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第7話(その3)

突然、俺は「目が覚めた」。


なんて変な奴だ…でも楽しそうだぜ!


俺は勢いをつけて、そのデブの腹に真っ直ぐパンチを放った。


ドン!と地響きのような音がして、男はただ気持ち良さそうにうめいた。


「おぉぉ…すげえなこのガキ!もっとやれ!」


ポークの「受付係」だったスーツ男が慌てて駆け寄ってきた。


「でも、料金を払ってないでしょー」


「あーいいよ、タダでやらせてやれ」


この言葉で、周りのスイサイダーズが一気に盛り上がった。


「え!?ま、待てよ!?ポークがそんなこと言うなんて初めてだぞ!?」

「こ、このガキマジで強いんじゃねえか!?」

「も、もしかして本物か!?」

「行けー!ガキンチョー!!」


こうして、みんなが俺を応援し始めた。


俺もますますテンションが上がり、同じようにニヤニヤしながら、


「よし!いくぜ!」


今度は頭めがけてぶん殴った。衝撃が男の全身を震わせる。


「おおおお…もっとだぜ!」


「了解!」


一方、少し離れた場所で、サユリとアマリが俺を探していた。


二人は並んで歩きながら、あちこち見回している。


アマリが冷静に言った。


「別々に探した方がいい?」


サユリは少しイライラしていた。


「わかんない…って、あそこで何か騒いでるぞ?」


彼女が指さした先には、興奮したスイサイダーズの群れがいた。


二人が近づくと、そこで目にしたのは…まさに「痛々しい」光景だった。


「行けー!ガキ!もっとやれー!!」


もう一発腹に叩き込むと、全員が「イエーーーッ!!」と叫んだ。



「なにやってんのよ、このバカったれーーーっ!!!」


アマリの怒鳴り声が響いた。

二人はまるで史上最悪のものを見たような表情で固まっている。


スイサイダーズは一瞬静かになり、ゆっくりと彼女たちを見た。


俺も振り返って、二人の存在に気づいた。


「おっ!アマリ、サユリ!これめっちゃ楽しいぞ!お前らもやるか?」


一方、ポークは彼女たちを見て震え上がった。


「バ、爆乳嬢!?いや、なんでここにいるんだよ!?あ、あの時の俺とは別人だぞ…双子の兄だ!」


その時、アマリの右手に何かあるのに気づいた。


「待て、俺のプロポーズ状…まさか承諾したのか!?ハハ!やっぱり!俺の魅力に勝てる女はいねえ!」


アマリの目がピクピクと痙攣した。


「いいわよカイ!貸しな!」


彼女が俺に向かって歩き出し、ゴムハンマーを受け取る。


スーツ男が止めようとした。


「ちょ、料金を…」


「うるさい!これは完全なる復讐よ!!」


スイサイダーズの群衆は再び沸き立った。


サユリも後ろから叫ぶ。


「やれアマリ!あのブタ野郎に思い知らせてやれ!」



少し後、三人はテーブルに座って話していた。


「すげえなアマリ!一発でノックアウトとかマジでカッコよかったぜ!」


アマリは腕を組んで得意げ。


「ふん!楽勝よ!あんなにムカついた相手は初めてだわ…」


サユリはちょっと嫉妬してるみたいで、不機嫌そう。


「ふん、私だってできたのに」


アマリは口元を手で抑えて笑いをこらえる。


「あ…あんたが?このロリが?はっ…」


「な、なんですってーーーッ!?」


アマリはさっきまでの態度を一転、冷静に話し始めた。


「まあいいわ。とにかくクエストを選ばないと」


俺が立ち上がって歩き出すと、


俺: 「よし…行くぞ――!」



アマリがシャツの裾をグイッと掴んだ。


「待ちなさい!今回はちゃんと一緒に選ぶのよ!」


しばらくして、三人はミッションボードの前に立っていた。


アマリがじっくりと見渡す。


「うーん、1星が無難かしら…でも報酬のいいものがいいわね…」


サユリが突然叫んだ。


「マービン・Dを倒すクエストに決めた!」


アマリがゆっくりとその紙を読む。


「マービン・D…って、え!?ダメ!あれは5星クエストよ!」


「でもマービン・Dは現在世界一の魔法使いよ!私がなるためには倒さないと!」


「だからって5星は無理に決まってるでしょ!?」


「サユリ様をナメるなんて…!」


「他のを選びなさい!!」


サユリがふうっと息を吐き、再度ボードを見る。


「じゃあ…これ!」


彼女が指さした先には…


「"魔法使い専用ミッション。デリケートな…"」


「お前しかできないやつじゃん!!」


その時、俺はボードの一角に目を留めた。


「あ…待て。それだ…あのミッションやるべきだ!」


俺が指さした先には…


「アライグマ殺し討伐?」アマリが読み上げる。「…3星クエストよ!?」


サユリも食いついた。


「でも報酬がすごく高い!それに難易度的にも…いけるんじゃない!?」


アマリは不安そう。


「でも3星はさすがに厳しいわよ?徐々にレベルを上げていくべきでしょ」


いや、これはやる必要がある。理由は言えないが、あいつを倒さない限り、俺の心に平安は訪れない。


サユリがアマリを見る。


「私たちはこれをするわ!難しそうで楽しそうだもの!」


「でも、私たちには…」


その時、背後から声が聞こえた。


「おやおや、なんて勇敢な子供たちでしょう。難しいクエストを選ぶだなんて…ムオホホホ、たまらないね♡」


クラウンが現れた。


サユリはすぐにトーンを下げ、俯きがちに。


「あ…こんにちは、クラウンさん…」


クラウンはくるりと回転し、三人の中心に立つ。


「ムホホ、大物サユリちゃんの誕生日も近いね?あの日には君の小さな秘密をみんなに話さないといけなくなるんだっけ?」


サユリは答えなかった。


たしか、出会ってから1週間後が誕生日だっけ?あと4日か。


クラウンが続ける。


「アライグマ殺しのクエストがいい?なんて勇敢!でも不思議だね…まさか」


一瞬、笑みが消え、俺の目を覗き込む。


「何か知ってたりする?」


俺が答える前に、アマリが口を挟んだ。


「あ、えっと、昨日彼らに会ったから…それで倒したいみたいで…ってあ!」


彼女はサユリを指さした。


「あいつらサユリのパンツ盗んだのよ!だから復讐したいんだって!」


サユリの顔が真っ赤になる。


「違うわよ!ただカッコいいし報酬もいいから!」


クラウンは体を反らせ、両手を床につけてブリッジの姿勢に。


「ムオホホ、穴は思ったより浅いみたいだね…」


いきなり逆立ちで立ち上がり、にたりと笑う。


「そうだ、プレゼントは気に入った?あの猫ちゃん?」


アマリが即答。


「あ、はい!すごく気に入りました!本当にありがとうございます!」


俺は答えなかった。正直あの猫…好きなのか?悪いのは猫じゃないのはわかってるが、あの出来事の後ではどうしても怖いんだ…


クラウンは言葉にしなくても、俺の本心を見透かしたようだ。


ところでクラウンについて、俺の認識は間違ってた。あいつは傲慢なんじゃない…確信があるんだ。物事がうまくいくと思ってるんじゃなくて、知ってるんだ。


サユリは緊張してほとんど話せないが、うなずくだけ。


クラウンは両手を広げて言った。


「ああ、なんて素晴らしい…」


サユリが小さく呟く。


「えっと…家、ありがとう。すごくいいところよ」


クラウンは動きを止め、にたりと笑う。


「お礼がしたい?ならば…私をクエストに同行させてくれないかしら?」


三人は凍りついた。


アマリが目を丸くする。


「あ、あなたがアライグマ殺し討伐に…!?」


クラウンは頷く。


「そうとも。正直言って、君たちだけじゃ勝ち目はない…だから私を加えさせてほしいんだ」


サユリも驚いている。


「で、でも…お礼の方法としては変よ!」


「私にとってはこれで十分。ただ、全力で戦うことを約束してくれればいい…道化師はそれが何より好きなんだから♡」


アマリが尋ねる。


「報酬は…分配するの?私たちで…」


クラウンは遮った。


「ムホホ、いやいや、この道化師にお金は要らない…そして私はここでもう有名だしね。本の件を秘密にしろと言ったのに、皆が私の名で広めてくれたおかげで。政府が追ってくるのも時間の問題だろうね、ムオホホ」


三人はきょとんとして、何を言えばいいかわからない。


クラウンが言う。


「心配しないで、噛みついたりしないから。ムホホ。正直、あいつらとは個人的な因縁もない…ただの"楽しみ"のためさ」


まったく意味がわからない。しかも、こいつが何かを隠してるのか、嘘をついてるのか、本当のことを言ってるのか、見当もつかない。


クラウンは前のめりになり、三人の目をじっと見て囁くように言った。


「さあ、どうする?」


三人は顔を見合わせ、サユリが頷いた。


アマリが小さく呟く。


「…わかった」


クラウンは嬉しそうに跳び上がり、空中でピルエットを決めた。


「ムオホホ!素晴らしい!では明日の朝、ここで会おうね、ダーリン達♡」


くるくると回転しながら去っていく。


…まあ、これでアライグマ殺しを倒す手助けができそうだ。


サユリ曰く、クラウンはかなり強いらしい。少し自信が湧いてきた。


あいつを倒さない限り、俺は安らかに眠れそうにない…

いや、確かに最初からこんな「暗い」展開になるとは思ってなかったよ。ただのコメディ異世界物のはずだったのに、どうしてもね…。別に嫌いってわけじゃないんだけど、もっと複雑で重たい話が作りたくなっちゃって。まあ、基本はあくまでコメディだから、そういうシーンばかり期待しないでね。


カイは相変わらずのバカでいてほしいんだ。本当に頭悪くて、笑えて、無邪気なキャラのままで。でも今章ではあえて逆のことをやっちゃって、つまり「カイに無理やり大人にならせた」わけ。あんなトラウマを経験して変わらない人間なんていないだろ?


うーん、できる範囲で調整するけど、カイの性格を根本から変えたくはないんだ。だってこの小説の前提は「ジェネリック異世界物のバカ主人公」なんだし。ただ、この章を経て彼がずっと面白い主人公になったとは思う。あーあ、困ったなぁ…


以上、第7章はこちらで完結となります。



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