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時き継幻想フララジカ 第一部 『界逅編』  作者: ひなうさ
第九節 「人が結ぶ世界 白下の誓い 闇に消えぬ」
252/426

~これが世界の進むべき道 翌~

 鷹峰総理大臣とアメリカ外交官ミシェルとの会合の翌日、月曜日。

 いつもと変わらぬ通勤通学風景が朝の街を賑わせる。


 その中には当然、勇とちゃなの姿も。

 待ち合わせ場所へと一足早く辿り着き、二人静かに佇んでいて。


「二人共おーっす!」


「おはようー」


「勇君勇君会いたかったー会いたかったよー!!」


 そうして待てば間も無く、威勢良い声が二人に届く。

 相変わらずの三人組、心輝と瀬玲、あずーの登場だ。


 最近の登校の様子はいつもこう。

 以前と違って朝練直行も無くなり、ちゃなも同伴に成って久しくて。

 気付けばこうして、五人揃って登校するというパターンが出来上がっていた。

 もちろん、勇の背中にぐりぐりと頭を押し付けるあずーの行動も同じなままである。


 そんな日常も慣れきって、何気無く学校へと辿り着く。

 勇達が望んだ、平凡な日常だ。


 でも、今日の話題だけはちょっと毛色が違うらしい。


「そういや、福留さん達から聞いたか? 今日の首脳会談の件」


「あぁ、『録画でもいいので後で目を通しておいてください』ってな。 って事はよ、カプロ達も議題に上がるんじゃね?」


 そう、その話題とは国際会議の事。


 『あちら側』に関する問題はいわば彼等の領分で、無視する事は出来ない。

 だからこそ福留も裏で心輝達に手を回し、関係者としての役割を与えたのだろう。


 真実・事実を知り続ける。

 それが心輝達、事情を知った者達への義務なのだから。


「御味さんめっちゃパシャってたからねー、もしかして私達の顔も映っちゃうんじゃないの?」


「「「え"ッ!?」」」


 だが個人情報流出となると話は別である。


 その核心的な一言を聞いた途端、勇達の視線が一挙に瀬玲へと。

 皆揃って驚きの目を向けるものだから、これには瀬玲もタジタジだ。

 

「い、いや、可能性の話だし?」


「まぁさすがに福留さんがそんなヘマはしないだろ」


「だ、だよなぁ~ビビったぜ……」


 いきなり国際デビューは、目立ちたがりな心輝でもちょっと怖かった模様。

 瀬玲と一緒に胸を撫で下ろす姿は、さすがの幼馴染か。


 とはいえ正直な所、そこは勇にも確証が無い。

 何せ今回の会議は転移問題に関する話し合いがメインだ。

 そうなると、会議参加者にだけは心輝達(きょうりょくしゃ)の事も公開されるかもしれない。

 いわゆる国家間の機密情報扱いとして。


 故に今は笑って誤魔化すしかない。

 〝何があっても、それは自分達から巻き込まれた所為なんだからな〟などと思いつつ。


 するとそんな時不意に、交差点の影から見知った人物が一人。

 どうやらその〝自ら巻き込まれた人〟がもう一人合流したらしい。


「あ、愛希ちゃん! こっちこっちー!」


 そう、愛希である。


 自転車を引く彼女に気付き、ちゃなが手を振って迎える。

 昨日の事を知ってもなお何一つ怒る事も無く。


 昨日の一連の出来事は当然、ちゃなにも伝えられた。

 勇としては少し恥ずかしかったけれど、共有しないと福留に怒られそうだと思って。

 でもちゃなからは「あ、そうなんですね。 私も総理さんに会いたかったです」程度の反応しか返ってこなかったという。

 全般的にあんまり興味が無かったのだろう。

 その後の映画の論評の方が凄かったとかなんとか。


 そんな訳で勇への誤解も愛希への蟠りも一切無し。

 万遍の笑みで迎える姿がここに。


 愛希もそれで安心したのだろう。

 同様に大手を振って応えていて。

 

「ちゃなと先輩ズ、おはようございまーすっ!」


「おはよ、愛希ちゃん」


 今まで以上の親しみある様子で合流だ。

 やはり昨日の出来事で一層距離が近くなったから。


 それは主に勇・ちゃなとの間だけではあるが。


 今の愛希もれっきとした、勇達の事情を知る者の一人だ。

 そこに真実の知る知らないはもはや関係無い。

 秘密を共有しているという事実があるだけで、人は深く繋がり合えるのだから。


 とはいえ、今の愛希ならもう真実を知ろうとはしないだろう。

 昨日の最後の一件で、今の関係が丁度良いのだと理解したから。

 その鋭い目線を鑑みるに、無駄に頭を突っ込んだ心輝よりはずっと賢いのかもしれない。


「勇さん昨日ぶりぃ! 昨日はありがとうねー!」


「あぁ、うん」


「オイオイ、いつの間にそんな仲良くなったんだよお前ら?」


「フヒヒ、秘密に決まってるじゃないですかー!」


 ただし、こうやって自らの行いをバラしてしまう所以外は。


 心輝の追求を前に、優悦を交えた不敵な笑みが愛希の顔にニンマリ浮かぶ。

 なんだかよくわからないが、やけに勝ち誇った風だ。




 だがその優越感に浸った顔も、たちまち跡形も無く消え去る事となるが。




「勇君と……何をしたんだぁ~!!」

「ぎゃあああ!! 天然あずーが居たァァァ!?」


 勇の背後から赤く目を光らせたヤバい奴(あずー)を前にして。


 ずっと話には聞き耳を立てていたのだろう。

 主に勇に関する部分だけ。


 故にあずーが許す訳も無い。

 知らぬ内の男女の密会など。

 ならば実力行使による聴取も辞さない構えだ。

 両手指をうねうねとうねらせ、妖しい眼光を解き放つ。


 魔剣使いも魔者もビックリな、嫉妬の魔人が今ここに顕現す。

 これには愛希のみならず、勇達もドン引きである。


「何してたのか~!! 話せぇ~い!!」


 そんな魔人がとうとうに愛希へと飛び掛かる。

 しかし愛希も負けてはいられない。




 するとたちまち、女子二人による取っ組み合いが勃発だ。

 両手を掴み合い、力の限りに押し合うパワーファイトが。

 



「勇君はァ~!! 私の~モォ~ノォ~!!」

「舐めるな天然あずー如きがァ!! 万年帰宅部のアタシに勝てると思うなよォー!!」


 それは愛ゆえか、それとも意地か。

 はてまた、ただ馬が合わないだけか。


 なんにせよ朝から突如として始まった肉弾戦は無駄に暑苦しい。

 涼しい秋さえも夏に戻してしまいそうな雰囲気だ。

 残された勇達もただただ見守るしかない。


 互いの力は均衡。

 いや、どちらかと言えば運動部のあずーの方がちょっと強い。

 帰宅部の愛希には若干、荷が重い相手か。


 しかし、愛希にはあずーに負けない武器がある。

 機転を利かせる小賢しい頭脳が。

 勇の間違いにいち早く気付ける洞察眼が。


 故にそれは起きた。

 なんとこの時、あずーが突如として姿勢を崩したのだ。

 愛希がわざとその手を引かせた事によって。


 しかもそれだけには留まらない。

 あずーの身体を支点にしてぐるりと回り込み、瞬時にして羽交い絞めに。

 魔剣使いな勇もビックリの身のこなしである。


 それに愛希の強みは他にもある。

 この戦いが決して一対一ではないと言い張れるストイックさが。


「今だちゃなー! 脚を、脚を持てぇーい!!」

「え、えぇ!?」


 これが仮にプロレスならば、この戦いは残念ながら二対一となる。

 愛希にはちゃなという心強い味方(フレンズ)が居るからこそ。


 そして意志の弱いちゃながこんな要請に応えない訳も無く。

 気付けばあずーの手足を掴んで担ぐちゃなと愛希という珍妙な構図が今ここに。


「ぎゃあああ!!」


 こうなったら最後、あずー如きでは解く事叶わないだろう。

 足に限っては特に、ちゃながしっかり脇で固めてしまったので。

 命力も籠っていれば、常人が解ける理屈はもはや存在しない。


「ええー……」


 蚊帳の外な勇達三人はドン引きもいいとこだが。


「いやぁ離してぇー!!勇君に愛してるって言われないと私死んじゃうのォー!!」


 こんな意味不明な事を叫んでも愛希には通用しない。

 というかむしろ、逆にきつくなってないだろうか。

 あずーの呻き声が酷くなる一方だけれども。


 おまけに、苦悶するあずーの目前には兄・心輝の顔が。

 その顔は何故か劇画調だ。


「ならばお前は既に死んでいる……!!」


「あでっ!!」


 締めにはおでこにキツいデコピンの一発が見舞われる事に。

 妹の凶行の数々を戒め続ける事で鍛えられた渾身の一撃が。


 この一撃を以って、とうとうあずーの暴走は収拾へ。

 半べそを掻いているその隙に、愛希が空かさず声を張り上げる。


「行くよ、ちゃな!!」


「う、うん!!」


 この二人のなんたるコンビネーションか。

 親友の関係はやはり伊達じゃない。

 その姿はあっという間に校門前へ。


「エッサホイサァ、エッサホイサァ!!」


「イヤアアア勇くぅーん!! ギャワーーー!!」


 あずーの叫びも虚しく、そのまま校内へとその姿を消していく。

 唖然とする勇達を置き去りにしたままで。

 ついでに自分の自転車も。


「……さ、行くか」


「そうね」


 でも忘れてはいけない。

 勇達にとってはこれも日常の風景なのだと。


 故に、勇達はもう平然としていた。

 何事も無く、愛希の自転車もそっと引いて。

 随分と慣れたものである。




 そう、これでも勇達は充分楽しいのだ。

 非日常を知ってしまった身だからこそ、何よりも。


 それに、これからもっと非日常を迎える事になりそうだから。


 だからこそ、この楽しい風景が普通だと思いたい。

 そんな願いを込めて、彼等は今日も道を行く。


 自分達らしい望む限りの日常を皆で、歩んでいく。




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