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時き継幻想フララジカ 第一部 『界逅編』  作者: ひなうさ
第五節 「交錯する想い 友よ知れ 命はそこにある」
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~虹光 捕捉 されど再び瞬く~

 勇の意識が真っ黒に染まり。

 考える事も許されない世界の果てに沈んでいく。


 痛みは無い。

 地に突いた感覚さえも感じさせない。

 それが体をふわりと浮かせた様に錯覚させていて。

 

 そのまま沈んでしまおうかとすら思える程に心地良かったのだ。


 でもその意識を引き留めんとばかりに、外の世界の喧騒が僅かに響く。

 魔者達の雄叫びが。

 自衛隊員達の号令が。

 大地を踏みしめる足音が。

 絶え間なく轟く爆音が。


 その全てが意識に向けて集約していく。

 まるで黒の世界を虹色の(ライン)が走り刻むかの様に。


 気付けば全てがぼやけて聴こえていて。

 でも何が起きているかまではわからない。

 それがただ騒がしくて、喧しくて。

 「ほっといてくれよ」などと思える程に。




 だがその時、意識を直接突き刺す声が黒の世界に轟く。




―――起きてくださいッ!! 勇さぁんッ!!―――


―――起きろぉオオーーー!! 勇ぅぅううーーー!!!―――


 その声だけはハッキリと聴こえたのだ。


 実際は声など届きはしないだろう。

 戦場を包む激音が何もかもをも掻き消していたから。


 それでも、届いていたのだ。

 大地を伝い、黒の世界も突き破って。

 二つの虹色の巨線が沈みかけていた勇の心を撃ち貫く。


 黒の世界を打ち砕く程の力で。




「かはッ!?」




 それが勇の意識を取り戻させた。

 二人の声が届き、彼の心を呼び起こしたのだ。


 そしてそこで初めて気付く。

 自身が倒されていたという事実に。

 うつ伏せで大地に伏していた事に。


「ぐ、うぅ……!!」


 倒れた身を起こそうと、全身に力を籠める。


 しかし手足が震え、今までにない程に体が重い。

 全身の感覚すらも狂って何もかもが不自由だ。


 だがそれでも生きている。

 それは生かしてもらっているという事。


 その事実をも認識した時―――勇はその困難さえも払い除ける。


「お、ああッ!!」

 

 体の至る所が痙攣し、言う事を聞かない。

 しかし意思のある限り、動かす事は出来る。


 命力が、気力が、彼の体を動かす原動力となって。


 その時、ちゃなが、心輝が、福留が、瀬玲が、あずーが。

 反り立つ雄姿を垣間見る。




 遂に立ち上がった勇の姿を。




 そしてたったその一つの行動が、思わぬ恩恵をもたらす事となる。


 勇には()()が見えていた。

 たまたま、偶然に。


 視界に映った敵の小さな集団が妙な動きを見せていて。

 周囲の敵が混乱しながら逃げ惑う中で、その集団だけが逆に固まる様に動いていたのだ。

 まるで何かを守る様にして。


 今まで、大集団の中に居て気付けなくて。

 でもこうしてちゃなの掃射によって混乱した事によって浮き彫りとなっていたのである。


 しかもそれはただの集団ではない。


「はあッ、はあッ―――い、いた……!!」

 

 そう、そこに居たのだ。

 ザサブ王と言うべき存在が。


 居なかった訳でも、身を潜めていた訳でもない。

 堂々と、そこに居たのである。

 ただ気付かなかっただけなのだ。


 何故なら、ザサブ王の姿は周りの兵士達と同じ格好だったのだから。


 背丈も、身なりも、何もかもが同じ。

 違うのは、手に持つ武器が剣でも槍でも無く―――木の棒。

 ちゃなと同じ遠距離支援型魔剣である。


 木を隠すなら森の中とはよく言ったもので。

 つまりザサブ王は兵士達に紛れ、自身が統率者であるという事を隠していたという事。

 悟られずに近寄り、必殺の一撃を見舞う為に。


 しかしちゃなの常識を覆す砲撃が陣形を崩し。

 雷撃を喰らった勇がこうして立ち上がった。


 それが魔者達には想定外で。

 その結果、彼等は自然と保身に走っていたのだ。

 王を守ろうとする行動が、その存在を意図せず浮かび上がらせたのである。


 その事実など、今の勇には理解出来ないだろう。

 ほとんど意識も途切れ途切れで、思考する事さえ困難な状態なのだから。


 それでも目の前に現れた存在が脅威であるという事だけは認識していた。


 だからこそ勇は今、その身を駆けさせる。

 ただ愚直に、一直線に。

 ひたすらに、王を討ち取る為だけに。


「勇さんッ!! 相手の攻撃は(かみなり)ですッ!! 頭上に注意してくださいッ!!!」


 そんな勇へとちゃなが必死に叫びを上げ。

 勇の左右から襲い掛かる魔者達を薙ぎ払う。

 その様子はまるで勇の道を切り拓くが如く。


 そう伝えたのは、勇が状況を理解していないという可能性を否定出来なかったから。

 こうして敵の攻撃の正体を伝えれば、勇なら何とか出来るという自信があったのだ。




 しかし相手ももはや隠す気は無い。

 勇が一直線に走って来た事で見つかった事に気付いたのだろう。

 そうともなれば、その本性さえも露わとなる。


「ちぃッ!! だがもう遅い!! 力は十分に溜まっているんだよォ!!」


 そう、王はもう次を撃つ事が出来るのだ。

 遠く離れた相手であろうと直撃させる程の精度と凄まじい威力の雷撃を。


 そして勇と王との距離はまだ離れている。

 次弾を撃ち込む余裕さえも生む程に。


「バカめっ!! 今度こそ死ねえっ!!」


 おあつらえ向きと言わんばかりに、勇は真っ直ぐ走ってきている。

 それを狙う事など王には造作も無かったのだ。


 その時生まれた余裕が嬉々とした笑みすら呼び込み。

 同時に、命力を込めた魔剣を力一杯に振り上げる。


 それこそが雷撃発動の(キー)


 その瞬間、勇の頭上上空に再び稲光が瞬き走り―――




 無情の雷光が再び轟き迸る。

 勇へと向けて一直線に。




ズシャアアアア―――!!


「勝ったあ!!!」


 この一撃こそザサブ王の誇る必殺の雷撃、王たる由縁。

 それを放つという事は敵を滅したという事。

 勝利するという事と同義。


 だからこそ、そう猛らずには居られなかったのだ。




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