表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こわいだん  作者: くろとかげ
4/8

現代版・葬られた秘密 前編

 兵庫県のある場所に、稲村という家があった。名前に稲の字がつくだけのことはあって、その家は金ぴかで大変なお金持ちで有名だった。家の主は商売上手で有名だったのだ。

 娘が一人いて、名前を園子といった。

 夫婦円満。商売繁盛。可愛い娘。誰もが理想とし、誰もが羨むほどの、幸せがつまった家庭であった。

 ところがそんな家にも、たったひとつだけ、頭を抱えてしまうほどの悩みがあったのだ。

 園子が、実は引きこもりなのである。

 二十歳を超え、いい歳した娘が部屋に閉じこもって、いったい何をしているのか、父親は当然心配になった。

「いっそ男遊びをしてくれたほうがまだ健全だ」

 父親は娘の部屋のドアを見つめながら、しょんぼり溜め息を吐くのだった。


 ところがある日。園子の心境にどのような変化があったのか。

「わたし好きな人ができたの。付き合おうって考えているわ」

 爆弾発言をしてきた。

 家族揃って夕食をとっている最中だった。内容があまりに衝撃的すぎたので、父親は大好物のエビフライを床に落としてしまった。

 それから園子は、機関銃の弾を浴びるようにたくさんの質問を受けることになった。

 相手の男は絵描きで生計を立てているらしいが、どんな絵なのかに関しては、秘密、と園子は答えた。ただ、彼の絵が自分を魅了したのだと頬を染め、顔を俯かせて呟いた。

 娘の言葉に、父親は腕を組んだ。難しい顔をして見せたが、内心では喜んでいた。

 園子にも男ができる。娘はちゃんとした普通で健全な女だったんだ。

 一般的な父親なら、得体の知れない男との交際など認めなかっただろう。だが、稲村家の主は少し違っていた。娘が幸せになることを心から疑わずにいた。

 しかし園子が恋愛に夢中になったからといって、彼女が活発に外出する、というようなことにはならなかった。

 相変わらず部屋にこもって何か没頭している様子だった。唯一変わったのは部屋の中で会話する声が聞こえたことである。

 例の彼と秘密の電話でもしているんだな。と声を聞く度に、父親は頬を綻ばせた。

 園子は父親以上に幸せだった。

 ところが、園子は突然の死に見舞われる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ