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第六十一話

 日焼け止めを塗って欲しい。


 夢と希望が詰まった男子諸君から聞けば、これは楽園への扉と同義だろう。もちろん、過去の俺もこの言葉を言われたなら飛んで跳ねて喜んだだろう。


 でも……でも……!


「素直に喜べねぇ……!」


 ビキニの紐を解き、ビーチチェアでうつ伏せになってこちらを見る葵衣と緋彩。凄くエr──扇情的な動作に頭が茹だちそう。


 ちなみに叶恵は葵衣から「もう日焼けしてるじゃないですか」とごもっともなご指摘を受けパラソルの日陰の端っこでしょんぼりしている。


「早くしてくださいよ〜」


「……うたのん、まだ?」


 ……くっ! 一体どうすれば……! この煩悩にまみれた頭をどうすれば……! 葵衣達の方向いてるとまともに考えることも出来ねぇ!!


 押し潰されてはみ出る胸とやわらかそうな太ももを日焼け止めという免罪符のもと好きに出来──じゃない!!


 いくら葵衣達が俺を好いてくれてるとはいえ、そんなことはしちゃダメだろ!


「ねー詩乃、ちょーっといーいー?」


 海の方を向いてうんうん唸っていた俺に声をかけてきたのは、いつの間にか復活していた叶恵。


「私達が詩乃にこういうことを頼むのは、詩乃にとってつらい?」


「っ……そんな事は」


 ──ない。でも、いずれ誰かを選ばなきゃいけない事を考えると、ここで俺が葵衣達の体を無闇に触るのは良くないんじゃないかと思ってしまう。


 言葉に詰まった俺に、叶恵は優しく、笑いながら続ける。


「じゃあ安心して触ってくれていいよ。好きな人に触られるの嫌なわけないじゃん。それにそれで意識させれるなら私達こっちの勝ち」


「……そういうもんなのか?」


「そういうもんだよ。じゃなきゃ緋彩はあんな頑張って密着しにいかないでしょ」


「た、確かに……!」


 今の一言で納得いったわ。無理しなくていいぞっても絶対やめない緋彩の謎も解けた。でも、そういう色仕掛けみたいなのより素の緋彩の方がかわいいんだけどな。


「じゃー、さっさと行ってこーい! 日差しは乙女の天敵だからねー? ちゃーんと、隅々まで、丁寧に、塗るんだよー?」


 叶恵は最後に思いっきり背中を叩いて既に遊び始めている陽斗達の方に走っていった。超痛い。


 さて、叶恵のおかげで精神状態は結構良くなった。俺はいっつも考えすぎだと。


 日焼け止めを塗る。そう、日焼け止めを塗るだけだ。決していやらしい意味はない。


 それに葵衣達がやっていいと言ったことを、頭ごなしに否定しなくていいと、叶恵からついさっき言われたんだから、もう怖いものはない!


「……じゃ、よろしく」


 俺がうじうじしている時間があまりにも長かったため、葵衣達は順番決めをしていたそうな。その結果、最初は緋彩らしい。


 とりあえず手に日焼け止め出して、えーと……どこから塗ればいいんだ?背中っていっても広すぎるし、うーむ……。


「……うたのん、悩むなら真ん──ひゃうんっ!?」


 とりあえず腰でいっか、と思って手を置くと、緋彩の身体が跳ねた。


「ご、ごめん! ちょっとどこからやろうか考えてて、ほんとごめん!」


「い、いや……だいじょぶ。……続けて」


 ……うん、なんか、大丈夫じゃない気がする! やるしかないけど!


「んっ……ぁ、つめた……んんっ!」


 俺は、決していやらしいことはしていない。背中を撫でているだけと言ってもいい。なのに、なんで……!


「……そこは……! くすぐった──ひぁっ、んっ!」


 なんで、こんなにえっちな声出しちゃうの……!


 理性が! 俺の理性さんが削られる! どれぐらいやばいかと言うと葵衣のお風呂の時ぐらい理性がやばい!


「なぁ緋彩ほんとに──」


「……だいじょぶ……早く、続き……!」


 食い気味に返事をする緋彩。でも、頬は真っ赤、息は荒い。なんか、違くない? もう理性さんは限界超えて落ち着いちゃったよ?


 とりあえず、背中は終わらせるけども……。


「やぁっ、そこ……!」


「んぁっ! ……だ、だめ!」


 ……改めて確認だけど俺は今日焼け止め塗ってるだけだよね? 手ぇ動かす度に反応されると不安なんだけど……。


「ひぁっ!? ぁんっ! ……〜〜〜ッ!!」


 脇の下から腰に向かって手を滑らせると、緋彩が痙攣したように震えて、さっき以上に息を荒くする。


「……や、やっぱりもういい……!」


「そ、そうか」


 いやまさかね? そんな日焼け止め塗るだけでそんな……いやほんとに頼むぞそうじゃないよな!? ただくすぐったかったの我慢してただけだよな!?


「あ、ひーちゃんの番は終わりましたか? じゃあ私もお願いします」


 ……マジ?

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