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空が、割れていた。


 赤黒いノイズが空間を走り、崩れた高層建築の残骸がゆっくりと宙へ浮かんでいく。


 都市はもう半分消えている。


 それでもレインは、静かに前を見ていた。


「ノア」


『はい、レイン』


「成功率」


 数秒の沈黙。


 視界の端に、半透明のウィンドウが展開される。


《現在ルート生存率:3.8%》


「……上がったな」


『前周回比、プラス3.1%です』


「十分だ」


 背後から大きな溜息が聞こえた。


「十分じゃねぇだろ、それ」


 振り返る。


 巨大な剣を肩に担いだ男――ガルドが、呆れ顔で立っていた。


「お前の基準、毎回おかしいんだよ」


「勝率ゼロじゃない」


「それを世間じゃ無謀って言うんだ」


 そう言いながらも、ガルドは前へ出る。


 傷だらけだった。


 左腕には黒い紋様。


 カード契約者の証。


「……飯、まだ食ってねぇのに世界終わるとか最悪だぞ」


「そこで飯の話する?」


「する。腹減ってると力出ねぇ」


『ガルドの発言には合理性があります』


「ノアまで乗るな」


 その時だった。


 空の裂け目が、大きく脈動する。


 世界が軋んだ。


《WARNING》

《終焉体反応、再起動》


 都市の向こう側。


 黒い巨人が、ゆっくりと立ち上がる。


 ビルよりも巨大な影。


 その瞬間、ガルドが舌打ちした。


「……チッ。早ぇ」


「ノア、再計算」


『再計算中』


 数字が更新される。


《生存率:0.2%》


「おい減ってんじゃねぇか!」


「誤差だ」


「どこがだよ!」


 レインは腰のホルダーから一枚のカードを引き抜いた。


 黒いカード。


 そこに銀色の文字が走る。


《召喚:フェン》


「行くぞ」


『Watch Code、戦闘領域へ移行します』


 その瞬間。


 世界が白く染まった。

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