プロローグ
「やがて魔女になる少女と魔女の弟子」の時代より遥か昔の話です。
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↑やがて魔女になる少女と魔女の弟子
「は?」
目を覚ますとベットに寝かされていた。
鎖付きで。
「よお!結構早く起きたな」
俺の足元側にある扉。
それが開き、筋肉質な長身の男が現れた。
「お前、誰だ?」
俺がそう聞くと、少しばかり考え込んで男は答えた。
「対魔術機動隊。隊長、日貫恭弥だ」
「対魔、機動隊?」
「まあ言っちまえば軍隊だな」
俺の小さな呟きにも反応し、いち早く疑問に答えていく。
それにしたって何故俺は軍の人間と話しているのだろうか。何故俺は鎖で繋がれているのだろうか。
この場所が軍の基地で目の前の男が軍人なのは分かるが、他のことは全くわからない。
なんといっても状況が分からない。
「「何がなんだか分からない」って顔してんな」
「当たり前だ。何でここにいるのかも、拘束されているのかも分からねえよ」
「はは!そりゃそうだ!当たり前だよな!」
日貫とかいう男は一頻り笑った後、今の状況について説明した。
「今この世界の資源が枯渇しかけているのは周知の事実だろう?」そんな問いかけから話し始めた。
この男の言ったことを簡単にまとめてしまえば、資源が枯渇して未来のないこの世界に救いがもたらされた!取り敢えず行ってみようぜ!だ。
日貫の言う救いというのが魔術世界、とかいうもの。
なぜ魔術世界というのか、そういうことについて詳しくは話していなかったが、その魔術世界には資源が溢れているらしい。
何故そんな世界が今まで発見されなかったのか、何故今になって発見されたのかは不明だが、目の前に現れたソレを使わない手はなかった。
そうして各国は魔術世界に先遣隊を派遣したのだが、魔術世界に転移して以降、通信が途絶えてしまった。
続く2度目の調査も失敗に終わった。
そこで魔術世界には何らかの圧倒的力を持った生物、または国が存在すると考えられ、国籍年齢人種を問わずに合同で軍を結成した。
それが対魔術機動隊。
魔術世界でも生存可能な選りすぐりの実力者の集まりである。
清々しいまでの実力主義で文武共に優れていないと入隊することすらできないとか。
その徹底された実力主義である理由は彼らの使う武器にある。
数百年前の第一、二次世界大戦中に科学が目覚ましいほどまでに発展した様に、7年ほど前に終結した第九次大戦で人類の科学は更にレベルが上がった。
しかし、その産物もう人に扱えるものではなかった。
人に扱えない武器をどう使うか。
簡単だ。人ではないものに使わせればいい。
世界には生まれつき人智の及ばない世界のバグと言っても可笑しくない人間が少なからず生まれる。
そういった者を集めたのが対魔術機動隊である。
「で、なんで俺はそんな奴らの基地に拘束されてんの?」
「何って?そりゃあ、お前も人ではないものだからだよ」
はぁ?
意味がわからない。
俺は今の今まで普通に生きてきたし生きてこれたぞ。
特に学業に秀でた訳じゃない、むしろ悪かった方だったし、運動も学校の中なら良い方ってくらいで大した特徴がなかった。
なのに、人ではないもの?
話を聞く限り、人ではないものは皆んな身体能力も頭も人を遥かに超越した感じだ。
俺は絶対に違う。
「まあ、状況を掴むのは後にして。取り敢えず、お前の所属する隊の隊長を紹介しとく」
日貫が「入ってこい」と言うと1人の少女が現れた。
黒髪の美少女。長い黒髪をハーフアップにしている。確かこういう綺麗な黒の事を射干玉の様と言うのだろう。
少し気怠げな瞳している。
男女問わず魅了される飲み込まれる吸い込まれる様な目だ。
「私は響。よろしく」
容姿に見合わぬ口調と名前だ。
その衝撃に少し遅れてから俺も名乗る。
「如月理人だ。よろしく」
それが俺の長い夢の始まりだった。