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第14話 病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする

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本作品の内容はフィクションです。

登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。


また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。


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「ひっぐ……。死なないでよ……。お願いだよぉ……」


意識が覚醒しきっていない。薄目を開けるとそこは白い天井があった。天国か?


「こうちゃん……こうちゃん……」


泣き声がする。咲希の声か? 俺のこと心配して泣いてくれるやつなんていたんだな。


あぁ咲希は夢にも出てきたな。そうか。そうなんだよな。なかなかに気づくのが遅かったな。俺は咲希のことが……。




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする2




目が覚めた。俺が最初に目にしたのは。


ユウト「おはようございます! 先輩! 二度と起きないかと思いましたよ!」


ユウトだった。正直ガッカリである。


光一「寝起きに野郎の顔見るとこんなに腹が立つもんなんだな。初めて知ったわ」


ユウト「寝起きに愛すべき弟子の顔って最高じゃないです?」


なわけねぇだろうが。


光一「あっ?」


ユウト「すいません! 冗談です! でもさっきまで咲希ねぇが来てましたよ? いや泣いてるんで僕は咲希ねぇが出てから入ってきましたけど」


咲希が泣いていた?


光一「咲希のこと呼び捨てはやめたんだな。良いことだ。で? 咲希を泣かせたのはお前?」


ギロリとユウトをにらむ俺さん。


ユウト「泣かせたのは先輩ですよ。トラックにひかれたんですもん。先輩だったらトラックなんて破壊しそうなものですけど……」


どういうことだ?


光一「俺が泣かせた? なんでそうなる? それとトラック吹き飛ばしたら運転手が大変なことなるだろ? てか眠かったから能力発動が遅れたんだよ 」


死んでないのが何よりの証か。間一髪で能力が発動したらしい。それでも体の節々が痛い。能力を今、解除したら痛みでのたうち回るんじゃないだろうか。


ユウト「それで全治3ヶ月の重症ですか……」


光一「はっ? いくらなんでも長すぎるだろ!」


ユウト「普通は今ごろ天国ですよ……」


トラックにひかれた場合だとまだましなダメージらしい。まぁ博士の最新医療システムをこっそり借りればそんなにかからんだろう。後から連絡するとしよう。


光一「で? なんで咲希が泣くんだよ?」


ユウト「先輩が死んでしまったと思ったんじゃないですか? 本人に聞いてくださいよ」


光一「ユウトは泣いた?」


ユウト「泣くわけないじゃないですか。能力ありますし」


ですよねー。


ユウト「女を泣かせるやつは男じゃないですよ? ちゃんと謝ったほうがいいです」


光一「お前にそんなこと言われる日が来るなんてな」


人間ってのはそう簡単には変わらないというが努力すれば変われる。ユウトはきっと努力したんだろうな。俺よりきっといい男になる。




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする3




次の日、咲希がきた。


咲希「こうちゃんが起きてる? こうちゃんが生きてる? うわぁぁぁぁぁん!」


泣きながら抱きついてきた。ピアノの時といいスキンシップが多くなってきたな。いつもペチペチ叩いてくるけども……。


光一「たかがトラックに跳ねられたくらいで大袈裟過ぎるだろうが」


咲希「たかがじゃないでしょぉぉぉぉ! どれだけ心配したと思ってんの!」


確かに。能力のせいで感覚が狂ってるな。


光一「心配かけたな。ごめん。泣いてるとこ悪いんだが。今は昼だよな? なんでここにいる?」


こことは病院のことだ。昼時は仕事の時間のはずだ。


咲希「こうちゃんが心配で……。仕事に集中出来ないんだよ」


これは本格的に罪悪感が……。


光一「そっかぁ。全面的に俺が悪いな」


咲希「そうだよ! こうちゃんが悪い! あっ忘れてた! これ!」


おもむろに取り出したのは折り紙で折った鶴。その量はとんでもない量。もしかしてこれは。


光一「千羽鶴?」


咲希「そうだよ」


初めて見たかもしれない。保育園のなせる技か。微笑ましい気持ちになるな。


光一「ありがとう。嬉しいよ」


咲希「うん。明日は大好きなプリン持ってくるね」




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする4




夜になった。咲希はずいぶん前に帰った。今は博士と通話している。


博士「最新医療の件はわかったわい。すぐに手配させる。光一よ。最近更に世間が騒がしくなっておる。能力者が増えた。そしてついに異形種が昼間暴れだした」


どういうことだ?


光一「あいつらはこっちから手を出さなければ攻撃してこないんじゃなかったのか!? しかも昼間って!」


博士「光一や。ゲイシーは、昼間から行動を起こしていたじゃろう? あの人形どもは形状から言ってゲイシーの持物であるのは確実じゃ。今まで夜だけ動いていたのもそして反撃だけだったのも気まぐれに過ぎんと思うのじゃ」


光一「くそっ! こんな時に俺は!」


博士「そう心配するでない。街では警察が異形種に歯が立たない代わりに能力者が集まって自警団などを結成しつつある。光一の弟子のユウトじゃったか? 奮闘しておるそうじゃぞ」


世界が変わりつつあった。平和とは程遠い世界に。


それにしても何か忘れている気がする。




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする5




次の日の昼。咲希がきた。俺は呑気にテレビを観ている。


『これで江戸の町も平和が訪れるだろう。めでたし。めでたし。』


時代劇のラストである。


光一「どうせまた黄色の服着た悪代官が手下連れてなんかやらかすんだろうが。平和なんて訪れやしねぇよ」


咲希「こうちゃんは冷めてるね~。てか熱いけど冷めてるよねー」


プリンを俺の口に放り込みながら咲希が言った。


光一「言ってる意味がわからん。てかそれ結果的に冷めてるだけだからな。あープリン旨いわぁー」


そういって俺はチャンネルを変えた。テレビなんて普段観ないからなぁ。謎の声は美姫だったか? アイドルが好きなんだったな。


チャンネルを適当に変えてると美姫が映った。


光一「かわいいな。というか美人か」


誰がみてもそういうだろうという感想を漏らす。


咲希「こうちゃんはアイドルオタク? 好きなタイプはアイドル! とか恥ずかしいこと言っちゃう系の人?」


決して俺はアイドルオタクではない。それと。


光一「全世界のアイドルオタクを敵に回したな。御愁傷様。てか俺はアイドル知らねぇし。でもアイドルってのは偶像でさ崇拝される人や物とかそういう意味だろ? そういう意味ではさ美姫はきっと断トツでアイドルやってると思うよ。見た目もさることながら浮いた噂も特にない。しかも踊って歌えるんだろ? ドラマもバラエティーもそつなくこなすらしいし。声優活動もしててナレーションもするとか」


スペックお化けすぎワロタ状態のアイドルだ。


咲希「詳しいね。なんだか意外だなぁ」


咲希がそう言いつつなんとも言えない顔をしている。


光一「俺はテレビあんまり観ないけどニュースはそれなりにチェックしてるつもりだ。アイドルなのに重大な場面で結婚します! とか言ったりさファンと付き合って、別れて、挙げ句の果てに付き合ってたファンにマスコミが好きそうな情報ばらまかれてどうする。既婚者に手を出したアイドルなんかもいるらしいぞ」


咲希「美姫はそんなことしないと思うな」


光一「どうだか。根拠のないことは言うもんじゃない。最近のアイドルはアイドルをちゃんとしてない。動画投稿サイトとは違うんだ。テレビなんだぞ? 全国放送なんだ。視聴率1%が約110万人なんだぞ? 自覚を持つべきだ。テレビだって社会を作る一部なんだ。離婚やら浮気やら未成年と付き合うなんて御法度だろうが! 子供だってみてるんだ」


咲希「やっぱりそこに帰結するんだね。子供に本当に優しいんだから」


光一「大人の身勝手で子供が悪い大人になるのが嫌なんだよ」


咲希「こうちゃんみたいな人が増えればいいなぁー。ってたまに思うよ」


光一「俺は優しくないし。俺みたいなやつが増えたら大変だ。女の子にコブラチリとかハッカ油をカチこむからな」


ベチッ! 頭を叩かれた。


咲希「もぉ! いい話し出したと思ったらすぐこれだ! アホぉ!」


光一「女の子じゃなかった。暴力ババァだった」


ベチッ!! 次は思いっきり強く叩かれた。


咲希「キィィィィィィィィィィ!」


モンスターみたいな声をあげている。


光一「モンスターみたい声だな」


声に出しちまった。なんか病院生活も悪くないな。


ふと思った。何かの存在を忘れてはいないかと。




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする6




退院の日になった。


光一「お世話になりました」


ナースさんに頭を下げる。看護師さんなんておばあちゃんばかりだって聞いていたけどここの看護師さんは綺麗な人ばかりだったな。若いし。偏見だったわけか。


「治りが早すぎましたね」


光一「博士のことはご存知でしょう?」


博士は有名人だからな。何かと……な。


答えは聞かずに1ヶ月居た病室を出た。


すたすたと早めに歩き病院を出る。外の空気を吸いたかったからだ。


光一「やっぱシャバの空気はうめぇや~!」


病院を出た瞬間に叫ぶ俺氏。


声「お勤めご苦労さん」


光一「一度は言ってみたかったんだよなぁ! ちなみに娑婆ってのは世の中のことな!」


声「はいはい」


光一「てか俺さん何か忘れてね?」


声「帰ればわかる」


光一「ふむ。帰るとしよう! 我が家に!」


スキップで我が家に向かう。病院とか落ち着かなかったし。




病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする7




灯りがついている。もちろん我が家が……。


光一「これはヤベェやつじゃねぇか?」


声「泥棒が窃盗ナウ?」


能力を発動させた。これで泥棒なんて相手じゃない。


光一「能力で暴れたら俺の家なんて音速を一撃使ったら崩壊じゃねぇか」


泣けてきた。


声「さよなら。我が家。今のうちに手を合わせておけよ」


くそぅ……。御臨終かよぉ……。


意を決して空き巣を撲滅するべく俺は我が家の入り口のドアに手をかけた。


光一「ただいま帰りましたよ! 俺ん家ぃぃぃぃ! 泥棒さん! こんにちはぁぁぁぁ! 警察につきだしてやるぜぇ!」


息巻いて突撃をかました俺。待っていたのは。


ピース「助けてくれっピぃ~! 遅すぎるっポぉぉぉぉぉぉ!」


「あはははははは! おかえりなさい! パパ!」


鳩と幼女体型の女の子だった

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