第3話: さゆりが俺のチームに入った!それっていいことなのか?
異世界転移したカイだけど、ハーレムよりもサッカーが欲しい!? ちょっと変わった異世界コメディが始まる。
森の中をアマリとさゆりが二人で歩いていた。
のんびりとした足取りで、何の心配もなく。
並んで歩きながら、アマリが穏やかに言った。
「ふう、やっとあいつらを追い払えたね……」
さゆりも杖を片手に、落ち着いた様子で歩いている。
「ええ……ん? あなたは?」
アマリは微笑みかけた。
「あ、私アマリ! よろしくね」
さゆりは突然立ち止まり、杖を横に構え、もう一方の手で帽子を押さえながら、とても……ドラマチックなポーズを取った。マントが風になびく中で宣言する。
「私はサユリ!世界一の魔法使いになるんだから!!!」
アマリは笑顔を保ったまま。
「名前は知ってたけど、その目標……面白いね……それに、あんた別に危なそうには見えないけど――」
「な、なんですって――」
「なんでもない……」
すると、さゆりはきょろきょろと辺りを見回し、何かを探している。
「ん……あの子はどこ?」
アマリもゆっくりと周囲を見渡した。
僕の姿はどこにもない。
「か、カイ!? どこに――」
「助けてええええ!!! アマリ!!! 罠にかかっちゃったよおおお!!!」
俺の叫び声が遠くから響いた。あまりの大声に木々から鳥が一斉に飛び立つほどだ。
「カイ!? な、何があったの!?」
アマリは声のする方へ走り出した。
「ちょ、待ってよ!」
さゆりも慌てて後を追う。
しばらくして、僕の元にたどり着いた。
「な、なんでそんなとこに!?」
アマリが僕に怒鳴った。
俺は木から逆さまにぶら下がっていた。足をロープで縛られ、宙吊り状態だ。
「がぁっ! わかんねーよ!! 走ってたら地面にロープがあって……なんだろうって踏んだら、いきなりぐいーんって引っ張られちまったんだよ!」
アマリはかなりイライラしている。
「明らかに罠だろバカ!!」
僕も怒っていた。どうにも抜けられない。もがいてロープをつかもうとしたり、引きちぎろうとしたり、必死に暴れる。
「この糞ロープ離してくれねーのかよ!! この野郎!! 離せええええ……」
突然動きを止め、アマリとさゆりに向かって子犬のような目で訴える。
「お前らのせいだ」
「助けを請うのかと思ったのに!! なんで私のせいにな――」
「ビウム」
さゆりがそう唱えると、僕の足元のロープに杖を向けた。
細い白い光が放たれ、あっという間にロープを切断した。
「おい! その技名は――」
僕は頭から地面に落下。
「がぁっ……痛え……」
アマリとさゆりがすぐに駆け寄ってきた。
アマリは腕を組み、呆れたようにため息をつく。
「まったく、それで隊長面してるの? き――」
「さゆり、ありがとう!」
僕は真剣な表情でさゆりを見つめ、アマリを無視して言った。
さゆりは少し照れくさそうに、帽子で顔を隠しながら地面を見つめ、笑みをこらえている。
「べ、別に大したことじゃ……ただの基礎魔法だから――」
「いや、自分でどうにかできたかも――」
アマリが即座に叫んだ。
「ウソつけ!」
帽子で顔を隠したさゆりに向かって、僕は腰に手を当て、大声で宣言した。
「それと、カイクルーへようこそ!」
さゆりは恥ずかしそうにチラリと僕を見てから、強がりながらも小さな声で答えた。
「は、はい! よ、喜んで!」
アマリはさゆりの可愛らしい反応に微笑む。
「はあ……その名前には同意してないけどね!」
僕は彼女を少し困惑したように見た。
「ん? まあ、別に決めてなかったし」
「出会ったばかりで、決める暇もなかったし……」
「それが言いたかったのよ!」
さゆりはますます混乱した様子で僕らを見た。
「待って!? あなたたちも最近知り合ったばかりなんですか!?」
二人で頷く。
「ああ、数時間前だよ」
さゆりはとても驚いた。
「え、ええ!? じゃあチームはどうなってるの!?」
アマリは落ち着いて話し続けた。
「えっと……家もないし、食料もお金もない……スイサイダーズですらない」
さゆりは現実を突きつけられた。
「ス、スイサイダーズですらない!? ……強そうだと思ったのに!」
僕は笑いながら腕を伸ばし、拳を握りしめ、筋肉自慢のあの有名なポーズを取った。
「俺は強えんだぜ!」
「強くないでしょ!! ……じゃあなんでそんな風に思ったの?」
さゆりは早口で話した。
「杖を持った魔法使いに決闘を申し込んで、遠距離戦を受け入れるなんて、よっぽど強い人にしかできないことだと思ったから!」
アマリはくすくす笑った。
「あはは、ただのバカよ」
「うるさい! そ、その時は気が散ってて……ちくしょう!」
さゆりはますます恥ずかしそうに話し続ける。
「で、でも私が勝ったのは運が良かっただけかと思ってた! でも……実力だったの!?」
僕も赤面していた。これは完全なる屈辱だ。
「ち、違う! つ、つまずいただけで――」
アマリは僕の頭に手を置き、無理やり下げさせた。
「……あ、あんたの言う通り……」
僕はそう言った。
風が吹き抜ける中、アマリが手を離すと、僕はゆっくりと頭を上げ、恥ずかしそうに髪をかきながら、誰とも目を合わせられないでいた。
アマリは腕を組んで横を見た。
「で……どうする? 帰るの?……」
さゆりは僕らを見て、ただこう言った。
「え? いや、ただ驚いただけ」
今度は僕らが信じられないという表情で彼女を見つめた。
「ほ、本当に?――」
さゆりは誇らしげな顔で笑みを隠しながら話し続けた。
「ええ、別に気にしないわ。仲間がいてくれれば、それで十分よ」
僕はアマリを見た。アマリは僕を見た。そして二人でさゆりを見た。
「で――」
さゆりはあごに手を当て、上を見上げた。
「そろそろ4時か……食べ物がないって言ってたよね? ギルドで食事でもどう?」
僕はすぐに叫んだ。
「行く行く!! もちろん――!」
アマリが遮った。
「でもお金がないよ……」
さゆりは小さな声で言った。
「私が払うよ、あそこの料理は安いから――」
「レッツゴー!!」
彼女が言い終わる前に、僕はギルドに向かって走り出した。
「競走だ! オレが勝つ!!」
アマリは目を見開き、すぐに僕を追いかけた。
「あのバカに負けるものか!」
さゆりは理解するのに少し時間がかかった。
「ちょ、待ってよ!! 私、杖持ってるんだからずるいよ!」
……
……
数時間後、ギルドの食堂のテーブルに座り、僕とアマリの前に2つの皿が置かれていた。(僕の皿には明らかに多くの料理が盛られていた。)
アマリが突然言った。
「あ、待って、食べる前に……さゆりは食べないの? それで、本当にいいの?」
さゆりは僕らの正面に座り、真面目な硬い表情をしていた。
「心配しないで、もう昼は食べたから……それに、ここの料理は本当に安いし、私お金持ってるし……」
「うめえええ!! このステーキ最高!!」
アマリはゆっくりと僕を見た。
「もう食べ始めてる!! せめてお礼ぐらい言いなさいよ!」
「あ……」
僕はさゆりに親指を立てた。
「ありがとな」
そしてすぐに食事に戻った。
さゆりは誇らしげに微笑み、同じく親指を立てた。
「どういたしまして! ……ねえ、アマリ、それだけで足りるの? もっと注文してもいいよ……」
アマリはため息をついた。
「ありがとう。でもこの体型を維持するには食べ過ぎないようにしないと…」
「ああ、そうなの……」
アマリはゆっくりと魚を切り、一口食べた。
その瞬間、目を見開いた。
「うわっ!! 一週間もまともな食事してないの忘れてた!! ごめんさゆり、もっと頼むわ!!」
さゆりはアマリが急いで立ち上がり、カウンターへ走るのを見て笑った。
こうして、テーブルには僕とさゆりだけが残された。
僕は一瞬食べるのを止め、彼女を見て、また食べ始めながら言った。
「で、名前なんだっけ?」
「何回も言ってるでしょ!!!」
しばらくして、アマリは食事を終えた。
「あー、めっちゃうまかった……ちょ、そろそろ終わりにしない?」
僕はまだ食べていた。
「4枚目だぜ……」
ちくしょう、今日昼飯抜きだったんだから、ぐらい飯食わせろよ!
アマリはため息をつき腕を組むと、疲れた笑顔でさゆりを見た。
「こいつ、あんたを破産させるわよ……で、さゆり、聞きたいことがあるんだけど……」
「なに?」
「まず、あんたスイサイダーズでしょ?」
さゆりは彼女を睨んだ。
「もちろんよ! それが収入源だもの」
「わかったわかった……で、結構強いの?」
さゆりは胸に手を当て、持てる限りの自信を持って言った。
「もちろん! だって私は世界一の魔法使いになるんだから!」
アマリはうなずき、足を組んだ。
「なるほど……じゃあ、なんで私たちみたいなチームに入ろうと思ったの? 強いんだから、もっとまともなグループがあるでしょ?」
さゆりの誇らしげな表情が消え、俯いて少し悲しそうな顔になった。
「今まで何組ものグループに所属した……何組も、本当にたくさん。でもいつも同じことになるの……」
彼女はますます悲しそうに、小さな声で話した。
「しばらくすると、必ずグループから追い出される……何をしても、結局は居場所を失う……だから、強い弱いなんて、もうどうでもよくなったの……」
「で、なんで追い出されたの?」
さゆりはアマリに淡々と答えた。
「すぐにわかるわ……」
アマリは一瞬凍りつき、僕に耳打ちした。
「ねえカイ、こいつ危ないかも……何か隠してる……」
僕は魚に集中しながら小声で返した。
「そうか?……で」
さゆりに大声で聞いた。
「お前、悪いやつか?」
彼女は即座に答えた。
「いいえ、もちろん」
俺はアマリに向かってニヤリと笑い、また食べ始めた。
「いい子だぜ、へへ」
アマリは言葉を失った。
「そ、そういう問題じゃ……」
突然、さゆりが立ち上がり、僕らの前に立って、とても……「力強い」調子で言った。
「でも一つ約束して! 私の夢の邪魔だけはしないで! 世界一の魔法使いになるための足手まといにはなれないわ!!!」
それを聞いて、僕もいきなり立ち上がり、テーブルをバンと叩き、全力で叫んだ。彼女の目をじっと見つめながら。
「もちろんするわけねーだろ! オレはどんどん強くなる、だってオレは世界の皇帝になるんだからな!!!」
この言葉はギルド中に響き渡り、全ての者の耳に届いた。
さゆりは驚いて口を開いたが、反応する前に――
「ハハハハハハ!!」
ギルド中の者が笑い出した。
「世界の皇帝!? 六つ星ミッションか!? ハハハハ!!」
そんな言葉が周りのスイサイダーズから聞こえてくる。
「何様のつもりだ!?」 「待て、あれまだスイサイダーズですらないガキじゃねーか!? それが世界の皇帝だと!? ハハハハ」
僕は周りの嘲笑に腹が立ち、テーブルを離れようとした。
「な、なに笑ってやがる!? 本気ならかかってこいよクソ野郎ども!!」
こうして、僕はテーブルを離れ、自分を笑った者全員にケンカを売りに行った。
つまり全員にだ。
この夢を嘲笑うのは、俺の友達や今までの全てを侮辱するのと同じだ。
僕がテーブルを離れるのを見て、アマリは止めようとしたが遅かった。
「カイ待って!……」
手を伸ばしたが、もう僕は行ってしまっていた。
彼女はため息をつき、椅子に背を預けた。
「あーあ、このガキ……テストステロンが暴走してる……」
目を開けると、さゆりが何か感心したような、尊敬や自信混じりの笑みを浮かべているのに気づいた。
「ん? どうかした、さゆり?」
彼女は帽子を直しながら答えた。
「別に……彼を笑う資格、私にはないわ」
それを聞いて、アマリはさゆりに嬉しそうな笑顔を向けた。
さゆりは帽子をかきながら聞いた。
「で、アマリの目標は?」
「私? えっと、カイが王冠でやろうとしてること……それと同じようなものかな」
「え、どんな?」
アマリはさゆりに話しても構わないと思ったが、説明する方法がなかった。あるいは、ややこしくする意味もなかった。
だから彼女はただ笑ってこう言った。
「すぐにわかるわ……」
さゆりはまたすぐに立ち上がった。
「そういうの大嫌い!」
「人のこと言えねーじゃん!」
外国人(日本語、マジでゼロ。)が書きました。誤字・不自然な表現があったら教えてください!
英語版の第1巻、ついに完成!翻訳はもっとスピードアップします!
本章は全3部構成となっており、こちらはその第1部になります