強くなりたい俺のエピローグ
ー強くありたい俺のプロローグー
ミーンミンミンミンミン
7月も始まり土から出てきた蝉たちが自分の生を全うするかのように声を荒げている。
その声に比例するかのように日に日に太陽も熱さを増していた。
「あちー…。朝せっかくセットした髪も汗で駄目になってるじゃあねぇか…。」
学校までの長い長い道を文句を垂らしながら歩いていく。こういう時は俺の趣味のひとつである、脳内ラノベでもして熱さを凌ぐことにしよう。
<やぁやぁ皆さんこんにちは俺の名前は松永 響希県内有数の進学校である私立六花学園高等学校(通称りつ学)に通う、勉強もスポーツも平々凡々な高校1年生だ。家に近いからという理由で選んだ高校だけど、それなりに友達も出来たしこのまま目立たない風邪に載られて高校生活を過ごしていきたいと考えている。>
そんな風に考えているといつの間にか俺が通っている学校りつ学まで残り徒歩5分といった場所まで来ていた。時間は8時45分このペースなら10分前には学校につけるだろう。
学校に近づいた事により同じ制服に身を包んだ生徒たちがちらほら見えてくる。
俺がその中を歩いてると「おはよう!」「響希君一緒に行かない?」「汗かいてんじゃあねぇかタオル貸してやろうか?」「ねぇ、響希君の汗舐めてもいいかな?」などと沢山声を掛けられた。
ここで察しのいい人なら気が付くと思うが、さっきの脳内ラノベの内容は3割本当で7割が嘘である。
そう俺は平々凡々な高校生などではない。成績では前期中間テストでは学年20位、運動でも部活には所属していないが、スポーツテストでは学年8位、容姿もそこそこでありコミュニケーション能力も結構高めの世間で言うところのリア充の部類になる。
この位置まで来るのに入学前の中学3年生の4月から約1年間と2か月人並みならぬ努力をしてきた。
中学の頃の忌々しい時代から脱出する為に努力してきたのだ。そして、俺が中学時代の事はりつ学の生徒には、絶対知られてはいけない。もし知られたら俺は残りの高校生活を「中学と同じように不登校」になってしまうことだろう。
なので俺の過去は絶対に知られてはいけない。でなければ何のために親に無理言って、元々住んでいて県から三つも離れている県に一人暮らししてまで、りつ学に入った意味がなくなってしまう。
そんなこんなで秘密を抱えて高校生活を送っている俺だが、現状のリア充生活には大いに満足もしているし、今まで危なげなく生活を送っていた。
しかし俺はまだ知らなかった。この俺の過去を知っている弱い彼女の存在を…
ー強くありたい俺のプロローグー END