プロローグ
「疲れたな...今週は何も起きなくてよかった。」
大学帰り、そう意味もなく呟いているのは俺、石川 輝。
東京都のそこそこの大学に通っている普通の大学3年生だ。両親が小学生の時に交通事故で他界し、今は父型の祖父母の家で暮らしている。残念な事に恋愛運が無く女の子とは全然関わりを持てなかったが、男友達には恵まれいた。
そして「今日は」何も無い一週間の最後を終えようとしていた。
そう、普段なら週に1度、いや2度は面倒な事に巻き込まれるのだが、今週は何事も無く終えられそうで安心しながら今日も大学の帰路についていた、はずだったのだが...
ブオオオォォォぉぉ
「なんだ?」
後ろから物凄い加速音がするので振り向いた。
(トラックか、ここって法定速度がかなり遅めのはずだが......てか、ぼさっとしてたら轢かれちまう。)
だが、輝が今歩いているのは田舎の、それも一方通行の坂道であり、横道も無いので逃げる場所はどこにも無い。
死に物狂いで走って逃げる。だがトラックのスピードに人間の足で勝てるわけもなく...すぐにトラックとの差は縮んでいった。
そして距離が二桁メートルを切った時
「んあ?やばい、寝てた!」
そう、このトラックの運転手は居眠り運転をしていたのだ。
運転手は起きてすぐに目の前に人がいる事に気づいてブレーキをかけた。だが間に合わず...
ドンッ!
トラックに何かがぶつかり、鈍い音がした。
そこで輝の視界は真っ暗になった。
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「.....................」
(体が動かない...そして何も見えない...俺、死んじまったのか...爺ちゃん婆ちゃんに何も恩返しできなかったな...)
(...聞こえますか?)
(なんだ...?)
脳裏に直接女性の声のような物が響いた。返事をしようと思ったが口は開かなかった。
(...聞こえているようですね。)
(なんでわかったんだ?そして誰なんだ?)
女性はそのまま俺の脳裏?に向かって話しだす。
(私は...そうですね。貴方方の世界で言うところの女神と呼ばれている存在です。私はあなたの魂に対して直接言葉をかけています。)
(小説で読んだ思念のような物だろうか?それなら俺が喋らなくても意思疎通ができるのに納得が行く。)
(私にはわかりませんが、まあ...それと近いような存在でしょう。)
(で、そんな女神様が俺みたいなありふれた、ただの死人に何の用なんだ?)
(はい、あなたに...私の管轄している世界の一つに行き、それを調停して欲しいのです。)
は?
(管轄している...世界?)
輝は混乱する。
何せ異世界とかそういう物は小説の中だけの物だと思っていたからだ。
(混乱するのも無理はないでしょう。この空間にはいくつもの時間軸、様々な物質で満ち溢れた世界がいくつもあります。あなたが住んでいた世界...宇宙もその1つです。)
(なるほど。で、なんで俺が選ばれたんだ?)
(私が勇者を送った後、長い事放置していた世界が酷い有り様になっていたので、調停者を1人送ろうかなーと考えていた時に、ちょうどあなたが亡くなられたからです。)
(おい!)
こいつはかなりいい加減な女神のようだ。
(不快にさせたようですが、実はかなり緊迫している状況でして...とにかくすぐにでも送りたかったのです。もちろん、私のできる限りの権限で能力を与えようと思っています。)
まあ、このまま死ぬよりは新たな生を全うできた方が良いな
(わかった。俺をその調停という役目をやらせて欲しい。)
(ありがとうございます。では、あなた様のご武運をお祈りしております。)
急に体が軽くなり、まるで無重力空間にいるかのような感覚がした。
まさかー
(おい、展開早すぎるだろ!せめてその世界で何が起こってるのか説明くらいしろよ!)
だが女神は聞く耳を持たない。(そもそも魂に向かって話しかけているので耳に聞こえているわけではないが)
輝は「あの女神、絶対にぶん殴ってやる。」と思いつつ温かい光に包まれ深い眠りに落ちた。
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「ん...んん...」
さっきまで視界が真っ暗だったのに眩しい...そして体が動く...
輝が目を開くと、そこは一面野原の大地で...まあ、異世界転生物で最初に飛ばされる、いわばテンプレの一つのような場所だった。
「すげぇ...俺、本当に転生したのか。」
夢かと思い自分の頬をつねるが普通に痛い。
それに、目を瞑ると自分のステータスがやら所持品が見えるようだ。
???(15歳) 男
職業 放浪者
LV.1
体力 20 (+3200)
筋力 15 (+2100)
魔力 10 (+3200)
俊敏 11 (+2100)
耐性 「気候魔法耐性」「精神異常耐性」
能力 「ワールドマップ」「言語理解」
「この補正えげつないな...全ステータス100倍以上じゃないか。というか俺、若返ってる?」
輝は本来20歳のはず。なのに何故か5歳若返っている。
「これだけは嬉しいな」
あと気になるのは名前の欄だ。
「名前の欄、なんで???になっているんだ?」
名前の欄を凝視(?)したら???の表示が消え入力画面みたいな物がでてきた。
「これ自由に決めれるのか。せっかくならここで決めたいところなんだが...」
親につけてもらった名前を変えるのは申し訳ないと思いつつ、新しい人生だからと割り切って名前を変えてから旅に出る事にしたのだがこの世界の名前の付け方がわからない!
異世界でも違和感無さそうな名前にしようと思ったがそもそも参考になる物がないし、下手な名字を名乗って貴族と被る!みたいな厄介事も避けたい。
だから後回しにする事にした。
(最悪元の名前をベースに考えればいいだろう。)
そう考え出発する事とした。
そうして俺の、第二の人生、そして旅が始まるのだった。