を疑う事となる。


 砲弾が魔者に当たった瞬間、空中で「ピタァ」と動きを止めたのだ。

 まるで時が止まってしまったかの様に。


 それだけではない。

 止まった砲弾が徐々にブルブルと小刻みに震え始め。


 その震えが大きくなった途端、突如としてそれは起きる。




 なんと、砲弾が千切れて四散したのである。

 まるで魔者の体を避ける様にして。


 


 そして当たったはずの魔者は何も無かったかの様に悠々と歩き続けているという。

 それも、「ニタニタ」とした笑みを浮かべながら。


 そう、彼等には全く通用していない。

 砲弾によるダメージのみならず、その衝撃や振動も。

 それどころか砲弾が生み出した風圧や熱すらも一切の影響を受けていない。


 全くの無力だったのである。


「バ、バカな、ありえん……」


 堪らず自衛隊員達の顔に畏怖が浮かび上がる。

 相手は物理法則すら捻じ曲げ、余裕すら見せる怪物達で。

 訓練ではそんな相手など想定しているはずも無いのだから。


 目の前にいる魔者達は、彼等にとっても紛れも無い脅威そのものなのである。


「もうこれ以上は持ち堪えられません!」


「総員に撤退命令が出ています。 他所でも同様の状況が発生している模様!!」


「て、撤退だ!! 総員退避!!」


 こうして自衛隊は撤退を余儀なくされ。

 去っていく人間達を前に、魔者達は喜びの叫びを張り上げる。


 この場所のみならず、各所においても同様に。

 いずれの部隊も同様の理由で、変容地域から次々と撤収していた。




〝敵性生命体への物理攻撃無効〟

 これが自衛隊の打ち出した結論だった。


 まさしく剣聖が言った通りの結果が彼等を待ち受けていたのである。




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