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誰にも届かない

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本作品の内容はフィクションです。

登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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もう後戻りの出来ないところに行くよ。

光一「良いこと言ったって顔も、笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、俺のことなのに自分のことのように手伝ってくれるその性格も恥ずかしそうにしてるその仕草もさ俺は、大好きだ」

ごめん。ずっと友達なんて無理だよ。

光一「付き合ってほしい。咲希じゃなきゃダメなんだ」

咲希は、うつむいている。顔が見えない。でも涙が流れているのはわかる。

ポタ。

ポタリ。

どうして。

嬉しいのか?

悲しいのか?

俺にはわからない。

それでも俺は、俺には言えないと思っていたことを言ったんだ。答えを権利があるんじゃないか?

幸せな時間がずっと続けばいい。願うなら咲希 の隣でさ。

光一「なんで泣いてるんだよ。泣くことないだろ」

不思議でならない。

先の小さい拳が震えてる。いや全身が震えている。

どうした?

なんで?

寒いの?

光一「寒いのか? どうして震えてるんだよ……」

俺の発言がこんな状況を作り出したのか? 当たり前だ。俺のせいだ。また女の子を泣かせた。どうしろっていうんだ!

光一「ごめん。俺の発言が咲希を泣かせたんだと思う。でも撤回は出来ないよ。冗談でこんなことは言ったりしない。本気だ」

俺は……。

光一「本気で咲希のことが好きなんだよ」

気づくと俺も泣いている。どうして。まだ答えを聞いていないのに。聞きたい? 聞きたくない? もうわかんなくなってきたよ。

永遠とも思える時のなか咲希が顔を上げた。

その顔にうつっていたのは。そして咲希の唇が動く。ゆっくりと。俺の好きな声で。

































咲希「ごめん……ごめん……ごめんね! 私はこうちゃんとは付き合えない…付き合えないんだよぉ!」

涙のこぼれる速度が増す。

俺の好きな顔で、好きな声で、目の前の女の子は、俺を拒絶した。ずっと続いてほしいと願っていた。世の中の平和なんかどうでもいい。ただ咲希がいる。いてほしい人がいる。そんな平和は、瓦解した。音を立てて崩れ去った。俺の表現力じゃこの絶望は、表せない。ただ俺は……。

光一「あぁ……ぁぁ……」

声にならないの叫びを上げた。こういう時、涙は止まってくれない。


光一「どうして……どうして俺じゃダメなんだよ! 嫌だと思うところは直す! だから…」


咲希「そうじゃないよ…」


光一「なんで……俺は、咲希じゃないとダメなのに!」


咲希「女の子なんて星の数ほどいるんだよ? 私じゃなくていい」


光一「ならなんで泣いているんだよ! そんなに俺が咲希のこと好きだっていうことが嫌なのかよ!」


咲希「痛いところつくんだね。ダメだよ。言っちゃだめなの」


光一「なんでダメなんだよ! 言わなくちゃ伝わらないことばっかなんだよ! だから言った……伝えたかったから俺は、大好きだっていった!」


咲希「やめてよ……言ったって伝わらないことだってあるの!」


光一「俺の言った意味がわからないのか? 何度だって言ってやる! 好きだ!」


咲希「何度も言っちゃダメだよ……わかってる……こうちゃんが私を好きになってくれたの……わかるよ……でも!」


光一「でも! なんだよ! 聞かせてくれよ!」


咲希「でも……でも! うっ……うぁぁぁぁ!」


光一「泣いてるだけじゃわかんねぇんだよ! 頼むからわかるように言ってくれよぉ……バカみたいじゃないか……」


咲希「わたしは…わたしは…」


光一「お願いだよ……知らないよりはずっといい……」















咲希「こうちゃんが好き! 好きなの! 誰よりも好き! 他の男の子なんか好きになったことなんてない……ただ一人……あなただけを愛している……こうちゃんしかいない……こうちゃんだけを見つめていたい……子供が好きなこうちゃんが好き……優しいこうちゃんが好き……笑わせようと必死なこうちゃんが好き……努力家なこうちゃんが好き……こんなに好きになっちゃったら他の誰を好きになれるっていうの!? なれるわけなんてない……この気持ちを誰かに向けるなんて死んだほうがまし……」


光一「何を…なにを言ってるんだよ……わけがわからないよ」


咲希「私は、こうちゃんのことが好きっていっているの! ちゃんと聞いてよ……」


光一「好きって……? 付き合えないって……? 状況が理解出来るやつがいるわけねぇ……だろ」


咲希「好き……でも大好きじゃないから付き合えない」


光一「意味がわからない! 俺しかいないんじゃないのかよ!」


咲希「そうだよ……こうちゃんしかいないんだよ……すっごく優しいこうちゃんが好き」


光一「俺の……俺のどこが優しいっていうんだ! こんな身勝手言ってしまう俺のどこが!」

ゆっくり咲希が近づいてくる。


咲希「知ってるんだよ。学生の時、子猫にご飯食べさせてるこうちゃんも、子猫の捨てられているのみて傘を走って買いにいったこうちゃんも、カラスが害獣だって知って涙したこうちゃんも、優しくないわけがないでしょ!」

咲希が更に近づいてくる。


光一「どう……して……」

もう少し動けば触れてしまう。


咲希「誠実なところも好き……」


光一「やめろ……ダメだ……よくない……咲希は、俺をフッたんだろ……」


咲希「好きなの……相思相愛なんだよ……? 止められないの……止めて……」


光一「止められる……わけが……ない」

そして唇と唇が……。


咲希「こんなキスは初めて……人生で一番いいはずなのに……悲しい」


光一「うっ…ぁぁ…」


咲希「泣いているこうちゃんも可愛い……私ね……これがファーストキスじゃないんだよ……? 幻滅した……でしょ……」


光一「なんでぇ……最低だぁ……こんなの望んじゃいない……」


咲希「私はどんな人とでもキス出来るよ……こうちゃんみたいな……いい人じゃないよ……でもこれがこうちゃんとの最初で最後のキス……」


光一「嫌だ……嫌だよ……許容出来るもんかぁ……」


咲希「今のは私のミス……こうちゃんと私は、友達なんだから……ダメだよ……私にはやらなきゃいけないことがあるの……」


光一「友達……? ならそのやらなきゃいけないことも言え……うぷ!?」

口を塞がれる。唇で。


咲希「ダメ……ダメなの!」


光一「友達同士で言えないことがあるって……? それって本当の友達なのかよ!」


咲希「あるよ……」


光一「言いたいこと全部言えるのが友達じゃないのかよ! 咲希の友達の価値観おかしいよ!」


咲希「こうちゃん」


光一「なんだよ」


咲希「最近友達が増えたからって知ったかぶりしないで! 」


光一「あっ……」


咲希「ごめん……最低だからね……これがこうちゃんの知らなかった私なんだよ……」


光一「お前なんか……友達じゃない……! もう咲希なんて呼ばない! 下の名前で呼びあったもう他人じゃなくなるんじゃ……ないのかよ……? 唇が触れあっても今のお前は遠いよ!」


咲希「私のことは嫌いになればいいよ……」


光一「なれるわけないだろ……」


咲希「なってほしく……ない……」


光一「情緒不安定かよぉ……」


咲希「かもね……私は、もういくよ……ばいばい」


そういえば梅雨入りしたんだっけか……。

寒い……。大粒の雨が俺を押し潰そうとしている……。優しい……だって……? 俺とあいつのどこが……? 欲しいものが必ず手に入るなんて思ってなかった……。物じゃないけどさ……。絶対にそんなことはないけど……。俺は、欲しかった。愛されたかった……。好き人に……。


光一「ずぶ濡れだ……。寒い……。身も心も……。もう涙なのか雨なのかわからないな……。こういう時、お前は、声をかけてくれないんだな……」


いつもの謎の声が聞こえない……。


光一「罵ってくれたほうが助かるんだぜ……? 惨めだ……愚かだ……お前は、結局独りなんだぞ……とかさ……。」


嫌だった。


光一「独りは、嫌なんだよ……。独りにしないで……」


俺の言葉は、誰にも届かなかった。独り言なのだから。

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