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エピソード3 登校風景

 朝……

 僕は朝日で目を覚ますと直後に目覚ましがジリリと鳴った。


「少し得した気分」


 目覚ましよりも早起きな僕は布団から這い出ると、居間に向かった。

 歯を磨いて、顔を水で洗って、朝食を摂って、学生服に着替えて。


「行ってきまーす」


 僕は後ろ手に玄関の扉を閉じると、家を出る。すると門の前に見慣れた顔が見えた。 


「ユイ、おはよ」


 短髪に栗色の髪を切りそろえ、僕と同じ背丈ぐらいで、垣間見える白い歯をキラリ輝かせて太陽のような笑みを向けながら、あいさつ。


「おはよっー、コウちゃん!」


 彼女ことユイは、僕の幼馴染だ。




「コウちゃんにまさか彼女なんてねー」

「僕自身も驚きだよー」


 ユイは登下校を共にするぐらいに仲が良く、それが十年近く続いていた。

 ユイと知り合ったのは小学校の入学式の時で、それからは家も近くでずっと親子共に仲がいい。


 そして僕には彼女が出来た。小柄で綺麗な黒髪で……そう、突然に僕に告白してきたのだった。

 

「突然だったもん、ビックリしちゃったよ」

「本当突然だったよね、いきなりコウちゃんが『僕、彼女が出来たんだ』って言って来てさ……何かの前触れなんじゃないかと思っちゃった」

「何も起らないってば」


 失礼だなあ。僕は何気なく、あることを聞いてみた。


「そういえば、ユイには好きな人とかいるの?」


 純粋な興味だった。どちらかというとスポーツ系なユイはどんな人が好きなのかなあ、と。

 野球部の前田君とかサッカー部の岡部君みたいな人かな?


「うーん、いるよ? でもコウちゃんには教えない」

「勿体ぶるなぁー、僕に教えないってことは僕に関係のある人かな?」


 すると、友人の広野君だったり? まさか、それは驚きだなあ。


「うん、すっごい関係あるかな?」


 隣のユイが見せた意地悪そうな笑顔の中に、僅かに悲しさがあったのを、長い付き合いの僕は見逃さなかった。

 ……聞いちゃいけなかったんだ、ごめんねユイ。謝られるのが嫌いなユイには口に出さず、心の中で謝罪した。


「もうすぐだよ」

「あ」


 そう話している内に学校へと着く頃だった。するとユイは、


「あ、じゃあ先にいくね」

「うん、またね」


 ユイは直前まできて、校門が見えるところまで来るとそう言って先に駆けて行っていた。


「(気を使ってくれるん……だよね)」


 校門前には、小柄な彼女が待ってくれている。


「おはよう、アキさん」

「あ……おはようございます、コウタさん」


 これが僕の登校風景。でも……気のせいかな。アキさんの表情が強張っている気がしたのは……? 

 昇降口まで行くまでの道のりで、彼女は話しかけてくる。


「コウタさん」

「なに?」

「コウタさんは美桜さんと仲がよいのですね」


 美桜、ちなみにユイの名字がその”美桜”で。美桜ユイ。


「うん、幼馴染なんだ」

「そう……なのですか?」

「言って無かったかも、ゴメンね。ユイは――」

「いえ、それはいいのですけど……そうですか」


 隣に見る彼女の瞳何か暗い何かを見たのは気のせいであってほしかった、だから僕は無理に苦笑をする。  

 そういえば……僕のちょっと前までのことについて話してみようかな?

 幼馴染のユイとの日常と、アキさんと付き合うことになった経緯まで――

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