第4話(その3)
異世界転移したカイだけど、ハーレムよりもサッカーが欲しい!? ちょっと変わった異世界コメディが始まる。
クラウンはその紙を手に取り、読み始めた。
「我が名はリンド。かつて世界の皇帝ネテル・マテのパーティーに属していた者だ」
「と言っても、我々5人の小さなグループではサポート役、つまりヒーラーとしての立場だった。仲間たちを何度も治療したことか……マテを瀕死の状態から救った回数も数知れない。もし私がいなかったら……などと考えるとゾッとする」
「今は引退した身だ。スイサイダーとしての活動も、他の仲間たち同様にやめている。だが、この物語が起こった当時、我々は皆、全盛期だった」
「……と、多くの人はそう思っているだろう。しかし実際のところ、神の王冠の10個の欠片を全て集めた頃のマテは、非常に衰弱していた」
「我らのリーダーであり、友であり、世界の皇帝となった男は、その地位に就いた時、既に重病に侵されていた。36歳と若いにも関わらず、誰も逃れられない死の病に冒され、あと数日か数週間の命だと宣告されていた。本人もそれを承知していた」
「だから、これから語る出来事が起こった時の彼は、もはや以前のマテではなかったということを、どうか覚えておいてほしい」
ギルド内が騒然となった。
「な、なんじゃって?!マテが病気だっただと?!」
「で、でも結局死んだんだろ?!願いを叶えた直後に亡くなったんだよな?!」
クラウンは皆を制した。
「おやおや、心配ご無用……だがそうだね、神と会った時の彼はかなりお年を召していた……」
「うーん、実は俺それ知ってたわ……」
と一人のスイサイダーが言った。
「いや、俺も知ってたよ。完全な秘密ってわけじゃないんだ」
「本当の秘密は、神との邂逅の詳細と、彼が何を願ったかだ!」
クラウンは相変わらず薄笑いを浮かべていた。
「さてさて、お芝居はこの辺にして本題に入ろうか。あ、その前に思い出してほしいんだが、マテが生きていたのは45年前で、リンドがこの本を書いたのは王冠発見から5年後のこと……その点を考慮に入れて聞いてほしい」
「我々の大冒険は何年も続き、様々な民族や王国、文化と出会った」
「5人は数多くの戦いを繰り広げ、多くの人間を殺めた――全ては神の王冠の10個の欠片を探すためだ」
「それだけの価値はあったと言える。あの数年間は我々の人生で最も幸福な日々だった」
「王冠の伝説は、人類の歴史が始まって以来存在していた単なる伝説に過ぎなかった。その伝説がどのように生まれ、真実なのかどうかも誰も知らなかった。だがついに、誰かが王冠の欠片の一つを発見したことで状況が一変する」
「そうして、神の王冠を求める有名な時代が幕を開け、そしてあの日、終わりを迎えたのだ」
「世界中の王国や企業、組織、グループ、果ては個人までが、こぞってその神器を求めて旅立った時代」
「しかし結局、全ての欠片を集め、その力を利用できたのは我々のグループだけだった」
「面白いことに、王冠の欠片を集めれば集めるほど、世界中の政府からますます憎まれるようになった」
「ついには、単に王冠の欠片を集めているというだけで、我々は死刑囚同然の扱いを受けるようになった」
「まあ、確かに何件か強盗を働き、何人か殺したことはあったが、彼らの対応は明らかに度を越していた。そうしてマテは『全ての政府の敵』となった」
「真実を言えば、政府連中はマテが王冠を手にしたらどんな願いを叶えるか、ただそれだけを恐れていたのだ。だが、結局彼らの心配は無駄に終わった」
「そして念のために言っておくが、我々は善人ではないが、かといって悪党でもない」
クラウンは紙から目を離した。
「……というわけで、私の説明はここまで」
ギルドの一人が言った。
「い、今全部即興で考えたのか?」
「すげえなあ、めちゃくちゃ上手いじゃねえか!」
「おやおや、褒め言葉は大歓迎だよ♡ もっともっと褒めてちょうだい、とっても嬉しいから♡」
別のスイサイダーズが口を挟んだ。
「てか、俺ずっと疑問だったんだよな……なんで王冠への熱狂がマテの時代みたいに再燃しないのかって。あれだけの6つ星クエストなのに……」
年配の男が頷いた。
「クエストの説明をちゃんと読んだか?『その存在は保証されず、単なる伝説に過ぎない』とはっきり書いてあるぞ」
最初に話した男は何かに気付いた。
「あー、つまり王冠は再び伝説に戻ったってこと?世界中の政府が意図的に伝説にしたのか?」
「今の王冠は、最初にその存在が証明される前と同じ状態だ。存在するかどうかもわからない単なる伝説として扱われている」
アマリがムッとしながら気付いた。
「待って、マテが願いを叶えた後、王冠の存在が保証されなくなったの?なぜ?」
老人は腕を組んだ。
「最も考えやすいのは、マテの願いが原因だろう……確かなことは誰も知らないが、おそらく王冠は一度きりの使い切り品だったんだ。マテが使った後は存在しなくなった……だから世界は興味を失い、王族連中も予防線としてあのクエストを残しただけなんだろう」
アマリが頷くと、一同は再びクラウンに注目した。
「続きを聞かせてくれ!どうなったんだ!」
「はいはい……」
クラウンは紙に目を戻し、今度は本当に読み始めた。
「ついに、我々は10個の王冠の欠片を組み合わせることに成功した」
「これがネテル・マテが世界の皇帝となった日である」
「その時、私達5人はとあるバーにいた。マテは酒が好きだったから、これ以上ない場所を選んだのだ」
「バーは貸し切り状態で、客は我々だけ。王冠は私の人生で見た中で最も美しいものだった。普通の王冠などとは比べ物にならない――神々しい輝きを放ち、誰もが一目見れば魅了される代物だった」
「マテは遂に10個目の欠片をはめ込み、完全な王冠を完成させた」
「マテは組み上がった王冠を手に取った。どんなに病に冒されていても、彼は常に楽観的で自信に満ちていた。決して絶望したり自信を失ったりせず、物事は何とかなると信じていた。自分の病気について愚痴ることもなく、むしろジョークにしていた。本当の皇帝とはああいうものなのだろう」
「『みんな、やったぞ!ハハハ!』」
「マテは両手で王冠を抱え、満面の笑みを浮かべていた」
「6歳のロッカは、その光景に目を輝かせていた」
「『わあ……マテ先生、触らせて!』」
「彼女が手を伸ばすと、マテは王冠を高く掲げて届かないようにした」
「『ダメダメ、リーダーは俺なんだから俺が使うんだ!それにロッカ、先生って呼ぶなって何度も言ってるだろ……』」
「高慢な魔法使いのサン・ワールドがロッカをひょいと抱き上げ、膝の上に乗せた」
「そして冷たい口調でたしなめる」
「『おいロッカ、邪魔をするんじゃない。長い間戦い続け、多くの仲間を失って……全てはこの瞬間のためだ。隊長に願いを叶えさせてあげなさい』」
「ロッカは『わかった』と小さく答えると、サンの腕にしがみついた」
「マテは申し訳なさそうに頭を掻きながら言った」
「『子供相手にそんなに厳しくするなよ……』」
「エルフのような風貌のパールは豪快に笑った」
「『オホホホ!早くその王冠を使えよマテ!何が起こるのかみんな見たいんだ!』」
「私も叫んだ」
「『そうだ!早くマテ、神様と会ったら全部報告しろよ!』」
「私の頭の中では、そして他の全員の頭の中でも、全てはうまくいくはずだった。マテは自分の病気を治すよう願い、我々はこれまで通り幸せに暮らす――」
「とても身勝手な願いだとは承知している。神に願うべきことの中で、そんな自己中心的な願いをかけるのは道義的に間違っているかもしれない」
「だが、それが4人全員の願いだった。他に何も要らない。マテは単なるリーダーではなく、真の友人であり、愛し合い、ただ一緒にいるだけで楽しい存在だった」
「彼のいない世界など、我々には想像もできなかった」
「とはいえ、マテが神に会った時に何を願うかについて、我々は一度も話し合ったことがなかった。だが全員、彼が病気平癒を願うだろうと信じていた」
「マテは大声で笑った」
「『よーし、行くぞ!またな!』」
「そう言うと、彼は王冠を頭に載せた」
「黒い風が彼の周りに巻き起こり、マテは忽然と消えた」
「我々は少し驚いたが、もちろん覚悟はできていた」
「パールが言った」
「『んー……今神様と話してるのか?』」
「私は笑顔で、彼が無事だと確信しながら答えた」
「『ああ、心配するな!我らの隊長は大丈夫だ。ただ願い事をしているだけさ!』」
「ロッカが叫んだので、サンは彼女をたしなめた」
「『おい、もう6歳だろう?赤ちゃんみたいに騒ぐんじゃない!』」
「ロッカは怖がっていたが、涙をこらえようとしていた」
「『マ、マテ先生は大丈夫?』」
「私は安心させるように笑いかけた」
「『もちろんさ!あいつはたまにバカなことするけど、結局いつも無事に帰ってくるんだ』」
「4人は顔を見合わせ、笑い合った」
「しかし突然、マテを消し去ったあの黒い風が再び我々の前に現れ、瞬く間にネテル・マテの姿へと変わった」
「彼の頭から王冠は消えていたが、我々が何か言う前に、あるものが先に聞こえてきた」
「マテの笑い声だ」
「『ハハハハハ!何てバカな奴だ!!あんなアホは初めてだぞ!!ハハハ!』」
「私はすぐにマテに駆け寄った」
「マテは涙が出るほど大笑いしていた。4人はただ呆然と見つめるしかなかった。彼の見た目は何も変わっていない。ただ、笑いが止まらないだけだった」
「私は心配そうに尋ねた」
「『ど、どうしたんだ?!神様と会って願いを叶えたんだろ?!』」
「『ああああ!その通りだハハハ!だがなあの神様ときたら……めちゃくちゃ面白い奴だったぞ!!完全なアホだ!ハハハ!』」
「パールが叫んだ」
「『お、お前神様をアホ呼ばわりするのか?!そ、それは冒涜じゃないのか?!』」
「『ハハハ、あの神様気にしないって!』」
「ロッカがサンの腕からすり抜け、マテに抱きついた」
「『マテ先生!消えちゃったのに……でもすぐ戻ってきてよかった……』」
「マテは彼女を抱き上げ、興奮した様子で空中に放り投げた」
「『すぐ?俺としては何時間も経ったぞ!』」
「サンもまだ理解できていない様子で言った」
「『で、で……結局何があったの?』」
「マテはロッカを地面に下ろし、最後に頭を撫でると立ち上がった」
「『はぁー、たまらん!これからも冒険が続くぞ!』」
「我々4人は同じことを考えた――マテは病気を治すよう願ったに違いない」
「私は安堵の笑みを浮かべた」
「『ああマテ……もちろん、これからも一緒だ!』」
「サンは珍しく微笑みながら言った」
「『じゃあ、どんな様子だったか話して』」
「マテは嬉しそうに、大きく笑った」
「『そうだな――』」
クラウンは紙から目を離した。
「んー、ここから先はかすれていて読めない……どうやらこすられたようだな。まあ、その後はこんな感じで続く――」
外国人(日本語、マジでゼロ。)が書きました。誤字・不自然な表現があったら教えてください!
英語版の第1巻、ついに完成!翻訳はもっとスピードアップします!
本章は全4部構成となっており、こちらはその第3部になります