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第二話 「復活! 嫌がらせジジイ!」

一年たって無事平穏な生活が送れると思っていた矢先、突如モンタ議長の

孫娘エルナの陰謀によって再びアリシュレードに招かれた。

俺は以前と同じように強引に魔王にされると、証であるファッションセンスの無い

黒いマントを羽織、金色の腕輪を腕につける。

そして玉座に座ると。


「はぁーー……」


思いっきりため息をついた。

最初からヤル気などゼロ。以前だって何とかのらりくらりとかわして過ごしていた

というのに。第一、あの時はリーシェが……。


「リーシェ!」


そうだ。以前魔王になったとき、秘書として働いてくれた女性リーシェ。

本名は長すぎてもう覚えてないけど、とても素晴らしい女性だった。

それに会って話したい事が沢山ある。


「なぁ、エルナちゃん」

「エルナでいい。スズキ」

「あのさ、魔王の秘書で働いていた女性いなかった? リーシェ……なんたら」

「ん? ああ、そういえば居たね」

「何処? 今何処に?」

「実家に帰ってる。なんかスズキが居なくなってヤル気無くなったとか言ってた」


その言葉に少し胸が痛む。

ああ……確かにあんな別れ方したらそうなってしまうか。


「呼び出せない? 会いたいんだけど?」

「うーん、ちょっと難しいよ? だってそういうヒロインは一人でいいって

 思うしー」

「? ヒロイン? 何の話?」

「まぁ出てくるのに後三話ぐらい必要じゃないかなー? そんな感じが

 ビビッとテレパシーで来てるヨ」


うんうんと頷いているエルナ。

一体なんの話だというのだろうか? まぁ、とりあえず呼んでくれるみたいだ。


「他に居なかった? こう、アホ面のキザ男とか、金髪の子供とかは?」

「ああー、居たなー。もう見るからにボケ役な男と生意気なチビッ子が。

 ボケ役は会社継いでるって話で、チビッ子はやりたい事が沢山あるから旅に

 出るって」

「そっか……」


皆それぞれやるべき事があるんだな……。そうだよな、あれから一年も

経ってまさか暇とかいう事はないよな。うーん残念。もう一度できれば

ゼロ以外は会いたかったな……。


「あーあ、モンタ議長も死んで会えないもんな」


まぁ、もう寿命で死んでもおかしくなかったし、遅かれ早かれ会えない

運命だったかも……。そうしてちょっとだけ悲しみに浸っていると。


「ん? スズキはあのジジイに会いたいの?」

「えっ? まぁ、少しだけ」

「会えるよ」

「……へっ?」

「でもねー、このまま放っておくのが一番いいと思うけどなー。会っても

 何にもいい事無いとおもうよ?」


あからさまに嫌そうにするエルナ。

しかし、本当に会えるのであれば一瞬でも会ってみたい。

だって死んでるんでしょ? モンタ議長。


「じゃあ、ほんの一瞬でいいから。その後は強制的に帰してあげて」


俺の言葉にエルナはぶすっと頬を膨らませる。

そして、広間の中央に立つエルナ。


"ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレ……"


エルナが呪文を唱え始めると足元から円を描く様に青白い炎が立つ。

そしてその炎はやがて円の中に五芒星を作り出す。

何と本格的な魔法なのだろうか……。


"エーットコノアトナンダッタケ・アッ・ソウダッタ"


……えっと、今の呪文なの? 普通の言葉みたいだったけど?

更にエルナの詠唱は続き、そして最後に。


「出て来い! 変態ジジイ!」


そうしてエルナが魔法陣に手を当てると、光の柱と共に煙が立ち込める。

そして煙がおさまり、出てきたのは……!


「もう少し、もう少しで女湯が覗け……あれ? ここはどこじゃ?」


――変態ジジイだった。


以前と変わらぬ姿。髪は白く雑草のようにぼうぼうに生えて顔が分からない。

立派なふさふさな髭。腰はほとんど九十度に曲がっているお爺さん。

しかしあなどるなかれ、あれは偽りの姿。エロい事になると機敏な動きができる

スーパー変態ジジイなのだ。

唯一変わった所といえば、頭に何やら三角巾を巻いているぐらいだ。


「死んでからも元気そうですね、モンタ議長」

「ムッ? おおっ! 本田! ホンダではないか!」

「あの、鈴木ですから……」

「わかっておるわい。アリシュレードジョークじゃ、ジョーク」


ヌハハハと笑うモンタ議長。

あー、元気な事も分かったし、もう帰ってもらおうかな。


「ジジイ、死んでからも女風呂覗いてるのか? この恥さらし」

「むっ、エルナか? どうした? ワシをこんな所に召喚などしおって。

 あっ、さてはワシに会いたくなったとかか? 可愛い奴じゃのー」

「誰がだ、ボケ。スズキが会いたいっていうから召喚しただけ。あんたの顔なんか

 家に置いてある写真でも黒く塗りつぶしてる」

「ぬはっ! 何という孫じゃ! 育ての親の顔が見てみたいわい!」


感動の再開に二人の怒りは既にMAX寸前。火花が飛び散ってます。

よほどエルナはモンタ議長の事が嫌いみたいだな……。


「あー、モンタ議長もう帰っていいですよ」

「おぬしも酷いのぅ……呼びつけておいてサラリと帰れ発言とは。

 もう少し年寄りをいたわらんか」

「とは言いますが……」

「スズキ! このジジイもうあの世に帰していいよね!」


親の仇を見るかのような目で俺に訴えてくるエルナ。

まぁ、目的は果たしたし、このままモンタ議長に居られてエルナの機嫌を

損ねてもよくないしな。と言うわけで、俺は気兼ねなくOK、良いよーと笑顔で

GOサインを出す。


「お主! それはあまりにもあんまりではないか!」

「まぁー、これは仕方ないです。さっさとあの世に帰って静かに暮らしててください」

「わ、ワシに何か恨みでもあるのか鈴木!」

「ありすぎて困るぐらいですよ」


エルナが再び呪文を唱え始める。

モンタ議長の足元に魔法陣が浮かび上がり、少しずつ体が魔法陣に

飲まれていく。

そうして全てが飲み込まれ、再びあの世にモンタ議長は帰っていった。


「全然変わってなかったな、モンタ議長」

「だから言ったじゃない。会ってもいい事ないよって」


そうしてエルナがフンと顔を背ける。

けれど初めて懐かしい人と出会えてどこかホッとしていた。

しかし……。


「あれ?」


突如床から魔法陣が浮かび上がる。そして、そこから何故か再び

モンタ議長がポーンと投げ出されるかのように飛び出てきた。

モンタ議長は飛び出したときに打ったのか、腰をさすっている。


「ど、どうしたんですかモンタ議長?」

「いや、実はのぅ、一回向こうに帰ったのじゃが、"もうお前帰ってくるな。

 お前が居るとはた迷惑だからもう一度向こうに行って来い"とあの世の偉い

 方がワシを追い出してしまったのじゃよ」


参った、参った。と簡単にそんな事を言うモンタ議長。

えっと……それってつまり。


「まぁ、またよろしくと言う事じゃな。おぬしもワシが帰ってきてうれ……

 ブルワァアアー!」


顔が歪むほどの二人の正拳突きがモンタ議長に炸裂する。

ああ……俺が召喚したばっかりに要らない人材がひとり増えてしまった。



 



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