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第12話 敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません

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本作品の内容はフィクションです。

登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。


また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。


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「いや~博士の早業には恐れ入ったね! オレが出てきた瞬間、髪の色変えてくれるんだもんなぁ~」


青年はさっきまで床を何回も舐めたのに平気な顔をしている。


すると練習場内に大きな声が響いた。


「光一が気絶するもんじゃからなぁー。出てくると思ったわい! 今からデバイスを落とすぞい」


「はいよー」


傭兵は何が起こったのかいまいち理解出来なかった。あれだけ痛め付けた小僧がいきなり顔色も変え。髪の色も変え。声まで変わっている。


青年は天井から落ちてきたデバイスなるものを手に取った。形状はタッチ式携帯電話とさほど違いがない。


「博士~。獲物をくれよ」


「ほーい」


青年は天井から落ちてきた。大剣を左手でキャッチした。


「傭兵さん? あージョッキだっけ? 泡立つ黄色い飲み物さんの入れ物? こいよ」


ジャックはいきなり威勢がよくなった青年に腹が立った。すぐに青年の懐に飛び込み攻撃を開始した。だが全てかわされる。


「光一は単調なんだよなぁー。避けるってことあんまり知らねぇし。まず好んで戦ってないしな。降りかかる火の粉を払うって気持ちも足りない」


青年は攻撃を避けながら独り言を呟いていた。その青年がデバイスに指を置いた。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


とたんジャックが中に浮く。足場が浮き上がったのだ。


「なんの細工もしてないわけがないだろう。傭兵さんは博士と俺を舐めすぎたんだ。人間宙に浮かされたなら何も出来ない」


そしてどこからともなく発射された銃弾とミサイル群がジャックを襲う。


「花火なんて久しぶりにみたな。爆風で傭兵さんの姿みえないし」


なんて悠長な事を言う青年。


「そろそろ火花も煙幕も邪魔だな」


大剣を構えた青年はその花火に音速の斬撃を浴びせた。浴びせたという表現は何回その大剣を振ったかわからないからである。


まさに台風のような爆風が吹き荒れ煙幕が晴れると壁にめり込んでいるジャックがいた。


「まだ意識があるみたいだ。博士の練習場の頑丈さにもビビるけど傭兵さん流石だな」


パチパチ拍手をしながらジャックの元に向かう青年。


「小僧じゃないな。青年よ。こんな切り札を隠していたとはな。心底驚いたぜ。どうしてやられたふりをした?」


ジャックは青年に問う。


「傭兵さんは強いよ。志も俺とは大違いだ。でも俺には俺の人生をかけて守らなきゃいけないものがあるんだよ。傭兵さんの大義名分は聞いた。すごくいいと思うでもな。復讐心に身を焼かれると子供にも負ける。覚えていたほうがいいな。大人はすぐ嘘をつく。俺も大人だが俺は一生本当の大人にはなれそうにないな」


ジャックは返答になってない気がした。


「どういう意味だ」


「言葉の通り。苦しまずに終わりにするって言ったよな? 俺が決行して正義になってやるよ」


青年が思い出したように言った。


「決めセリフだ。よく聞いておけ。


Defeat? I do not recognize the meaning of the word.


傭兵さんは外人だろ? 意味はわかるな?


敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません」


青年はジャックの顎を拳で撃ち抜いた。


「得意技なんでな」


人間は正確に顎を撃ち抜かれると脳震盪を起こし気絶する。だが狙って顎を撃ち抜くのはプロのボクサーでも難しい。青年の能力あってこそ出来る芸当である。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません2




目覚めると博士の研究室の天井が見えた。


光一「生きてる!?」


ガバッと音を立てて布団をはねのける俺氏。


博士「あはよう。光一」


光一「恒例になってきたから脳内解説もやめたわ」


博士「わしも慣れた」


とにかく俺は生きてるらしい。


光一「ジャックは?」


博士「光一が気絶した瞬間あいつが気絶したので宙に浮かせてフルボッコ」


光一「マジでそれ最初からやれよ」


博士「あいてはプロじゃぞ? 避けられるわい」


だよな。完全に格が違った。


光一「今のこの世界は核がなくなっても平和じゃないんだなって改めて思ったぜ」


博士「そうじゃな。これからわしもテロリストの的になると思うとゾッとするわい」


光一「どーせ返り討ちにするんだろ?」


博士「それはさておいてわかったことがある」


さておかれた……。


光一「なんだ?」


博士「ジャックも光に包まれたそうだ。そしてこの国限定で相次いで能力覚醒が起こっておる。警察は誰一人として覚醒しておらん」


光一「どういうことだ?」


博士「そしてジャックは素手のみの変わった傭兵じゃった。つまり殺傷武器を使ったことがない人のみ光に包まれる」


光一「完全に人為的じゃねぇか!」


博士「人に作れるものとも思えんが可能性はあるということじゃ。目的はわからん」


一応謎が一つ解決したのか深まったのかわからなかった。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません3




光一「眠い。やる気でん。今日はみんな咲希のピアノコンクールの時間な」


今はお昼寝が終わってからの自由遊びの時間。もちろん保育園の仕事の時間である。眠たすぎて午前中のことがあまり記憶にない。昨日……いや今日はいろいろありすぎた。


咲希「こうちゃんさー。今日ぼ~っとしすぎだよ? お昼大好きなプリン出てきてもぼ~っとしてた。いつもなら子供達のプリン奪い取る勢いで元気なのに」


光一「昨日は美女が寝かせてくれなかったんだ。どうして寝かせてくれなかったって? おこちゃまにはまだ早い話だな」


寝かせてくれなかったのは外国人のおっさんである。悲しい。


咲希「殴るよ?」


光一「冗談言っただけで殴ろうとしてくる咲希さん怖い! こんな大人になっちゃダメだぞ? みんな~」


咲希「はぁーこうちゃんがテンション低いしピアノ弾いてあげるよ」


咲希が保育園にある一番高価な物。グランドピアノの前に座る。俺は園児達を集めた。


光一「みんなー?今からお姉ちゃんが久しぶりにピアノ弾いてくれるぞ? 聴きたいやつは、こっちにきなさーい」


園児達「わーい!」


咲希のピアノは定評がある。てか上手すぎるので大盛況である。専門学校では一目置かれていた。てか先生より上手いとかプロになれるんじゃねぇかと思ったりした。


保母さんになるにはピアノは必須科目である。俺はバカみたいに苦労した。マジで冗談抜きでだ。


そして咲希がピアノの音色を奏でだした。


光一「やっぱ凄いな」


俺はつい感嘆の息を漏らす。うつらうつらとしてきた。ずっと聴いていたいんだけどな……。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません4




小鳥のさえずりが聞こえる。外が明るい。


「あー! 眠い! もう朝かよぉ~」


学校に出掛けなければならない。けど二度寝したい。


「二度寝したいとか思ってるだろ? ダメだぞ。 このままだとピアノの試験落として卒業出来なくなる」


俺は一人だ。言葉の通り独り暮らしだ。なのに俺以外の声が聞こえる。不思議だ。これは今に始まったことではない。この声はいつだって聞こえてきた。


「わかったよ。さっさと学校に行って昨日買ったピアノの練習本でも読んでるかぁ~」


「それがいい」


学校に行く支度を終え玄関から外に出る。


「行ってきます」


誰もいない家に一言言ってから。


「あっやべ! 忘れ物!」


思い出した俺はキャットフードをポリ袋に積めてバッグに入れた。


「今度こそ行ってきます……だ」




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません5




学校に行くには市内電車に乗らなければならない。家から歩いて20分かかる。となり街は首都ということで賑わっているがこの町はなんでのんなにも田舎チックなのだろうか。


「チックっていうのは何々っぽいって感じで使うんだぜ」


「はいはい。いつもの独り言ご苦労さん」


「それで俺はチャラ男チック?」


「しらん」


「つれないねー」


とことこ市電まで歩いているといつもの場所に段ボールが置いてあった。


「お前達……まだ……」


道の脇に段ボールに傘がさしてあり段ボール箱に白い張り紙がしてある。『拾ってやってください』とマジックで大きく書いてある。


「今日もご飯持ってきてやったぞ。そら食べなよ」


段ボール箱に入っている子猫3匹に俺はキャットフードを食べさせてあげた。


「少し昔の話になるんだけどな。ネコノミクスっていう現象が起きてさ。猫の経済効果は、凄いんだぜ? だからこの国の人達はみんな猫好きなんだよ。だからお前達は絶対に幸せになれるからさ。もう少し辛抱してくれよ」


買ってあげれない俺がこんなこというなんて情けない。


「博士に預ければいいんじゃないか?」


「博士は優しいけど博士も大人だ。 研究所の人達がこいつらを施設なんかに預けたくない。駆除されたりする場合があるんだろ? 俺はそういうの嫌なんだよ。 親が子供を中絶したりさ育てるの放棄して子供を捨てる親。っていうか人間? そういうの嫌なんだよ。産まれてきたんだ。生きる権利があるんだよ」


「嫌だから助けるのか?」


「俺が手を差しのべられるなら努力する。それだけだ。宗教的なことを言いたいわけじゃない。特に義務感があるわけでもない。したいからやるんだ」


俺は俺でありたいから。そしてまた子猫達に言う。


「だからさ。てかお前達めっちゃ可愛いだろ? 俺みたいな半分グレてるような見た目のやつより絶対に風当たりいいはずなんだよ! 世の中そんな腐っちゃいないさ。またな。いやもう俺の前に現れてくれるなよ」


俺はまた歩き出した。一週間前だったか? 段ボール箱が置かれるようになったのは。元飼い主よ。傘くらいさしてあげろよな。俺さんが傘さしてあげなかったら寒くて凍えてたかもしれないぜ。まぁ元飼い主もすぐに拾って貰えると思ったんだろうな。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません6




学校に着いた。そして俺の在籍する教室に着いたので自分の席に着席する。誰も俺におはようと一つもくれない。俺もあげないが。


俺はピアノの練習本を読むことにした。


「おはよう! あっピアノの本読んでる! 感心だね!」


隣でなんか言ってるやつがいるが無視だ。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません7




放課後になった。まずい授業はついていけてるがピアノがさっぱりだ。めんどくさいが先生に頼んで居残りの相談をしよう。


職員室についた俺は担任の講師に言った。


「音楽室を貸してください!」


「そろそろ来る頃かと思ったよ。鍵はちゃんと使い終わったら返してね? 見た目と協調性はあれだけど君は優等生なんだから留年はやめてよね?」


「助かります」


物わかりのいい先生だ。長居は無用ということで職員室を出て音楽室のドアを開けた。


「鍵を渡された時点でわかってたけどさ自主練するのが俺だけって……」


「好都合だろ?」


「それでも俺だけがピアノ弾くの危ういって……ヤバくね?」


「さっさと練習しろよ」


言われて俺は練習を開始した。




敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません8




もう何時間たったかわからない。俺は必死に鍵盤を叩いていた。すると手の甲にコインを乗せられた。とたんにコインが跳ねて落ちる。


「えっ?」


何が起こった?


「努力家なんだね。応援しに来た」


そこにはうるさいやつがいた。



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