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幼馴染がブラコンなんだが

掲載日:2026/04/05


「お兄ちゃん、大好き」と甘えてくる妹は、全世界のリアルな妹のいない、シスコンこじらせ男子にとって、高嶺の花よりも遠い雲の上の百合だ。


ああ、可愛い妹さえいれば人生に意味を見出せると、妄想しては、妹どころか女っ気一つない女のいない日常を歩む弱者男性である僕だが、なぜか幼馴染のボーイッシュ系少女だけは知り合いとして、構ってくれる。


 つまり、僕は、彼女しか、女の子を知らない。イコールラブに落ちた。




 幼馴染はブラコンであっていいのか、と、僕はギャルゲーをコソコソとプレイしながら、考えていた。恋愛に、他の男の影はよろしくない。しかし、父親や兄弟は血がつながっている限り、恋愛対象ではない。

 でも、可愛い妹がいれば、と思う男心を反省的に捉えれば、それは、もうやはり男なのだ。


 幼馴染が幼馴染の兄に抱きつく。

 僕はその姿にわずかに心揺れ動く。


 理屈じゃない。男の最大の障害は、パパと結婚するという少女から推定される理論から、男性親族なのだ。従兄弟は特にヤバい。なにせ結婚できる。よって、トゥルーエンドが頭をよぎる。


 さて、


「だから、別れてくれ。親と兄と」

 

「あれ、なんでわたし告白と同時に親と縁を切れって言われてるの」


 幼馴染が僕の完璧なワガママに、怒るどころか呆れるどころか、理解できない人を見る目をしていた。kakeochiは日本の美学なのに。


「追って、理論的に説明しよう。いいかね。中学生でも兄とお風呂に入ることに抵抗を感じない思春期をおいてきた幼馴染に言うけど、男は狼。よって、父親も兄も狼。よって、近親相姦は良くない。性的虐待反対。結婚しよう」


「えっと、わたし、お風呂はさすがに一人で入るよ。まぁ、別に家族風呂で混浴しても何も気にならないけど」


「よし。すぐに、その無垢な常識をブッチ壊そう。みろ、このエロゲ展開の数々をーー生成AIさん、お願いします。『はい。兄と妹の恋愛は、とても人気があるジャンルになります。兄と妹という禁じられた関係がーー以下略』ーーということだ」


「フィクションと現実を一緒にしたら駄目だよ。」


「現実は小説を超えるんだよ。かの校長を見ろよ」


「ごめん。どの校長か分からない」


 全く平均詐欺を知らないとは。妹だったらウザいと思うところだ。


「まぁいい。とにかくブラコンから目を覚ますんだ。さす兄は、もう古い。さす幼馴染でお願いします」


「わたし、ブラコンじゃないよ」


 だが、ブラコンだ。

 妹がブラコンである確率は、統計で95%の信頼区間で有意に、なんか正しい。正規分布が正規分布するんだ。尤度が線形でタイプが一致なんだ。よって位相的に正しい。超越論理的に正しい。

 ブラコンであらざれば妹にあらず。

 これギャルゲーの常識。ツンデレという殻を破れば甘々妹が孵化します。オムレツを縦に切るかのように。


「よし。家族か幼馴染か、どっちなんだ」


「家族」


「まぁ、幼馴染も家族のうちだから、集合論的にモーダスポネンス」


「何、言ってるのか分かんない」


「ブラコンのヒロインなんてヒロインじゃないんだ」


「だからブラコンじゃないって」


「口ではなんとでも言える。よって、ここにお兄ちゃんをウザがる普通の妹10箇条の遂行を要求する」


「なんでわたし急に要求されてるんだろう」


 幼馴染は嫌そうに、プリントA4をめしめしとあとが付くように、握る。


「ええっと、お兄ちゃんの入ったお湯になんて入れない。ためなおして。ーーもったいない。というか、いつもわたしは一番風呂なんだけど」


「なんて甘やかされてるんだ。そんな甘え、お兄ちゃんが許しても、幼馴染が許しませんよ」


「だって、わたしのほうが、先に帰ってるし」


「そんな、俺だったら、妹に背中を休日に流させることで、チャラにするレベルなのに」


「あなたのなかで、妹と一緒にお風呂は、アウトじゃないの」


「俺は例外とする」


「自分にだけ甘いタイプだ」


「俺は俺にとって、都合のいいヒロインに囲まれたいだけなんだ。一途なんだ、都合のいいヒロインに」


「ギャルゲーから、いい加減戻ってきなよ。それで、2つ目は、お兄ちゃんの服と一緒に選択しないで、と。うん。めんどくさい。家族のはまとめて洗うほうが楽でしょ」


「思春期は、そういうめんどくささを超えて、めんどくさいことを要求するもんなんだ。めんどくさいを超えた先にこそ、ウザいはあるんだ」


「いやだよ。ウザいあとなんとかは女子には言ってはいけない三大禁句でしょ」


「そのウザさをも愛するのが幼馴染の仕事だ」


「うん。幼馴染がウザい」


「男女平等のもと、男子にもウザいなんて言ってはいけないよ」


 僕はウインクをしながら、できるだけウザく発言した。ウインクは幼馴染にはじかれた。


「なんだろう、この徒労感」


 幼馴染はA4の紙を、ビリビリと破いていった。


「安心しろ。あと100枚用意してある」


 途中で破られる。

 うん。想定内。想定内です。ノートが空から振ってくるぐらい想定内。新世界の神となる男は紙を準備してますよ。


「うん。裏紙として使うね。ありがとう」


「さて、話を戻そう。駆け落ちか死か」


「なんだか、選択肢が変わってるんだけど。拡大自殺はやめてね。わたし、100歳までは生きたい系女子だから」


「幼馴染と恋愛できないなら、僕に生きている価値なんてないんだ。最初で最後の恋なんだ」


「わたし、待てない人、イヤなんだけど」


「よし。10年後、あの場所で再会しよう」


「10年後は待ちすぎじゃない。あの場所ってどこ。というか、10年会わないつもりなの」


「俺はその10年で片思い力を最高に高める。コミットメント非モテ男性として、最大限の力を非モテにコミットする。君がいいんじゃない。君しかいないんだ」


「なんか、わたし、厄介ストーカーに目をつけられた気分なんだけど」


「と、このように世間は危険がいっぱいだ。さぁ、駆け落ちしよう。僕は君とならどこにでも行けるし、何にだって耐えられる」


「ごめん。そろそろお風呂の時間だから。また明日ね」


 幼馴染が去りゆく。




「あんたら、玄関で何バカみたいなコントしてるの」


「人生で一度は駆け落ちしてみたいよね」


「駆け落ちなんてしたって、すぐお金が尽きるわよ。現実みなさい。さ、お風呂入って」


「はーい。ママ。あ、お兄ちゃーん、一緒に入る?」


「誰が妹と一緒に入るんだよ。3年前に言え」


「わたしはー、気にしないのにー」


 


 ブラコン理論とその周辺を、延々と、僕は考えていた。ブラコンの幼馴染、その兄を超えることはできない。ゆえに、男として勝負することをやめればいいと。

 僕は、僕の女子力で勝負する。


「それで、今は、そうなってるの」


「どうかな、わたし、可愛い?」


「二次元の女装と三次元の女装を同じように思わないほうがいいとだけ告げておくね。幼馴染として」


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