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第9話(その2)

アライグマは俺をじっと見つめていた。微動だにせず、何の反応も示さない。


「シスか。なるほど」


クラウンがくすくす笑った。


「おやおや♡ 君のは…それが君のシス?サンカルパを鎧にしちゃうなんて。面白い格好だね、カイ」


俺のシス、『スーパースタンス』を説明させてくれ。


手足にまとわりつくこの黒い液体、これがまさにサンカルパなんだ。俺のシスの能力は基本的に――サンカルパを自由に成形できる物質に変えて、手足に纏わせるってことだ。


鎧みたいに手足を覆って硬化させて、その部分を強化するんだ。


つまり、手足のパワーをブーストできるってわけ。


問題は、この変身がサンカルパが尽きるまでしか持たないことだ。この鎧、サンカルパをめちゃくちゃ消費するからな。


考えつくまでに時間かかったし、試したのも数回だけだぜ。


アライグマはただ言った。


「お前はまだ俺より弱い。もう一つの――」


「うるせ!!!」


生まれて初めてこんなに怒りがこみ上げてきた。


「てめえのやったこと全部後悔させてやる!! スーパージャンプ!!!」


上ではなく、真っ直ぐ彼に向かってジャンプした。ほとんど飛行みたいな、ダッシュに近い動きだ。


その間、右拳を握りしめ、後ろに引いた。


「スーパー…」


足にもサンカルパを纏っているから、ジャンプ力も強化されてる。


そして、彼の顔面まで迫った瞬間、叫んだ。


「パンチ!!!」


その拳を彼の胸元に叩き込もうとした。


彼はXの形に腕を交差させて防御。サンカルパ同士の衝突で、黒い閃光が何本も迸った。


数秒間、圧力をかけ続け――ついに彼の防御を破ったが、彼は数メートル後ろに下がっただけで、軽々と着地した。


俺は『飛行』から着地し、怒りに燃える目で彼を睨みつける。


「まだ まだ まだ!!!」


残りのサンカルパ(スーパースタンス維持に使ってる分を除く)は時間で消費されない。使用時間制限はないんだ。でも攻撃に使うと減っていく。つまり、このシスで出せる攻撃の回数には限りがあるってことだ。しかもこのシスの攻撃は超強力でサンカルパを大量に消費する。


あと、今の俺の決意に比例して攻撃力がスケールしてるのは言うまでもない。それでも、俺ができたのは彼を少し後退させただけ。


こいつ……強すぎる。


アライグマはただ言った。


「お前は強くない。俺の相手ではない。だが、お前に相応しい相手を用意してある。セレクト」


突然、彼の横にアライグマのマスクを被った金髪の男が現れた。


「え?ボ、ボス、呼んだ?」


さっきの金髪の奴だ。覚えてるぜ。


アライグマは何も言わなかったが、金髪は俺を見て、やるべきことを悟ったようだ。


「ああ、了解」


待て、そうじゃねえ!


「おい!!俺が戦うのはアライグマだ、てめえじゃねえ!!」


アライグマは淡々と言った。


「お前は俺の相手ではない。だが、ここには強い者がいる」


一瞬で、彼はクラウンの横に現れ、拳を振り下ろした。だがクラウンは首をかわし、拳は壁にぶつかった。


「おやおや♡ 観戦するつもりだったんだけどね」


アライグマが再び拳を放つが、同じ結果に終わる。


「よし、カイ。どうやら少しの間、私がこの方をお相手することになりそうだ。目の前の相手を倒したら、こっちに来なさい。彼はまだ君のために空いてるから」


「任せろ!!あいつは俺がぶっ倒す!!」


よし、金髪を倒して、それからアライグマを倒す……。


クラウンがニヤリと笑った。


「じゃあね」


俺は金髪に目を向けた。奴はただ、俺を見つめていた。


「さっさと済ませてや――」


その時、何かが崩れる音がした。振り向くと、クラウンとアライグマがいた場所の壁に大きな穴が空き、外の日光が差し込んでいた。


クラウンが言う。


「他のお友達の邪魔はしたくないでしょう?」


そして二人は消えた。


金髪は少し離れたところから、あのマスク越しに俺を見ている。


「よし、金髪!てめえが俺の標的だ!」


奴は腰に手を当て、嘲るような声で言った。


「お、覚えてるぜ相棒。こんなシス持ってるとはな……だが俺――」


「うるせえ!時間の無駄だ!」


「まあ、いいさ……はっきり言っておくがな……俺たちは皆、同じシスを共有してる。アライグマの秘密だ。ウィザーズ・マジックみたいなもんさ、でもアライグマ製の。俺はまだ全スキル解放できてねえが、ボスはできてる。だから、仮に俺を倒せたとしても、今日お前は死ぬ。ユカ!!!」


奴は地面に右手を触れ――次の瞬間、俺の周りの地面が揺れ始め、地震のように亀裂が走った。立っているのもやっとだ。


「ぐっ……な、なんだこりゃ!?まあいい!スーパージャンプ!!」


ジャンプして空中に浮かぶ。天井まであと数センチだ。


金髪はただ俺を見て、嗤った。


「多様性が最大の武器だ。ブーメラン」


地面の亀裂から、無数のナイフが現れた。穴から飛び出し、空中に浮かんでいる!数えたら10本くらい!


まずい、空中だし、もう落下し始めてる。ナイフが俺に向かってくる。


いや、問題ない。


両手で天井に触れ、彼に向かって押し出す。足を彼に向ける。


「スーパー……」


奴は俺を見た。少し驚いたかもしれない。顔は見えないが、微動だにしなかった。


「賢い。だがそれだけだ。カベ」


その言葉と共に、彼の目の前の地面から壁が出現した。幅は狭いが、高くて分厚い。


だが、それで止まると思うなよ。


「な、なに――」


彼が驚く中、俺はその壁を両足で突破した。元々の軌道のままだ。


今、俺はまだダッシュ中で、ほとんど彼に触れんばかりだ。


顔は見えないが、こいつはビビってるだろう。


「ダブルスマッシュキック!!!」


どんっ、両足同時に彼の胸板に叩き込んだ。


というより、押し出した感じで、奴は信じられない速さで吹っ飛び、後ろの石壁に激突。クレーターを作った。


俺は立ち上がり、遠くの奴を見る。


ちっ、こいつに攻撃使いすぎてる。目標はこいつじゃない!俺――


突然、後ろから何かが腕に触れた気がする。気づくと、あのナイフだ。


素早く振り向き、胴体と頭を守るため手足を上げる。どうやらナイフは手足には効かないらしい。


くっ……!まさかこう来るとは思わなかった!


不意打ちだったが、ほぼ全てのナイフは防げた。頬を数本かすっただけだ。


少なくともネックウォーマーは無傷だ……。


その時、入ってきた門に二人の女の子が現れた。


知ってる顔だ。


アマリ:

「あれ?カイ、なんか変な格好!」


さゆりは目と口を大きく見開いた。


「す、すごい……!カッコいい!!」


俺はニヤリと笑った。


「おう!アマリ、さゆり!まだ終わってねえから出てけ!」


アマリはかなりムカついてるようだ。


「は?私たちは終わったから、お前も終わったか、助けが必要か見に来ただけだよ」


さゆりは多分聞いてない。興奮してるだけだ。


「か、カイ!その体どうなってるか説明するように命じるわ!!」


「ああ、これか?俺のシス、スーパースタンスだぜ!超カッコいいだろ!?」


さゆりの笑顔が一瞬で消えた。


「そんなベタな名前初めて聞いたわ!」


「うるせー!『スタンス』って言葉なんて知らなかったんだよ!ギルドの会話で聞いて調べたらしっくりきたんだ!少なくとも見た目は超カッコいいだろ!」


さゆりは腕を組んだ。


「いや、サイアク」


こ、このガキ……!むかつく!


「も、もう一回言ってみろ!どうなるかわかってんだろうな!」


さゆりが言い返す前に、アマリが割って入った。


「おいおい、もっと重要な問題があるだろう……カイ、お前まだ終わってないだろ?用事あるんでしょ?助け要る?」


「ああ、まだ倒さなきゃいけない奴がいる。いや、助けはいらねえ、一人で倒せる!」


さゆりが叫ぶ。


「自画自賛!」


「出てけ!!」


アマリは深く息を吸い、俺を見つめた。


「本当に大丈夫?」


「ああ、こいつのケツぶっ叩く!……お前ら本当に終わったのか?」


「ああ、倒したよ。それからさゆりがビウムで気絶させて……待てさゆり、あいつらいつまで気絶してるの?」


さゆりはアマリの顔を見上げ、平然と言った。


「10秒くらい」


……


「な、なんで早く言わないんだよ!!もう起きてるじゃねえか!!!」


さゆりは「おーっ!」と大きく息を漏らし、アマリに掴まれたまま廊下へ走り出した。


「カイ、実は終わってないの!ごめん!!」


さゆりはアマリの腕の掴みを振りほどこうともがいたが、結局諦めた。


「で、で、あとであの能力説明するのよ!気、気になるんだから!!」


二人は暗闇の中、俺の視界から消えた。

本章は全3部構成となっており、こちらはその第2部になります

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