第3話(その3)
異世界転移したカイだけど、ハーレムよりもサッカーが欲しい!? ちょっと変わった異世界コメディが始まる。
そして、永遠とも思える時間が過ぎ、ようやく追っ手を振り切った。
今の俺たちは、焚き火を囲み、寝袋にくるまっている。
もう動けない。クタクタに疲れ切っていて、ただ寝たい。
さゆりも同じようだ。
一方、アマリは――
「なんで逃げたのよ!この腰抜けが!」
不意を突かれた様子だ。
「は、はあ!?あんたの方が近かったくせに!それに、怖かったんだもん♪」
「あ、あんた……!」
罵倒の言葉がいくつも浮かんだが、まあいいか。もうそんな元気もない。ただ眠い。
背を向けたまま、さゆりが口を開いた。
「……ねえ、二人とも。バカばっかりだけど……楽しかった」
遠くに見えたのは、彼女の可愛らしい、赤らんだ笑顔だった。
アマリがくすりと笑う。
「そう?例えば?」
「今日一日……全部……会えてよかった」
俺が突然口を挟んだ。
「魔法の名前がまともだったらもっと楽しかったぜ!」
さゆりはカンカンに怒った。
「なんでわかんないの!?杖から出るときの音なの!『ビウム』は短くて速いし、『ピチュウ』は火で爆発的で、『カッチャウ』は雷の音!オノマトペなの!」
意外にも、アマリが言った。
「正直、火の『ピチュウ』はあんまりしっくり来ないけど……」
「ほら!アマリも俺と同じ意見だ!」
「そう言ってないわよ!」
さゆりは怒りながらも、ため息をついて落ち着いた。
「もう……いいわ。もし水属性の魔法を使えたら、『トントン』って名付けるわ。波の音みたいで……わあ、すごくいい考えじゃない!」
「ダメだぞ!!!他のとも同じくらいクソな名前だ!次の魔法の名前は俺が決める!」
「ああ!?絶対嫌よ!許可しないわ!」
アマリは俺とさゆりの言い争いを面白そうに見ていたが、ふとさゆりに質問を投げかけた。
「ねえさゆり、あなたスイサイダーでしょ?」
これで俺たちの「戦い」は中断された。
「ええ、もちろんよ……」
彼女は再び劇的な口調で話し始めた。
「我、サユリはスイサイダーにして魔法使いなり!ただの魔法使いではなく、世――」
アマリは彼女の言葉を遮った。
「実は昨日、カイと私もスイサイダーに登録しようとしたんだけど、断られちゃって……」
さゆりは話を遮られたことに文句を言うのをやめ、興味を持った様子だ。
「ま、まって、本当?不合格になった人なんて聞いたことないわ……」
「うん、でもダメだった……なんか、『サンカルパ』ってやつの証明が必要だって……」
俺がアマリの言葉を遮った。
「お、俺が言うところだったのに!」
「でも俺が先に思い出したから言ったんだ」
「いや、俺も思い出してた!この脳みそピ――」
さゆりが突然怯えた声で言った。
「ちょ、ちょっと……あなたたち、サンカルパを知らないの?……」
「うん、知らない……」
さゆりが叫んだ。
「きゃあああ!助けて!スパイよ!捕まっちゃった!動けない!の、の――」
アマリが怒鳴りつけて黙らせた。
「ちょっと!何がそんなにまずいのよ!?どうして――」
「あ、でもあなたたち弱すぎるわね。スパイじゃないみたい」
どうやら俺への侮辱らしい。
「はあ!?俺は――」
アマリが「友情パンチ」をもう一発くれた。
「サンカルパって何なのか、説明してくれる?それと、なんで誰も教えてくれないの!?」
さゆりはため息をついた。
「わかったわ……あなたたち、最近ベアティトゥードに来たんでしょ?それで、住み着こうとしてるの?」
俺とアマリは顔を見合わせた。
「いや、実は別の世界から――」
アマリの友情パンチがまた飛んだ。
このままじゃ友情で死ぬぜ……
「まあ、そんなところだね……」
さゆりは続けた。
「変ね。ベアティトゥードは基本的に外部の者を一切受け入れない超閉鎖都市なのに……」
アマリは心配そうに俺を見たが、どうでもいい。もう何もできやしない。
しかし、俺たちが口を挟む前に、さゆりは言った。
「でもいいわ。誰にだって秘密はあるでしょ?……」
アマリは苦笑いした。
「そ、そうね。もちろん……」
今思えば、別世界から来たって言った方が話が早くないか?アマリがなぜそうしないのかわからない。
まあ、もし学校に転校生が来て「俺は別世界から来た」とか言い出したら、頭がおかしいと思うか……たぶんアマリはそう思われるのを恐れてるんだろう。
さゆりは話を続けた。
「で、サンカルパはベアティトゥードの学校でしか教わらないの。だから市民はみんな知ってる。だから、サンカルパを知らない人が街にいたら、それはほぼ間違いなく他国のスパイよ。プセウドは他国と仲が悪いし、ベアティトゥードに入れるのは許可された人だけ。普通は政治家とかで、それでもサンカルパは教わらない。王族は例外ね。それに、ベアティトゥードの城壁から出るのも許可制で、超重要な用事がないとダメ。観光なんて論外。つまり、ベアティトゥードの住人と王族だけがサンカルパの存在を知ってるの。もし知らない人が街にいたら、それはスパイよ」
「ちょっと待て、メモ取る」
俺はノートに彼女の言葉を書き留め始めた。
冗談だ。ティラノサウルスの落書きしてる。カッコいいからな。
さゆりは背を向けたまま、ペンの走る音だけを聞いていた。
「ふん、まあいいわ……」
アマリが言った。
「で、サンカルパって何なの?」
「サンカルパは、いろんなことに使えるエネルギーよ。例えば私はこれで杖の攻撃をしてる」
「おお!じゃあ俺も何でもできるってことか!?」
「落ち着きなさいよ……サンカルパにはたくさんの種類――クラスと言うんだけど――があって、それぞれ使い方が違うの。私はもちろん魔法使いよ。だからこそ、我サユリは最高の魔――」
アマリがまた遮った。
「ああ、そうなの……で、スイサイダーになるのに必要な理由は?」
「一度でいいから最後まで話させてよ!……まあ、魔物はサンカルパに弱いんだけど、主な理由はスパイよ。スイサイダーになりすまして情報を盗もうとする奴がたくさんいるの。で、ベアティトゥードのスイサイダーが他都市より強い理由を知りたがるんだけど、それはサンカルパのおかげなの。魔物はサンカルパに弱いけど、他都市の連中はそれを知らないから、苦戦してるのよ」
アマリはうなずいた。
「なるほど、続けて……」
「ええと、基本はそれだけかな。あとは実践で見せた方が早いわ。でもまあ、治癒や魔法、爆発、竜巻、薬とかにも使えるの。スイサイダー以外の仕事でも、クラス次第で何でもできるわ」
アマリはまたうなずいた。
「ふむふむ……じゃあ、サポートクラスは他人を治癒するサンカルパを使えて、魔法使いクラスは魔法を唱えられるとか?」
「そんな感じ。名前は違うし、実際はもっと複雑だけど……クラスはあくまでサンカルパの使い方の方向性で、具体的な使い方は本人次第……あ、そうそう。もう一つ思い出したんだけど、サンカルパは『決意』の感情で強くなるの。例えば、サンカルパを込めたパンチは普通のパンチより強いけど、超強い決意で打てば、ほぼ無限に強くできるわ」
アマリはまたうなずいた。
「へえ、そんじゃ――」
俺はノートを放り投げて割り込んだ。うるさくなってきた。
「で、一番大事なこと!どうやったら手に入れられるんだ!?」
「純粋なサンカルパに直接触れればいいの。すでに使いこなしてる人からもらうのが普通よ」
「おお、じゃあ俺にくれぜ!」
「バカじゃないの!動けないわ!」
俺は彼女に近寄った。
「問題ない!俺が触れば、そっからそのなんとかを送り込めばいいんだ!スーパージャンプ!」
ジャンプして彼女の上に着地した。
さゆりはすぐに顔を赤らめて叫んだ。
「わ、何してるのよ!?」
「ん?何が悪い?早くサンカルパくれよ!あ、触らないといけないんだっけ?問題ない!」
俺は彼女の寝袋に入り込もうとした。
「あ、ああ!?だ、出てって!サンカルパは杖でしか使えないの!」
「うるせえな、早くくれよ!」
「あ、触んないで!出てってええええ……!」
翌日、俺たちは早速ギルドにいた。幸い、昨夜の件で誰にも気づかれていない。
「ようマナ!また来たぜ!」
彼女は明らかに俺を見て喜んでいなかった。
「……あなた……出て――」
さゆりが前に出た。
「あの、誤解があったみたいです!」
マナは目を見開いた。
「あら、スイサイダーのサユリさん、お久しぶりです」
この言葉はさゆりにとって褒め言葉だったらしく、とても嬉しそうだった。
「ふふん、私の人気はすごいでしょ?」
アマリが小声で言った。
「多分みんなに同じこと言ってるよ」
さゆりはびくっとし、姿勢を正した。
「ち、違うわよ!私には特別な言い方してくれてるの!……で、えっと、この二人は私の仲間です。サンカルパも知ってるし使えます」
マナは困惑した様子。
「え?本当ですか?昨日お二人は何も知らないようでしたが……」
アマリが俺に耳打ちした。
「ねえカイ、あの子昨日の悪口聞かれてないみたいだね……」
「あ、聞いてないのか?じゃあ、お前この――」
「言うな!」
さゆりが前に出た。
「ええ、証明してみせます」
俺は笑った。
「へへ、まかせとけ!」
アマリと俺はマナのカウンターに近寄った。
手のひらを開くと、黒い光のようなものがちらちらと出てきた――サンカルパだ。
「まあ、本当ですね。昨日は失礼しました。ではカードを準備しますので少々お待ちください。あ、属性とクラスはあの機械で公開できますよ。すぐ戻ります」
アマリがまた耳打ちした。
「ああ、本当に聞いてなかったんだ。よかった……本当によかった!」
機械は昨日のあの黒い球体だ。パネルも黒かった。なるほど、そういうことか。
俺は笑った。これでやっと目的に向かって進める。
「へへへ……俺、スイサイダー!!」
「それだけ聞くと変な意味に聞こえるわ……」
すると突然、マナがカウンターに戻ってきた。
「あの、サユリさん、一言よろしいですか?」
さゆりはすぐに聞き耳を立て、得意げにマナの方へ歩いた。
「あら、何です?聞いてますよ……」
マナは優しい笑顔で言った。
「お友達ができて、本当によかったですね。おめでとうございます」
さゆりは混乱した。
「え?友達?年下じゃないわよ!ちょっとだけど!ちょっとだけ!」
今度はマナが困惑した。
「あれ?でもこの男の子も1――」
「16歳だぞーーー!!!」
アマリがさりげなく言った。
「ロリ」
さゆり:
「やめなさいよーーー!!!」
外国人(日本語、マジでゼロ。)が書きました。誤字・不自然な表現があったら教えてください!
英語版の第1巻、ついに完成!翻訳はもっとスピードアップします!
以上、第3章はこちらで完結となります。