第2章 ミーティング
担任教授に藤宮を共同研究者として申請した後――
蛭間キュウタロウはその日の授業を終え、アパートへ帰ろうとしていた。
だが、自転車を取りに駐輪場へ向かったとき、そこに立っている人影を見つける。
目を凝らすと……それは 天花アミヤ だった。
キュウタロウは思わず立ち止まり、心の中で焦る。
キュウタロウ
「……やばい。どうやって帰ればいい? 一日中ここで待つわけにもいかないし……」
数分後、アミヤは友人らしき女性に呼ばれ、その場を離れる。
その隙を逃さず、キュウタロウは駐輪場へ駆け込み、自分の自転車を見つけるとすぐに帰ろうとした。
だが、大学の正門前で――
アミヤ
「……止まって!」
自転車のペダルを踏み込んでいたキュウタロウは、一瞬迷った。
無視して走り去るか、それとも……。
結局、誰かを傷つけたくないという思いが勝ち、彼はブレーキをかけた。
ゆっくりと近づいてきたアミヤが、真剣な眼差しで問いかける。
アミヤ
「……一つ、質問してもいい?」
キュウタロウ
(少し俯きながら)「……ああ」
アミヤ
「えっと……私たち、以前どこかで会ったことない?」
キュウタロウ
「……は?」
アミヤ
「なんだか……懐かしい気がするの。でも、思い出せなくて……」
キュウタロウ
「人違いだろう。……あるいは、ただ俺がその人に似ていただけだ」
アミヤ
「えっ……?」
キュウタロウ
「もういいか? 用がないなら行く。俺もやることがあるんでな」
アミヤ
「ちょっ、待っ――」
彼女の声を振り切り、キュウタロウはペダルを力強く踏み込んだ。
そのまま大学を離れ、アパートの近くにあるコンビニの自販機で缶コーヒーを買う。
駐輪場に腰を下ろし、夕暮れを眺めながら独り言を漏らす。
キュウタロウ
「……本当に、俺を覚えていたのか?」
脳裏に浮かぶ、かつての記憶。
後悔と罪悪感は、今もなお彼の胸を締め付けていた。
缶コーヒーを口に含み、空を見上げる。
「――忘れてくれていい。
そのほうが……彼女の苦しみも、悲しみも、全部消えるなら……」
静かに呟き、空き缶をゴミ箱に投げ入れると、彼は再び自転車に乗り、アパートへ帰った。
翌朝
いつもより早く目覚めたキュウタロウは、7時半からの授業に備えて大学へ向かった。
理由はただ一つ――アミヤと顔を合わせないため。
教室に入ると、まだ誰もいない。
イヤホンを耳に差し込み、「打ち上げ花火」を聴きながら静かに待つ。
その穏やかな時間を破ったのは――
藤宮
「よぉ、蛭間!」
キュウタロウ
「……おぉ、藤宮か」
藤宮
「準備はいいか?」
キュウタロウ
「ああ」
ほどなくして他の学生も集まり、授業が始まる。
そして一時間後、講義が終わるや否や、キュウタロウは藤宮に声をかけた。
キュウタロウ
「行くぞ」
藤宮
「おう」
その直後、彼のスマートフォンに担任教授からメッセージが届いた。
『本日のミーティングは研究・開発学科の大講堂にて行う』
二人はすぐに足を運び、講堂に到着。
どうやら一番乗りだったようで、席に座り他のメンバーを待った。
十分後――
研究・開発学科から二人、
さらにビジネス・マーケティング学科から二人が姿を現す。
その中に……見覚えのある顔があった。
キュウタロウ
「……えっ」
アミヤ
「……ええっ!?」
キュウタロウ&アミヤ
「「えええええええええええっ!!!」」
キュウタロウ(心の声)
(なんで……!? 彼女もこのプロジェクトに……? まさか、代表に選ばれたのか……?)
作者コメント
――さて、この先どんな運命が待ち受けているのか。
それはまだ誰にも分からない。
続きは次章にて。




