第4話(その2)
異世界転移したカイだけど、ハーレムよりもサッカーが欲しい!? ちょっと変わった異世界コメディが始まる。
アマリと俺はさゆりを囲んで、二人ともかなり混乱してイライラしていた。
「おい! いきなり見知らぬ男に結婚を承諾すると思ったのか!?」
俺も大声で叫んだ。
「それより、アイツ何言ってんだよ!? 何でみんな俺をガキ扱いするんだよ!?」
さゆりには質問が多すぎて、彼女はさらに大声を出さざるを得なかった。
「ち、落ち着け! と、とりあえず一つずつ説明するから…!」
彼女は深く息を吸い込んだ。
「ああ、あなたたちこの街の出身じゃないのね…だからあのプロポーズに驚いたんだ…そ、その話は後で…待って」
彼女の目が大きく見開かれた。まるで世界の常識を知らない俺たちを見るかのように、衝撃を受けた様子で。
「ま、まさか…『神を見つけた男の物語』を知らないって言うの!?」
俺とアマリは顔を見合わせた。
「んー…知らない?」
さゆりは驚きのあまり叫んだ。
「な、なにっ──」
すぐに自分で口を押さえたが、まだ信じられないという様子だった。
「ネテル・マテの伝説を知らないの!? 神の王冠のすべてを集めた男! 元・世界の皇帝だよ!?」
俺はますます混乱し、知らないと言おうとしたが、アマリが先に素早く口を開いた。
「ネ、ネテル・マテ!? それ、私のおじいちゃんの名前だよ!」
彼女は俺の首根っこをつかんだ。
「覚えてるでしょ、カイ!? 前に人が話してるのを聞いたって言ったじゃ──」
「わ、わかったから! そんなに締めなくても!」
さゆりはアマリを怪訝そうに見た。
「…おじいちゃん? でも彼には子供がいなかったはず…偉大なる史上最高の魔法使い、サン・ワールドも彼のクルーだったんだよ! 彼を馬鹿にしないで!」
俺は興奮して言った。
「すげえ! アマリのじいちゃん、世界の皇帝だったのか!? 神に会ったのか!?」
「名前がたまたま同じだって言ってるでしょ…」
さゆりはまだ信じられないという様子で話し続けた。
「な、どうして彼のことを知らないの!? それに『神を見つけた男の物語』も! プセウドだけじゃなく、世界中で知られてるのに!」
しかし、それ以上話す前に、誰かの叫び声が聞こえた。
「おーい、こっち来いよ!」「さあ飲もうぜ!」
振り返ると、スイサイダーズの面々がテーブルで待ち構えていた。全員が陽気にビールを片手に盛り上がっている。
その中心には、クラウンが腕を組んで座り、ニヤリと笑っていた。
アマリはさゆりをちらりと見て、少し緊張した様子で言った。
「行った方がいい…?」
「ああ、心配しないで。ギルドに出入りしてるスイサイダーズはただの酒好きの騒ぎ屋だから…」
確かに昨日俺をぶん殴った連中だが、多分覚えてすらいないだろう…
「あ、そうだ! 大事なこと!」
さゆりは俺たちがしっかり聞くように、念を押すように言った。
「クラウンが本当にあの本を持ってるとは思えないけど…もし持ってたら…犯罪でも見るように驚いて見せろ! だって本当に犯罪なんだから!」
「本がそんなに悪いものなのか?」
「この本に関する言及は全世界で厳禁なの! 唯一、全ての国が共同で定めた法律よ。ネテル・マテは『全ての政府の敵』として知られてる。彼やこの本に触れることは大きなタブーなの!」
二人とも頷き、連中が待つテーブルへと向かった。
30人近いスイサイダーズが一つのテーブルを囲み、騒ぎを楽しんでいた。
「おお、新入りのスイサイダーズが来たぞ!?」「あれ? 昨日ぶっ飛ばしたガキじゃねえか!」
連中は俺を見て、確信したように叫んだ。
「あいつだ! ハハハハ!!」「世界の皇帝になりたいって言ってたバカガキ!」「ハハハハ! そうそう!」
そして、そこにいた全員が笑いながら酒を飲み、騒ぎ始めた。
正直、かなり恥ずかしいし腹も立つ。
「うるせえ! 俺はまだなるからな!!」
一人が俺の首に腕を回してきた。
「好きに言えよ、ガキ…まあ、スイサイダーズになったんだから可能性はゼロじゃねえな」
カップを俺の口元に近づけてきた。
「一杯どうだ?」
アマリがすぐに割って入った。
「あ、あのー…彼はまだ未成年なので…」
男はとても驚いた様子だった。
「は!? 13歳未満ってことか!? ガキっぽいとは思ったが、まさかそこまで!?」
「違うんだよ! なんでみんな俺をガキ扱いすんだ!?」
一方、さゆりは別の男に話しかけていた。
「ねえ、ビール2杯もらえる?」
「お前はもっと年下だろ!!」
アマリも忘れてたみたいだ。ここでは13歳で成人扱いなんだっけ。
みんなが楽しんでいる中(アマリもつられて何杯か飲んでいた)、あることに気が付いた。
クラウンはただ座っているだけだった。机に肘をつき、手で頬杖をつき、微笑みながらこちらを見ている。
なんか気味が悪い。ただ眺めてるだけか? 自分も楽しむのかと思ったんだけど。
いや、よく見ても、あの男の考えや感情が全く読めない。
嬉しいのか? 悲しいのか? 何を考えてるのか? あの穏やかな笑顔の下に隠されてる。
正直、イライラしてきた。招待といっておいて、ただ黙って見てるだけ? なんなんだよ、これ。
だから、俺はクラウンに近寄って言った。
「なあ、クラウン…『神を見つけた男の物語』って本の話、聞かせてくれないか?」
その瞬間、ギルド内の喧騒がピタリと止んだ。
全員が一斉に俺を見つめる。
重い沈黙が流れ、誰も口を開かない。
数人の男が震える声で呟いた。
「な、何だ…」「こいつ、今…」
さゆりが慌てて走り寄り、俺の胸ぐらをつかんだ。
「バカ!! 言ったでしょ、絶対に──」
しかし、クラウンがクスクス笑い、手を頭の後ろに回して言った。
「おやおや…大胆な坊やだこと♡」
ギルドの全員がゆっくりとクラウンを見る。彼は相変わらず笑みを浮かべながら続けた。
「ああ、いいとも。だって、ここにコピーを持ってるからね」
背後からA5サイズの紙を取り出した。両面に何かが書かれている。
「この本は、著者がネテル・マテに出会った日から、彼が願いを叶えた日までの物語だ。最後の部分だけのコピーだけど、それが一番重要なんだよね?」
ギルド中の人々が恐怖に叫んだ。
「な、何だって!?」「神を見つけた男の物語!?」「どうやって手に入れた!?」
「へへ、クラウンの秘密だよ♡」
連中は明らかに動揺していた。
「そ、それを持ってるだけでも犯罪だぞ!?」「王族に報告するぞ…!」
クラウンは紙を中指と薬指で挟み、揺らしながら笑った。
「でも、読みたくないの?」
スイサイダーズたちは顔を見合わせ、言葉に詰まった。
「もういいや! 読ませろ!」
一人の男がクラウンに駆け寄った。
「俺も気になる!」「俺もだ!」
あっという間に、全員がクラウンの周りに集まった。
「のぞき込まなくてもいいから。みんなのために読んであげる…もちろん、これは僕たちだけの秘密だよね?」
「あ、ああ…とにかく早く…」「マテの願いが何だったのか、ずっと知りたかった…」
どうやら、好奇心が逮捕される恐怖に打ち勝ったらしい。
アマリは俺の隣で、驚いたように呟いた。
「…まさか…さゆり!?」
さゆりも既にクラウンの周りに加わっていた。
「私だって読みたいに決まってるでしょ!? 史上最高の魔法使いサン・ワールドが彼のクルーだったんだよ! 絶対読まなきゃ!」
クラウンはくすくす笑った。
「おやおや、さゆりちゃんも相変わらず好奇心旺盛だね…でも、こちらのお二人には少し前知識が必要みたいだ」
ギルドの全員が(さゆりを除いて)俺たちを見て驚いた表情を浮かべた。
そして、一斉に叫んだ。
「ネテル・マテを知らないってのか!?」
アマリは圧倒され、数歩後ずさりした。
「ち、違うよ…知ってるよ! ただ、詳しいところまでは…」
俺は落ち着いた様子で笑いながら割って入った。
「さゆりから、昔世界の皇帝になった人だって聞いたよ。それだけだけど」
アマリはすぐに俺の頬を引っ張った。
「バカ!! なんでそんなこと言うの!? それじゃ余計に──」
スイサイダーズは再び叫んだ。
「何も知らないのか!?」「洞窟で暮らしてたのか!?」「まさか…」
さゆりは帽子で顔を覆い、その場から消えてしまいたい様子だった。
クラウンは鎮静のジェスチャーをし、いつもの笑顔で言った。
「まあまあ、みんな。結末を理解するには、少し前の出来事を知る必要があるからね」
そういえば、どうして俺が何も知らないと気づいたんだ? 異世界から来たってバレてるのか? そんなにわかりやすかった?
「あのさ、もし君が考えてるようなことなら…俺とアマリは別の街から来たわけでも、別の世界から来たわけでも──」
アマリの友情パンチが飛んだ。
「バカ!! 余計なこと言うな!!」
クラウンの表情は変わらず、特に反応もなかったが、先に口を開いた。
「さて、どこから始めようか…そうだな、この本の冒頭部分を僕が適当に作って話すよ。いいかな?」
一人の男が言った。
「本の最初をでっち上げるってのか?」
「その通り。だって、この場にいる誰も、この本の著者が誰か知らないでしょう?」
誰も答えなかった。
「おやおや、この沈黙は何だい? まあ、始めようか?」
全員がクラウンに集中し、一言一言に耳を傾けた。
その時、アマリが気づいた。
「待って、もし本の他の部分の説明ができるなら…あなた、全部読んだことがあるの?」
クラウンは静かに人差し指を唇に当て、片目をつぶった。
「道化師は秘密を明かさないものだよ♡…さあ、始めるかな?」
全員が叫んだ。
「早くしろ!」
外国人(日本語、マジでゼロ。)が書きました。誤字・不自然な表現があったら教えてください!
英語版の第1巻、ついに完成!翻訳はもっとスピードアップします!
本章は全4部構成となっており、こちらはその第2部になります